2013年12月22日
WORLD END ECONOMiCA Episode.3 レビュー
Epi.2のレビューはこちら。Epi.3にて完結である。案外と致命的なネタバレ無しで書けそうだったので,ネタバレ無しで書いてみよう。
Epi.3を単体で見るならば,これは経済が政治に衝突する話である。政治が無力であった月面都市は,だからこそ壮大な実験都市でもあった。政治的しがらみの無い環境で,経済がどこまで羽を伸ばせるのか。そうして必要最低限の政治と,最大限の経済が都市にもたらすものは何か。この都市を格好の舞台として,政治と経済,国家と個人のかかわりに迫ったのがEpi.3と言える。もちろん,突然話が政治に移ったわけではない。ここはネタバレになるから書けないが,Epi.1・2,特に2での展開があったからこそ,うまいこと話が政治につながった。まさに,経済が徐々に歩み寄って,政治に衝突したのである。してみると,支倉凍砂が最初から書きたかったのはEpi.3で,1と2は舞台を整える作業に過ぎなかったのかもしれない。本作はEpi.1も2も刺激的なストーリーであったが,Epi.3はストーリーどころか,扱う題材自体が刺激的極まるものであった。
別に語られている政治思想が危険なのではない。ではなく,「政治の役割とは何か」というテーマに切り込んだこと自体が刺激的であったし,本作はこのテーマを投げっぱなすことなく一定の解答を出した。しかもそれは「経済を放任すれば恐慌が,格差が」という一般論ではない。人によっては受け入れがたい解答かもしれない。だからこそ,本作は名作と言ってよい。陳腐化が進み,ともすれば目を背けてしまいがちな昨今の現実の政治ではあるが,本作はそこで再び「政治とは何であったか」を問いなおしてくれたと言えよう。それも,極めて大胆にも,経済の方角から直球で。よく危険球退場にならなかったものだ,というか,だからこその同人という舞台なのだろう。この企画を通す勇気がある会社は,エロゲメーカーならありそうだが,その他の企業では無い気がする。
こうしたテーマ優先の作品はストーリーの側がおざなりになりがちだが,そこは支倉凍砂,経済の話ありの恋愛の話ありのでうまいこと話を引っ張った。この点,中だるみが起きたEpi.1よりも2や3はうまくなっていた。
一方,本作を三部作として見るならば,主人公の一代記にほかならない。彼は苦難の道のりを乗り越えて,夢と野望を捨てずに歩いていった。彼の努力と才覚が引き起こした大きな流れは,彼の活動領域を次第に広げていった。これは彼の扱う金額の大きさにもそのまま現れている。Epi.1では,せいぜい数百万から数千万の規模であった。それでも,一人のデイトレーダーが,そして周囲の数十人たちが人生を狂わせられるには十分な金額であったが。Epi.2は,取引が個人ではなく,企業体となった。結果として扱う金額は軽く億単位となり,企業間の抗争にも巻き込まれていく。そしてEpi.3では国家経済全体にかかわることで,数千億,数兆単位の資金が飛び交うことになる。段を追ってスケールが巨大化していく。各エピソード間には4年ずつ開きがあり,つまり作中で計8年の時間が流れているが,この時間的開きによって,突然数桁増えることの違和感を減らしている。終わってみるとうまい仕掛けであった。
なお,Epi.3を買うとEpi1・2は同梱されているので,今からやるのは十分にお勧めできる。ついでに言うと,次の冬コミで完結記念のファンブックを頒布するようなので,可能なら10日でクリアすると良い。全Epi.を通して経済学・金融知識を要求されるが,作中それぞれかなり丁寧に説明されるので,それほど心配はいらない。Epi.1-3までぶっ通しでやっても20時間はかからないと思う。
以下,ネタバレを少しだけ。
