2014年04月07日
第231回『ガルパンの秘密〜美少女戦車アニメのファンはなぜ大洗に集うのか〜』廣済堂出版
廣済堂出版から発売されたガルパン関連書籍の第三弾。第一弾はガルパンのアニメに関する情報をまとめた『アルティメット・ガイド』,第二弾は聖地巡礼用の『トラベル・ガイド』であり,両方とも別記事にて触れている。両方ともB5サイズの大判だが,本書のみ新書サイズである。内容として,藤津亮太氏による深夜アニメの歴史事情とガルパン前史として『ストライクウィッチーズ』・『けいおん!』・『らき☆すた』を簡潔に説明する序章,石井誠氏による大洗のルポに続き,21人のガルパン関係者へのインタビューが収録されている。
前掲記事で書いたように前二書は随所に不満が見られる本で,『アルティメット・ガイド』は悪い意味で普通,『トラベル・ガイド』は旅行ガイドとしてちょっと雑であった。しかし,本書は読み応えのあるもので,インタビュー集として優れているのでお勧めできる。インタビューされている面々は,
・バンダイビジュアルプロデューサー:湯川淳,杉山潔
・アニメ会社アクタス社長:丸山俊平
・主要製作陣:吉田玲子(脚本),杉本功(総作画監督),柳野啓一郎(3D監督),カトキハジメ(絵コンテ,ただしOVAから),関根陽一(音楽P),渕上舞(みほ役),水島努(監督)
・大洗関係者:常盤良彦(クックファン・まいわい市場),大里明(肴屋本店),島根隆幸(大洗ホテル),樫村裕章(茨城県庁広報課),有國清光(大洗高校マーチングバンド部監督)
・その他:防衛省広報室&自衛隊茨城地本の方々,アマゾンジャパン,TSUTAYA
といった感じ。
それぞれおもしろいところはあったが,私的にピックアップして。p.17,ガルパンのスタートが,バンダイからアクタスへの「有名なクリエーターを誰か一人連れて来いで,それが島田フミカネだったということが明かされている。結果から言えばその他のスタッフも豪華なメンバーが集まったわけで,さながら曹操軍の幕僚状態だが,その最初が島田フミカネというのはやや意外である。人がそれだけ集まった企画の勝利とは言えるかなぁ。
p.39,杉山Pがまちおこし有りきだったわけではないという発言をしている。2012年のあんこう祭までは誰しもが半信半疑だったという話はよく聞くし,町側の動きが意外と遅かったのも確かだ。ただ,遅かったからこそ長持ちしている感も,巡礼者としてはある。この辺は常磐さんの「こそこそ作戦」が功を奏したと思う。最初から派手にやっていたら,あれだけ住民の理解を得るのは難しかったのではないか。杉山Pは「『アニメで町おこし』のモデルケースみたいに取り上げられるのですが,あれはちょっと違います」と言っているものの,結果的にはモデルケースになっているのではないか。初動は派手にやりすぎない,地元自体の良さで売る,明確な巡礼路を作ってあげる等々。
これに関連してp.121にはキャラパネルの設置が商店街に人を呼んだことが書かれている。一方,自分が巡礼に行った時に聞いた話でもあるが,「当初は54体のパネルが(設置希望店舗が少なく)余ってしまっていた」ということも書いてあった。あのパネルは斬新で良い試みだったが,斬新だからこそそういうことにもなったのだろう。p.153,大洗ホテルの島根氏も「(後発のまちおこしにアドバイスをするとしたら,)まず自分たちが楽しむこと」とある。だが,これは意外と実践が難しい。そもそも,そのアニメが本当におもしろくなかったら詰んでるわけでもあり。アニメ自体が抜群におもしろく,かつ町自体にも魅力があった大洗は本当に幸運な例だな,と改めて。
前掲記事で書いたように前二書は随所に不満が見られる本で,『アルティメット・ガイド』は悪い意味で普通,『トラベル・ガイド』は旅行ガイドとしてちょっと雑であった。しかし,本書は読み応えのあるもので,インタビュー集として優れているのでお勧めできる。インタビューされている面々は,
・バンダイビジュアルプロデューサー:湯川淳,杉山潔
・アニメ会社アクタス社長:丸山俊平
・主要製作陣:吉田玲子(脚本),杉本功(総作画監督),柳野啓一郎(3D監督),カトキハジメ(絵コンテ,ただしOVAから),関根陽一(音楽P),渕上舞(みほ役),水島努(監督)
・大洗関係者:常盤良彦(クックファン・まいわい市場),大里明(肴屋本店),島根隆幸(大洗ホテル),樫村裕章(茨城県庁広報課),有國清光(大洗高校マーチングバンド部監督)
・その他:防衛省広報室&自衛隊茨城地本の方々,アマゾンジャパン,TSUTAYA
といった感じ。
それぞれおもしろいところはあったが,私的にピックアップして。p.17,ガルパンのスタートが,バンダイからアクタスへの「有名なクリエーターを誰か一人連れて来いで,それが島田フミカネだったということが明かされている。結果から言えばその他のスタッフも豪華なメンバーが集まったわけで,さながら曹操軍の幕僚状態だが,その最初が島田フミカネというのはやや意外である。人がそれだけ集まった企画の勝利とは言えるかなぁ。
p.39,杉山Pがまちおこし有りきだったわけではないという発言をしている。2012年のあんこう祭までは誰しもが半信半疑だったという話はよく聞くし,町側の動きが意外と遅かったのも確かだ。ただ,遅かったからこそ長持ちしている感も,巡礼者としてはある。この辺は常磐さんの「こそこそ作戦」が功を奏したと思う。最初から派手にやっていたら,あれだけ住民の理解を得るのは難しかったのではないか。杉山Pは「『アニメで町おこし』のモデルケースみたいに取り上げられるのですが,あれはちょっと違います」と言っているものの,結果的にはモデルケースになっているのではないか。初動は派手にやりすぎない,地元自体の良さで売る,明確な巡礼路を作ってあげる等々。
これに関連してp.121にはキャラパネルの設置が商店街に人を呼んだことが書かれている。一方,自分が巡礼に行った時に聞いた話でもあるが,「当初は54体のパネルが(設置希望店舗が少なく)余ってしまっていた」ということも書いてあった。あのパネルは斬新で良い試みだったが,斬新だからこそそういうことにもなったのだろう。p.153,大洗ホテルの島根氏も「(後発のまちおこしにアドバイスをするとしたら,)まず自分たちが楽しむこと」とある。だが,これは意外と実践が難しい。そもそも,そのアニメが本当におもしろくなかったら詰んでるわけでもあり。アニメ自体が抜群におもしろく,かつ町自体にも魅力があった大洗は本当に幸運な例だな,と改めて。
Posted by dg_law at 21:24│Comments(0)│