2014年11月30日

結果だけはヨーロッパから見ていた

今回はヨーロッパに旅行していたため,ろくに見れていないので短く。

今場所は白鵬の優勝32回なるかという点と,逸ノ城の本格的な上位参戦が話題であったように思う。そして両者とも終盤まで話題を引っ張り,かつ土俵全体の内容も充実していたため,高評価が与えられる場所だったのではないか。これならじっくり見たかった。ただし,白鵬と鶴竜の終盤の相撲内容ははっきり悪く,白熱した優勝争いというには物足りない。総合して中の上としておこう。

さっさと個別評に。優勝した白鵬は可も不可もない最近の白鵬という様子。ダメ押しだけはいただけないというか,所作がまた乱れてきたような。評価の高い,大久保利通と明治天皇に言及した優勝スピーチも,所作が良くなければ霞んでしまう。一方,あっさり優勝できたのは,日馬富士が重傷からの休場明けで無理ができず,鶴竜は緊張で崩れたことが大きく,中盤までは鶴竜が二度目の優勝の可能性が高いと思っていた。日馬富士は眼底骨折からの復活と考えると十分な出来だが,一方来場所以降もこの程度の出来で固定されるのではないかという不安もある。鶴竜は安定した強さを見せたものの,あそこで固くなり,変化で自らのリズムを崩す辺り,器が小さいと言わざるをえない。

大関陣は壊滅的。稀勢の里は重圧がかかってなければあんなもんだろうという出来。琴奨菊は満身創痍と感じさせる必死の相撲であった。が,負け越しは負け越しなのだから勝負は厳しい。豪栄道は大関昇進早すぎた論も出かねない惨敗っぷりで,しかも今回は大きなケガもしてないはずで調整不足という言い訳もできないのだから,これはかなり苦しい。「出たとこ勝負」の相撲から一切の進化がない点は批判されても仕方がないかな,とは。もっとも,豪栄道の出来は隔場所なので,来場所は好調になるかもしれぬ。

関脇の逸ノ城は期待通りというべきか予想通りというべきか。左上手を取ればめっぽう強いがとれなければ弱い。これについて,「実は右手が攻撃の主体で,左は上手でも取らないとぶら下がっているだけ」という某人の評が当たっているように思う。逆に言って右が封じられれば苦戦することになり,そうした研究は上位陣の間で進んでいるように思われる。不利になると首投げにいって自滅する悪癖は直そうとしている素振りこそ見られるが,直りきってはいない。それでも勝ち越したのは地力の賜物で,上位戦は稀勢の里以外全敗だが取りこぼしが一切ないというのは今後を占う上での好材料だ。今場所は場所前に帯状疱疹にかかわるわ,あまりの取材の多さに精神的に参るわでろくに調整できなかったはず。来場所にも大きな期待をかけたい。残りの三役,碧山は突き押しが強くなったのは十分わかったので,今度はもうちょっと他をがんばろう。豪風はケガだが,年が年だけに,復活できるかが心配。勢はノーコメントで。

前頭上位。宝富士はここ3場所ほどで急激に強くなったような。左四つの寄る力が強く,いつの間にか上位定着してた。もう一段階進化できるかどうかに注目。高安は調子の波が場所ごとに激しいので,今場所は強かったなということしか言えない。照ノ富士は存在感が今ひとつなかったが,千秋楽の逸ノ城との決戦は良かった。2分半に渡る右四つがっぷりの壮絶な力比べはすばらしく見応えがあり,今場所のベストバウトと言ってよかろう。きっちり勝って先輩の意地を見せたのだから,出世競争自体でも逸ノ城に負けないようがんばって欲しい。大砂嵐はまだまだ膝のケガが悪く,引く場面では全く踏ん張れないのが戦術上の大きな(文字通り)足かせになっている。再出場後にはそれなりの白星をあげたものの,再出場自体正解だったのかどうか。

