2015年03月15日
受験世界史悪問・難問・奇問集 ver.2015 その３（国立大）＆おまけ
［国立大編］
一応書いておくが，全て前期日程。
１．一橋大
＜種別＞悪問・難問
＜問題＞２ ともに1967年に発足したヨーロッパ共同体と東南アジア諸国連合は，地域機構として大きな成功をおさめた。両機構の歴史的役割について，その共通点と相違点を説明しなさい。
＜解答解説＞
非常にシンプルな問題文で，条件設定が雑である。まず，ECはECSC・EECやEUまで含んでよいのか，ASEANも同様にASEAN10までを含んでよいのか，判然としない。これによって解答の方向性が変わってくる部分がある。解答のポイントと，条件設定の雑さによる難点を挙げていく。この問題は「高校・受験世界史」の「高校・受験」の部分が薄い問題なので，読者の皆様も解答を考えてから読むとさらにおもしろいかもしれない。
政治面から。まず，ECもASEANも地域紛争の自主解決を図った地域機構である点は共通しており，特にECを“西”ヨーロッパの地域機構として見るなら，独仏友好による歴史的対立の解決という点で大成功であろう。ただ，独仏友好はECSCやEECの歴史的役割であって，ECかというと違和感がある。また，EUまで含んだ上でヨーロッパ全域を考えるなら，当時周辺諸国のほとんどが未加盟とはいえユーゴ紛争・コソヴォ紛争への対応は決して成功とは言えまい。これに対しASEANはカンボジア内戦の調停等で一定の成果があり，歴史的役割を果たしたと言ってよい。また，旧東側諸国の加盟が1990年代以降になった点やそれにより地域の安定に貢献した点は歴史的役割として共通しているが，EUやASEAN10を含んではいけないのなら書けない。
これに関連して，ECもEUも加盟に一定の要件を課し，特に民主主義や人権の尊重といった「ヨーロッパの価値観」への同意は厳しい要件として挙げられている。これにより加盟国間では外交協力のみならず“政治統合”という段階まで進んでいる。ゆえにスペインやポルトガル，ギリシアの加盟は遅れたし，旧東側諸国の加盟はEUになってからとなった。ECはもちろん，EUとなってもヨーロッパ統合はヨーロッパの全域を覆っていない。民主化の圧力という歴史的役割を担ったが，地域統合としては不完全と言える。一方ASEANは原加盟国からして民主国家と独裁国家が混ざり，外交協力はあれども“政治統合”は目標として存在しない。発足当初は反共を目的とした機構だったが，ベトナム戦争終結後に脱色した。1993年以降は旧東側諸国の加盟を急ぎ，純粋に経済統合と外交協力を目指す組織としての性格がさらに強まった。結果的にASEANに加盟していない東南アジアの国は東ティモールだけとなり，その東ティモールも強硬に反対していたインドネシアが，ユドヨノ大統領によって賛成に回ったため，加盟交渉が進展している情勢である（※）。これは時代の区切り方によらず相違点ではあるものの，旧東側諸国の加盟に関する言及が許されるか否かは，やはり解答の方向性に影響が大きい。
※ あとはパプアニューギニアが加盟申請しているが，限りなく無理に近かろう。
経済面で言えば，ECはアメリカ・ソ連からは独立した経済圏の確立が目標であり，先進国が超大国に対抗する手段としての性格が強かった。これはEUになっても同じ。一方，ASEANは発足経緯から明確にアメリカの影響下であったし，日本の経済進出も発足当初から活発であった。1990年代以降になると日本・韓国・中国を招いてASEAN+3を発足させ，政治的には反目している中国とさえ経済的にはつながりを強化しようとしている。APECができるとこちらとの関連も強くなった。ASEANはあくまで発展途上国が経済発展のために域外の先進国・大国の手を借りやすくするための組織であって，現在に至るまで超大国の経済への対抗・排除という要素は薄い。これは時代の区切りにかかわらず相違点ではあるが，ASEAN+3やAPEC辺りまで言及してよいかどうかで，やはり書き方を変える必要が出てくる。
さらに経済面で言えば，域内無関税や域外共通関税の設定を目標とした点は共通点になる。しかしこれも，ヨーロッパはECのうちに達成済だが，ASEANは原加盟国の達成が2010年，1990年代以降の加盟国は2015年目標である。1990年頃までのASEANはそこまでを見据えた組織ではなかった。前述の通り，域外の先進国・大国との協力の方が主眼だったし，加盟国の工業力が弱かったので域内無関税のメリットが薄かったからだ。よって，この部分も区切り方によって書き方を変える必要がある。
ただまあ，一応解答は作れないことはない。今挙げたようなことを，書き方の変わる部分はぼかすか無視しつつ400字に圧縮すればよいのだが，これが超絶難易度であることは説明するまでもなかろう。しかも書いてみるとわかるが相違点だらけで，共通点と200字ずつにしようとすると死ぬというおまけつきである。私自身，上述の解説を書くのに，今年の収録問題で最も苦労した。言わせてもらうと，本問は世界史ではなく政経の問題である。これだけ細かい内容となると，世界史としては範囲外と言ってよかろう。さて，これだけ茫洋とした問題だったためか，実質的な科目違いのためか，各予備校の解答がめちゃくちゃである。ということは，その教えを受けた受験生たちの解答もさぞ混乱していたに違いない。採点が大変だった……もしくは「楽」だったのではないか。
河合塾
解答の大半がECとASEANの「歴史」であり，「歴史的役割」という問題の要求から言えば０点に近い。「歴史を追えば，役割も自然と見えてくるはず」などというのは甘えである。ただし，実際の受験生も「役割」を書けるほどの知識が無いので，ほとんどの人はこうして答案をでっち上げたのではないか。それを抜きにしても，読んでいてどこが共通点で相違点なのかもさっぱりわからない。
駿台
河合塾と同じ愚を犯しているが，こちらの方がまだ共通点と相違点がわかりやすい。しかしそれも「政治面が相違点で，経済面が共通点」と極めて単純化しており，実態がそうでもないのは，上で長々と書いた通りである。駿台が論述問題でこれだけ混乱しているのも珍しい。ここは執念で専門書を読んででも，受験生が作れないような解答になろうとも，完璧なものを出してくることの方が多いのだが。ただし，一つの可能性として，実は一橋大が求めている水準が駿台レベルの単純なもので，私の解答が考えすぎということもなくはない。それはそれで，昨年の「歴史なき民族」とのギャップがありすぎて不信感を生むが。
代ゼミ
まがいなりにも「共通点」と「相違点」に分けて論述し，歴史の流れを書くのを避けている。内容としては，方向性は共通しているが，深度が異なる（ヨーロッパの方が深い）というもの。私は深度の問題というより，方向性自体が違うのではないかと思うのだが，４つの中では一橋大の要望に一番応え（答え）ていると思う。
東進（要会員登録）
解答例が２つあり，その１は「共通点」と「相違点」に分けた書き方。共通点は歴史を乗り越えた政治協力を果たしたという点で，相違点はASEANが発展途上国の地域統合のモデルになっているがECはそうではないという点，だそうだ。それはその通りなのだが，内容が薄すぎないか。特に相違点は実は何も言っていない気が。解答例その２は河合塾型の解答で，これも０点に近い気がする。
（追記）『入試問題正解』の解答は代ゼミに近く，相違点は深度の問題（欧州統合の方が深い）という方向性。ただし，共通点がわずか約40文字という潔さ。『赤本』は駿台と同じ方向性で，共通点は経済統合，相違点は政治統合としたもの。出そろった解答の中では最も出来が良いと思う。
２．名古屋大
＜種別＞悪問
＜問題＞１ 問１ 下線部�，砲弔い董癖埣陦院Р宍�参照）。「郡県」制とはどのような制度か，またそれは何世紀から何世紀まで続いたのかを答えなさい。（編註２：70字程度）
編註１：下線部�，亮�囲のリード文全てが重要なので，以下にまとめて引用する。
儒者の考えによれば，中国の歴史は封建の時代と，��郡県の時代に分けられるのであるが，後者はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう。
＜解答解説＞
郡県制の説明はたやすい。どこの予備校の解答でもそうなっているが，郡と県を設置し（今の日本の行政区分とは逆で，郡の下に県がある），中央官庁の任命する官僚が派遣されて統治する制度である点と，これが中央集権的な制度である点を指摘できていれば満点だろう。難点はその後ろの問い，「何世紀から何世紀まで続いたのか」だ。「から」も「まで」も，どちらも解答が割れる。
