2013年06月14日
闇色のスノードロップス レビュー
本作はネ右の勧めでプレイした。自分の感じたことも大体書いてくれているので,彼のレビューを読んだほうが良い。
→ 闇色のスノードロップス レビュー(凍てつくが如く、哀槌を鍛つ)
「凌辱と純愛が綺麗に住み分けられており、ルート毎に結末が大きく異なる。大別すると、純愛展開・凌辱展開・ハーレム展開の三種類。」であることさえ押さえられていれば,本作をプレイする前情報としては十分であろう。当然,私も同人版未プレイである。
さて,本作に対する私の感想の第一は「日常がたるい」の一言に尽きる。無論,日常があることで物語が暗転した時の落差が激しくなるので,本作のテーマから言って日常描写は不可欠だ。また,そのような目的である以上,過剰におもしろい必要はなく,ギャグが盛ってあればいいというものでもない。が,本作はそれ以前の問題で,あまりにもたるいのである。原因は物語の筋とテキスト双方にある。同じ事の繰り返しで,ただ漫然と日々が過ぎていく。テキストもあからさまに乗っておらず,同じような言葉が続く。ここまで書けば歴戦のエロゲーマーなら大体どういう状態か,想像がつくのではないか。もうちょっとなんとかならんかったのか。
また,確かに純愛展開・ハーレム展開・陵辱展開と綺麗に分岐するものの,あからさまに純愛展開・ハーレム展開(の一部)は物語が適当で投げっぱなしである。同人版を知らないのでこの点あまり強く言えないのだが,元々は無かったのなら付け足す必要があったのか疑問になる出来である。実際,同人版もやっている人のレビューを読むとそういう指摘もされている。ただし,純愛展開・ハーレム展開を作ったおかげで,あるおもしろい現象が生じた(Kanon問題)。これに関する考察は後述する。
一方,陵辱展開についてはなかなかおもしろかった。情報管理については巧みといってよく,日常の節々で小出しにしつつ,ルートに入った途端にどーんと一気に放出する。主人公が気づいたときにはすでに手遅れであり,完全に逃げ場がない状態が演出される。プレイ時間ものの10分の間にして,主人公の人生が一気に暗転する急転直下の展開は,急激すぎておもしろい。主人公は解決策を持ち合わせていない。彼は極普通の一般人であって,力があるわけでも知恵が回るわけでもない。だから,うまく行くときは「愚かな勇気」を発揮した時だけであって,しかも「愚かな勇気」そのものが功を奏するのではなく,その結果何かしらが起きて偶発的に助かるのである。偶発的ではない助かり方をしては”愚か”とは呼べず,かと言って助からないのでは”勇気”の意味が無い。絶妙なバランスの上で,本作のテーマは成り立つ。「愚かな勇気」をテーマに据えただけのことはあり,とても良かった。
絵について。立ち絵は基本かわいいのだが,一枚絵になるとパースが狂い脱がすとさらに頭身がおかしくなるという,一部エロゲンガーに共通する現象は,なんと表現したらいいものか。誰か命名してください。せっかくの陵辱展開が,これで萎えたことがなんと多いことか。音楽。ボーカル曲は良かった。BGMは平凡で,正直全く記憶に残らなかった。システムは可も不可もない。使いづらいとまでは言わないが,使いやすいとは言いがたい。この辺は総じて同人上がりらしい,という感想でまとめておきたい。
総評。光るところが無かったわけではないものの,眠いテキスト・共通パートが大きく足を引っ張り,絵・音・システムでも特に褒めるところがないので,終わってみるとどうにも中途半端さが目立つ。多くのレビューにあった文言だが,同人上がりならもっと尖った作品でも良かったのではないか,と私も思う。70点弱を付けておく。
以下,ネタバレというか,本作におけるKanon問題の話。遡及的過去形成,という言葉を見て何のことだかわからない人は先にそっちでぐぐるか,回れ右を推奨します。
→ 闇色のスノードロップス レビュー(凍てつくが如く、哀槌を鍛つ)
「凌辱と純愛が綺麗に住み分けられており、ルート毎に結末が大きく異なる。大別すると、純愛展開・凌辱展開・ハーレム展開の三種類。」であることさえ押さえられていれば,本作をプレイする前情報としては十分であろう。当然,私も同人版未プレイである。
さて,本作に対する私の感想の第一は「日常がたるい」の一言に尽きる。無論,日常があることで物語が暗転した時の落差が激しくなるので,本作のテーマから言って日常描写は不可欠だ。また,そのような目的である以上,過剰におもしろい必要はなく,ギャグが盛ってあればいいというものでもない。が,本作はそれ以前の問題で,あまりにもたるいのである。原因は物語の筋とテキスト双方にある。同じ事の繰り返しで,ただ漫然と日々が過ぎていく。テキストもあからさまに乗っておらず,同じような言葉が続く。ここまで書けば歴戦のエロゲーマーなら大体どういう状態か,想像がつくのではないか。もうちょっとなんとかならんかったのか。
