2013年09月05日
阿知賀編の説得力
連載終了時に書こうとしてタイミングを逃したので,単行本最終巻が出たこのタイミングで書いておく。
阿知賀編が完結したが,世評は賛否両論であったと言ってよいと思う。私自身も賛の側であるが,不満点がないわけではなく,他の褒めている人に聞いても何かしらの不満点が聞かれる。さてその中で私が気になったのは,阿知賀チームの強さに対する批判である。この点確かに,さらっと読んでいくと阿知賀の成長があまりにも早すぎて不自然であり,準決勝ではとうとう白糸台や千里山に勝ってしまった。これにより白糸台の格が落ちたという批判も根強く,批判側の意見としては最有力のものとなっている。不思議なことに千里山の格が落ちたという批判は聞かないのだが,白糸台の格が落ちたなら千里山も落ちているだろう。要するに,泉の失点は許されても亦野の失点は許せないというのが世評のようだ。
この点,しっかり読めば阿知賀は急成長したわけではなくて最初からそれなりに強かった(潜在能力が高かった)のは描写されているのだが,描写が弱いとも言える。作者批判にも読者批判にも,どっちにも持って行けてしまう厄介なブツである。実は後述するように,『咲-Saki-』本編でも同じような問題はつきまとってもおかしくなかったわけだが(実際タコスには阿知賀の面々と全く同じ批判がある),本編はそれなりにうまいこと回避している。なのでここではどちらにも持っていかず,阿知賀編を通して,能力バトル物や競技(スポーツ)物の”説得力”はいかに表現されるものかということのみに絞って,私の読みと意見を開陳しておく。あとの判断は読者にお任せしたい。
阿知賀編が完結したが,世評は賛否両論であったと言ってよいと思う。私自身も賛の側であるが,不満点がないわけではなく,他の褒めている人に聞いても何かしらの不満点が聞かれる。さてその中で私が気になったのは,阿知賀チームの強さに対する批判である。この点確かに,さらっと読んでいくと阿知賀の成長があまりにも早すぎて不自然であり,準決勝ではとうとう白糸台や千里山に勝ってしまった。これにより白糸台の格が落ちたという批判も根強く,批判側の意見としては最有力のものとなっている。不思議なことに千里山の格が落ちたという批判は聞かないのだが,白糸台の格が落ちたなら千里山も落ちているだろう。要するに,泉の失点は許されても亦野の失点は許せないというのが世評のようだ。
この点,しっかり読めば阿知賀は急成長したわけではなくて最初からそれなりに強かった(潜在能力が高かった)のは描写されているのだが,描写が弱いとも言える。作者批判にも読者批判にも,どっちにも持って行けてしまう厄介なブツである。実は後述するように,『咲-Saki-』本編でも同じような問題はつきまとってもおかしくなかったわけだが(実際タコスには阿知賀の面々と全く同じ批判がある),本編はそれなりにうまいこと回避している。なのでここではどちらにも持っていかず,阿知賀編を通して,能力バトル物や競技(スポーツ)物の”説得力”はいかに表現されるものかということのみに絞って,私の読みと意見を開陳しておく。あとの判断は読者にお任せしたい。
能力バトルで強さに説得力を持たせたかったら,そもそも「ほとんどの読者が一目で強いとわかるような能力を設定する」のが一番手っ取り早い。麻雀の場合,これが案外難しい。実際,成功しているのは衣や怜くらいで,あとは霞さんの絶一門くらいじゃないかと思う。しかもこの場合,「じゃあその超強い能力同士が衝突したらどっちの”力”が勝つの?」という疑問にぶつかったときに結局詰まる。
そこでいろいろな工夫が持ち込まれる。まずよくあるのは猛烈な努力の描写や特殊な人生経験で,その結果として人を逸脱したというのは比較的作りやすい説得力だ。『咲-Saki-』ならまんま原村和が当てはまる。が,この設定は乱発できないし,そもそも人外になるような領域でなければ,死に物狂いの練習はその競技で全国大会に出てくるような面々なら大体しているわけで,増やせば増やすほど説得力が無くなる。現に『咲-Saki-』では和以外にはほぼ見当たらない。しいて言えばまこがこれに近いが,同じ主人公チームである。人生経験という点では部長が挙がる。これは明示してもよいし,匂わせるだけ匂わせてあえて伏せてもよい。伏せることで強く見せるという手法は,とりわけ麻雀漫画では多いように思う。人生経験に関連するが,血筋を持ってくるというのもある。「○○の息子という特別な系譜だから能力を持ってる」は使い勝手がよい。『咲-Saki-』では永水女子の面々のほか,宮永姉妹がこれにあたる。宮永一族は何かあるっぽいことは匂わされている。これも匂わせるだけ匂わせて伏せていることで,さらに説得力を強くしている。
3つ目に,その作品独自の論理を持ち込んで,それに関連付けること。たとえばリザベーションは作中最大の”力”を持った能力と言ってよい。これは『咲-Saki-』という作品が,iPS力もとい「絆」の力が最上というのを体現している。しかし,それができたのはすでに本編の長野県決勝大将戦に代表される布石があり,十分にiPS力アッピル作中独自の論理が示されていたからこその説得力ではあった。
まだある。4つ目が伝奇要素を持ってくる。神々や妖怪の力を持っているから強い”力”を持つというのは若干猫だまし的手法ではあるものの,とりわけ能力の存在が前提となっている世界観では極めて強い説得力を持つ。特に日本神話を持ってきたときの効果は高い。言うまでもなく『咲-Saki-』はバリバリの伝奇物だ……と言いたいところだが,実際のところ表立って作中でそう描かれているわけではない。天照大神も蔵王権現も道祖神も,明確に描かれたことはなく,全ては咲ファンによる推測なのだ。この辺は『咲-Saki-』が伝奇系能力バトルであることよりも麻雀漫画であることを優先した最後の一線としてこうなっているのではないかと思うし,それは全く正しいことだ。東方も型月作品も大好きで,『咲-Saki-』の伝奇的展開も歓迎している私だが,『咲-Saki-』はあくまで麻雀漫画であり百合漫画であることを優先してほしい。その意味では,リザベーションが蔵王権現(穏乃)に勝ったのは本作のあり方として正しい。