Epi.3を単体で見るならば,これは経済が政治に衝突する話である。政治が無力であった月面都市は,だからこそ壮大な実験都市でもあった。政治的しがらみの無い環境で,経済がどこまで羽を伸ばせるのか。そうして必要最低限の政治と,最大限の経済が都市にもたらすものは何か。この都市を格好の舞台として,政治と経済,国家と個人のかかわりに迫ったのがEpi.3と言える。もちろん,突然話が政治に移ったわけではない。ここはネタバレになるから書けないが,Epi.1・2,特に2での展開があったからこそ,うまいこと話が政治につながった。まさに,経済が徐々に歩み寄って,政治に衝突したのである。してみると,支倉凍砂が最初から書きたかったのはEpi.3で,1と2は舞台を整える作業に過ぎなかったのかもしれない。本作はEpi.1も2も刺激的なストーリーであったが,Epi.3はストーリーどころか,扱う題材自体が刺激的極まるものであった。
別に語られている政治思想が危険なのではない。ではなく,「政治の役割とは何か」というテーマに切り込んだこと自体が刺激的であったし,本作はこのテーマを投げっぱなすことなく一定の解答を出した。しかもそれは「経済を放任すれば恐慌が,格差が」という一般論ではない。人によっては受け入れがたい解答かもしれない。だからこそ,本作は名作と言ってよい。陳腐化が進み,ともすれば目を背けてしまいがちな昨今の現実の政治ではあるが,本作はそこで再び「政治とは何であったか」を問いなおしてくれたと言えよう。それも,極めて大胆にも,経済の方角から直球で。よく危険球退場にならなかったものだ,というか,だからこその同人という舞台なのだろう。この企画を通す勇気がある会社は,エロゲメーカーならありそうだが,その他の企業では無い気がする。
こうしたテーマ優先の作品はストーリーの側がおざなりになりがちだが,そこは支倉凍砂,経済の話ありの恋愛の話ありのでうまいこと話を引っ張った。この点,中だるみが起きたEpi.1よりも2や3はうまくなっていた。
一方,本作を三部作として見るならば,主人公の一代記にほかならない。彼は苦難の道のりを乗り越えて,夢と野望を捨てずに歩いていった。彼の努力と才覚が引き起こした大きな流れは,彼の活動領域を次第に広げていった。これは彼の扱う金額の大きさにもそのまま現れている。Epi.1では,せいぜい数百万から数千万の規模であった。それでも,一人のデイトレーダーが,そして周囲の数十人たちが人生を狂わせられるには十分な金額であったが。Epi.2は,取引が個人ではなく,企業体となった。結果として扱う金額は軽く億単位となり,企業間の抗争にも巻き込まれていく。そしてEpi.3では国家経済全体にかかわることで,数千億,数兆単位の資金が飛び交うことになる。段を追ってスケールが巨大化していく。各エピソード間には4年ずつ開きがあり,つまり作中で計8年の時間が流れているが,この時間的開きによって,突然数桁増えることの違和感を減らしている。終わってみるとうまい仕掛けであった。
なお,Epi.3を買うとEpi1・2は同梱されているので,今からやるのは十分にお勧めできる。ついでに言うと,次の冬コミで完結記念のファンブックを頒布するようなので,可能なら10日でクリアすると良い。全Epi.を通して経済学・金融知識を要求されるが,作中それぞれかなり丁寧に説明されるので,それほど心配はいらない。Epi.1-3までぶっ通しでやっても20時間はかからないと思う。
以下,ネタバレを少しだけ。
本作の出した結論は,「愛郷心がなければ政治は成り立たない」である。これが綺麗に成り立つのは本作が月面都市であるがゆえである。この都市は単純な開拓都市ではなく,月面都市なのだ。都市から一歩外に出れば,人類の生存できない不毛の大地が続く。ここ二十年ほどで急速に発展・拡大した街は,逆に言えば少し前まで存在していなかった。空気は人工的な調整により常に清く澄んでいる。見上げればすぐそこに大気のない宇宙がある。Epi.2では電力不足から寒冷化が起き,その透明感はさらに増した。活気はあるが生活感に乏しい。月面都市に存在する産業は,ほぼ金融のみであった。つまり,この近未来的な都市は,実態としてもイメージとしても,経済さえも幻想的極まりないのだ。よくもまあこれだけの砂上の楼閣を作ったものである。