また,確かに純愛展開・ハーレム展開・陵辱展開と綺麗に分岐するものの,あからさまに純愛展開・ハーレム展開(の一部)は物語が適当で投げっぱなしである。同人版を知らないのでこの点あまり強く言えないのだが,元々は無かったのなら付け足す必要があったのか疑問になる出来である。実際,同人版もやっている人のレビューを読むとそういう指摘もされている。ただし,純愛展開・ハーレム展開を作ったおかげで,あるおもしろい現象が生じた(Kanon問題)。これに関する考察は後述する。
一方,陵辱展開についてはなかなかおもしろかった。情報管理については巧みといってよく,日常の節々で小出しにしつつ,ルートに入った途端にどーんと一気に放出する。主人公が気づいたときにはすでに手遅れであり,完全に逃げ場がない状態が演出される。プレイ時間ものの10分の間にして,主人公の人生が一気に暗転する急転直下の展開は,急激すぎておもしろい。主人公は解決策を持ち合わせていない。彼は極普通の一般人であって,力があるわけでも知恵が回るわけでもない。だから,うまく行くときは「愚かな勇気」を発揮した時だけであって,しかも「愚かな勇気」そのものが功を奏するのではなく,その結果何かしらが起きて偶発的に助かるのである。偶発的ではない助かり方をしては”愚か”とは呼べず,かと言って助からないのでは”勇気”の意味が無い。絶妙なバランスの上で,本作のテーマは成り立つ。「愚かな勇気」をテーマに据えただけのことはあり,とても良かった。
絵について。立ち絵は基本かわいいのだが,一枚絵になるとパースが狂い脱がすとさらに頭身がおかしくなるという,一部エロゲンガーに共通する現象は,なんと表現したらいいものか。誰か命名してください。せっかくの陵辱展開が,これで萎えたことがなんと多いことか。音楽。ボーカル曲は良かった。BGMは平凡で,正直全く記憶に残らなかった。システムは可も不可もない。使いづらいとまでは言わないが,使いやすいとは言いがたい。この辺は総じて同人上がりらしい,という感想でまとめておきたい。
総評。光るところが無かったわけではないものの,眠いテキスト・共通パートが大きく足を引っ張り,絵・音・システムでも特に褒めるところがないので,終わってみるとどうにも中途半端さが目立つ。多くのレビューにあった文言だが,同人上がりならもっと尖った作品でも良かったのではないか,と私も思う。70点弱を付けておく。
以下,ネタバレというか,本作におけるKanon問題の話。遡及的過去形成,という言葉を見て何のことだかわからない人は先にそっちでぐぐるか,回れ右を推奨します。
さて,本作は確定的過去共有と遡及的過去形成の双方で解釈できるという点で『Kanon』に近く,珍しい作品である。要するにどういうことかというと,売春組織の存在がルートによって存在するかどうか不確定のまま進んでいく。各キャラの陵辱展開,それと歩美のハッピーエンドでは売春組織の存在が明るみに出る。が,悠衣・今日子のルートでは存在がぼかされ,茜のハーレムルートでは「ば」の字も出てこずに終わる。そして,これらのルートでは陵辱展開に入るルートと事実を共有していると考えるか否かによって,売春組織(と過去に起きた事件)の存在の有無が全く変わってくる。
もう少し掘り下げると,確かに悠衣のルートでは話に出てこないだけであったと考えたほうがしっくり来る。初孫ができ,出産が現実的になってくると次第に態度をやわらげる叔父は,とうとう小島と手を切ってしまった描写が出てくる。椿さんも「叔父との結婚では本意ではなかった」と弁解するシーンがあり,”他ルートの情報と重ね合わせると”叔父が昔売春組織を運営していたことを暗に示唆した発言であろう。ただし,これらは結局明言されず,小島が新聞販売店に寄り付かなくなった理由は全く語られないので他になんとでも理由がつくし,椿さんの発言も”他ルートの情報と重ね合わさなければ”単純に望まぬ結婚だった,と解釈できる。つまり,多少不自然ながら売春組織は無かった,という事実を設定することは可能だ。
同様のことが雪乃・今日子のルートでも言える。このルートに至っては,主人公が散歩(迷子)で某マンションのふもとの公園にたどり着いた際,今日子とばったり会ったシーンの一点が問題になるだけだ。今日子はあのマンションに住んでいるわけではなく,本人は「ちょっと用事があった」と語るのみで,結局”このルート内では”全く理由が語られない。これも”他ルートの情報と事実を共有しているとすれば”,彼女は売春組織で働いており,あのマンションの一室がその現場ということがわかるので,理由がちゃんと付く。しかし,これも逆に”他ルートと事実を共有していないとすれば”,「今日子の別の友人があのマンションに住んでいて,本当にちょっとした用事があっただけ」などの理由付けは十分に可能で,売春組織なんて無かったし今日子もそこでは働いていない,という解釈が十分に成立する。
最後に茜と悠衣がただれた生活を送るハーレムルートだが,このルートに至っては完全に売春組織なんて無かったと解釈したほうが自然だ。そして以上に挙げたルートでは全て,「歩美の処女が売られない」「悠衣が小島に陵辱されない」「雪乃や茜が被害に遭わない」という点で共通しており,叔父や小島の性向を考えるに,売春組織が存在しているのにこれらの事件が起きないというのは逆に不自然である,とも考えうる。
