2015年10月24日

『Banished』覚書

充実したWikiがあるので,ここではゲームの簡単な紹介と,各ポイントにおける私的なコメントを書いておく。


【『Banished』とは?】
"Banished"は「追放者たち」という意味。何らかの事情で追放され,住処を失った人々の指導者となって,森林を開拓し,新たな集落を形成するのが目的のゲーム。入手方法はいくつかあるが,Steamで購入するのが最も手軽であろう。レートにもよるが,2000円前後で購入できる。値段の安さや,ゲーム製作者がたったの二人という点からも想像できる通り,正直に申告してシンプルなゲームであり,簡単にコツがつかめる。しかし,美麗なグラフィックと音楽により中世ヨーロッパの農村の雰囲気を手軽に楽しめるという経営系SLGという点で本作は突出しており,年間継続してプレイする人は少なかろうとも,多くの人が1周間ほどは寝食を忘れるというゲームになっている。


【Banished惑星の特徴】
Banishedは基本的に中世ヨーロッパの雰囲気が漂う世界観ではあり,おそらくモチーフは東方植民であろう。しかし,いくつか地球とは違った特徴を持つ。
・公転周期が地球の約4倍。四季があるのは同じなので,おおよそ季節が一つ過ぎるたびに人間たちが1つ歳をとっていくことになる。言い換えると,Banished惑星の1年は地球の4年にあたる。本作は1年はyear,人間の年齢はageで表示するので,1year=4ageである。これを頭に入れておかないと意外と混乱する。
・気候はゲーム開始時に三種類から選べる。Mild,Nomal,Harsh。MildとNormalはそれほど違いを感じないが,Harshは目に見えて秋が短く,冷えるのが早い。結果的にHarshでは農業の生産効率が悪い。
・地形も開始時に山がち(Mountain)か谷底(Valley)か選択できる。谷底マップの方が平地が広く,水場も多い。本作の山は鉱山以外に一切利用価値がなく,標高の高い山は村人が通れない。したがって,はっきり言うと本作の山はあるだけ邪魔な存在である。普通にプレイしたければ谷底マップを,マゾプレイをしたければ気候をHarshにした上で山マップにするとよい。
・地球とは別の惑星なので,いかに中世ヨーロッパの雰囲気が出ていようとも,ジャガイモが普通に存在する。中世ファンタジー警察はお引取りを。


【Banished人の特徴】
これもいくつか地球人と異なった特徴を持つ。
・極めて勤勉で,ほとんどさぼらない。ゲーム終盤以降に発生するNEET(事実上の失業者)になると別であるが。
・身体が極めて頑丈。中世ヨーロッパレベルの医療水準であると推測され,医薬品は森林で採取できる薬草のみであるが,人口の9割が天寿を全うして老衰死する。残りの1割はゲーム序盤の餓死・凍死と,女性の産褥死であり,ゲームシステム上は病死が存在しているものの,薬草の収集さえ怠っていなければインフルエンザが流行ろうがチフスが流行ろうが,ほとんど死なない。平均寿命は80歳くらいあるのではないだろうか。Banished惑星の公転周期から言って20年くらいは生存を見込める。しかも老衰死する直前まで現役で働き,生産効率も下がらない。15歳くらいから80歳くらいまでが生産人口として見込める。しかも,妊娠中の女性も一切生産効率が下がらないし,産休も育休も取らない。
・頭脳も全員明晰。トロピコのように村人一人一人に能力値を設定したり適性を設定したりすると煩雑になるから避けたものと思われるが,10歳から学校で5年ほど学習すると,あらゆる分野のエキスパートになれる。
・そこそこ高い文明度にもかかわらず,貨幣というものの存在を知らない。交易はすべて物々交換であるが,薪や毛織物が事実上の通貨として流通することが多い。


【難易度】
本作はゲーム開始時に,前述した地形と気候,そして村人の初期状態が設定できる。初期状態は3種類から選択でき,EasyとNormalとHardがある。Easyは本当にぬるいので,トロピコに代表される他の集落経営SLGをやったことがある人は,いきなりNormalで全く問題ない。また,EasyとNormalは最初から納屋(物置小屋)が建っており,農業も可能。Hardは本当に着の身着のまま追放されたという状態でスタートするので,そこそこ難易度が高い。しかし,他の集落経営SLGの熟練者ならいきなりHardで始めたくらいの方が楽しいかもしれない。その程度には全般的な難易度は高くないゲームと言える。