大多数の都市民にとってここは単なる経済の実験都市であって,地球からの出稼ぎに来た場所に過ぎない。恐慌が起きれば案の定地球への帰還民が増えていく。一方で,それでも月面都市を捨てきれない生粋の都市民や,月面生まれで地球に故郷がない連中がいる。都市はそうした住民に支えられて続く。そこにあるものは,まさに「愛」としか表現しようがない。その感情に都市の存続を賭けてみよう,税金が取れるか試してみよう。この博打こそが政治なのだ,という本作の結論が,私は好きだ。もちろん,前述のようにこの結論が綺麗にあてはまるのは舞台が月面都市だから,という特殊性はある。しかし,現実世界でもこうした一面は確実に存在している,と私は思う。何のために政治は存在しているのかと問われた時,「愛着ある」この社会を維持・改善していくため,という答えは素朴ながらも忘れがちで,最も重要な理由ではないか。
本作がEpi.3終盤に至るまで,必要最低限未満の政府機構しか持っていなかったのは,誰しもがこの基本を忘れていたからに他ならず,読者のほとんどもこの都市の雰囲気に飲まれていた。だから,最後の最後にハルがバートンに滔々と語りだした内容に,誰しもが面食らったはずである。冷静に考えれば,上述の如く,非常に素朴なことしか言っていないのにもかかわらず。してやられた感が強い。とにもかくにも,本作は月面都市という舞台があまりにも美しく完璧であった。タイトルの通り,世界の果てのこの都市は,強い輝きを放っていた。
大多数の都市民にとってここは単なる経済の実験都市であって,地球からの出稼ぎに来た場所に過ぎない。恐慌が起きれば案の定地球への帰還民が増えていく。一方で,それでも月面都市を捨てきれない生粋の都市民や,月面生まれで地球に故郷がない連中がいる。都市はそうした住民に支えられて続く。そこにあるものは,まさに「愛」としか表現しようがない。その感情に都市の存続を賭けてみよう,税金が取れるか試してみよう。この博打こそが政治なのだ,という本作の結論が,私は好きだ。もちろん,前述のようにこの結論が綺麗にあてはまるのは舞台が月面都市だから,という特殊性はある。しかし,現実世界でもこうした一面は確実に存在している,と私は思う。何のために政治は存在しているのかと問われた時,「愛着ある」この社会を維持・改善していくため,という答えは素朴ながらも忘れがちで,最も重要な理由ではないか。
本作がEpi.3終盤に至るまで,必要最低限未満の政府機構しか持っていなかったのは,誰しもがこの基本を忘れていたからに他ならず,読者のほとんどもこの都市の雰囲気に飲まれていた。だから,最後の最後にハルがバートンに滔々と語りだした内容に,誰しもが面食らったはずである。冷静に考えれば,上述の如く,非常に素朴なことしか言っていないのにもかかわらず。してやられた感が強い。とにもかくにも,本作は月面都市という舞台があまりにも美しく完璧であった。タイトルの通り,世界の果てのこの都市は,強い輝きを放っていた。
Posted by dg_law at 10:20│Comments(2)│
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この記事へのコメント
WORLD END ECONOMiCA
貴殿のレビューを拝見させて頂きやってしまいました^^;
これは経済が政治に衝突する話であるに尽きるのですが、
人がどれだけ魅力に思っているかで税金が決まる。
ちょっと考えさせられました。
貴殿のレビューを拝見させて頂きやってしまいました^^;
これは経済が政治に衝突する話であるに尽きるのですが、
人がどれだけ魅力に思っているかで税金が決まる。
ちょっと考えさせられました。
Posted by さとし☆彡 at 2014年05月20日 05:20
おお,それはありがとうございます。
Epi.3は経済が政治に衝突する話だからこそ税金の話になるのは必然と言えば必然ですが,そういう話として税金を持ってくるか,というところで驚かされましたね。
そういうわけで,ネタバレ抜きの部分は「税金」のぜの字も出さずに書いていたりします。
Epi.3は経済が政治に衝突する話だからこそ税金の話になるのは必然と言えば必然ですが,そういう話として税金を持ってくるか,というところで驚かされましたね。
そういうわけで,ネタバレ抜きの部分は「税金」のぜの字も出さずに書いていたりします。
Posted by DG-Law at 2014年05月20日 07:14
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