まず，「何世紀から」であるが，これは前４世紀と前３世紀の両方が考えられる。素直に考えれば，郡県制の実質的な創始者は前４世紀の秦の孝公である。しかし，ここでリード文が効いてくる。「後者（＝郡県制）はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう」。このフレーズを鑑みると，郡県制は全国化したのは前３世紀の秦の始皇帝である。ここは河合塾・駿台・代ゼミともに「前３世紀」と解答。東進は解答を２つ作り，両論併記。
次に「何世紀まで」。これも素直に解答するなら，隋代に州県制へと変わるので「６世紀」。しかし，これも「中国の歴史は封建の時代と，��郡県の時代に分けられる」と言われると，封建の時代でなければ郡県制と定義するなら，むしろ現代まで郡県制が続いていることになる。実際，現代では省−地級市−県−郷という区分ではあるものの，制度の本質的な部分は変わっていない。ただ，「何世紀まで」と聞いといて「21世紀まで」という解答は求められておるまい。そこで後ろに続くフレーズの「後者（＝郡県制）はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう」を取ると，清が滅んだのは1912年であるから，「20世紀」という解答が正解になる。こちらは河合塾「20世紀」，駿台は「６世紀」，代ゼミは「６世紀」としつつ分析で「20世紀という解答もありうる」，東進はやはり両論併記である。私自身が答えるなら，河合塾の解答を取る。リード文に従って「前３世紀から20世紀」というのが作題者の欲しかった正解じゃないかと思うのだが，確証はない。
代ゼミは「やや書きづらかったのではないか」，駿台は単純に「難問」とぼかしているが，河合塾はもろに「一部に問われている内容がわかりにくいものがあった」と書き，東進も「問１の時期にはさまざまな解釈ができる部分があり難問。」としている。全くその通りであろう。「論述問題で悪問は作りにくい」とおっしゃる方は，名古屋大の中国史を見てから同じことを言って欲しい。かくのごとく，いともたやすく作れるのである。論述問題の場合，設定が雑だと解答が多岐にわたる可能性がある。勘違いしないで欲しいのは，それ自体が悪いわけではないということだ。採点基準に幅があるのが問題文から明確に読み取れる場合は，多様な解答が見られる問題でもかまわないが，現実にはそうでないものが多い。作題者の想定する解答がおそらく１パターンしかないにもかかわらず，十分に知識を持った一人の解答者が思いついた解答が複数パターンある場合，これはやはり悪問と言わざるをえない。
（追記）『入試問題正解』は，始まりが「前４世紀の戦国時代の秦」，終わりはここに来て新説の「前３世紀末の前漢が郡国制を採用した時点」である（別解で「20世紀初頭」もありうる）。『赤本』は始まりが「前３世紀」の「始皇帝」，終わりは「６世紀」の「隋」（こちらも解説で「20世紀初頭」には触れている）。
３．名古屋大（２つめ）
＜種別＞悪問または難問
＜問題＞１ 問４ 下線部�い砲弔い董癖埣陦院Р宍�参照）。清朝によって加えられた改変のうち，満州王朝ならではのものを挙げなさい。（編註２：70字程度）
編註１：これも下線部周囲のリード文全体が関係するため，まとめて引用する。唐代・宋代の帝権・中央政府の官制が説明された後で，次の文章が入る。
こうした皇帝への権力集中は，明初に至ってついに制度的完成を見た。そしてこの明初に確立された体制は，満州族皇帝をいただく清朝に入っても，むろんいくらかの��改変は加えられたが，基本的にはそのまま継承され，皇帝制が廃絶されるまで維持されたのである。
＜解答解説＞
「満州王朝ならではのもの」という余分かつ不用意な言葉があるせいで，解答が定まらない。「清朝」から「満州王朝」に言い換えた理由は何か。また，そのような余分な言葉がある一方で問題文が簡素すぎ，リード文の文脈である帝権の強化や中央政府の官制を考慮すべきかどうかも判然としない。
「満州王朝」と「清朝」は単純に同義とする場合，これは帝権の強化・中央政府の官制というリード文の流れから言っても「軍機処」が正解になる。しかし，「満州人の王朝だからこそ誕生した制度」という意味合いを強く取るなら，軍機処ではやや不安が残る。軍機処という役所自体に満州人の民族要素は大きくない。
軍機処は軍事上の機密を守るという理由で雍正帝が設置し，当初はジュンガル遠征のための臨時機関という位置づけだった。やがて常設化し，権限を軍事から政治全体に拡大し，事実上の政治における最高機関となった。なぜなら，既存の最高機関である内閣は肥大化・煩雑化していて，また内閣とは別に存在した満州皇族・貴族を主な議員とする議政王大臣会議も存在した。この状態で皇帝が孤軍奮闘するには仕事が膨大すぎ，宮崎市定説を取るなら，雍正帝自身が過労死である。また，満州人官僚のために公文書は満州語へ翻訳する義務があり，これに膨大な手間がかかっていた。これらの問題が全て，軍機処の設置と権限拡大によって解決したのである。軍機処のメンバー（軍機大臣）は皇帝の直接選任であり，通常４〜７名の最少人数で討議された。しかも表向きは皇帝の私的な諮問機関であることを貫いたため，軍機処に持ち込まれる報告書や，軍機処で作成された詔書はあくまで「官僚と皇帝の私信」として扱われた。ゆえに文書は簡素でよいし，漢文と満州語の両方で作成する義務もなかった。軍機処の設置により，内閣も議政王大臣も骨抜きとなった。
以上のように，軍機処が帝権の強化に貢献したのは疑いがない。しかし，満州王朝ならではといえる要素が以上の説明にあっただろうか。あるにはあった。議政王大臣会議の存在と，翻訳の問題である。だが，議政王大臣会議と翻訳の問題に関する情報は高校世界史範囲外であり，基本的に解答に用いられないと考えてよいはずである。そうすると，実は無いのである。残りの現象は別に漢人王朝でも起こりうる。よくよく考えてみると，明朝の内閣の設置と制度的発展も似たような経緯である。既存の機関の処理の煩雑化，皇帝への仕事の集中，私設諮問機関を新設，新機関に権力が移動という流れだ。制度疲労による同じ事の繰り返しである。
軍機処について付け加えて言えば，軍機大臣は議政王大臣や内閣大学士との兼任が多く，したがって漢人官僚も内閣大学士との兼任として軍機大臣に選ばれることがあった。すなわち，漢人官僚弱体化のための機関を解するのは正しくない。ググってみると「漢人は軍機大臣になれなかった」という情報が流れているようだが，これは黄文雄の本が出典のようなので彼の勘違いか，軍機大臣のうち最も年季のあるものを非公式的に首席軍機大臣と呼んだ風習があり，それがほぼ満州人となるように軍機大臣の入れ替えがあったということが勘違いされているかのいずれかであろう。ただし首席が他の軍機大臣に比べて大きな権限を有したわけではなく，この点は内閣大学士と異なる。大体，初代軍機大臣の一人にして雍正帝の忠臣だった張廷玉からして漢人なんですがそれは。末期で言えば張之洞も袁世凱も軍機大臣経験者である。いないと思うが，黄文雄出典のデマを解答に書いた受験生がいたら，ご愁傷様である。なお，当然ながら首席軍機大臣に関する情報も範囲外である（というよりも軍機大臣という用語自体が高校世界史では未出）。
「満州王朝ならではの」という表現を重視するなら，理藩院は挙げられる。地方の間接統治の監督官庁だ。中国の王朝は異民族を間接統治することが多かったが，これをより明確に制度化したのが清朝の地方統治体制の「直轄領」と「藩部」である。直轄領は中国王朝伝統の“郡県制”で統治したが，藩部は民族・部族ごとに自治権を認めての間接統治である。特に清朝の場合，漢人王朝ではなく満州王朝であったこと，また中国本土より先に内モンゴルを征服しここを藩部としていたことという事情から，皇帝は冊封体制下の間接統治というよりも，むしろ多民族の皇帝として君臨していたという性格が強い。また，理藩院は満漢併用制の適用範囲外であり，満州人の独占官庁であった。これらの意味で，理藩院は明確に「満州王朝ならではの」制度と言えよう。帝権の強化・中央政府の官制というリード文の文脈がなければ，これが解答として最もふさわしかったと思う。
