2014年03月05日

2つでいつもの1つ分

曽我蕭白_蘭亭曲水図東博のクリーヴランド美術館展&人間国宝展に行ってきた。一週間以上前に会期が終わっていることからは目をそらしつつ。クリーヴランド美術館はオハイオ州,エリー湖の湖畔という抜群の立地にある美術館である。しかし,クリーヴランド展は正直に言って思ってたよりもすごくなかった。それなりに豪華ではあったし,もちろん初見のものばかりであったが,一方であの水準のものなら東博の常設展の方が豪華なのでは……というのがどうしても感情としてあって,企画展としては評価しづらい。個人的に仏画にほとんど興味がなく,最初の1/4ほどがだいたい全部仏画だったのも印象として悪影響だったのは否めない。

最後まで通して見て印象に残ったものを挙げると,河鍋暁斎の「地獄太夫図」はさすがにインパクトがあった。「福富草紙絵巻」はさすがに何度かバリエーションを見ているので,段々ストーリーを覚えてきた。ちゃんと通して読んだことはないのに,絵巻物のキャプションや図録の説明だけで多分ストーリー一本つながっているので,長年の美術館通いが思わぬところで成果を生んでいるのかもしれない。あとは伝海北友松の「松に椿・竹に朝顔図屛風」と,伝周文の「春冬山水図屏風」,曽我蕭白の「蘭亭曲水図」(今回の画像)の3つはとても良かった。特に曽我蕭白は,いつもの豪快な感じではなく,非常に落ち着いた山水画であった。卓越した技術があるからこそ暴走できるんだということを再確認させてくれた。あれらを見れたことで,この企画展は満足しておくべきかもしれない。ところで,いつもの東博なら「伝周文」と書くと思うのだが,今回は道号つきで「天章周文」という表記であった。クリーヴランド美術館側のこだわりなのだろうか。

人間国宝展は期待してなかった割には楽しめた,という感じ。現役の人間国宝たちも,過去の国宝たちに様々な手段で立ち向かっている。それは復元・再現であったり,技術やデザインの革新であったり。ただまあ,革新の難しさも同時に感じてしまう。ちょっと外れると途端に陳腐に,安っぽくなってしまったりするし,作られた直後は評価されていたとしても,それが2,30年経ってもまだ威厳を保っているかというと,そうでもなかったりする。しかし,過去の国宝たちはそうした時の洗礼を乗り越えて今でも威厳を保っているのだから,新しく作られた国宝候補にも耐えてもらわないといけないのである。これが難しい。

そういう意味では,デザインではなく技術,つまり過去には不可能だった現代の科学技術を用いた超絶技巧は陳腐化しにくくていい。しかし,これも意外と明治から昭和の前半までにやりつくている感はあり,なかなか「これは平成」というものにはなかなかお目にかかれない。そういうの期待してるので,現代の工芸家の方々にはがんばってほしいところである。

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