2013年10月20日
清雅なる水墨画
根津美術館の日本中世水墨画展に行ってきた。中世の指す範囲が難しいところだが,本展の指すところでは室町までらしく,最新が狩野元信であった。一般的にも戦国時代か安土桃山時代くらいから近世と見なすことが多いから,適切なところであろう。
山水画を見に行ったので他のジャンルは割りとどうでも良かったのだが,実際山水画以外は数も少なかった。一応仏画と動物・植物画もあった。山水画は周文・芸阿弥・雪村・「拙宗」あたりが有名人でいたが,後はまずまずの知名度といった面々。ものの見事に禅僧だらけである。いかにこの時代の文化の中心が彼らであったのか,よくわかるところだ。室町幕府の文官的な役割を果たしたのもまた彼らであるから,まさに中国社会の士大夫のような役割であった。もっとも,中国史とは異なり,日本史は戦国時代に突入し,その政治的地位も文化的地位も,武士が担っていくようになる。その意味で,展覧会の締めが狩野正信・元信の親子というのはうまい締め方だと思った。
山水画の質は,総じて高かった。個人的なお気に入りは芸阿弥の「観瀑図」(今回の画像)。岩に押しつぶされそうな庵の前には,その巨大な岩から流れ落ちる滝。その滝に向かう居士という一般的な山水画の配置ではあるが,それぞれの質感も配置も実に良い。あの山水画の中に入って,庵に座って滝の裏側をじっくり眺めたくなる。そう思わせるのが山水画の究極目的であろうし,それを見事に果たしている作品といえるだろう。この観瀑図にしてもそうだが,改めて自分の院体画好きが自覚できた。やはり,構図も筆致もぴしっとしている方が好きなようである。狩野派が好きなのもこの辺りの理由が大きかろう。
所蔵品展示では,いつもの宝飾時計が展示してあった。この間根津美術館が宝飾時計を売却したというニュースがあったが,売却したのは中国宮廷の時計だそうなので,これらではない。展示されているのはイギリスの宝飾時計である。一方,売却したとされる中国宮廷の時計は,私は見たことがない。もう何度も根津美術館には行っているのだが,展示したことが過去にあったのだろうか。ほとんど無かったから売却したのだろうが。「改装費用の一部として使う」とのことだが,もう十分綺麗である。どこに使うのか,ちょっとわからない。
あとは根津美術館というと庭園だが,さすがに季節外れで,もう青々としていないし,かと言ってまだ全く紅葉していなかった。もう一ヶ月もすれば紅葉全盛期であろう。次の展覧会は井戸茶碗ということで,これは必ず行くと思うが,死ぬほど混んでいそうでどうしたものか。
ついでに書く欄がなく,1記事立てるほど書くこともなかったので,ここに山種美術館の速水御舟展もはしごしたことを書いておく。歩いたわけだが,美術館同士の距離がそれほどないのではしごしやすかった(そのまま渋谷まで歩いてツタヤに寄ってから帰った)。「炎舞」を見に行ったしそれ以上の感想はあまりないが,個人的には当たり外れの激しい画家だという認識になった。「炎舞」あたりは本当に好きなんだが,一方他の作品からは少々躍動感が欠けるようなところが感じられた。
山水画を見に行ったので他のジャンルは割りとどうでも良かったのだが,実際山水画以外は数も少なかった。一応仏画と動物・植物画もあった。山水画は周文・芸阿弥・雪村・「拙宗」あたりが有名人でいたが,後はまずまずの知名度といった面々。ものの見事に禅僧だらけである。いかにこの時代の文化の中心が彼らであったのか,よくわかるところだ。室町幕府の文官的な役割を果たしたのもまた彼らであるから,まさに中国社会の士大夫のような役割であった。もっとも,中国史とは異なり,日本史は戦国時代に突入し,その政治的地位も文化的地位も,武士が担っていくようになる。その意味で,展覧会の締めが狩野正信・元信の親子というのはうまい締め方だと思った。
山水画の質は,総じて高かった。個人的なお気に入りは芸阿弥の「観瀑図」(今回の画像)。岩に押しつぶされそうな庵の前には,その巨大な岩から流れ落ちる滝。その滝に向かう居士という一般的な山水画の配置ではあるが,それぞれの質感も配置も実に良い。あの山水画の中に入って,庵に座って滝の裏側をじっくり眺めたくなる。そう思わせるのが山水画の究極目的であろうし,それを見事に果たしている作品といえるだろう。この観瀑図にしてもそうだが,改めて自分の院体画好きが自覚できた。やはり,構図も筆致もぴしっとしている方が好きなようである。狩野派が好きなのもこの辺りの理由が大きかろう。
所蔵品展示では,いつもの宝飾時計が展示してあった。この間根津美術館が宝飾時計を売却したというニュースがあったが,売却したのは中国宮廷の時計だそうなので,これらではない。展示されているのはイギリスの宝飾時計である。一方,売却したとされる中国宮廷の時計は,私は見たことがない。もう何度も根津美術館には行っているのだが,展示したことが過去にあったのだろうか。ほとんど無かったから売却したのだろうが。「改装費用の一部として使う」とのことだが,もう十分綺麗である。どこに使うのか,ちょっとわからない。
あとは根津美術館というと庭園だが,さすがに季節外れで,もう青々としていないし,かと言ってまだ全く紅葉していなかった。もう一ヶ月もすれば紅葉全盛期であろう。次の展覧会は井戸茶碗ということで,これは必ず行くと思うが,死ぬほど混んでいそうでどうしたものか。
ついでに書く欄がなく,1記事立てるほど書くこともなかったので,ここに山種美術館の速水御舟展もはしごしたことを書いておく。歩いたわけだが,美術館同士の距離がそれほどないのではしごしやすかった(そのまま渋谷まで歩いてツタヤに寄ってから帰った)。「炎舞」を見に行ったしそれ以上の感想はあまりないが,個人的には当たり外れの激しい画家だという認識になった。「炎舞」あたりは本当に好きなんだが,一方他の作品からは少々躍動感が欠けるようなところが感じられた。
Posted by dg_law at 22:00│Comments(0)│