また満漢併用制であるが，これは高級官僚のポストは偶数として，同数を満州人と漢人にあてた制度である。そうすることで漢人の不満を解消しようとしたが，満州人と漢人の絶対数が違いすぎるため，競争倍率で考えると満州人が圧倒的に有利であったし，理藩院のように漢人のポストがない官庁があったのは事実だ。さらに，これが公的文書は必ず漢文と満州語の双方で作成しなくてはならないという義務の発生源であり，結果的に満漢併用制の制度的失陥が軍機処を生んだと言える。これも間違いなく「満州王朝ならではの」制度ではあるが，やはりリード文の文脈という点で疑問符がつく。
予備校各社の判断は，河合塾が「首席軍機大臣が必ず満州人」という理由を挙げての軍機処。これは範囲外で反則気味だが，最も良く答えている。駿台も軍機処を挙げているものの，こちらは用語集的な説明に終始しており，今ひとつ解答になっていない。もっとも，高校世界史での解答としては誠実な態度かもしれない。東進も駿台と全く同じ解答で，分析で「問４は『満州王朝ならでは』という問いかけをどのように判断するかやや難しいのではないかと思われる」と述べている。代ゼミは満漢併用制と八旗を挙げるという一風変わった解答とし，分析で「解答しづらい」と述べている。軍機処は上述の事情から使いたくないとなると，こういう解答にならざるをえないのかもしれない。ただ，八旗は軍事制度なのでどうにも違うだろう。私自身が解答を作成するとなると……白紙で提出して帰るかな，というのは冗談として，教科書範囲では解答不能な問題と見なして，河合塾的な逃げ方をするかなぁ。翻訳の問題あたりを挙げて。
（追記）『入試問題正解』は駿台と同じ，軍機処を挙げつつ用語集的な説明。『赤本』も同じだが，解説を読むと勝手に「満州王朝ならでは」を「清ならでは」に読み替えている。
どうしてこうなってしまったのか，理由を考えてみた。
a．解答には軍機処が求められていて，河合塾の説明が満点解答だが，高校世界史の教科書をよく読まずに作ってしまった。
b．解答には軍機処が求められていて，駿台や東進レベルの解答で十分満点になる。「満州王朝ならではの」に深い意味を付したつもりは全くなく，別に「清朝独自の」と同義語だった。
c．解答は軍機処，理藩院，満漢併用制のどれでもよく，「満州王朝ならではの」はおろか，文章全体の流れも実は気にしなくていい問題だった。
これらのいずれかくらいではないだろうか。ぶっちゃけて言うと私はbが真相ではないかと。そして言い換えた理由は修辞上かっこよかったからではないかと。まじめに考えるだけバカを見る問題な気がする。
なお，念のために書いておく。本問の類題として，2003年の京大の問題がある。ただしあちらは「皇帝独裁制の強化をもたらした政治制度の改変について述べよ」と明示されているので，理藩院も満漢併用制も排除できる＝軍機処だけが正解になる。こういう工夫を「練った」と言うのだ。
改めて名古屋大には真剣に問いたい。この２問は適正な出題か。
なお，あまりにも雑な作題がこの２問なだけであって，アヤを付けようと思えば他の問題も付く。実際，河合塾がこの２問とは全く別の２問で名古屋大学に公開要請を行った。
河合塾のこういう社会的意義を考えた行動・態度は，裏に宣伝目的があるにせよ，とても良いと私は思う。その２問の前にこの中国史２問を指摘しろよとは思うが，河合塾の指摘も外れたものではない。雑に雑を重ねた論述問題の作題は，配点が大きいために，採点基準によってはマーク式よりも被害が大きい。慎重な作題と採点を私からもお願いしたい。
４．九州大
＜種別＞誤植（厳しく取れば出題ミス）
＜問題＞３ 問３．３世紀の西ローマ帝国において，各地の軍団が独自に皇帝をたて，短期間に多数の皇帝が即位しては殺害されるという状況が続いた。(1)この時代を一般に何と呼ぶか。その名称を答えなさい。(2)このころ，奴隷制経営によるラティフンディアにとってかわり，貧困化した自由民などを大所領で働かせる生産体制が広まったが，この制度を何と呼ぶか。
（強調は編者）
＜解答解説＞
今年が地歴入試初年度となる九州大だが，初年度から誤植（出題ミス）があった。先が思いやられる。言うまでもなく３世紀は東西分裂前なので，「西」は不要。この誤植を無視して答えるなら，(1)は軍人皇帝時代，(2)はコロナートゥスである。九州大学当局からの発表はなし。
なお，九州大については誤植がどうこうよりも，論述の字数を話題に挙げた方がよかろう。600字論述が１題出ていて，関係者の度肝を抜いた。600字を課す大学は現状東大のみであり，見るからにこれを参考に作ってしまったようである。次点が一橋大・筑波大の400字，その次が名古屋大の350字，京大の300字，千葉大の約300字あたりで，ほとんどの大学はそれ未満の論述問題しか出題されない。九大も受験生のレベルを考えると300字が適正だったのではないかと思う。せっかくの新設ではあるが，この無茶ぶりが続くようなら，受験生は逃げるだろう。「それでも特色ある入試にしたい」というのであれば，それは大学入試の多様性保持には良いことであって，殊更責めるポイントではないが。
☆おまけ：予備校解答速報精度比較（私大）
英語でこういうことをやっているサイトを発見したので，世界史でも軽く調査した。ただし英語ほどには差がつかなかった。４大予備校以外も調査。「ここは早稲田・慶應の世界史の解答速報やってる」というタレコミ歓迎。以下はあくまで私見によるカウント・評価であるので，注意されたし。
【解答ミスのカウント】
・駿台：早慶の１１日程を公開。ミスは早大政経の１箇所のみ。
・代ゼミ：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは上智大の１箇所のみ。
・河合塾：早慶の全１３日程を公開。ミスは早大文化構想学部の１箇所のみ。
・東進：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは１０箇所以上。１５箇所を超えていると思われるが，私は途中で数えるのをやめた。
・早稲田予備校：早稲田の全９日程を公開。ミスは５箇所。ただし，大半がタイポと思われる（後述）。
・増田塾：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは慶應大商学部の１箇所のみ。ただし，論述問題であるので手痛い。
・城南予備校：早慶の１０日程を公開。完全ノーミスだが，公開が非常に遅いため当然（後述）。
【過去の解答速報も踏まえての評価】
・駿台：代ゼミと並ぶ最強精度。試験日２〜３日後とそこそこの速度で，よく調べてくる。特に出題ミスは私が気づかなかったものまで指摘していることがしばしばあって，本企画としても大変重宝している。また，予備校の分析の中で最も口が悪く，「これは入試じゃなくて世界ふしぎ発見」「入試問題として成立していない」「出題者の良心を疑う」等々。
・代ゼミ：ここも精度は最強。試験日翌日か２日後には出ており，大体において全予備校最速なのもポイントが高い。以前は分析が適当で残念な感じだったが，ここ２年ほどは改善していて，読める文章が出てくるようになった。駿台との大きな違いは分析が甘口で，また出題ミスの指摘を極力避けている様子であること。
・河合塾：駿台と代ゼミに比べると少々ミスがあるが，誤差範囲のレベルで高水準。出てくるのがおおよそ試験日３日後でやや遅いことと，分析が短くあまり参考にならないことが残念。また，国立の論述の解答は上記２校に比べて落ちる気がする。
・東進：予備校として失格レベルと評さざるをえない。他の大手予備校比で３〜５倍の頻度で解答にミスがあり，言い換えれば１日程に１つはほぼ必ず間違いがある。しかもタイポじゃなくて素で間違えているミスが散見される。じゃあ早いかというと試験日３日後水準で河合塾と同程度，分析も４大予備校で最もいい加減。大学生のバイトが作ってるとしてもひどいし，せめて早稲田や慶應くらいは講師に作らせるべき。悪評にしかならないので，もう速報止めた方がいい。
・早稲田予備校：早稲田限定。精度は東進よりマシといった程度なのだが，ほとんどがタイポであり，分析を読むとちゃんとした正解がわかるのが救い。本当にタイポがもったいない。また速度はまちまちで，最速なこともあれば，４日経っても出ないこともある。精度も速度も，いかにも小規模塾というような欠点に思える。分析は全予備校で一番しっかり書いている部類で，これは早稲田大に特化している強みだろう。駿台に次いで口が悪い。
