2013年06月20日
アンナと王様
ラーマ4世(モンクット王)の治世,彼は王子教育のためイギリス人の家庭教師をつけた。その女性家庭教師アンナと国王の交流を描いた作品。
なのだが,テーマが混在しすぎていて,うまくまとまっていない気がした。West meets East物(異文化衝突・交流物)としては,アンナがすでに慣れているので戸惑いが薄い。これは彼女が本国出身ではなく,インド出身であるためだ。実は,元ネタになったミュージカルでは本国出身で,異文化衝突の面が色濃いそうなのだが(見てないので伝聞),史実では本作のように彼女はインド出身であるため,史実に合わせたのだろう。作中,アンナがタイの風習を批判する場面が何度も出てくるが,それは「前近代的だから」という理由であり,「イギリスと違うから」という理由にはならないようにしていたように思う。しかし,近代化の方向が何か間違っているというべきか,アンナが言うのは「現代的」であるように感じた。アンナにイギリス本国の植民地主義を否定させるのはさすがにおかしかろう。時代考証がどうのというより不自然に感じた。
じゃあタイの近代化がテーマかというとそうでもなく。当たり前の話なのだが,アンナはあくまで王子の家庭教師であって,ラーマ4世の顧問政治家として招かれたわけではない。改革の成果を出すのはラーマ5世ことチュラロンコーンであり,この映画の時点ではまだ即位前の少年である。この映画中にタイはほとんど近代化しない。もっとも,史実ではアンナがラーマ5世に与えた影響はそれほど強くなかったようで,この点は脚色が入っている。それはおいといたとしても,この観点で見ると,本作のアンナはでしゃばりすぎである。ラーマ4世の寛容さに甘えて言いたい放題言っているようにしか見えない。貴女の本分は,確かに究極的な目標を見ると「タイの近代化」ではあるが,目の前の目標は「王子の教育」であって,政治の近代化ではないわけだ。もっとも,アンナがラーマ4世に口を出さなければ交流の機会が減り,王と家庭教師の交流は描けない。
では,国王と家庭教師の交流としてはどうだったかというと,これは中途半端とは逆にやりすぎた感が強い。2/3くらいまで見たところで「あ,これラブストーリーだったんだ」とようやく気がついた。で,驚いた。いやいやいや,ラーマ4世ほだされすぎでしょ。主演のジョディ・フォスターが美人すぎるせいもあって,それに惹かれたようにどうしても見えてしまう。精神的交流を描きたかったのであろうが,であれば無理にラブストーリーにする必要性は無かったのではないか。そのせいで交流が不自然になったように思えた。
とどめに,本作はある意味爆発オチと言っても嘘ではない。アンナが宮廷の陰謀に巻き込まれて最後は王様ともども割とピンチになるのだが,超展開と言うと言い過ぎにせよ突飛な展開をして最後は爆発する。なにそれこわい。あれってミュージカルのほうだとあったんだろうか,もっと言えば原著にあったんだろうか。全然知らないのだけれど,無いんじゃないかさすがに。
というわけで,金はかかってるしキャストも豪華で名演技,素材も良しで,どうしてこうなったのか真剣に悩むべき凡作だと思う。せめてテーマをぶらさず統一させ,あくまでWest meets East物にし,ラブストーリーではない友情にとどめておき,最後は妙な事件を持ってきて爆発させない,で名作になったように思う。ラーマ4世があの扱いでは,タイ国内で放映禁止されているのも納得である。ちなみに,制作時点で拒否されたので,今回使われたのはマレーシアで作ったセットだそうだ。本物と見間違える程度には,セットの再現度が高かったことは一応書いておく。
アンナと王様 (特別編) [DVD] [DVD]
出演:ジョディ・フォスター
商標:20th Century Fox Jp
(2010-06-25)
なのだが,テーマが混在しすぎていて,うまくまとまっていない気がした。West meets East物(異文化衝突・交流物)としては,アンナがすでに慣れているので戸惑いが薄い。これは彼女が本国出身ではなく,インド出身であるためだ。実は,元ネタになったミュージカルでは本国出身で,異文化衝突の面が色濃いそうなのだが(見てないので伝聞),史実では本作のように彼女はインド出身であるため,史実に合わせたのだろう。作中,アンナがタイの風習を批判する場面が何度も出てくるが,それは「前近代的だから」という理由であり,「イギリスと違うから」という理由にはならないようにしていたように思う。しかし,近代化の方向が何か間違っているというべきか,アンナが言うのは「現代的」であるように感じた。アンナにイギリス本国の植民地主義を否定させるのはさすがにおかしかろう。時代考証がどうのというより不自然に感じた。
じゃあタイの近代化がテーマかというとそうでもなく。当たり前の話なのだが,アンナはあくまで王子の家庭教師であって,ラーマ4世の顧問政治家として招かれたわけではない。改革の成果を出すのはラーマ5世ことチュラロンコーンであり,この映画の時点ではまだ即位前の少年である。この映画中にタイはほとんど近代化しない。もっとも,史実ではアンナがラーマ5世に与えた影響はそれほど強くなかったようで,この点は脚色が入っている。それはおいといたとしても,この観点で見ると,本作のアンナはでしゃばりすぎである。ラーマ4世の寛容さに甘えて言いたい放題言っているようにしか見えない。貴女の本分は,確かに究極的な目標を見ると「タイの近代化」ではあるが,目の前の目標は「王子の教育」であって,政治の近代化ではないわけだ。もっとも,アンナがラーマ4世に口を出さなければ交流の機会が減り,王と家庭教師の交流は描けない。
では,国王と家庭教師の交流としてはどうだったかというと,これは中途半端とは逆にやりすぎた感が強い。2/3くらいまで見たところで「あ,これラブストーリーだったんだ」とようやく気がついた。で,驚いた。いやいやいや,ラーマ4世ほだされすぎでしょ。主演のジョディ・フォスターが美人すぎるせいもあって,それに惹かれたようにどうしても見えてしまう。精神的交流を描きたかったのであろうが,であれば無理にラブストーリーにする必要性は無かったのではないか。そのせいで交流が不自然になったように思えた。
とどめに,本作はある意味爆発オチと言っても嘘ではない。アンナが宮廷の陰謀に巻き込まれて最後は王様ともども割とピンチになるのだが,超展開と言うと言い過ぎにせよ突飛な展開をして最後は爆発する。なにそれこわい。あれってミュージカルのほうだとあったんだろうか,もっと言えば原著にあったんだろうか。全然知らないのだけれど,無いんじゃないかさすがに。
というわけで,金はかかってるしキャストも豪華で名演技,素材も良しで,どうしてこうなったのか真剣に悩むべき凡作だと思う。せめてテーマをぶらさず統一させ,あくまでWest meets East物にし,ラブストーリーではない友情にとどめておき,最後は妙な事件を持ってきて爆発させない,で名作になったように思う。ラーマ4世があの扱いでは,タイ国内で放映禁止されているのも納得である。ちなみに,制作時点で拒否されたので,今回使われたのはマレーシアで作ったセットだそうだ。本物と見間違える程度には,セットの再現度が高かったことは一応書いておく。
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出演:ジョディ・フォスター
商標:20th Century Fox Jp
(2010-06-25)
Posted by dg_law at 23:36│Comments(0)│