2012年12月14日

ゆきいろ レビュー

いつも通りのねこ……とはちょっと行かなかった。行かなかった理由を探ると,そもそも新生ねこねこソフトの存在意義にかかわってしまう。つまり,昔の通りとは行かずとも,できうる範囲で,コットンソフトの制作の合間に,片岡ともの企画をやる,ということである。できうる範囲で,というのがミソで,『そらいろ』,『white』とプレイしてくると突貫工事具合や,数合わせのサブルートの駄作具合がどうしても出てきてしまっているのがわかる。『ラムネ』や『朱』は,おもしろかったかどうかを別とすれば,完成度が高く片岡ともの世界が明確に表現されていた。なお私は両作品とも好きだ。

とはいえ,『そらいろ』や『white』は駄や凡なルートであっても異色感はなかった。……と書くと次の文が予測されてしまいそうなので,あえて次の次の文を先に書いておこう。早狩武志とpikazoはほとんど悪くない。彼らは呼ばれて仕事を受けただけである。早狩さんのシナリオは,『ゆきいろ』に合わなかっただけでつまらないシナリオではなかった。pikazoに至っては,あの絵じゃないとマルはマルとして成立しなかっただろうというぐらいに,シナリオにぴたっとはまった絵であった。が,ご両名が浮いていたことはどうにも否定しがたいのである。特にマルと樹奈が並んで立ったときの違和感がぬぐえないまま,コンプリートにまで至ってしまった。いっそのことpikazoが全員分描けば丸く収まったと思うのだが,作業量的にpikazoが死んでしまうので実現は苦しかろう。

邪推になるが,『終わる世界とバースデイ』の制作とぶつかってしまったのが大きな原因ではないか。それで今回コットン陣の手があまり借りられないので,新ライターに外注原画を頼んでみた,という流れでこうなったのではないか。ゆえに,本作は冒頭の通り,新生ねこねこソフトの存在意義を問うことになってしまった。コットンソフトの企画の”合間”で制作できなかったときの対処法は?確かに外注で頼めば質は保てるかもしれない。でも,それは片岡ともの企画とマッチするものなのか?また,コットンソフトの制作陣と調和できるものなのか?この推測が外れていたとしても,問題の本質は変わらない。四作目はそれほど労力がかからないであろう『サナララR』となったが,五作目はどうするのだろうか。『white』のレビューで書いたことを再掲しておく。「複数ライター制自体がダメとは言わないが,片岡ともの場合は表現したいものが非常に独特なので,相当綿密に打ち合わせて欲しい。」

シナリオは下段ネタバレゾーンで書くとして,絵について。原画陣のうち,pikazoは立ち絵はすばらしく繰り返しになるがマルの立ち絵に関しては神がかった出来。一方で一枚絵はときどき不安定。旧来の原画陣については文句なし。樹奈の立ち絵のバリエーションがとても多かったのはとても良かった,あんころもちさすが。演出は飛び抜けてすごいというものは無かったが,寒い中キャラがしゃべると白い息が出る演出は細かいがとても冬らしくて良かった。本作は背景の雪の積もり具合といい,キャラの寒がりようといい,「ザ・冬ゲー」というのが全面に押し出されていて良い。音楽は普通だが,ボーカル曲は3曲ともすばらしい。特にOPはムービーの出来もあって名作感がとんでもないので,本作をプレイする気がなくても一度は見てほしいと思う。



私的に2012年ベストOPムービーとしたい。さて,点数的には,3姉妹(ちとせ)・あきらのルートは55〜60点くらい,樹奈は他のゲームならまだ75点ついたけど『ゆきいろ』として考えると65点くらい,翠子先輩は75点満点75点という感じ,マルはさすがに80点くらい。で,ムービーやボーカル曲の出来などを勘案して総合70点前後。ぷちファンディスクは今からやるので,何か印象的なことがあったらここに追記する予定。


以下はネタバレ。

あきらのルートは……ライターが新人さんということであまり叩かないでおきたい。話が山無しオチ無しでつまらなかったのではあるのだけれど,テキスト自体が読めたものではないというレベルではなかったので,今後に期待しよう。ちとせのルートは,ウナトミーが担当らしいが,いくらなんでも適当に投げすぎではないか。長女と三女の過保護は明らかに行き過ぎで不自然であった。長女と三女攻略できるように,とは言わないまでも,彼女らに角が立たないようなシナリオが欲しかった。

樹奈。ご存じ早狩武志のシナリオで,三角関係を扱ったねこねこソフトにしては珍しいシナリオ。ねこでこういうちょっとぴりっとしたシナリオが無かったわけではないが,雰囲気や主人公の性格・言葉遣いが根本的に違ったのがやはり痛かった。あれをやるなら,過去編から手をつけてもっと樹奈の過去を変える・描写しておくべきだったのではないかと思うが,そこらへんで早狩さんがどの程度企画段階からかかわっていたのかがよくわからない。何はともあれ,今度,女子アイスホッケーで企画立てて1本ゲーム作ってください。期待してます。

翠子先輩。距離とか時間とか,ウナトミーらしいシナリオかなぁと。歩道橋での再会を,意味合いを変えて何度も繰り返すところなんかは特に。実際あれは効果的で,翠子先輩の横顔のCGもあいまって印象に残るシーンとなった。どうでもいいが,翠子先輩は次の麻雀で緑一色をあがる強キャラとして設定されそう。


最後にマル。キャッチフレーズの「もしボタンひとつでも掛け違えたならば、この不思議な未来にはならなかっただろう」は,私的にあまり響かなかったのだけれど,「ボタンを掛け違え”ても”……」というのを示したところはおもしろかった。そんなことより,微ポンコツ・幼馴染というねこの最終兵器を両方セットしたキャラとの延々続く,絶妙な距離感のイチャラブがたまらなく愛おしい。「なあマル,ぶっちゃけて聞くけど…俺たちって,いつHしても変じゃないよな」とか言い出す主人公に「ふふふふつかものですが」とか答えるヒロイン,なんかもうこいつらどうしてくれよう……という。

そんなんなので,もうこの話に悲劇とか必要ないから……頼むからこのまま終わってくれ,と思っていたので,「ボタンの掛け違い」というifの形で物語の起伏を処理したのはうまかったと思う。その意味でなら,このキャッチフレーズはお見事だった。

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