5つめが作中の戦績による格付けだ。「過去に大会○連覇」や「全国ランキング○位」というやつである。本作ではシードの4校や姫松,長野県では風越がその恩恵に預かっている。もちろん和のインターミドル覇者もこの類だ。実はこの点において重要な役割を担わされていたのが龍門渕高校になる。龍門渕に対する格付けは多い。昨年度の長野代表校であり,ベスト8まで進出し,惜しくも3位敗退したというところまで判明している。かつ,今年度においても長野県で僅差の2位だ。これに天江衣本人は得点記録保持者,そして伝奇的な恩恵も受けているため,抜群の説得力も持っている。
この龍門渕を基準にすると,清澄の全国での戦い振りに説得力が増す。その龍門渕に勝っているのだから少なくともベスト8までは行けると考えるのが妥当である。無論のことながら「昨年よりも今年のほうが全体のレベルが高いかもしれない」という反論はありうるので,”当然”ではなく”妥当”としたが,その反論自体仮定の領域は出ないように思う。さらに言えば龍門渕の面々自体も1年生だった昨年より2年生になった今年のほうが強くなっているだろうから,さらに上までいけてもおかしくないという推測すら立つ。事実,1回戦は中堅で飛ばして終了,2回戦もほとんど横綱相撲であった。部長の不調が無ければ圧勝ペースに近い。咲さんも精神の乱れから靴下脱ぎ忘れるなど本調子ではなかったが,見事な魔王ぶりを発揮して勝ち抜いた。先鋒から大将まで通して,実に安心感のある戦いぶりだったと思う。
一方,阿知賀編とのハブになるのもまた龍門渕である。阿知賀の面々は全国大会直前,各県の2位と総当たりで修行の旅に出ていたが,その際「龍門渕以外の」各県2位には全て勝っていた。この点,全国ベスト8クラスなのに県では2位という龍門渕のいる長野が魔境すぎるのだが,逆に言えばこの時点で相当力をつけていることはわかる。特に荒川憩のいる三箇牧に勝ったという点は説得力として大きい。北大阪自体が激戦区である上に千里山は全国2位で「関西最強」。そこに負けた三箇牧も相当の強豪という推測は立つ上に,荒川憩本人も個人戦2位とこれまた格付けの多い学校だ。大概の県の代表校はおそらく三箇牧に勝てまい。
最後に工夫でも何でもないが,説得力という点で何より強いのは「作中での丁寧な描写」である。そのキャラが/能力が/チームがいかに強いかを見せるためには,実際にそれが活躍するところを丁寧に,誰が読んでもわかるように描写することだ。この点,一番丁寧に描写されているのは宮永咲本人であろう。あれほど嶺上開花が使える”技”だったとは,と驚かされた人は多いだろう,というか読者全員じゃないか。つい最近では,本編準決勝先鋒のタコスの描写は,彼女の判断力が格段に向上していることを見せたという点で優れていた。
というようなことを踏まえていくと,阿知賀編は出発から準決勝開始に至るまでの描写が極端に短かったのが全ての要素における説得力を減じさせてしまったのではないか,というのが私の感想である。上記のように,清澄高校はタコス以外おおよそ何かしらの説得力を背負っており,格付けの点からも龍門渕を倒した時点で十分すぎるほどの物を得ている。本編の闘牌描写の濃さは(なぜか飛ばされる染谷まこを除けば)折り紙つきだ。あとは決勝まで突っ走るだけである。
一方,阿知賀は駆け足で描写していったせいで,いろいろものが「気づく人は気づくし深読みする」程度で話が進んでいってしまった。まず1.「猛烈な努力の経験」だが,あるにはあるが麻雀をやっていなかった期間が長すぎる面々が多く,むしろ読者から努力不足をなじられる始末であった。2.特殊な人生経験では玄と穏乃が挙がるが,玄は唯一効いたキャラであろう。一方,穏乃は種明かしが明らかに遅すぎた。そもそも当初は無能力者と見られていたこともあり,山歩きと関連付けて能力を予想する風潮自体があまり無かった。単行本1巻の展開がトップスピード過ぎて,野生児の印象はあれども山とはっきり結びつくだけのイメージは(少なくとも私には全く)無かった。特殊な血筋があるメンバーもいない。いや,松実姉妹は特殊ではあるのだろうが,かと言って母親が何か能力持ちということは明示されいない。新子姉もインターハイ出場経験者ではあるが,これも新子望が強かったという描写が特別あったわけでもない。
3.iPS力キャラ同士の絆は強かったとは言えるものの,リザベーションや枕神レベル,もしくは長野県決勝大将戦のような「絆の力による復活」といった描写があったかと言われると,意外にも阿知賀の面々にはあまり無い。しいて言えば灼の準決勝副将戦はブーストがかかっていたし,あれは十分な説得力で批判を見ない(それ以上に哩さんにブーストがかかっていたからという話はあるが)。
4.伝奇要素も唯一背負っていたのは穏乃一人だが,準決勝が伝奇要素の初出では遅すぎたというのは指摘済である。2回戦までに少なくとも無能力者ではないことを示しておくべきだっただろう。穏乃の成長曲線が一番やり玉に挙げられているように思われる。確かに二回戦アレで準決勝白糸台とぶつかってどうすんの,というのは当時私自身感じていたところだが,蓋を開けてみれば能力的な相性が大星淡とあまりにも良かったし,残りの3人が穏乃不在で殴りあってくれたおかげという点もある(これは麻雀が4人競技である点を活かした良い解決方法)。ただ,あの展開にするのであれば,2回戦であらかじめ片鱗を見せておく必要はあった。
