2014年04月02日
第230回『欲望の美術史』宮下規久朗著,光文社新書
宮下規久朗による美術史にまつわるエッセイ集。元は産経新聞に連載されていた記事で,それらを加筆修正し画像を追加したのが本書となる。タイトルの通り,下世話な観点から美術史の出来事や作品に焦点を当てたもの。カラヴァッジョを専門とし,過去に『食べる西洋美術史』・『刺青とヌードの美術史』などを執筆してきた宮下規久朗らしいエッセイ集であると言える。というよりも,本書でもカラヴァッジョは当然のこととして,大食の悪徳や刺青・ヌードにも触れており,実に自由な筆を振るっている。それだけに文章もノッていておもしろい。
その他のテーマや登場する題材としては,女性問題を取り上げてのカルロ・クリヴェッリやグイド・カニャッチ,ロセッティ,ピカソ等。ライバル意識からギベルティとブルネレスキ。写実志向からの生人形やトロンプ・ルイユ。鎮魂からのむかさり絵馬。権力者の肖像画としてスターリンや毛沢東など。信仰というテーマでさえも,出てきたのは黒い聖母とマリア観音だ。土佐の絵金や,時事ネタとしてヒメネスさんの修復キリスト像にも触れている。全体として普通の美術史では出てこない題材が多く,目新しさも強い。宮下規久朗を知っている人には「またあの先生はこんなものを」と読めるし,知らない人(というよりも美術史自体に親しみのない人)には親しみやすく,かつ珍妙な美術史紹介として読めるだろう。軽く読めるし,どちらにもお勧めできる本である。
本書はフルカラーである。これはすばらしい。やはり美術史を扱った本たるもの,可能な限りフルカラーであってほしい。特に本書はバロックのゴテゴテとした装飾や絵金を扱っているのだから,フルカラーでないと威力が激減である。その代わり,ものの1〜2時間ほどで読めてしまう180ページの新書なのにお値段920円という大変なことになっているが,フルカラーへの〈欲望〉には耐えかねるのである。
その他のテーマや登場する題材としては,女性問題を取り上げてのカルロ・クリヴェッリやグイド・カニャッチ,ロセッティ,ピカソ等。ライバル意識からギベルティとブルネレスキ。写実志向からの生人形やトロンプ・ルイユ。鎮魂からのむかさり絵馬。権力者の肖像画としてスターリンや毛沢東など。信仰というテーマでさえも,出てきたのは黒い聖母とマリア観音だ。土佐の絵金や,時事ネタとしてヒメネスさんの修復キリスト像にも触れている。全体として普通の美術史では出てこない題材が多く,目新しさも強い。宮下規久朗を知っている人には「またあの先生はこんなものを」と読めるし,知らない人(というよりも美術史自体に親しみのない人)には親しみやすく,かつ珍妙な美術史紹介として読めるだろう。軽く読めるし,どちらにもお勧めできる本である。
本書はフルカラーである。これはすばらしい。やはり美術史を扱った本たるもの,可能な限りフルカラーであってほしい。特に本書はバロックのゴテゴテとした装飾や絵金を扱っているのだから,フルカラーでないと威力が激減である。その代わり,ものの1〜2時間ほどで読めてしまう180ページの新書なのにお値段920円という大変なことになっているが,フルカラーへの〈欲望〉には耐えかねるのである。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)│