してみると,本作11ルートのうち,実は5ルートで「売春組織は存在してないし,歩美の母が売春させられていたなどという事件は起きなかった」と解釈可能である。である以上,本作は遡及的過去形成で”も”解釈可能であるとみなしうるのではないか。一方,「これらのルートでも,見事に隠蔽されていただけで,売春組織は存在している」と解釈することも可能で,その場合は確定的過去共有が取られる。すなわち,本作は双方の解釈が成り立つという結論をここで下したい。(ただし,個人的には遡及的過去形成で解釈したほうが自然に感じる,ということも付記しておく。)
言うまでもなく,分岐のあるエロゲー作品は多くが確定的過去共有を前提に書かれており,この場合作中にも作品外でも特に説明はない。一方,遡及的過去形成で解釈しなければ矛盾が生じる作品は少ないものの,無いわけではない。近年だと『美少女万華鏡2』,及び『G線上の魔王』がこれにあたる。ここで,その双方で解釈できる作品というと極めて珍しい。というよりも,本作にあたるまで,私は『Kanon』以外に無いと思っていた。ただし,『Kanon』はそのことを狙ってやったらしき節があるのに対し(という研究の蓄積がある),本作はどうも狙ってやったのではなくて,偶然そうなったのではないかという疑念が強い。狙ってこうなったなら大したもので,本作の評価を少し上げるのだが。
もう少し掘り下げると,確かに悠衣のルートでは話に出てこないだけであったと考えたほうがしっくり来る。初孫ができ,出産が現実的になってくると次第に態度をやわらげる叔父は,とうとう小島と手を切ってしまった描写が出てくる。椿さんも「叔父との結婚では本意ではなかった」と弁解するシーンがあり,”他ルートの情報と重ね合わせると”叔父が昔売春組織を運営していたことを暗に示唆した発言であろう。ただし,これらは結局明言されず,小島が新聞販売店に寄り付かなくなった理由は全く語られないので他になんとでも理由がつくし,椿さんの発言も”他ルートの情報と重ね合わさなければ”単純に望まぬ結婚だった,と解釈できる。つまり,多少不自然ながら売春組織は無かった,という事実を設定することは可能だ。
同様のことが雪乃・今日子のルートでも言える。このルートに至っては,主人公が散歩(迷子)で某マンションのふもとの公園にたどり着いた際,今日子とばったり会ったシーンの一点が問題になるだけだ。今日子はあのマンションに住んでいるわけではなく,本人は「ちょっと用事があった」と語るのみで,結局”このルート内では”全く理由が語られない。これも”他ルートの情報と事実を共有しているとすれば”,彼女は売春組織で働いており,あのマンションの一室がその現場ということがわかるので,理由がちゃんと付く。しかし,これも逆に”他ルートと事実を共有していないとすれば”,「今日子の別の友人があのマンションに住んでいて,本当にちょっとした用事があっただけ」などの理由付けは十分に可能で,売春組織なんて無かったし今日子もそこでは働いていない,という解釈が十分に成立する。
最後に茜と悠衣がただれた生活を送るハーレムルートだが,このルートに至っては完全に売春組織なんて無かったと解釈したほうが自然だ。そして以上に挙げたルートでは全て,「歩美の処女が売られない」「悠衣が小島に陵辱されない」「雪乃や茜が被害に遭わない」という点で共通しており,叔父や小島の性向を考えるに,売春組織が存在しているのにこれらの事件が起きないというのは逆に不自然である,とも考えうる。
してみると,本作11ルートのうち,実は5ルートで「売春組織は存在してないし,歩美の母が売春させられていたなどという事件は起きなかった」と解釈可能である。である以上,本作は遡及的過去形成で”も”解釈可能であるとみなしうるのではないか。一方,「これらのルートでも,見事に隠蔽されていただけで,売春組織は存在している」と解釈することも可能で,その場合は確定的過去共有が取られる。すなわち,本作は双方の解釈が成り立つという結論をここで下したい。(ただし,個人的には遡及的過去形成で解釈したほうが自然に感じる,ということも付記しておく。)
言うまでもなく,分岐のあるエロゲー作品は多くが確定的過去共有を前提に書かれており,この場合作中にも作品外でも特に説明はない。一方,遡及的過去形成で解釈しなければ矛盾が生じる作品は少ないものの,無いわけではない。近年だと『美少女万華鏡2』,及び『G線上の魔王』がこれにあたる。ここで,その双方で解釈できる作品というと極めて珍しい。というよりも,本作にあたるまで,私は『Kanon』以外に無いと思っていた。ただし,『Kanon』はそのことを狙ってやったらしき節があるのに対し(という研究の蓄積がある),本作はどうも狙ってやったのではなくて,偶然そうなったのではないかという疑念が強い。狙ってこうなったなら大したもので,本作の評価を少し上げるのだが。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)│