・増田塾：精度は高水準で，駿台と代ゼミに次いで河合塾と同レベル。一方，速度は試験日４〜５日後と遅い。ここまで遅いと「速報」ではなかろう。これは分析ではなく，非常に重厚な解説をつけているからだろう。ちゃんと解説を読みたい受験生ならここの解答速報が一番良い。
・城南予備校：ここはもうハナから「速報」を名乗っていない。出るのは試験日から一週間以上経った後で，あからさまに他の予備校の解答を見てから作っている。だったら精度は最強じゃないとおかしいはずなのだが，なぜかわざわざ間違った方を選んで間違った解説をしていることがあり，駿台と代ゼミの精度には劣っている。どういうこと。かつ，解説は充実しているものの，増田塾の方が良い。
・武田塾：論外。まずサイトを見やすく作ってくれというのと，予告なく作成しない日程があり，分析が存在しないというのは，もはや解答速報として価値がない。精度を測る気力も失せたのでやってません。
一応書いておくが，全て前期日程。
１．一橋大
＜種別＞悪問・難問
＜問題＞２ ともに1967年に発足したヨーロッパ共同体と東南アジア諸国連合は，地域機構として大きな成功をおさめた。両機構の歴史的役割について，その共通点と相違点を説明しなさい。
＜解答解説＞
非常にシンプルな問題文で，条件設定が雑である。まず，ECはECSC・EECやEUまで含んでよいのか，ASEANも同様にASEAN10までを含んでよいのか，判然としない。これによって解答の方向性が変わってくる部分がある。解答のポイントと，条件設定の雑さによる難点を挙げていく。この問題は「高校・受験世界史」の「高校・受験」の部分が薄い問題なので，読者の皆様も解答を考えてから読むとさらにおもしろいかもしれない。
政治面から。まず，ECもASEANも地域紛争の自主解決を図った地域機構である点は共通しており，特にECを“西”ヨーロッパの地域機構として見るなら，独仏友好による歴史的対立の解決という点で大成功であろう。ただ，独仏友好はECSCやEECの歴史的役割であって，ECかというと違和感がある。また，EUまで含んだ上でヨーロッパ全域を考えるなら，当時周辺諸国のほとんどが未加盟とはいえユーゴ紛争・コソヴォ紛争への対応は決して成功とは言えまい。これに対しASEANはカンボジア内戦の調停等で一定の成果があり，歴史的役割を果たしたと言ってよい。また，旧東側諸国の加盟が1990年代以降になった点やそれにより地域の安定に貢献した点は歴史的役割として共通しているが，EUやASEAN10を含んではいけないのなら書けない。
これに関連して，ECもEUも加盟に一定の要件を課し，特に民主主義や人権の尊重といった「ヨーロッパの価値観」への同意は厳しい要件として挙げられている。これにより加盟国間では外交協力のみならず“政治統合”という段階まで進んでいる。ゆえにスペインやポルトガル，ギリシアの加盟は遅れたし，旧東側諸国の加盟はEUになってからとなった。ECはもちろん，EUとなってもヨーロッパ統合はヨーロッパの全域を覆っていない。民主化の圧力という歴史的役割を担ったが，地域統合としては不完全と言える。一方ASEANは原加盟国からして民主国家と独裁国家が混ざり，外交協力はあれども“政治統合”は目標として存在しない。発足当初は反共を目的とした機構だったが，ベトナム戦争終結後に脱色した。1993年以降は旧東側諸国の加盟を急ぎ，純粋に経済統合と外交協力を目指す組織としての性格がさらに強まった。結果的にASEANに加盟していない東南アジアの国は東ティモールだけとなり，その東ティモールも強硬に反対していたインドネシアが，ユドヨノ大統領によって賛成に回ったため，加盟交渉が進展している情勢である（※）。これは時代の区切り方によらず相違点ではあるものの，旧東側諸国の加盟に関する言及が許されるか否かは，やはり解答の方向性に影響が大きい。
※ あとはパプアニューギニアが加盟申請しているが，限りなく無理に近かろう。
経済面で言えば，ECはアメリカ・ソ連からは独立した経済圏の確立が目標であり，先進国が超大国に対抗する手段としての性格が強かった。これはEUになっても同じ。一方，ASEANは発足経緯から明確にアメリカの影響下であったし，日本の経済進出も発足当初から活発であった。1990年代以降になると日本・韓国・中国を招いてASEAN+3を発足させ，政治的には反目している中国とさえ経済的にはつながりを強化しようとしている。APECができるとこちらとの関連も強くなった。ASEANはあくまで発展途上国が経済発展のために域外の先進国・大国の手を借りやすくするための組織であって，現在に至るまで超大国の経済への対抗・排除という要素は薄い。これは時代の区切りにかかわらず相違点ではあるが，ASEAN+3やAPEC辺りまで言及してよいかどうかで，やはり書き方を変える必要が出てくる。
さらに経済面で言えば，域内無関税や域外共通関税の設定を目標とした点は共通点になる。しかしこれも，ヨーロッパはECのうちに達成済だが，ASEANは原加盟国の達成が2010年，1990年代以降の加盟国は2015年目標である。1990年頃までのASEANはそこまでを見据えた組織ではなかった。前述の通り，域外の先進国・大国との協力の方が主眼だったし，加盟国の工業力が弱かったので域内無関税のメリットが薄かったからだ。よって，この部分も区切り方によって書き方を変える必要がある。
ただまあ，一応解答は作れないことはない。今挙げたようなことを，書き方の変わる部分はぼかすか無視しつつ400字に圧縮すればよいのだが，これが超絶難易度であることは説明するまでもなかろう。しかも書いてみるとわかるが相違点だらけで，共通点と200字ずつにしようとすると死ぬというおまけつきである。私自身，上述の解説を書くのに，今年の収録問題で最も苦労した。言わせてもらうと，本問は世界史ではなく政経の問題である。これだけ細かい内容となると，世界史としては範囲外と言ってよかろう。さて，これだけ茫洋とした問題だったためか，実質的な科目違いのためか，各予備校の解答がめちゃくちゃである。ということは，その教えを受けた受験生たちの解答もさぞ混乱していたに違いない。採点が大変だった……もしくは「楽」だったのではないか。
河合塾
解答の大半がECとASEANの「歴史」であり，「歴史的役割」という問題の要求から言えば０点に近い。「歴史を追えば，役割も自然と見えてくるはず」などというのは甘えである。ただし，実際の受験生も「役割」を書けるほどの知識が無いので，ほとんどの人はこうして答案をでっち上げたのではないか。それを抜きにしても，読んでいてどこが共通点で相違点なのかもさっぱりわからない。
駿台
河合塾と同じ愚を犯しているが，こちらの方がまだ共通点と相違点がわかりやすい。しかしそれも「政治面が相違点で，経済面が共通点」と極めて単純化しており，実態がそうでもないのは，上で長々と書いた通りである。駿台が論述問題でこれだけ混乱しているのも珍しい。ここは執念で専門書を読んででも，受験生が作れないような解答になろうとも，完璧なものを出してくることの方が多いのだが。ただし，一つの可能性として，実は一橋大が求めている水準が駿台レベルの単純なもので，私の解答が考えすぎということもなくはない。それはそれで，昨年の「歴史なき民族」とのギャップがありすぎて不信感を生むが。
代ゼミ
まがいなりにも「共通点」と「相違点」に分けて論述し，歴史の流れを書くのを避けている。内容としては，方向性は共通しているが，深度が異なる（ヨーロッパの方が深い）というもの。私は深度の問題というより，方向性自体が違うのではないかと思うのだが，４つの中では一橋大の要望に一番応え（答え）ていると思う。
東進（要会員登録）
解答例が２つあり，その１は「共通点」と「相違点」に分けた書き方。共通点は歴史を乗り越えた政治協力を果たしたという点で，相違点はASEANが発展途上国の地域統合のモデルになっているがECはそうではないという点，だそうだ。それはその通りなのだが，内容が薄すぎないか。特に相違点は実は何も言っていない気が。解答例その２は河合塾型の解答で，これも０点に近い気がする。
（追記）『入試問題正解』の解答は代ゼミに近く，相違点は深度の問題（欧州統合の方が深い）という方向性。ただし，共通点がわずか約40文字という潔さ。『赤本』は駿台と同じ方向性で，共通点は経済統合，相違点は政治統合としたもの。出そろった解答の中では最も出来が良いと思う。
２．名古屋大
＜種別＞悪問
