2014年04月15日

2014冬アニメ感想(咲・中二病・桜trick・鬼灯)

全体としてネタバレ全開。今期は4つとも大当たりで,私的には大豊作のクールであった。

・咲 全国編:自分としては初めて最初から追うTVシリーズの『咲』となったが,とても楽しめた。後追いで見た無印・阿知賀編と比較して,一番見たいものを見せてくれたのが今回だったかなと思う。妖怪大戦の派手な演出も,原作で漏れた設定の描写もとても良かった。特に後者。エイスリンの能力の詳細がわかったことや,永水の控室の詳細が判明したのは嬉しかった。エイスリン強すぎやろ……負けたのはまさに「能力に打たされていたから」であって,経験を積めば末恐ろしい。
→ 伝奇要素を若干説明過剰だったところは賛否両論で,私はまあありかなと。アニメは映像がつくからそれに乗せる音声が必要で,組み合わせることで説得力が増す。これは『咲』における伝奇要素と相性が良い。漫画であれば「材料は撒いたので察してください」の方がかっこいいが,アニメは逆だということで。
→ 個人的に残念だったのは,末原さんのカタカタが無かったこと・咲さんのプラマイゼロに気づいたところでもショックが薄そうに見えたこと。これは痛い。実際,今回のアニメ化においては末原さんに悲壮感が足りず,「妖怪三人に叩きのめされた凡人」からの「凡人の意地を見せて2位」というインパクトも薄かったし,「実際にはその2位も怪物の手のひらの上だった」という絶望感も,非常に薄かった。この末原さんの感情の揺れ動きは2回戦のハイライトだと思うので,これは本当に残念である。
→ しかし末原さん,凡人凡人と自分では言っているが,実際には姫松の大将を任される程度には強いわけで,それだけの自負心もあったはずである。単純に,身近に愛宕姉とかセーラとか荒川ちゃんとかいるから,凡人と言い張っているだけで。しかも,2回戦の相手のうち1人は永水だが,あと2人は無名校。咲さんは「天江衣を倒した」情報が入ってたかもしれないが,姉帯さんは完全にノーマークだったはず。それが蓋を開けてみれば妖怪大戦争だったのだから,彼女の心情はあまりある。「半ばセルフハンディキャップのつもりで凡人と言ってたら,本当に凡人であると自覚させられてしまった」。しかし,実は末原さんも凡人ではなくて“自覚のない妖怪”なのだとしたら,見事に話がひっくり返っておもしろいし,咲さんの怯えも納得がいく。で,実際そうなのではないかと私は疑っている……というところで後日別記事に(書く書く詐欺になっているが)。


・中二病2期:この期に及んでライバル作ってぶつけてどうすんねん,どうせ盛大にふられるやろと思っていて,事実そうなったが,終わってみると七宮を出した理由はよくわかった。というか,2期まで終わってやっと本当に「中二病でも恋がしたい!」のタイトルが意味をなした。
→ 要するに,七宮は「恋をすると中二病を卒業してしまう」勢の代表なのだ。というよりも,普通はそうで,六花だけが例外だったということだろう。その六花さえも,卒業しかけてしまった。じゃあどうする。どうやって止揚する? というところで,アンチテーゼとして登場したのが七宮であった。見事な仕掛けである。ストーリーは表向き「13話かけて,七宮が壮大に振られる話」以上の何物でもない。その実は「六花が恋と中二病をアウフヘーベンする話」である。そうしてタイトルに回帰したのだ。
→ ところが,「両立できるなら私だって……!」となるのが人間の心理である。でも親友の六花との三角関係は避けたいというところで,結局恋を捨てる勢に戻っていくのが本作の七宮だ。そんな彼女も,初恋は実らなかったけど,またどっかで別の恋をするのでは。その時は両立に成功することだろう。
→ 六花や七宮とは逆パターンとして,モリサマーも良かった。中二病を卒業するにしても,完全否定は寂しすぎる。黒歴史はできれば肯定的に封印するのがいいのでは,というのがモリサマー編のメッセージだろう。その意味で,凸森だけ掘り下げられずに終わった感が。まあ彼女はもともと中二病と社会生活を両立させている器用な子なので,掘り下げる意味もあまりないのかも。3期に期待して。


・桜trick:今期の私的ダークホース。1・2話を見たところくらいまでは「なんだこのレズ物AVは」という感想だったが(※),2話が終わった辺りから楽しみ方がわかってきて,あとは最後まですんなり楽しめた。
→ これ,メインのカップルは単純な関係ではなくて,百合と括られる様々な要素を多く重ねて持っている。それこそレズ物AVから恋愛も含め,恋愛未満の百合まで含めて。監督が 「まだ恋愛まで行ってない段階の女の子たちが、スキンシップの延長線上でキスという行為自体にハマってしまった、みたいな感じなのかなと思っています。」と言っていて,当時それはないだろというブコメをつけたのだが,今になってみれば理解はできる。最終話の春香が「付き合う」ということの意味を理解してなかったという描写を見るまでもなく,春香と優は一面では成熟したカップルで,一面では未熟なカップルでもあった。それにしてもアニメの描写はやたらと性的だったので,上記のような第一印象になってしまったわけですが。
→ 作中一番印象に残ったセリフは,父親が「どこの誰とも知らん男なんかに、春香は絶対やらないぞ!!」と言った際の「女の子ならいいんだ」である。無論LGBT的・政治的にその発言は正しいわけだが……うん。違う,そこ(性別)じゃない。
※ 言うまでもないですが「レズ物AV」という表記はニュアンス上のわざとで,本来使わない言葉です。

・鬼灯の冷徹:実のところコメントすることがほとんどないのだが,随所のギャグがおもしろかった。難しい原作だと思っていたけど,見事にアニメ化を成功させたと思う。円盤も売れてるらしいし,原作の貯蔵はまだまだ豊富なので,割とすぐに2期が始まってもおかしくない。



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