5.龍門渕のハブとしての効果も,あまり機能していたとは言いがたい。私はこの点に言及した記事をこれまでにほとんど読んだことがない。三箇牧も以下同文。
というわけで,ほとんどの説得力をつける作業において失敗しているか,言及が遅すぎて効果が薄かったのではないかと思う。であればあとは最後に挙げた,闘牌自体の描写を密にして説得力を直接的に出す手法であるが,言うまでもなくこの点も弱い。準決勝は濃く丁寧だったと言っていいが,だからこそ問題なのだ。むしろ準決勝でいきなり濃くなったからこそ「成長曲線がおかしい」と不自然さを批判されてしまう結果となった。阿知賀編はその物語構造全体において,全てを準決勝に重きを置きすぎていた。
2回戦の得点推移についても一言ある。先鋒でついた差が83800点,最終結果の差が92300点だが,最後の自殺ダマッパネ放銃が無ければむしろ差は縮んでいることに気づく。千里山と阿知賀の戦力差は先鋒にしかほとんどないのはおおよそ示されていたが,この点強調されずに話が進んでいった。むしろ作中で赤土さんが「9万点差がついた」と煽る始末である。一方,準決勝ではその先鋒二人が照に止められて似たような結果になり,差がつかなかった。さらに泉の失点が最後まで響いた結果,中堅〜大将区間の両校の得点に差が無かったにもかかわらず,阿知賀が勝って2位抜けとなった。要するに阿知賀の玄と千里山の泉は同じような役割をさせられたわけだ。ついでに言えば白糸台の亦野も全く同じである。本人はそれほど弱いわけではないのに,相性の問題(と展開の都合)で失点源の役割が回ってきた。泉はともかく,亦野に批判が集中したのは,与えられた格付けよりも弱かったと感じられたからだ。
ついでに言えば,「Side-Aの二回戦ぬるすぎ」という批判もよく見た。これもぬるかったというより,劔谷・越谷女子の描写が宮守・永水女子に比べて圧倒的に少なかったことに起因する。正確には「ぬるかったかどうかすら判断がつかないし,描写が少ないならぬるかったと考えてしまうのは自然な判断」である。私自身,阿知賀の代わりに永水女子や宮守をつっこんだら二回戦の彼女らは勝ち上がってただろうと思う。逆に阿知賀と清澄を交換して,阿知賀が宮守・永水女子・姫松と戦ったら勝ち上がれたかというと,私はいけたんじゃないかと思う。姉帯さんがぼっちになりそう。
というようなことをtoppoiさんとMukkeさん相手に(かなりはしょって)話したところ,toppoiさんからは「アニメありきの企画だったから,ああいう話のペースになったのでは」という指摘をいただいた。Mukkeさんからは,あの場では直接何か指摘をいただいたわけではないものの,彼の記事「完璧なスピンオフ作品としての阿知賀編――『咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A』はなぜ素晴らしいのか」には「そのテクストの発表された順序や時期という,外部と内部の境界線にあるような事項を考えることは,阿知賀編の素晴らしさを考える上で必要不可欠なものであると信じる。」「阿知賀編はこの時期に発表されたことにこそ意味がある。(後略)」等,タイミングをあわせる努力をしていた可能性があることは記事のほうで指摘していた(※)。
さてこの点私は,であれば企画の根本そのものに阿知賀編の世評を割るだけの原因があったと言わざるをえない。スピンオフとして見なければ,アニメのほうで盛り上げるという意図が無いのであれば,要するに作品単体の完成度だけで考えるのなら,阿知賀編は短期決戦の単行本6巻で終わらせていいコンテンツではなかった。せっかく魅力的なキャラ・能力・ストーリーを配置したのだから,もう2倍くらいの時間をかけてじっくり熟成して展開すべきコンテンツではなかったか。ついでに言うと,結局アニメは12話で収まらず,16話まで作ったのだから,アニメ化前提の作品としても失敗していると思う,と書いて本記事を締めたい。
(※ と同時にその記事中には「序盤が駆け足すぎて魅力的に感じられないなどの様々な欠点を抱えてはいるが」とあって,同じ問題意識を持っていたことは直接話したときにも判明したのではあるが。また,「スピンオフとして」見るなら私は彼の記事に完璧に同意であって,記事内容を否定する意図は全くない。特に,二回戦決勝後の魔王咲さんの風潮にぶつけるなら。あくまであのタイミングしかなかったと思う。この記事の論調はあくまでスピンオフとして見ず,かつ世評が割れた理由に焦点を当ててここまで書いてきたつもりだが,いかがであっただろうか。末筆ではあるが,相談にのってくれたお二人に感謝を。あれがなければこの記事は完成しませんでした。)
そこでいろいろな工夫が持ち込まれる。まずよくあるのは猛烈な努力の描写や特殊な人生経験で,その結果として人を逸脱したというのは比較的作りやすい説得力だ。『咲-Saki-』ならまんま原村和が当てはまる。が,この設定は乱発できないし,そもそも人外になるような領域でなければ,死に物狂いの練習はその競技で全国大会に出てくるような面々なら大体しているわけで,増やせば増やすほど説得力が無くなる。現に『咲-Saki-』では和以外にはほぼ見当たらない。しいて言えばまこがこれに近いが,同じ主人公チームである。人生経験という点では部長が挙がる。これは明示してもよいし,匂わせるだけ匂わせてあえて伏せてもよい。伏せることで強く見せるという手法は,とりわけ麻雀漫画では多いように思う。人生経験に関連するが,血筋を持ってくるというのもある。「○○の息子という特別な系譜だから能力を持ってる」は使い勝手がよい。『咲-Saki-』では永水女子の面々のほか,宮永姉妹がこれにあたる。宮永一族は何かあるっぽいことは匂わされている。これも匂わせるだけ匂わせて伏せていることで,さらに説得力を強くしている。