＜問題＞１ 問１ 下線部�，砲弔い董癖埣陦院Р宍�参照）。「郡県」制とはどのような制度か，またそれは何世紀から何世紀まで続いたのかを答えなさい。（編註２：70字程度）
編註１：下線部�，亮�囲のリード文全てが重要なので，以下にまとめて引用する。
儒者の考えによれば，中国の歴史は封建の時代と，��郡県の時代に分けられるのであるが，後者はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう。
＜解答解説＞
郡県制の説明はたやすい。どこの予備校の解答でもそうなっているが，郡と県を設置し（今の日本の行政区分とは逆で，郡の下に県がある），中央官庁の任命する官僚が派遣されて統治する制度である点と，これが中央集権的な制度である点を指摘できていれば満点だろう。難点はその後ろの問い，「何世紀から何世紀まで続いたのか」だ。「から」も「まで」も，どちらも解答が割れる。
まず，「何世紀から」であるが，これは前４世紀と前３世紀の両方が考えられる。素直に考えれば，郡県制の実質的な創始者は前４世紀の秦の孝公である。しかし，ここでリード文が効いてくる。「後者（＝郡県制）はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう」。このフレーズを鑑みると，郡県制は全国化したのは前３世紀の秦の始皇帝である。ここは河合塾・駿台・代ゼミともに「前３世紀」と解答。東進は解答を２つ作り，両論併記。
次に「何世紀まで」。これも素直に解答するなら，隋代に州県制へと変わるので「６世紀」。しかし，これも「中国の歴史は封建の時代と，��郡県の時代に分けられる」と言われると，封建の時代でなければ郡県制と定義するなら，むしろ現代まで郡県制が続いていることになる。実際，現代では省−地級市−県−郷という区分ではあるものの，制度の本質的な部分は変わっていない。ただ，「何世紀まで」と聞いといて「21世紀まで」という解答は求められておるまい。そこで後ろに続くフレーズの「後者（＝郡県制）はまた皇帝の時代と言ってもよいだろう」を取ると，清が滅んだのは1912年であるから，「20世紀」という解答が正解になる。こちらは河合塾「20世紀」，駿台は「６世紀」，代ゼミは「６世紀」としつつ分析で「20世紀という解答もありうる」，東進はやはり両論併記である。私自身が答えるなら，河合塾の解答を取る。リード文に従って「前３世紀から20世紀」というのが作題者の欲しかった正解じゃないかと思うのだが，確証はない。
代ゼミは「やや書きづらかったのではないか」，駿台は単純に「難問」とぼかしているが，河合塾はもろに「一部に問われている内容がわかりにくいものがあった」と書き，東進も「問１の時期にはさまざまな解釈ができる部分があり難問。」としている。全くその通りであろう。「論述問題で悪問は作りにくい」とおっしゃる方は，名古屋大の中国史を見てから同じことを言って欲しい。かくのごとく，いともたやすく作れるのである。論述問題の場合，設定が雑だと解答が多岐にわたる可能性がある。勘違いしないで欲しいのは，それ自体が悪いわけではないということだ。採点基準に幅があるのが問題文から明確に読み取れる場合は，多様な解答が見られる問題でもかまわないが，現実にはそうでないものが多い。作題者の想定する解答がおそらく１パターンしかないにもかかわらず，十分に知識を持った一人の解答者が思いついた解答が複数パターンある場合，これはやはり悪問と言わざるをえない。
（追記）『入試問題正解』は，始まりが「前４世紀の戦国時代の秦」，終わりはここに来て新説の「前３世紀末の前漢が郡国制を採用した時点」である（別解で「20世紀初頭」もありうる）。『赤本』は始まりが「前３世紀」の「始皇帝」，終わりは「６世紀」の「隋」（こちらも解説で「20世紀初頭」には触れている）。
３．名古屋大（２つめ）
＜種別＞悪問または難問
＜問題＞１ 問４ 下線部�い砲弔い董癖埣陦院Р宍�参照）。清朝によって加えられた改変のうち，満州王朝ならではのものを挙げなさい。（編註２：70字程度）
編註１：これも下線部周囲のリード文全体が関係するため，まとめて引用する。唐代・宋代の帝権・中央政府の官制が説明された後で，次の文章が入る。
こうした皇帝への権力集中は，明初に至ってついに制度的完成を見た。そしてこの明初に確立された体制は，満州族皇帝をいただく清朝に入っても，むろんいくらかの��改変は加えられたが，基本的にはそのまま継承され，皇帝制が廃絶されるまで維持されたのである。
＜解答解説＞
「満州王朝ならではのもの」という余分かつ不用意な言葉があるせいで，解答が定まらない。「清朝」から「満州王朝」に言い換えた理由は何か。また，そのような余分な言葉がある一方で問題文が簡素すぎ，リード文の文脈である帝権の強化や中央政府の官制を考慮すべきかどうかも判然としない。
「満州王朝」と「清朝」は単純に同義とする場合，これは帝権の強化・中央政府の官制というリード文の流れから言っても「軍機処」が正解になる。しかし，「満州人の王朝だからこそ誕生した制度」という意味合いを強く取るなら，軍機処ではやや不安が残る。軍機処という役所自体に満州人の民族要素は大きくない。
軍機処は軍事上の機密を守るという理由で雍正帝が設置し，当初はジュンガル遠征のための臨時機関という位置づけだった。やがて常設化し，権限を軍事から政治全体に拡大し，事実上の政治における最高機関となった。なぜなら，既存の最高機関である内閣は肥大化・煩雑化していて，また内閣とは別に存在した満州皇族・貴族を主な議員とする議政王大臣会議も存在した。この状態で皇帝が孤軍奮闘するには仕事が膨大すぎ，宮崎市定説を取るなら，雍正帝自身が過労死である。また，満州人官僚のために公文書は満州語へ翻訳する義務があり，これに膨大な手間がかかっていた。これらの問題が全て，軍機処の設置と権限拡大によって解決したのである。軍機処のメンバー（軍機大臣）は皇帝の直接選任であり，通常４〜７名の最少人数で討議された。しかも表向きは皇帝の私的な諮問機関であることを貫いたため，軍機処に持ち込まれる報告書や，軍機処で作成された詔書はあくまで「官僚と皇帝の私信」として扱われた。ゆえに文書は簡素でよいし，漢文と満州語の両方で作成する義務もなかった。軍機処の設置により，内閣も議政王大臣も骨抜きとなった。
以上のように，軍機処が帝権の強化に貢献したのは疑いがない。しかし，満州王朝ならではといえる要素が以上の説明にあっただろうか。あるにはあった。議政王大臣会議の存在と，翻訳の問題である。だが，議政王大臣会議と翻訳の問題に関する情報は高校世界史範囲外であり，基本的に解答に用いられないと考えてよいはずである。そうすると，実は無いのである。残りの現象は別に漢人王朝でも起こりうる。よくよく考えてみると，明朝の内閣の設置と制度的発展も似たような経緯である。既存の機関の処理の煩雑化，皇帝への仕事の集中，私設諮問機関を新設，新機関に権力が移動という流れだ。制度疲労による同じ事の繰り返しである。
軍機処について付け加えて言えば，軍機大臣は議政王大臣や内閣大学士との兼任が多く，したがって漢人官僚も内閣大学士との兼任として軍機大臣に選ばれることがあった。すなわち，漢人官僚弱体化のための機関を解するのは正しくない。ググってみると「漢人は軍機大臣になれなかった」という情報が流れているようだが，これは黄文雄の本が出典のようなので彼の勘違いか，軍機大臣のうち最も年季のあるものを非公式的に首席軍機大臣と呼んだ風習があり，それがほぼ満州人となるように軍機大臣の入れ替えがあったということが勘違いされているかのいずれかであろう。ただし首席が他の軍機大臣に比べて大きな権限を有したわけではなく，この点は内閣大学士と異なる。大体，初代軍機大臣の一人にして雍正帝の忠臣だった張廷玉からして漢人なんですがそれは。末期で言えば張之洞も袁世凱も軍機大臣経験者である。いないと思うが，黄文雄出典のデマを解答に書いた受験生がいたら，ご愁傷様である。なお，当然ながら首席軍機大臣に関する情報も範囲外である（というよりも軍機大臣という用語自体が高校世界史では未出）。
