2013年10月23日

第228回『アニメキャラが行列を作る法律相談所』ronnor(QB被害者対策弁護団)著,総合科学出版

名作同人誌「これから『契約』の話をしよう」で,魔法少女まどか☆マギカの法律的解説をしてきたronnor氏率いるQB被害者対策弁護団が,他のアニメにまで範囲を広げて商業デビューした本。つまり,諸アニメにおける諸事件が,現実の法律ではどうなるのかという,空想科学読本的なお遊びである。

中身は非常にしっかりしており,文章もおもしろい。法律的な考察がしっかりしているのみならず,アニメネタも豊富である。前述の同人誌でわかっていたことではあるが,著者がにわかなオタクではなく,ガチガチのアニメオタクであることは文章から伝わってくる。というのも,こうした本にはありがちなことで,実は作者がそう対して秋葉原系の文化に染まってないことが往々にしてあるのだ。本書はそうした心配は無用である。ネットスラングが過多ということもなく,いい塩梅である。扱っているアニメは比較的メジャーどころが多く,『あの花』,『狼と香辛料』,『ハヤテのごとく!』,『CLANNAD』,『コクリコ坂から』,『魔法少女まどか☆マギカ』,『名探偵コナン』,『GOSICK』,『咲-Saki-』,『涼宮ハルヒの憂鬱』。元ネタのアニメを知っていないと辛いわけだから,メジャーどころから引っ張ってきたのは正解だろう。というよりも,その観点で考えると『GOSICK』,『あの花』あたりは限界スレスレの知名度な気がするが。

『咲-Saki-』については本ブログの読者的に気になる方も多いであろうから書いておくと,賭博罪についての考察である。ronnor氏のブログに元となった記事があるが,本書はこの記事に加筆修正されたものだ。基本的な骨子は全く変わっていないが,より詳しい解説が読みたかったら本書を読むといいだろう。他,大体アニメのタイトルから扱われている法律は類推がつくのだが,『コクリコ坂から』が家族法(民法),『CLANNAD』が遺産問題,『ハヤテのごとく!』が債権法,『狼と香辛料』が詐欺といった感じ。『狼と香辛料』は,がんばればこれだけで法律読解本が一冊書けそうだが,今回は一例のみである。特に現代日本の法律と,中世欧州(ハンザ都市辺り?)で結論が全然違うだろうし,ronnor氏の今後に期待したいところだ。

何が一番おもしろかったか,個人的な感想であげると『CLANNAD』。渚が死んだ後の遺産処理めんどくさすぎるでしょう……遺書は大事だわ。あと,『コクリコ坂から』のところで,「スウェーデンでは兄妹でも結婚できる」という事例が紹介されており,最近どっかで聞いたことあるような(リンク先エロゲ注意),と思いながらこの項目で爆笑していた。この事例,法律家界隈ではひょっとして有名なんですかね。妹,気になります。






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