2014年04月16日
ヴィクトリア朝美術展その2
三菱一号館美術館の唯美主義展に行ってきた。ヴィクトリア朝美術を扱った展覧会としては,今期2つめとなる(1つめはラファエル前派展)。今回の展覧会は平たく言えば,ラファエル前派を含めた1860〜1900年頃のイギリス美術全体の回顧であるが,その中でもウィリアム・モリスが主導したアーツ・アンド・クラフツ運動に代表される「美を日常に持ち込むこと」に観点を当てた展覧会である。必然的に工芸品が展示品に多く,工芸品と絵画作品の数的・質的なバランスは良かったと言える。もう一つ言えば,「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)、オルセー美術館(パリ)、リージョン・オブ・オナー美術館(サンフランシスコ)で開催され、各国で高い評価を得た「カルト・オブ・ビューティー」展を、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の企画協力により再構成したもの。」と展覧会HPにあるように,本展は国際巡回展であった。この点から言っても質は保証される。
当然,ラファエル前派はよく出てくる。近場だから借りてきたのだろう,西美所蔵のロセッティの作品(《愛の杯》)も展示されていた。また本展のテーマから言ってウィリアム・モリスとバーン=ジョーンズは欠かせない面々で,やはり目立っていた。これまたヴィクトリア朝美術ならば当然だが,ジャポニズムの紹介もかなり多かった。中には「これは日本じゃねぇ」と思えるものもあり,当時のイギリス人の日本受容の様子がうかがえる。……いやそれが朝鮮風だとか中国風だとかならわかるんだけど,「東アジアに見えない」意匠でジャポニズムと言い張られるのはさすがに。それと,ジャポニズムの影響もあったらしいのだが,皆孔雀好きすぎ。そこらかしこの工芸品の意匠に孔雀がいた。唯美主義の象徴的存在だったようで。
今回の展覧会で,画家たちの中で一番輝いていたのはアルバート・ムーアである。1858年にアカデミー入学と,ラファエル前派の面々から比べると後発でしかも目立たない存在であるが,本展では違っていた。とかく美女という観点で言えばアルバート・ムーアは間違いなく光っていた。ポスター等宣伝の一面が必ずアルバート・ムーアの《真夏》となっていたのもすこぶる納得がいく(今回の画像)。インパクトがあるし,今回の企画テーマにこれほど沿った絵もあるまい。この絵,初見ではテーマがさっぱりわからない。タイトルを見て,改めて画像を見ると扇が目に入ってようやくなるほどと気づく。椅子を覆う花はマリーゴールドで,これも夏の花らしい。この作品以外にもアルバート・ムーアは良い作品が何点か展示されていた。
アルバート・ムーア以外で良かったというとフレデリック・ワッツとフレデリック・レイトンの二人。彼らも純粋なラファエル前派ではないため端の部類だが,本展覧会ではよく目立っていたと思う。特にワッツは《愛と死》,レイトンは《パヴォニア》が良かった。それに対して,この路線ならいてもおかしくなさそうなウォーターハウスはいなかった。都合がつかなかったのだろう。個人的に残念なのは,アルマ=タデマもあまり作品が展示されてなかったこと。彼の大理石フェチっぷりは唯美主義と最もよく噛み合うと思ったのだが。アルマ=タデマはなぜか彼のデザインしたらしい椅子の展示があったが,違う,(俺が見たかったのは)それじゃない。
当然,ラファエル前派はよく出てくる。近場だから借りてきたのだろう,西美所蔵のロセッティの作品(《愛の杯》)も展示されていた。また本展のテーマから言ってウィリアム・モリスとバーン=ジョーンズは欠かせない面々で,やはり目立っていた。これまたヴィクトリア朝美術ならば当然だが,ジャポニズムの紹介もかなり多かった。中には「これは日本じゃねぇ」と思えるものもあり,当時のイギリス人の日本受容の様子がうかがえる。……いやそれが朝鮮風だとか中国風だとかならわかるんだけど,「東アジアに見えない」意匠でジャポニズムと言い張られるのはさすがに。それと,ジャポニズムの影響もあったらしいのだが,皆孔雀好きすぎ。そこらかしこの工芸品の意匠に孔雀がいた。唯美主義の象徴的存在だったようで。
今回の展覧会で,画家たちの中で一番輝いていたのはアルバート・ムーアである。1858年にアカデミー入学と,ラファエル前派の面々から比べると後発でしかも目立たない存在であるが,本展では違っていた。とかく美女という観点で言えばアルバート・ムーアは間違いなく光っていた。ポスター等宣伝の一面が必ずアルバート・ムーアの《真夏》となっていたのもすこぶる納得がいく(今回の画像)。インパクトがあるし,今回の企画テーマにこれほど沿った絵もあるまい。この絵,初見ではテーマがさっぱりわからない。タイトルを見て,改めて画像を見ると扇が目に入ってようやくなるほどと気づく。椅子を覆う花はマリーゴールドで,これも夏の花らしい。この作品以外にもアルバート・ムーアは良い作品が何点か展示されていた。
アルバート・ムーア以外で良かったというとフレデリック・ワッツとフレデリック・レイトンの二人。彼らも純粋なラファエル前派ではないため端の部類だが,本展覧会ではよく目立っていたと思う。特にワッツは《愛と死》,レイトンは《パヴォニア》が良かった。それに対して,この路線ならいてもおかしくなさそうなウォーターハウスはいなかった。都合がつかなかったのだろう。個人的に残念なのは,アルマ=タデマもあまり作品が展示されてなかったこと。彼の大理石フェチっぷりは唯美主義と最もよく噛み合うと思ったのだが。アルマ=タデマはなぜか彼のデザインしたらしい椅子の展示があったが,違う,(俺が見たかったのは)それじゃない。
Posted by dg_law at 23:30│Comments(0)│