3つ目に,その作品独自の論理を持ち込んで,それに関連付けること。たとえばリザベーションは作中最大の”力”を持った能力と言ってよい。これは『咲-Saki-』という作品が,
まだある。4つ目が伝奇要素を持ってくる。神々や妖怪の力を持っているから強い”力”を持つというのは若干猫だまし的手法ではあるものの,とりわけ能力の存在が前提となっている世界観では極めて強い説得力を持つ。特に日本神話を持ってきたときの効果は高い。言うまでもなく『咲-Saki-』はバリバリの伝奇物だ……と言いたいところだが,実際のところ表立って作中でそう描かれているわけではない。天照大神も蔵王権現も道祖神も,明確に描かれたことはなく,全ては咲ファンによる推測なのだ。この辺は『咲-Saki-』が伝奇系能力バトルであることよりも麻雀漫画であることを優先した最後の一線としてこうなっているのではないかと思うし,それは全く正しいことだ。東方も型月作品も大好きで,『咲-Saki-』の伝奇的展開も歓迎している私だが,『咲-Saki-』はあくまで麻雀漫画であり百合漫画であることを優先してほしい。その意味では,リザベーションが蔵王権現(穏乃)に勝ったのは本作のあり方として正しい。
5つめが作中の戦績による格付けだ。「過去に大会○連覇」や「全国ランキング○位」というやつである。本作ではシードの4校や姫松,長野県では風越がその恩恵に預かっている。もちろん和のインターミドル覇者もこの類だ。実はこの点において重要な役割を担わされていたのが龍門渕高校になる。龍門渕に対する格付けは多い。昨年度の長野代表校であり,ベスト8まで進出し,惜しくも3位敗退したというところまで判明している。かつ,今年度においても長野県で僅差の2位だ。これに天江衣本人は得点記録保持者,そして伝奇的な恩恵も受けているため,抜群の説得力も持っている。
この龍門渕を基準にすると,清澄の全国での戦い振りに説得力が増す。その龍門渕に勝っているのだから少なくともベスト8までは行けると考えるのが妥当である。無論のことながら「昨年よりも今年のほうが全体のレベルが高いかもしれない」という反論はありうるので,”当然”ではなく”妥当”としたが,その反論自体仮定の領域は出ないように思う。さらに言えば龍門渕の面々自体も1年生だった昨年より2年生になった今年のほうが強くなっているだろうから,さらに上までいけてもおかしくないという推測すら立つ。事実,1回戦は中堅で飛ばして終了,2回戦もほとんど横綱相撲であった。部長の不調が無ければ圧勝ペースに近い。咲さんも精神の乱れから靴下脱ぎ忘れるなど本調子ではなかったが,見事な魔王ぶりを発揮して勝ち抜いた。先鋒から大将まで通して,実に安心感のある戦いぶりだったと思う。
一方,阿知賀編とのハブになるのもまた龍門渕である。阿知賀の面々は全国大会直前,各県の2位と総当たりで修行の旅に出ていたが,その際「龍門渕以外の」各県2位には全て勝っていた。この点,全国ベスト8クラスなのに県では2位という龍門渕のいる長野が魔境すぎるのだが,逆に言えばこの時点で相当力をつけていることはわかる。特に荒川憩のいる三箇牧に勝ったという点は説得力として大きい。北大阪自体が激戦区である上に千里山は全国2位で「関西最強」。そこに負けた三箇牧も相当の強豪という推測は立つ上に,荒川憩本人も個人戦2位とこれまた格付けの多い学校だ。大概の県の代表校はおそらく三箇牧に勝てまい。
最後に工夫でも何でもないが,説得力という点で何より強いのは「作中での丁寧な描写」である。そのキャラが/能力が/チームがいかに強いかを見せるためには,実際にそれが活躍するところを丁寧に,誰が読んでもわかるように描写することだ。この点,一番丁寧に描写されているのは宮永咲本人であろう。あれほど嶺上開花が使える”技”だったとは,と驚かされた人は多いだろう,というか読者全員じゃないか。つい最近では,本編準決勝先鋒のタコスの描写は,彼女の判断力が格段に向上していることを見せたという点で優れていた。
というようなことを踏まえていくと,阿知賀編は出発から準決勝開始に至るまでの描写が極端に短かったのが全ての要素における説得力を減じさせてしまったのではないか,というのが私の感想である。上記のように,清澄高校はタコス以外おおよそ何かしらの説得力を背負っており,格付けの点からも龍門渕を倒した時点で十分すぎるほどの物を得ている。本編の闘牌描写の濃さは(なぜか飛ばされる染谷まこを除けば)折り紙つきだ。あとは決勝まで突っ走るだけである。
一方,阿知賀は駆け足で描写していったせいで,いろいろものが「気づく人は気づくし深読みする」程度で話が進んでいってしまった。まず1.「猛烈な努力の経験」だが,あるにはあるが麻雀をやっていなかった期間が長すぎる面々が多く,むしろ読者から努力不足をなじられる始末であった。2.特殊な人生経験では玄と穏乃が挙がるが,玄は唯一効いたキャラであろう。一方,穏乃は種明かしが明らかに遅すぎた。そもそも当初は無能力者と見られていたこともあり,山歩きと関連付けて能力を予想する風潮自体があまり無かった。単行本1巻の展開がトップスピード過ぎて,野生児の印象はあれども山とはっきり結びつくだけのイメージは(少なくとも私には全く)無かった。特殊な血筋があるメンバーもいない。いや,松実姉妹は特殊ではあるのだろうが,かと言って母親が何か能力持ちということは明示されいない。新子姉もインターハイ出場経験者ではあるが,これも新子望が強かったという描写が特別あったわけでもない。
3.
