2015年09月18日
7・8月に行った展覧会
ここ二ヶ月くらいで行った展評をまとめて。
出光美術館の桃山美術展。行ったのが随分前なので正直そこまで覚えていないというのはあるが,感想を述べにくい。悪かったというわけではなくて,気合入れて所蔵品を出してきたなぁとは思えた。楽焼も織部も砧青磁も良かったし,長谷川等伯の屏風も良かった。しかし,単純に良かっただけなので,感想は述べづらい。展評の数で今年行った数を数えているのだが,いよいよそのシステム自体が困難になってきたのかなと。さすがに何度も見ているもので新鮮な感想は難しい。そう考えさせられた展覧会ではあった。
国立新美術館のニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展。もはやありきたりの展示となりつつある漫画・アニメ・ゲーム系の展示ではあるが,その総集編としては十分な規模と質であった。入ってすぐの年表で直近25年を振り返っていたが,エロゲ・ギャルゲーをかなり密に拾っており,少なくともこれ編集した奴は「わかってるな」と。展示の方だとさすがにエロゲは少なく,『Fate/stay night』があるくらいだったが,隣の展示が『ほしのこえ』と『ひぐらし』と『東方紅魔郷』というあたりね,なんかもうね。この展覧会についてはしばしば「批評性がなく,ただ集めただけ」という批判もあるが,総花的にこれだけの規模で集めたこと自体に一定の意味が見いだせるものではあり,かつこれだけ「わかっている」人がやったとなると,史上初とまでは言わないが,それ自体に批評性を見いだせる展覧会だったのではないかと思う。
一方で,直近25年を振り返っているので,アラサー・アラフォーの現役選手が友人を連れて行くと,批評性とか一切考えずに,懐かしさと的確なキャプションだけで十分楽しい展覧会ではあった(私は頬付君と行きました)。TV版のエヴァが全話同時に放映されている光景はなかなか圧巻。しかも振り返ると『ハルヒ』を大画面で放映中というのは,ゼロ年代の批評家がその場で踊り出しそうな配置だ。あと,『アイカツ』で「初音ミク」で『アイドルマスター』という並びとかラブライブがいない。できればコミケ前に展評を書いて「まだ行ってない人はコミケのついでに行くといいよ」とやりたかなったのだが,残念ながら真面目な展評を書いている時間が取れず,また他のブログのネタがいくらでもあったため後回しにしていたら,コミケが終わっていた。作品リスト(pdf)は残っているので,雰囲気だけでも。
近美の「No Museum, No Life?」展。タイトルに関しては私はYesとしか言えないのだが,そういう美術“館”好き(美術好きとは似て非なるもの)にはたまらない展覧会。「美術館事典」と称して美術館にかかわる用語をA〜Zにまとめ,それぞれの用語にまつわる展示がなされていた。これについてはすでに優れた展評があるので,自分で語るべきところは少ない。あと写真たくさん貼るのがめんどい。
・東京国立近代美術館『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』(日毎に敵と懶惰に戦う)
在華坊さんが触れてなさそうな所に触れておくと,
ベトナムだったかの農民に,ミレーの《落穂拾い》を何の前情報もなく鑑賞させて,その感想を映像でとった作品。若干悪趣味な実験ではあるが,農民たちの好き放題いいまくっているのが,美術と教養に関する問題においてなかなか刺さる。
日本の文化行政への切実なる訴え。一番下,5美術館合計ですからねこれ。1館同士で比較したら規模が違いすぎるだろうという話は通らない。
これはまず間違いなく,今年で一番おもしろかった展覧会になるだろう。
出光美術館の桃山美術展。行ったのが随分前なので正直そこまで覚えていないというのはあるが,感想を述べにくい。悪かったというわけではなくて,気合入れて所蔵品を出してきたなぁとは思えた。楽焼も織部も砧青磁も良かったし,長谷川等伯の屏風も良かった。しかし,単純に良かっただけなので,感想は述べづらい。展評の数で今年行った数を数えているのだが,いよいよそのシステム自体が困難になってきたのかなと。さすがに何度も見ているもので新鮮な感想は難しい。そう考えさせられた展覧会ではあった。
国立新美術館のニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展。もはやありきたりの展示となりつつある漫画・アニメ・ゲーム系の展示ではあるが,その総集編としては十分な規模と質であった。入ってすぐの年表で直近25年を振り返っていたが,エロゲ・ギャルゲーをかなり密に拾っており,少なくともこれ編集した奴は「わかってるな」と。展示の方だとさすがにエロゲは少なく,『Fate/stay night』があるくらいだったが,隣の展示が『ほしのこえ』と『ひぐらし』と『東方紅魔郷』というあたりね,なんかもうね。この展覧会についてはしばしば「批評性がなく,ただ集めただけ」という批判もあるが,総花的にこれだけの規模で集めたこと自体に一定の意味が見いだせるものではあり,かつこれだけ「わかっている」人がやったとなると,史上初とまでは言わないが,それ自体に批評性を見いだせる展覧会だったのではないかと思う。
一方で,直近25年を振り返っているので,アラサー・アラフォーの現役選手が友人を連れて行くと,批評性とか一切考えずに,懐かしさと的確なキャプションだけで十分楽しい展覧会ではあった(私は頬付君と行きました)。TV版のエヴァが全話同時に放映されている光景はなかなか圧巻。しかも振り返ると『ハルヒ』を大画面で放映中というのは,ゼロ年代の批評家がその場で踊り出しそうな配置だ。あと,『アイカツ』で「初音ミク」で『アイドルマスター』という並びとか
近美の「No Museum, No Life?」展。タイトルに関しては私はYesとしか言えないのだが,そういう美術“館”好き(美術好きとは似て非なるもの)にはたまらない展覧会。「美術館事典」と称して美術館にかかわる用語をA〜Zにまとめ,それぞれの用語にまつわる展示がなされていた。これについてはすでに優れた展評があるので,自分で語るべきところは少ない。
・東京国立近代美術館『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』(日毎に敵と懶惰に戦う)
在華坊さんが触れてなさそうな所に触れておくと,
ベトナムだったかの農民に,ミレーの《落穂拾い》を何の前情報もなく鑑賞させて,その感想を映像でとった作品。若干悪趣味な実験ではあるが,農民たちの好き放題いいまくっているのが,美術と教養に関する問題においてなかなか刺さる。
日本の文化行政への切実なる訴え。一番下,5美術館合計ですからねこれ。1館同士で比較したら規模が違いすぎるだろうという話は通らない。
これはまず間違いなく,今年で一番おもしろかった展覧会になるだろう。
Posted by dg_law at 02:11│Comments(0)│