2014年10月26日

でも蝗には見えない

馬蝗絆三井美術館の東山御物展に行ってきた。というよりも,根津美術館で見そこねた馬蝗絆を見に行ったという方が正しい。名前の通り,室町幕府の収集した宝物である。三井記念美術館の傾向もあり,茶道具が圧倒的に多い。同じような展示のつながりで,根津美術館の展覧会とは提携しており,片方でもう片方の半券を持って行くと100円値引きしてくれる。これをすっかり忘れていて100円損した。

で,馬蝗絆である。前に東博で見たことがあるので珍しさには欠いたが,何度見てもおもしろい物体だと思う。鉄の鎹で修繕しているのだが,鎹が内側に突き出ておらず,内側はのっぺりした砧青磁のままである。外側から見ても鎹はあえて金や銀ではないことで目立たず,器の下の方で妙な存在感を放っている。単なる見事な青磁の茶碗が,おもしろみのある逸品に大変身だ。有名なエピソードではあるが,足利義政が碗のひび割れを見て,中国に送って同じものを求めたところ,「これほど見事なものは存在しない」と言われ,この鎹を打たれて返ってきたという。このエピソードも本作のおもしろさを増している。美しさとおもしろさを兼ね備えていると言えよう。でも,実は国宝じゃなくて重文なんだよね。

それ以外もまずまずおもしろい展示が多かったが,結局のところ水墨画と陶磁器と漆器ではあるので,特筆して書き加えることはあまりない。水墨画は残念なことにどう見ても後期展示の方が豪華で,この点から言えば11月に入ってから行くべきだったのだが,前記展示の目玉が李迪の「雪中帰牧図」。左軸はいいとして,右軸の牛は実物だとロバか何かに見えた。今改めて画像で見ると牛なのだが,不思議だ。大和文華館なんて行く機会がないので,ここで見れたのは僥倖だったか。あとは,陶磁器では天目茶碗が多めで,その点では私の趣味にあっていたくらい。



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