「満州王朝ならではの」という表現を重視するなら，理藩院は挙げられる。地方の間接統治の監督官庁だ。中国の王朝は異民族を間接統治することが多かったが，これをより明確に制度化したのが清朝の地方統治体制の「直轄領」と「藩部」である。直轄領は中国王朝伝統の“郡県制”で統治したが，藩部は民族・部族ごとに自治権を認めての間接統治である。特に清朝の場合，漢人王朝ではなく満州王朝であったこと，また中国本土より先に内モンゴルを征服しここを藩部としていたことという事情から，皇帝は冊封体制下の間接統治というよりも，むしろ多民族の皇帝として君臨していたという性格が強い。また，理藩院は満漢併用制の適用範囲外であり，満州人の独占官庁であった。これらの意味で，理藩院は明確に「満州王朝ならではの」制度と言えよう。帝権の強化・中央政府の官制というリード文の文脈がなければ，これが解答として最もふさわしかったと思う。
また満漢併用制であるが，これは高級官僚のポストは偶数として，同数を満州人と漢人にあてた制度である。そうすることで漢人の不満を解消しようとしたが，満州人と漢人の絶対数が違いすぎるため，競争倍率で考えると満州人が圧倒的に有利であったし，理藩院のように漢人のポストがない官庁があったのは事実だ。さらに，これが公的文書は必ず漢文と満州語の双方で作成しなくてはならないという義務の発生源であり，結果的に満漢併用制の制度的失陥が軍機処を生んだと言える。これも間違いなく「満州王朝ならではの」制度ではあるが，やはりリード文の文脈という点で疑問符がつく。
予備校各社の判断は，河合塾が「首席軍機大臣が必ず満州人」という理由を挙げての軍機処。これは範囲外で反則気味だが，最も良く答えている。駿台も軍機処を挙げているものの，こちらは用語集的な説明に終始しており，今ひとつ解答になっていない。もっとも，高校世界史での解答としては誠実な態度かもしれない。東進も駿台と全く同じ解答で，分析で「問４は『満州王朝ならでは』という問いかけをどのように判断するかやや難しいのではないかと思われる」と述べている。代ゼミは満漢併用制と八旗を挙げるという一風変わった解答とし，分析で「解答しづらい」と述べている。軍機処は上述の事情から使いたくないとなると，こういう解答にならざるをえないのかもしれない。ただ，八旗は軍事制度なのでどうにも違うだろう。私自身が解答を作成するとなると……白紙で提出して帰るかな，というのは冗談として，教科書範囲では解答不能な問題と見なして，河合塾的な逃げ方をするかなぁ。翻訳の問題あたりを挙げて。
（追記）『入試問題正解』は駿台と同じ，軍機処を挙げつつ用語集的な説明。『赤本』も同じだが，解説を読むと勝手に「満州王朝ならでは」を「清ならでは」に読み替えている。
どうしてこうなってしまったのか，理由を考えてみた。
a．解答には軍機処が求められていて，河合塾の説明が満点解答だが，高校世界史の教科書をよく読まずに作ってしまった。
b．解答には軍機処が求められていて，駿台や東進レベルの解答で十分満点になる。「満州王朝ならではの」に深い意味を付したつもりは全くなく，別に「清朝独自の」と同義語だった。
c．解答は軍機処，理藩院，満漢併用制のどれでもよく，「満州王朝ならではの」はおろか，文章全体の流れも実は気にしなくていい問題だった。
これらのいずれかくらいではないだろうか。ぶっちゃけて言うと私はbが真相ではないかと。そして言い換えた理由は修辞上かっこよかったからではないかと。まじめに考えるだけバカを見る問題な気がする。
なお，念のために書いておく。本問の類題として，2003年の京大の問題がある。ただしあちらは「皇帝独裁制の強化をもたらした政治制度の改変について述べよ」と明示されているので，理藩院も満漢併用制も排除できる＝軍機処だけが正解になる。こういう工夫を「練った」と言うのだ。
改めて名古屋大には真剣に問いたい。この２問は適正な出題か。
なお，あまりにも雑な作題がこの２問なだけであって，アヤを付けようと思えば他の問題も付く。実際，河合塾がこの２問とは全く別の２問で名古屋大学に公開要請を行った。
河合塾のこういう社会的意義を考えた行動・態度は，裏に宣伝目的があるにせよ，とても良いと私は思う。その２問の前にこの中国史２問を指摘しろよとは思うが，河合塾の指摘も外れたものではない。雑に雑を重ねた論述問題の作題は，配点が大きいために，採点基準によってはマーク式よりも被害が大きい。慎重な作題と採点を私からもお願いしたい。
４．九州大
＜種別＞誤植（厳しく取れば出題ミス）
＜問題＞３ 問３．３世紀の西ローマ帝国において，各地の軍団が独自に皇帝をたて，短期間に多数の皇帝が即位しては殺害されるという状況が続いた。(1)この時代を一般に何と呼ぶか。その名称を答えなさい。(2)このころ，奴隷制経営によるラティフンディアにとってかわり，貧困化した自由民などを大所領で働かせる生産体制が広まったが，この制度を何と呼ぶか。
（強調は編者）
＜解答解説＞
今年が地歴入試初年度となる九州大だが，初年度から誤植（出題ミス）があった。先が思いやられる。言うまでもなく３世紀は東西分裂前なので，「西」は不要。この誤植を無視して答えるなら，(1)は軍人皇帝時代，(2)はコロナートゥスである。九州大学当局からの発表はなし。
なお，九州大については誤植がどうこうよりも，論述の字数を話題に挙げた方がよかろう。600字論述が１題出ていて，関係者の度肝を抜いた。600字を課す大学は現状東大のみであり，見るからにこれを参考に作ってしまったようである。次点が一橋大・筑波大の400字，その次が名古屋大の350字，京大の300字，千葉大の約300字あたりで，ほとんどの大学はそれ未満の論述問題しか出題されない。九大も受験生のレベルを考えると300字が適正だったのではないかと思う。せっかくの新設ではあるが，この無茶ぶりが続くようなら，受験生は逃げるだろう。「それでも特色ある入試にしたい」というのであれば，それは大学入試の多様性保持には良いことであって，殊更責めるポイントではないが。
☆おまけ：予備校解答速報精度比較（私大）
英語でこういうことをやっているサイトを発見したので，世界史でも軽く調査した。ただし英語ほどには差がつかなかった。４大予備校以外も調査。「ここは早稲田・慶應の世界史の解答速報やってる」というタレコミ歓迎。以下はあくまで私見によるカウント・評価であるので，注意されたし。
【解答ミスのカウント】
・駿台：早慶の１１日程を公開。ミスは早大政経の１箇所のみ。
・代ゼミ：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは上智大の１箇所のみ。
・河合塾：早慶の全１３日程を公開。ミスは早大文化構想学部の１箇所のみ。
・東進：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは１０箇所以上。１５箇所を超えていると思われるが，私は途中で数えるのをやめた。
・早稲田予備校：早稲田の全９日程を公開。ミスは５箇所。ただし，大半がタイポと思われる（後述）。
・増田塾：早慶上智の全１８日程を公開。ミスは慶應大商学部の１箇所のみ。ただし，論述問題であるので手痛い。
・城南予備校：早慶の１０日程を公開。完全ノーミスだが，公開が非常に遅いため当然（後述）。
【過去の解答速報も踏まえての評価】
・駿台：代ゼミと並ぶ最強精度。試験日２〜３日後とそこそこの速度で，よく調べてくる。特に出題ミスは私が気づかなかったものまで指摘していることがしばしばあって，本企画としても大変重宝している。また，予備校の分析の中で最も口が悪く，「これは入試じゃなくて世界ふしぎ発見」「入試問題として成立していない」「出題者の良心を疑う」等々。
・代ゼミ：ここも精度は最強。試験日翌日か２日後には出ており，大体において全予備校最速なのもポイントが高い。以前は分析が適当で残念な感じだったが，ここ２年ほどは改善していて，読める文章が出てくるようになった。駿台との大きな違いは分析が甘口で，また出題ミスの指摘を極力避けている様子であること。
・河合塾：駿台と代ゼミに比べると少々ミスがあるが，誤差範囲のレベルで高水準。出てくるのがおおよそ試験日３日後でやや遅いことと，分析が短くあまり参考にならないことが残念。また，国立の論述の解答は上記２校に比べて落ちる気がする。
・東進：予備校として失格レベルと評さざるをえない。他の大手予備校比で３〜５倍の頻度で解答にミスがあり，言い換えれば１日程に１つはほぼ必ず間違いがある。しかもタイポじゃなくて素で間違えているミスが散見される。じゃあ早いかというと試験日３日後水準で河合塾と同程度，分析も４大予備校で最もいい加減。大学生のバイトが作ってるとしてもひどいし，せめて早稲田や慶應くらいは講師に作らせるべき。悪評にしかならないので，もう速報止めた方がいい。