前頭中盤。まず,新鋭4人組では最後の遠藤。ここ数場所の情けない印象からの脱却は図れたようで,立ち合いの圧力は改善されてきたように思う。精神的にも吹っ切れた様子が垣間見え,来場所からの逆襲に期待したい。次に栃ノ心。大ケガからの復帰で幕内まで駆け上がり,この番付でも11勝した。明らかにケガ前よりも強くなっている。基本的なスタイルとして左上手を取って膂力で寄り切るというのは変わっていないが,寄る速度や押し引きの判断が早くなっており,相撲全体が素早く展開するようになった。これは同格なら遠藤に見られる特徴で,右四つに組んでもそこから進まないのが以前の栃ノ心の特徴であったから,正反対である。来場所にも続けば大きな武器になると思う。3人目に隠岐の海。新婚で前半は好調だったが,後半は崩れた。好調にすくわれたか,後半は無理に寄っていこうする場面が増え,前半はそれでもなんとかなっていたところで後半はふんばれなくなったということであろう。所詮,精神的な高揚は長続きしないか。

前頭下位。まず旭天鵬おじさんは何なの。サイボーグなの。まじめにあと丸1年は取れるでしょ。妙義龍はもうちょっと勝つかと思ったが,前のめりに倒れることが多く,9勝とはいえ残念な出来。「立ち合いの当たりの強さに差し身の良さで一気に持っていく相撲」なのに前のめりに倒れるというのは,足腰が弱っているのでは。北太樹は左四つ速攻でなければ攻め手がない,という弱点を完全に突かれての大敗で,研究され尽くしている感がある。荒鷲は星こそ8勝だが,とったり・たぐり戦法が効果を発揮し,見ていておもしろかった。蒼国来も9勝の割にイメージが良い。技術が非常に高く,組むと膂力以外でねじ伏せるのは困難である。その意味で12日目の栃ノ心戦での敗戦が印象深い。こんな力士を数年に渡って塩漬けした例の騒動と裁判の罪は本当に重いなと,改めて思った次第である。

来場所も楽しそうな上位陣の顔触れで,ここに大砂嵐がいないことだけが残念。十両は上位で勝ち越した人が少なく,3人だけの再入幕になりそう。

2014年九州場所

この記事へのコメント
リアルブリオン、クソワロタwwwwww
最近ヒロアカが面白過ぎてすっかり忘れていたんですが、早く冨樫氏も復帰してほしいものです。

初日の中入りで散々豪栄道好調稽古の映像が流れてたんですが、これがフラグだったんですねぇ。。。初場所上位のメンツを見ると春頃には大関1人になってるかもw

注目逸ノ城ですが初の上位戦で勝ち越しは立派かなと。本人が言ってる通り立ち合いの弱さと劣勢になった時すぐ投げたがるクセと弱点がはっきりしているので修正も心がけ次第。ただ連日「立ち合いが悪い」とか言いつつあまり修正は出来てない・・・気も。

逸ノ城の影に隠れてあまり目立たなかったけど実は碧山も三役初勝ち越し。この力士も突き押しから四つに組む流れだと結構安定して勝てると思うんだけどなぁ。

宝富士は徐々に来てますね。課題は勢と同じで得意の四つと逆の攻めを活かせるかどうか。真面目を絵に描いたような力士だって言うから克服してくるんでしょうね。多分来年中には人気も急上昇する・・・予定。
Posted by ( д)゜゜ at 2014年12月05日 22:42
続き

【栃ノ心】
元々の潜在能力としてこの位の力はあったんだろうけど、攻めを意識するようになって取口が力強くなってきた。これは初場所楽しみですねぇ。

【遠藤】
気が付けば10勝。やっぱり強いのか?(笑)

【おじさん】
強い。強すぎる。コチラも十分怪物ですね。

さて今年も1年お疲れ様でした、という事で平成27年展望。
来年もやはり白鵬中心。優勝5回。あと1回はどっかで鶴竜。日馬はいずれも序盤で落とすも最終的に二桁ぐらいにはまとめ上げ引退勧告は回避・・・。大関陣は知らん。
逸が秋〜九州あたりで大関昇進なるかという感じ。片方の関脇は安定の栃煌山。小結には碧、心、宝を中心として残りは照、勢、高安、他中位の大勝ちで持ち回り。遠藤・砂嵐の昇進は28年に持ち越しか行ってもせいぜいラッキーで1場所くらいかな。逸も相撲が完成していないので来年中の大関誕生は全体で30%ぐらいと見ています。