4.伝奇要素も唯一背負っていたのは穏乃一人だが,準決勝が伝奇要素の初出では遅すぎたというのは指摘済である。2回戦までに少なくとも無能力者ではないことを示しておくべきだっただろう。穏乃の成長曲線が一番やり玉に挙げられているように思われる。確かに二回戦アレで準決勝白糸台とぶつかってどうすんの,というのは当時私自身感じていたところだが,蓋を開けてみれば能力的な相性が大星淡とあまりにも良かったし,残りの3人が穏乃不在で殴りあってくれたおかげという点もある(これは麻雀が4人競技である点を活かした良い解決方法)。ただ,あの展開にするのであれば,2回戦であらかじめ片鱗を見せておく必要はあった。
5.龍門渕のハブとしての効果も,あまり機能していたとは言いがたい。私はこの点に言及した記事をこれまでにほとんど読んだことがない。三箇牧も以下同文。
というわけで,ほとんどの説得力をつける作業において失敗しているか,言及が遅すぎて効果が薄かったのではないかと思う。であればあとは最後に挙げた,闘牌自体の描写を密にして説得力を直接的に出す手法であるが,言うまでもなくこの点も弱い。準決勝は濃く丁寧だったと言っていいが,だからこそ問題なのだ。むしろ準決勝でいきなり濃くなったからこそ「成長曲線がおかしい」と不自然さを批判されてしまう結果となった。阿知賀編はその物語構造全体において,全てを準決勝に重きを置きすぎていた。
2回戦の得点推移についても一言ある。先鋒でついた差が83800点,最終結果の差が92300点だが,最後の自殺ダマッパネ放銃が無ければむしろ差は縮んでいることに気づく。千里山と阿知賀の戦力差は先鋒にしかほとんどないのはおおよそ示されていたが,この点強調されずに話が進んでいった。むしろ作中で赤土さんが「9万点差がついた」と煽る始末である。一方,準決勝ではその先鋒二人が照に止められて似たような結果になり,差がつかなかった。さらに泉の失点が最後まで響いた結果,中堅〜大将区間の両校の得点に差が無かったにもかかわらず,阿知賀が勝って2位抜けとなった。要するに阿知賀の玄と千里山の泉は同じような役割をさせられたわけだ。ついでに言えば白糸台の亦野も全く同じである。本人はそれほど弱いわけではないのに,相性の問題(と展開の都合)で失点源の役割が回ってきた。泉はともかく,亦野に批判が集中したのは,与えられた格付けよりも弱かったと感じられたからだ。
ついでに言えば,「Side-Aの二回戦ぬるすぎ」という批判もよく見た。これもぬるかったというより,劔谷・越谷女子の描写が宮守・永水女子に比べて圧倒的に少なかったことに起因する。正確には「ぬるかったかどうかすら判断がつかないし,描写が少ないならぬるかったと考えてしまうのは自然な判断」である。私自身,阿知賀の代わりに永水女子や宮守をつっこんだら二回戦の彼女らは勝ち上がってただろうと思う。逆に阿知賀と清澄を交換して,阿知賀が宮守・永水女子・姫松と戦ったら勝ち上がれたかというと,私はいけたんじゃないかと思う。姉帯さんがぼっちになりそう。
というようなことをtoppoiさんとMukkeさん相手に(かなりはしょって)話したところ,toppoiさんからは「アニメありきの企画だったから,ああいう話のペースになったのでは」という指摘をいただいた。Mukkeさんからは,あの場では直接何か指摘をいただいたわけではないものの,彼の記事「完璧なスピンオフ作品としての阿知賀編――『咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A』はなぜ素晴らしいのか」には「そのテクストの発表された順序や時期という,外部と内部の境界線にあるような事項を考えることは,阿知賀編の素晴らしさを考える上で必要不可欠なものであると信じる。」「阿知賀編はこの時期に発表されたことにこそ意味がある。(後略)」等,タイミングをあわせる努力をしていた可能性があることは記事のほうで指摘していた(※)。
さてこの点私は,であれば企画の根本そのものに阿知賀編の世評を割るだけの原因があったと言わざるをえない。スピンオフとして見なければ,アニメのほうで盛り上げるという意図が無いのであれば,要するに作品単体の完成度だけで考えるのなら,阿知賀編は短期決戦の単行本6巻で終わらせていいコンテンツではなかった。せっかく魅力的なキャラ・能力・ストーリーを配置したのだから,もう2倍くらいの時間をかけてじっくり熟成して展開すべきコンテンツではなかったか。ついでに言うと,結局アニメは12話で収まらず,16話まで作ったのだから,アニメ化前提の作品としても失敗していると思う,と書いて本記事を締めたい。
(※ と同時にその記事中には「序盤が駆け足すぎて魅力的に感じられないなどの様々な欠点を抱えてはいるが」とあって,同じ問題意識を持っていたことは直接話したときにも判明したのではあるが。また,「スピンオフとして」見るなら私は彼の記事に完璧に同意であって,記事内容を否定する意図は全くない。特に,二回戦決勝後の魔王咲さんの風潮にぶつけるなら。あくまであのタイミングしかなかったと思う。この記事の論調はあくまでスピンオフとして見ず,かつ世評が割れた理由に焦点を当ててここまで書いてきたつもりだが,いかがであっただろうか。末筆ではあるが,相談にのってくれたお二人に感謝を。あれがなければこの記事は完成しませんでした。)
Posted by dg_law at 10:00│Comments(11)
この記事へのトラックバック
※珍しく批判寄りの論調なので注意されたし。
新道寺女子の鶴田姫子と白水哩によるコンビ技、リザベーションの強さに納得がいかない。『咲-Saki-』のサイドストーリーである『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』の評価は公明正大に世論を眺めれば賛否あり、かく言う
咲-Saki-能力バトル講座 第5回 リザベーションの強さに納得がいかない【とっぽい。】at 2014年06月29日 12:23
この記事へのコメント
記事の内容とはあまり関係がないかもしれませんが質問させてください。
阿知賀女子を一位通過させる必要性はあったのでしょうか?