・早稲田予備校：早稲田限定。精度は東進よりマシといった程度なのだが，ほとんどがタイポであり，分析を読むとちゃんとした正解がわかるのが救い。本当にタイポがもったいない。また速度はまちまちで，最速なこともあれば，４日経っても出ないこともある。精度も速度も，いかにも小規模塾というような欠点に思える。分析は全予備校で一番しっかり書いている部類で，これは早稲田大に特化している強みだろう。駿台に次いで口が悪い。
・増田塾：精度は高水準で，駿台と代ゼミに次いで河合塾と同レベル。一方，速度は試験日４〜５日後と遅い。ここまで遅いと「速報」ではなかろう。これは分析ではなく，非常に重厚な解説をつけているからだろう。ちゃんと解説を読みたい受験生ならここの解答速報が一番良い。
・城南予備校：ここはもうハナから「速報」を名乗っていない。出るのは試験日から一週間以上経った後で，あからさまに他の予備校の解答を見てから作っている。だったら精度は最強じゃないとおかしいはずなのだが，なぜかわざわざ間違った方を選んで間違った解説をしていることがあり，駿台と代ゼミの精度には劣っている。どういうこと。かつ，解説は充実しているものの，増田塾の方が良い。
・武田塾：論外。まずサイトを見やすく作ってくれというのと，予告なく作成しない日程があり，分析が存在しないというのは，もはや解答速報として価値がない。精度を測る気力も失せたのでやってません。
Posted by dg_law at 21:30│Comments(18)│
この記事へのトラックバックURL
この記事へのコメント
名大の一つ目、封建と郡県の対比ですから、終わりは清末で間違いないでしょう。州県制は郡県制の一形態ですから。
Posted by hoge at 2015年03月15日 23:31
武田塾はどこでも酷評の嵐ですね笑
賢い学生をバイトとして雇っているのですが、解答速報は誰が書いてるんでしょうね…
賢い学生をバイトとして雇っているのですが、解答速報は誰が書いてるんでしょうね…
Posted by がもん総理 at 2015年03月16日 00:46
＞hogeさん
その辺は解答解説で綿密に書いたつもりですが……
リード文を参照にすると「州県制は郡県制の一形態」という広義の意味合いで郡県制を解釈してほしそうなので，その解答で正しいことになりますし，私もその可能性の方が高いと思います。
ただ，どの程度リード文を手がかりにつかってよいのか不明瞭で，郡県制が広義なのか狭義なのかが判然としないのが本問の問題点ですね。採点基準上，６世紀という解答をどう処理しているのかはかなり気になるところです。駿台の解答は満点になるのか否か。
受験世界史では，リード文が問題に関係することのほうが少なく，リード文を活かして解答を作成してほしい意志のある大学は問題文に「リード文を参照にして」とわざわざつける傾向があります。この受験世界史の慣例に対する不信感が強く働いているのは確かです。大学間で連携を取って一致した基準を作れとまでは決して言わないので，常識的な範囲での親切さは欲しいなと。不親切な問題を出して受験生を振り落としている風潮すら，一部の私大では見られるのはその１・その２でも書いてきたところですし。
＞がもん総理さん
精度以前の問題ですからね……
サイトの作りと解答速報のシステム自体を見なおしてほしいですね。
少なくとも予告なく作らない日程があるのはどうしようもない。
その辺は解答解説で綿密に書いたつもりですが……
リード文を参照にすると「州県制は郡県制の一形態」という広義の意味合いで郡県制を解釈してほしそうなので，その解答で正しいことになりますし，私もその可能性の方が高いと思います。
ただ，どの程度リード文を手がかりにつかってよいのか不明瞭で，郡県制が広義なのか狭義なのかが判然としないのが本問の問題点ですね。採点基準上，６世紀という解答をどう処理しているのかはかなり気になるところです。駿台の解答は満点になるのか否か。
受験世界史では，リード文が問題に関係することのほうが少なく，リード文を活かして解答を作成してほしい意志のある大学は問題文に「リード文を参照にして」とわざわざつける傾向があります。この受験世界史の慣例に対する不信感が強く働いているのは確かです。大学間で連携を取って一致した基準を作れとまでは決して言わないので，常識的な範囲での親切さは欲しいなと。不親切な問題を出して受験生を振り落としている風潮すら，一部の私大では見られるのはその１・その２でも書いてきたところですし。
＞がもん総理さん
精度以前の問題ですからね……
サイトの作りと解答速報のシステム自体を見なおしてほしいですね。
少なくとも予告なく作らない日程があるのはどうしようもない。
Posted by DG-Law at 2015年03月16日 17:00
私が思うに、東進の世界史はたぶん、ある講師が一人で難関大学はほぼ担当するシステムになってると思います、わけは、公式サイトを見る限りだと他の予備校と比べて科目ごとの講師が少ない（とくに社会科目..駿台などはいろんな地方にそれぞれ講師がいるので数自体は膨大、株式会社方式の衛星授業なので講師の数を限れる分、破格の給料で雇っているという噂）。
なので、現代文のとあるほぼタレント講師が「東大・京大の現代文は俺がほぼ責任を持っている」とか言ってるのはその裏返しだと思われます。
だから、東進の回答は（少なくとも世界史においては）時間をかけたクロスチェックが難しく、もしかしたらバイト大学生などの手も借りてるのかもしれません。
なお、先述の有名現代文講師は、東大卒部下数名とクロスチェックしているらしいです。
以上が私なりの推測です。
なので、現代文のとあるほぼタレント講師が「東大・京大の現代文は俺がほぼ責任を持っている」とか言ってるのはその裏返しだと思われます。
だから、東進の回答は（少なくとも世界史においては）時間をかけたクロスチェックが難しく、もしかしたらバイト大学生などの手も借りてるのかもしれません。
なお、先述の有名現代文講師は、東大卒部下数名とクロスチェックしているらしいです。
以上が私なりの推測です。
Posted by koshiMAX at 2015年03月16日 17:34
上位層なら武田塾の解答より高得点が取れたりしますからね
教科書などが使えて比較的正誤の判定が楽な地歴で間違えだらけとか
予備校としてどうなのかとｗｗ
教科書などが使えて比較的正誤の判定が楽な地歴で間違えだらけとか
予備校としてどうなのかとｗｗ
Posted by a at 2015年03月17日 00:12
ちなみに、赤本や大学入試問題正解の方の精度についてはどうお考えですか？
Posted by koshiMAX at 2015年03月18日 11:33
「これは入試じゃなくて世界ふしぎ発見」
がどんな問題に対しての指摘なのか気になりますので，お手すきの際に学校等について教えていただければ嬉しいです。
がどんな問題に対しての指摘なのか気になりますので，お手すきの際に学校等について教えていただければ嬉しいです。
Posted by アォ at 2015年03月18日 12:13
本年度一橋大に合格した者です。
去年一昨年と、怒涛の超難問を見ていたので、僕は清教徒革命（両年とも革命がテーマだったし出るかな？というヤマです）や社会主義思想を入念に勉強して本番に挑みましたが、いざ本番でこの問題を見て真っ青になりました(笑)
ちなみに僕自身の解答は、EUは国の上位に政府機関を設け、非常に自由なヒトモノカネの移動を認めているのに比べて、ASEANはあくまで経済的地域統合を目指す集まりである、のようなまさに世界史というより政治経済、現代社会の範疇のもので、更にECSCからEUまで含めて論述しました。
去年一昨年と、怒涛の超難問を見ていたので、僕は清教徒革命（両年とも革命がテーマだったし出るかな？というヤマです）や社会主義思想を入念に勉強して本番に挑みましたが、いざ本番でこの問題を見て真っ青になりました(笑)
ちなみに僕自身の解答は、EUは国の上位に政府機関を設け、非常に自由なヒトモノカネの移動を認めているのに比べて、ASEANはあくまで経済的地域統合を目指す集まりである、のようなまさに世界史というより政治経済、現代社会の範疇のもので、更にECSCからEUまで含めて論述しました。
Posted by Wao at 2015年03月18日 18:40
＞koshiMAXさん
２つ分まとめてお返事します。