相撲人気が復活して来たようで、それはそれでファンとしては嬉しいのですが、今まで余裕で当日券買ってたのが前もって買わないと間に合わないというのが唯一の不満。

来年も相撲界の発展を祈りつつ、これにて千秋楽。良いお年もお迎えくださひ。
Posted by ( д)゜゜ at 2014年12月05日 23:19
先場所は隆の山の引退が話題でしたが、今場所に見掛けないと思っていたら、風冨山も9月場所で引退でした。幕下上位まで来ないと目立たないのはやむを得ないのですが。

今場所も白鵬が1敗してくれたお陰で優勝争いが盛り上がった場所でした。鶴竜が先に2敗したのが残念。
逸ノ城と照ノ富士は、共に右手を殺されるとそちらだけバンザイっぽくなって途端に脆くなって、それほどは勝てませんでした。でも、なまじ技が達者でない分、栃ノ心とのがっぷり四つの力相撲は大いに楽しめました。
遠藤は、序盤は負けが先行してどうなるかと思いましたが、中盤以降の連勝街道で白星を二桁に。勝ちっぷりに華があります。
華があるけど大負けしたのが勢で、まだまだ家賃が高かったのでしょうか。碧山は関脇に定着できそうです。

大砂嵐や豊真将、千代の国は怪我で残念。
新十両として上がってくる18歳の阿武咲は楽しみです。怪我で幕下に下がっていた舛ノ山も十両復帰かもしれません。
Posted by EN at 2014年12月06日 15:01
( д)゜゜さん

>リアルブリオン、クソワロタwwwwww
旅行記,お読みいただきありがとうございます。あれがフランスのスタンダードなマネキンなのかは,いまだもって疑問です。
>ジャンプ
『火ノ丸相撲』おもしろいですよね,という話を誰かとしたいんですが,どこにも場がなく。そういえばブログでも話題にしたことがないことに今気づきました。

>初場所上位のメンツを見ると春頃には大関1人になってるかもw
割とマジでありうるのでは……
逆に稀勢の里は万年大関っぽいですが,長命っぽくもありますね。

>実は碧山も三役初勝ち越し
碧山は勝ち越しできるだろうなとは思っていたので,もう一段上を求めたいところですね。記事中で「もうわかったので」とか書いてるのは期待以上ではなかったからでして。
>突き押しから四つに組む流れだと結構安定して勝てると思うんだけどなぁ
そんな感じですね。なかなか突き押しから発展しないのが勝ち越し止まりな原因ではあるかなと。

>宝富士
マツコデラックス顔で話題先行だった感がありますが,ここに来て実力が追いつきつつあり,驚いています。初場所は徹底した左四つ対策が取られそうですが,対抗できるか見物。

>栃ノ心
むしろ大ケガ前は地力の割にくすぶりまくってましたからねぇ。

>遠藤
やれば出来る子と,私はまだ信じていますw


>平成27年展望
そんな感じでしょうね。遠藤と大砂嵐の小結昇進は来年中にありそうかなと。
私も余裕があれば12月中に来年度の展望を書きたいところです。
Posted by DG-Law at 2014年12月07日 09:30
ENさん

>今場所に見掛けないと思っていたら、風冨山も9月場所で引退でした
マジですか!!! 今知りました。寂しいことこの上ないです。
幕下上位から十両が最後まで遠かった力士でした。

>逸ノ城と照ノ富士は、共に右手を殺されるとそちらだけバンザイっぽくなって途端に脆くなって、それほどは勝てませんでした
逸ノ城は本当にその傾向が強いですね。照ノ富士もそうですか。来場所ちょっと注意して見てみます。

>遠藤と勢
言われてみると,相撲振りに「華」があるのは共通点かも。
相撲が整ってて見応えあるんですよね。大味でなく。技量があるってすばらしい。
あとまあ,イケメンですしw

>新十両として上がってくる18歳の阿武咲は楽しみ
ですね。馬力と闘志のある力士で,十両も簡単にパスするようなら,遠藤フィーバーが再来すると思われます。期待して待ちましょう。
Posted by DG-Law at 2014年12月07日 09:44