個人的に白糸台には決勝まで無敗でいてほしかったので。
阿知賀編は大好きですが、白糸台、ひいては魔物である淡の格を下げに下げまくったのはいただけません・・・
阿知賀女子を一位通過させる必要性はあったのでしょうか?
個人的に白糸台には決勝まで無敗でいてほしかったので。
阿知賀編は大好きですが、白糸台、ひいては魔物である淡の格を下げに下げまくったのはいただけません・・・
Posted by fool at 2013年09月05日 15:00
foolさん>
>阿知賀編は大好きですが、白糸台、ひいては魔物である淡の格を下げに下げまくったのはいただけません・・・
それは逆というか,あそこで魔物である淡を打ち破ったからこそ,穏乃が脅威としてより強く演出されるわけであって,むしろあそこで淡の格を下げることにこそ意味があったのでは。
http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20130827/1377620052←で書きましたが,要するに阿知賀編とは咲の前に立ちはだかるラスボスとしての穏乃を盛り上げる物語なわけであって,淡は本編で言うなら衣的役回りになるわけですよ(いやまあ,衣は能力の隙を突かれて倒されたのであって能力で競り負けたわけではないですから,そういう意味では衣よりも格が落ちてしまっている感は否めないのですが)。物語における必要性という点で議論をするならばむしろ阿知賀の1位抜けは必然と言うほかないです(「物語における必要性」以外の論点からならまた別の結果が出て来るでしょうが)。リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
>阿知賀編は大好きですが、白糸台、ひいては魔物である淡の格を下げに下げまくったのはいただけません・・・
それは逆というか,あそこで魔物である淡を打ち破ったからこそ,穏乃が脅威としてより強く演出されるわけであって,むしろあそこで淡の格を下げることにこそ意味があったのでは。
http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20130827/1377620052←で書きましたが,要するに阿知賀編とは咲の前に立ちはだかるラスボスとしての穏乃を盛り上げる物語なわけであって,淡は本編で言うなら衣的役回りになるわけですよ(いやまあ,衣は能力の隙を突かれて倒されたのであって能力で競り負けたわけではないですから,そういう意味では衣よりも格が落ちてしまっている感は否めないのですが)。物語における必要性という点で議論をするならばむしろ阿知賀の1位抜けは必然と言うほかないです(「物語における必要性」以外の論点からならまた別の結果が出て来るでしょうが)。リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
Posted by mukke at 2013年09月05日 20:08
mukkeさん>
つまり、咲に立ちふさがる脅威として穏乃を強く認識させるために、阿知賀を一位抜けさせたということでよろしいのでしょうか。ですが一位抜けさせなくても読者のほうに穏乃の強さは十分伝わってきましたし、作品全体に矛盾を生じさせてまでそうさせる必要性はないと思います。
>リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います。
ちなみに私は阿知賀編では穏乃が一番好きです。
つまり、咲に立ちふさがる脅威として穏乃を強く認識させるために、阿知賀を一位抜けさせたということでよろしいのでしょうか。ですが一位抜けさせなくても読者のほうに穏乃の強さは十分伝わってきましたし、作品全体に矛盾を生じさせてまでそうさせる必要性はないと思います。
>リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います。
ちなみに私は阿知賀編では穏乃が一番好きです。
Posted by fool at 2013年09月05日 21:34
foolさん>
>作品全体に矛盾を生じさせてまで
矛盾? 何処に矛盾がありますか?
DG-Lawさんも書かれていますが,こういうバトルものにおいて「格付け」というのは大きな意味を持ちます。阿知賀の強敵としての強さを演出するために「『あの』白糸台に競り勝って1位通過した」という格付けが与えられることは別段矛盾ではありません。
>阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います
それはさすがに「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念に引きずられすぎな意見だと思います。もちろん,阿知賀の「勝たせ方」に問題があったというのはその通りですしわたしもDG-Lawさんもそういう話をしているわけですが,最終的に阿知賀が勝利することをもって批判の理由とするのは筋が悪い議論であるように思います。
>穏乃
僕も穏乃は大好きですし最近は穏乃が可愛すぎて生きていくのがつらいし僕が望さんと結婚して憧が穏乃と結婚すれば穏乃は義妹になるわけで堂々と可愛がる口実ができるなどと供述しており
>作品全体に矛盾を生じさせてまで
矛盾? 何処に矛盾がありますか?