東進の解答速報については，おそらく推測の通りだと思います。非常に少数の講師陣で作っていて，ノーチェックで速報を出していると思われます。
国立の論述問題の解答例が典型的なんですが，解答の文体がどう見ても一人の文章なんですよね。非常に癖がある解答例です。おそらく，その先生の専業になっているのでしょう。
どんなに知識があって，どんなに腕の立つ先生でも，一人でやると必ず事故が起きます。だからクロスチェックが必要なんですが……この辺は小規模な塾・予備校なら仕方ないなと思うんですが，東進くらいの規模になると言い訳がきかないと思いますね。
赤本や入試問題正解の精度は，拙著の方でちょくちょく言及しましたが，さすがに高いです。入試問題正解の方はたまにミスってますが。実はどちらの制作陣にも知り合いがいますが，意外と少数でやってるようです。どちらも入試が終わったから数カ月後に出ますが，ほとんど全大学全日程を扱っているのに少数でやっているから，それだけ時間がかかっているのではないかと思います。
＞ a さん
解答速報って基本的には営業とインフラを兼ね備えたものなので（じゃないと無料ではやってないし新聞社とも提携しない），
営業にならないならやる意味が無いと思うんですけどね。
他社にリンク張ってインフラを気取ってるくらいなら，やらなくていいと思うんですよね。
２つ分まとめてお返事します。
東進の解答速報については，おそらく推測の通りだと思います。非常に少数の講師陣で作っていて，ノーチェックで速報を出していると思われます。
国立の論述問題の解答例が典型的なんですが，解答の文体がどう見ても一人の文章なんですよね。非常に癖がある解答例です。おそらく，その先生の専業になっているのでしょう。
どんなに知識があって，どんなに腕の立つ先生でも，一人でやると必ず事故が起きます。だからクロスチェックが必要なんですが……この辺は小規模な塾・予備校なら仕方ないなと思うんですが，東進くらいの規模になると言い訳がきかないと思いますね。
赤本や入試問題正解の精度は，拙著の方でちょくちょく言及しましたが，さすがに高いです。入試問題正解の方はたまにミスってますが。実はどちらの制作陣にも知り合いがいますが，意外と少数でやってるようです。どちらも入試が終わったから数カ月後に出ますが，ほとんど全大学全日程を扱っているのに少数でやっているから，それだけ時間がかかっているのではないかと思います。
＞ a さん
解答速報って基本的には営業とインフラを兼ね備えたものなので（じゃないと無料ではやってないし新聞社とも提携しない），
営業にならないならやる意味が無いと思うんですけどね。
他社にリンク張ってインフラを気取ってるくらいなら，やらなくていいと思うんですよね。
Posted by DG-Law at 2015年03月18日 20:07
＞アォさん
伝説の2011年の早大社学だったかと思います。＞「世界ふしぎ発見」
ググって確認してきました。やっぱりこれでした。
＞Waoさん
まずはおめでとうございます。
現実的な解答としては，それで十分な気がします。
記事本文中にも書きましたが，「一橋大が求めている水準が駿台レベルの単純なもの」として，ECSCやEUにも踏み込みつつ，深度の問題として処理する（ヨーロッパの地域統合の方が自由化が進んでいる），第１問と第３問でしっかり書くというのが賢い手段だったかと思います。
ついでに勘違いしている人がたまにいるので言及しておくと，今年の一橋大の問題点は，設定の雑さが問題の難易度を跳ね上げた点であって，問題設計自体に欠陥があるわけではありません。
前後の組織を含んでよいかどうかが明示されていれば，収録対象外でした。
伝説の2011年の早大社学だったかと思います。＞「世界ふしぎ発見」
ググって確認してきました。やっぱりこれでした。
＞Waoさん
まずはおめでとうございます。
現実的な解答としては，それで十分な気がします。
記事本文中にも書きましたが，「一橋大が求めている水準が駿台レベルの単純なもの」として，ECSCやEUにも踏み込みつつ，深度の問題として処理する（ヨーロッパの地域統合の方が自由化が進んでいる），第１問と第３問でしっかり書くというのが賢い手段だったかと思います。
ついでに勘違いしている人がたまにいるので言及しておくと，今年の一橋大の問題点は，設定の雑さが問題の難易度を跳ね上げた点であって，問題設計自体に欠陥があるわけではありません。
前後の組織を含んでよいかどうかが明示されていれば，収録対象外でした。
Posted by DG-Law at 2015年03月18日 20:30
進学予定の早稲田国教、自己採点で一問ミスだわーいと思っていたら第一次中東戦争の問題を間違えてたことをたった今知りました笑
Posted by rick at 2015年03月21日 22:37
ま，まあ受かってればｗ
Posted by DG-Law at 2015年03月22日 03:34
世界史以外のことまで、世界史絶対として物を見るのは危険
Posted by 通りすがり at 2015年04月04日 11:33
ん？ ちょっと言っている意味がわかりません。
Posted by DG-Law at 2015年04月04日 14:17
名大の赤本の解説に
「20世紀という回答も考えられるが受験世界史ということを考え6世紀とした」
というような内容が書かれていましたが、これは暗に悪問だと言っているのでしょうか？
「20世紀という回答も考えられるが受験世界史ということを考え6世紀とした」
というような内容が書かれていましたが、これは暗に悪問だと言っているのでしょうか？
Posted by あ at 2015年07月11日 13:44
でしょうね。『赤本』だとさすがにここのように解説で切れるわけにはいかないのでｗ，執筆者としても暗に悪問だと言うしかなかったのでしょう。
Posted by DG-Law at 2015年07月11日 14:51
予備校はよく「入試問題は大学からのメッセージ！」みたいなこと偉そうに言うけど、本当にそうなんですかね。
平気で悪問奇問出題したり、日本語が熟れなさすぎて文の意味を何通かに解釈できてしまったり。
大学教授は「ああ〜また受験シーズン来たよ。入試問題作るの面倒だなあ」ぐらいにしか思ってないデスよね？
今後の人生を大きく左右させる大学入試であり、それに向けて一所懸命努力してる高校生が大勢いる一方で、問題作成に無頓着な教授(全員ではないだろうが)がこんなにも沢山いると思うと、なんか悲しいですね。
平気で悪問奇問出題したり、日本語が熟れなさすぎて文の意味を何通かに解釈できてしまったり。
大学教授は「ああ〜また受験シーズン来たよ。入試問題作るの面倒だなあ」ぐらいにしか思ってないデスよね？
今後の人生を大きく左右させる大学入試であり、それに向けて一所懸命努力してる高校生が大勢いる一方で、問題作成に無頓着な教授(全員ではないだろうが)がこんなにも沢山いると思うと、なんか悲しいですね。
Posted by 匿名 at 2015年10月22日 14:01
「入試問題と大学の校風の関係」は，実は拙著の方で書いています。良ければお読みください。悪問の傾向によって（超難問なのか出題ミスなのか等），その大学の校風が見て取れたりもしますから，必ずしも良問だけがメッセージとは限らないかなと。嫌味な言い方ではありますが。
http://blog.livedoor.jp/dg_law/archives/52229003.html
「大学教員のやる気と出題ミスの関係」についても，拙著で触れています。
ぶっちゃけて言うと，まあおっしゃる通りです。だから出題ミスがこれだけ頻発しているという，構造上の問題があると思います。
その構造上の問題の糾弾，今後の人生を大きく左右する入試に対するあるまじき態度への非難が，本企画の趣旨でもあります。
http://blog.livedoor.jp/dg_law/archives/52229003.html
「大学教員のやる気と出題ミスの関係」についても，拙著で触れています。
ぶっちゃけて言うと，まあおっしゃる通りです。だから出題ミスがこれだけ頻発しているという，構造上の問題があると思います。
その構造上の問題の糾弾，今後の人生を大きく左右する入試に対するあるまじき態度への非難が，本企画の趣旨でもあります。
Posted by DG-Law at 2015年10月23日 02:15
