2013年03月28日

黒猫・白猫(映画)

はてな村及びtwitter上の某知り合いに勧められて見た映画。本作は映画の内容よりも,その音楽で有名である。

  

ニコニコ動画にアカウントの無い人はYouTubeでも同様の動画があるので,そちらで視聴できる。まあ本作は退職と何の関係もないので風評被害この上ないのだが,それはそれとしてこの曲を退職のテーマに使った人はセンス良いと思う。この映画自体が常に躁状態でテンション高く,自由極まりない映画だからだ。まさにこれからやめて自由になる人にはうってつけの曲である。ちなみにこの曲,主人公の祖父が退院した時に流れるのが初出で(アレンジ版は先に流れる),退院と言っても全く治ってないのに,肝臓を痛めて入院しているのにもかかわらず,「酒が飲みたいから」の自主的な退院である。退院した祖父はおもいっきり飲みながら,この曲を背景に高らかに「人生はすばらしい!」と叫ぶ。本作の名シーンの一つである。

舞台はブルガリア・セルビア国境付近のドナウ川沿い,登場人物のほとんどはロマである。曲も上記のテーマソング含めロマ音楽になっている(らしい)。ストーリーは,ある密輸商の息子が主人公(ザーレ)。この主人公の親父(マトゥコ)がろくでなしで,祖父は隠居しており裕福な名士である。ろくでなしの親父は「祖父は死んだ」と嘘をつき,祖父の友人であったマフィアのボス(ゴッドファーザー)に金を無心に行く。その大金(香典)を元手に新興マフィアのダダンと列車強盗を起こすが,これが見事に失敗。無一文の借金漬けになったマトゥコはいよいよ困り果て,ダダンの売れ残りの妹と息子の結婚を勝手に約束し,事実上息子を売り払って借金を返済した。こうして無理やり結婚させられる羽目になった主人公であったが,望まれぬ結婚の行く末やいかに……という感じである。

音楽もハイテンションならストーリーもハチャメチャで,やたらめったら登場する動物たちにナンセンスな現象もそれに一役を買っている。タイトルの通り黒猫・白猫のカップルもなかなかやらかしてくれるが,何よりストーリーが進むにつれて腐食した自動車を食い進める豚が,存在の謎にやってることの謎も加わって強烈なインパクトを残していった。だが,それでいて張った伏線はきちんと回収して大団円になる。見て損はない映画。

三世代の物語で,基本的に祖父(主人公の祖父・ゴッドファーザー・ヒロインの祖母)は立派な人物,主人公の世代(主人公ザーレ・ゴッドファーザーの孫・ダダンの妹・ヒロイン)もかっこいい人たちが多いのだが,間に挟まれた親父世代(主人公の父親・ダダン)はろくでなしばかりである。一攫千金狙いで下手な悪巧みとギャンブルにしか目がない親父世代は,最初「愛すべき馬鹿」だったが次第に「許せない小悪党」になっていく。それだけに終盤はなかなかの爽快感がある。祖父世代の友情と,孫世代の前途に,乾杯。


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