DG-Lawさんも書かれていますが,こういうバトルものにおいて「格付け」というのは大きな意味を持ちます。阿知賀の強敵としての強さを演出するために「『あの』白糸台に競り勝って1位通過した」という格付けが与えられることは別段矛盾ではありません。
>阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います
それはさすがに「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念に引きずられすぎな意見だと思います。もちろん,阿知賀の「勝たせ方」に問題があったというのはその通りですしわたしもDG-Lawさんもそういう話をしているわけですが,最終的に阿知賀が勝利することをもって批判の理由とするのは筋が悪い議論であるように思います。
>穏乃
僕も穏乃は大好きですし最近は穏乃が可愛すぎて生きていくのがつらいし僕が望さんと結婚して憧が穏乃と結婚すれば穏乃は義妹になるわけで堂々と可愛がる口実ができるなどと供述しており
Posted by mukke at 2013年09月05日 22:12
すいません、矛盾と言うと語弊がありますね。歪み・・・とでも言いますか。
阿知賀を一位抜けさせたことで生じた歪み(白糸台の次鋒以降が全員マイナス、特に亦野さんの−59400と淡の区間収支が最下位であること)が私は不満に思っているわけです。
阿知賀の格付けが矛盾する、とは思っていません。
>それはさすがに「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念に引きずられすぎな意見だと思います。
本編の初期から白糸台は咲の目標、到達点のように描かれていたので、決勝で清澄と当たる前に阿知賀に土をつけられたことが個人的に許せなかった。それだけです。感情論ばかりで申し訳ありません。
>堂々と可愛がる口実ができるなどと供述しており
穏乃の前向きで元気いっぱいな姿は見ていて気持ちがいいですね。アコチャーには悪いですが、穏乃は私が頂いていきます。
阿知賀を一位抜けさせたことで生じた歪み(白糸台の次鋒以降が全員マイナス、特に亦野さんの−59400と淡の区間収支が最下位であること)が私は不満に思っているわけです。
阿知賀の格付けが矛盾する、とは思っていません。
>それはさすがに「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念に引きずられすぎな意見だと思います。
本編の初期から白糸台は咲の目標、到達点のように描かれていたので、決勝で清澄と当たる前に阿知賀に土をつけられたことが個人的に許せなかった。それだけです。感情論ばかりで申し訳ありません。
>堂々と可愛がる口実ができるなどと供述しており
穏乃の前向きで元気いっぱいな姿は見ていて気持ちがいいですね。アコチャーには悪いですが、穏乃は私が頂いていきます。
Posted by fool at 2013年09月05日 22:50
全部Mukkeさんが言ってくれているのでほとんど付け加えることがないのですが,その上であえてfoolさんの意見からピックアップするならば,
>阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います
>阿知賀を一位抜けさせたことで生じた歪み(白糸台の次鋒以降が全員マイナス、特に亦野さんの−59400と淡の区間収支が最下位であること)が私は不満に思っているわけです。
>阿知賀の格付けが矛盾する、とは思っていません。
あたりがポイントとしては大きいのかなと思います。
事実”「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念”はかなり広汎に根強く見られました。決してfoolさんだけの意見ではない。
私自身,白糸台1位抜けを予想してましたし,本編・阿知賀編双方でそう思わせられるだけの種は播いていたと思います。まあぶっちゃけ割りとfoolさんの気持ちはわかるつもりです。
ただ,記事中にもMukkeさんのコメントにもあるように「勝たせ方の問題だった」としたほうが建設的ではないかと。阿知賀が勝っていいだけの説得力を持ってくるのが困難だった。ではどうやって持ってくれば万人が納得したか?
結局,やっぱり阿知賀編に課せられた縛りが強すぎ,かつそれを解決するだけの時間も与えられなかったのではないか,という記事の結論にたどり着くと思います。条件としては『Fate/Zero』に近いかも。あっちも条件を完璧にクリアしたわけではなく,「本編と食い違いがある」「虚淵色が強すぎる」等の批判がありました(ここではその是非を問いません)。基本的にはどちらも高く評価する意見のほうが多い点も似てますね。(その点東方儚月抄はry)
>阿知賀を一位抜けさせようとしたことが、阿知賀編に対する批判の根源だと思います
>阿知賀を一位抜けさせたことで生じた歪み(白糸台の次鋒以降が全員マイナス、特に亦野さんの−59400と淡の区間収支が最下位であること)が私は不満に思っているわけです。
>阿知賀の格付けが矛盾する、とは思っていません。
あたりがポイントとしては大きいのかなと思います。
事実”「白糸台は決勝まで無敗であるべきだ」という信念”はかなり広汎に根強く見られました。決してfoolさんだけの意見ではない。
私自身,白糸台1位抜けを予想してましたし,本編・阿知賀編双方でそう思わせられるだけの種は播いていたと思います。まあぶっちゃけ割りとfoolさんの気持ちはわかるつもりです。
ただ,記事中にもMukkeさんのコメントにもあるように「勝たせ方の問題だった」としたほうが建設的ではないかと。阿知賀が勝っていいだけの説得力を持ってくるのが困難だった。ではどうやって持ってくれば万人が納得したか?
結局,やっぱり阿知賀編に課せられた縛りが強すぎ,かつそれを解決するだけの時間も与えられなかったのではないか,という記事の結論にたどり着くと思います。条件としては『Fate/Zero』に近いかも。あっちも条件を完璧にクリアしたわけではなく,「本編と食い違いがある」「虚淵色が強すぎる」等の批判がありました(ここではその是非を問いません)。基本的にはどちらも高く評価する意見のほうが多い点も似てますね。(その点東方儚月抄はry)
Posted by DG-Law at 2013年09月06日 00:51
「阿知賀を1位抜けさせつつ」「白糸台の格を落としすぎることなく」「照を最強として描きつつ」「漫画連載期間は短く」というのは土台無理のある相談で。
Mukkeさんの言葉を借りれば
>リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
と,亦野さんに抱え込ませた結果が,白糸台の(not淡個人の)格の暴落なのかなと。中堅終了時点では,白糸台はそこまで叩かれてませんでしたし。
>ちなみに私は阿知賀編では穏乃が一番好きです。
私はたかみーです(聞かれてない)
Mukkeさんの言葉を借りれば
>リッツが抱え込んだ「咲を超える魔物である照の強さを演出する」と「阿知賀を1位抜けさせる」という2つの必然性のあいだの矛盾を一身に背負わされたのが亦野さんなのだと思います。
と,亦野さんに抱え込ませた結果が,白糸台の(not淡個人の)格の暴落なのかなと。中堅終了時点では,白糸台はそこまで叩かれてませんでしたし。
>ちなみに私は阿知賀編では穏乃が一番好きです。
私はたかみーです(聞かれてない)
Posted by DG-Law at 2013年09月06日 00:51
>結局,やっぱり阿知賀編に課せられた縛りが強すぎ,かつそれを解決するだけの時間も与えられなかったのではないか,という記事の結論にたどり着くと思います。
私も同意見です。ですが、それでも阿知賀編は素晴らしかった。
Mukkeaさん、DG-Lawさん、私の質問に真摯に回答していただき、誠にありがとうございます。
余談ですが、咲キャラソートを先ほどやったら照が一位でした。
私も同意見です。ですが、それでも阿知賀編は素晴らしかった。
Mukkeaさん、DG-Lawさん、私の質問に真摯に回答していただき、誠にありがとうございます。
余談ですが、咲キャラソートを先ほどやったら照が一位でした。
Posted by fool at 2013年09月06日 01:28
はじめまして。
一時…というか今でも時折議論される阿知賀についての考察、大変興味深く拝見させて頂きました。
自分個人としては阿知賀の強さの説得力についてそこまで不自然さは感じなかったのですが、そう感じた方はやはり多いんですね。
本文にありました「阿知賀はブランクが長い面々が多すぎる」という部分ですが、実はそれほど長いブランクを抱えていたのは灼だけで、その次に長いと思われる穏乃も約2年半程度。単純な期間ならおそらく咲の方が余程長いですし、また「猛特訓はどこもやっている事」を前提に置くのであれば、部としての動きだしは阿知賀の方がかなり早い点も大事なポイントかな、と思います。
それと穏乃の力の種明かしのタイミングについてですが、これもあくまで阿知賀編が本編に繋がるスピンオフである事や、穏乃が決勝で咲を待ち受けるライバルの一人になると考えれば、衣の「例の振り」も含めてこれ以上ないタイミングだったように思えます。
ただここは穏乃を主人公として見るか、後のライバル候補として見るかで印象が変わりそうだと思うのですがどうでしょう?
なんだか上手く纏まりませんでしたが、とりあえず自分も阿知賀が大好きなので感じた事を書かせて頂きました^^;
長文・乱文で大変失礼しました
一時…というか今でも時折議論される阿知賀についての考察、大変興味深く拝見させて頂きました。
自分個人としては阿知賀の強さの説得力についてそこまで不自然さは感じなかったのですが、そう感じた方はやはり多いんですね。
本文にありました「阿知賀はブランクが長い面々が多すぎる」という部分ですが、実はそれほど長いブランクを抱えていたのは灼だけで、その次に長いと思われる穏乃も約2年半程度。単純な期間ならおそらく咲の方が余程長いですし、また「猛特訓はどこもやっている事」を前提に置くのであれば、部としての動きだしは阿知賀の方がかなり早い点も大事なポイントかな、と思います。
それと穏乃の力の種明かしのタイミングについてですが、これもあくまで阿知賀編が本編に繋がるスピンオフである事や、穏乃が決勝で咲を待ち受けるライバルの一人になると考えれば、衣の「例の振り」も含めてこれ以上ないタイミングだったように思えます。
ただここは穏乃を主人公として見るか、後のライバル候補として見るかで印象が変わりそうだと思うのですがどうでしょう?
なんだか上手く纏まりませんでしたが、とりあえず自分も阿知賀が大好きなので感じた事を書かせて頂きました^^;
長文・乱文で大変失礼しました
Posted by 通りすがり at 2015年05月11日 18:06
コメントはこちらで一つにまとめておきました。
この議論も,最近は落ち着きついていて,ほとんど見なくなってきた気がしますね。『シノハユ』の連載が始まったのも大きいでしょうか。
>「阿知賀はブランクが長い面々が多すぎる」という部分ですが、〜〜
むしろそこで「宮永咲」ほどの特殊性・説得力を示すことができなかった,示したのが遅すぎたのが批判の原因,というのが論旨ですね。
言うまでもなく,咲本人はそんなブランクをものともしないほど特殊な存在ですし,咲以外の清澄の面々はブランクがないですので。
記事全体の論旨が,「阿知賀の1位抜けに対して批判が多いのはなぜか」であって,「なぜ阿知賀編はダメだったのか」ではないように,納得できる人には納得できる作りになっている作品なんですよね。
記事の冒頭で「この点,しっかり読めば阿知賀は急成長したわけではなくて最初からそれなりに強かった(潜在能力が高かった)のは描写されているのだが,描写が弱いとも言える。作者批判にも読者批判にも,どっちにも持って行けてしまう厄介なブツである。」と書いているのは,そういう意味ですね。
>穏乃の力の種明かしのタイミングについてですが〜〜
記事の最下部でつらつらと書いてますが,阿知賀を単体で捉えるか,あくまでスピンオフとして捉えるか。またアニメ化を前提とした企画だったことを考慮するか否かというのは,本作を評価する上で重要な分岐点ではあります。
また,それを両立させようとして全体を構成したのが,根本的な無理の原因だったのではないか,というのが本記事の結論ですね。穏乃の力は,おっしゃるとおり典型的な事例だったと思います。
この議論も,最近は落ち着きついていて,ほとんど見なくなってきた気がしますね。『シノハユ』の連載が始まったのも大きいでしょうか。
>「阿知賀はブランクが長い面々が多すぎる」という部分ですが、〜〜
むしろそこで「宮永咲」ほどの特殊性・説得力を示すことができなかった,示したのが遅すぎたのが批判の原因,というのが論旨ですね。
言うまでもなく,咲本人はそんなブランクをものともしないほど特殊な存在ですし,咲以外の清澄の面々はブランクがないですので。
記事全体の論旨が,「阿知賀の1位抜けに対して批判が多いのはなぜか」であって,「なぜ阿知賀編はダメだったのか」ではないように,納得できる人には納得できる作りになっている作品なんですよね。
記事の冒頭で「この点,しっかり読めば阿知賀は急成長したわけではなくて最初からそれなりに強かった(潜在能力が高かった)のは描写されているのだが,描写が弱いとも言える。作者批判にも読者批判にも,どっちにも持って行けてしまう厄介なブツである。」と書いているのは,そういう意味ですね。
>穏乃の力の種明かしのタイミングについてですが〜〜
記事の最下部でつらつらと書いてますが,阿知賀を単体で捉えるか,あくまでスピンオフとして捉えるか。またアニメ化を前提とした企画だったことを考慮するか否かというのは,本作を評価する上で重要な分岐点ではあります。
また,それを両立させようとして全体を構成したのが,根本的な無理の原因だったのではないか,というのが本記事の結論ですね。穏乃の力は,おっしゃるとおり典型的な事例だったと思います。
Posted by DG-Law at 2015年05月13日 14:33
ネタバレ注意って書けや
Posted by ななし at 2023年05月23日 21:17