【参考動画】


ゆっくり実況に抵抗がないなら,この動画が参考になると思う。


【序盤のコツ】
衣食住の確保と考えて,森林を切り開いて木材を確保したら,まずは家族数分の家(wooden house)を建てる……というのは本作最大の罠。本作の「家」は厳密に言うと住処ではなく,繁殖施設である。夫婦が夜の営みをして子供を生み,人口が増やす。Banished人は恥ずかしがりなので,青姦は決してしない。一方,家を建てると集落の食糧状態を一切考慮せず,本能のままにやりまくる。この点は地球人よりも理性が無い。結果として,序盤に野宿生活者をゼロにすべく家を家族数分建てると,2・3年には子供=非生産人口が爆発的に増加し,食糧の需給バランスがあっという間に崩壊し,集落は全滅に追い込まれる。おそらく,本作の全滅エンドの最大の要因がこれであろう。

とはいえ,家を建てないと暖が取れず,冬が越せないんじゃ……と思われるだろうが,実はBanished人は寒さに耐えられなくなると他人の家にずかずかと上がり込んで暖を取るので,序盤は暖房用の家が1軒だけあれば全く問題ない。私は最初これに気づかず,「なんで序盤はこんなに食糧が足りなくなるんだ……難易度がシビアなゲームだなぁ」とか考えていた。チュートリアルで「ゲームを開始したら,家は家族分建ててあげましょう」と誘導されるんだから,完全に罠である。

というわけで,まずは食糧,次に薪,その次に道具と衣服。それぞれの生産手段はチュートリアルをやるなり,Wikiを見ればわかるので割愛する。そしていよいよ最後に2軒目家……とは,実はならない。生産が安定したら,住居よりも優先して真っ先に学校が建てられるべき。本作における教育は極めて重要な要素で,詳細な数字はWikiに譲るが,教育されないまま成人すると,各種の生産能力が2〜3割落ちる。これはかなりの死活問題で,non-educatedな村人だらけの集落は全くの別ゲーのごとく難易度が跳ね上がる。そういう縛りプレーをしているわけでもなければ,学校は何よりも真っ先に建てるべきだ。暖房用以外の家は,それぞれの資材が安定して,学校も建て終わり,労働力不足を感じるようになってからで十分だ。


【中盤のコツ】
人口が100人を超えた辺りから物資が余り始めるので,交易所を建てるとよい。余剰物資をつっこんでおくと,一定周期(1年に1度)で商人が来訪し,物々交換を申し出てくる。村人の健康度・幸福度は,多種類の食糧が確保されると上昇するシステムになっているので,自分の村で収穫できない農産物を輸入するとよい。また,本作の鉱山はめちゃくちゃ生産効率が悪いので,鉱物資源は完全に輸入に頼った方がよい。

人口が100人くらいの頃だと余りやすいのは薪。木材を輸入して薪に加工して輸出する,加工貿易はかなり効率よく稼げる。商人が羊を持ってきたら何に代えてでも2頭買うこと。後述するが,羊は本作で最強の経済動物である。羊を飼って羊毛を生産し,衣服に仕立てて輸出すると莫大な資産が手に入る。やってみるとわかるが,正直本作の羊はバランスブレイカーなので,ぬるすぎると感じたら全頭屠殺して封印してもよいかもしれない。そのくらい羊を飼い始めるとヌルゲーになるので。なお,全ての家畜は2匹以上でなければ繁殖が進まない。Banished人は牧場からはみ出た家畜のみ屠殺するので,最初に2匹以上を牧場に入れないと,食料生産施設としては無意味なことになる。


【各食糧生産職業の特徴】 ※ 村人一人は年間100の食糧を消費。つまり年間400の食糧を生産する村人は,自分以外に3人養える計算になる。
・漁師(漁業):すべては漁港の配置にかかっている。漁港から一定距離の円の中にある水面積が大きいほど,漁獲高が上がる。最大だと漁師一人で魚が600ほど生産可能だが,そのような漁業になるには川が鋭角に蛇行しているか,ハート型の湖でも存在していなければ無理で,そんな都合の良いマップは谷底マップでもそんなに無い。普通のマップだと,一人頭400出ていればまずまずと言ったところだろう。漁師一人の生産力は高くない。ただし,水辺は漁港と交易所以外に設置できるものがないため,単位面積(陸地)あたりの生産力なら極めて高い。
・猟師(狩猟):こちらは狩猟小屋から一定距離の円の中にある人の“少なさ”によって収穫量が決まる。森林である必要はないものの,人が少ない場所を選ぶと自然と集落の中心から大きく離れた原生林の真ん中とかに狩猟小屋を置くことになる。猟師以外誰もいないような僻地だと,一人頭年間400の肉がとれ,加えて鹿革が取れる。鹿革は衣服に加工できる。狩猟の目的は肉生産よりも,皮革生産にあると言える。また狩猟小屋の要求する円はかなり巨大で,狩猟の単位面積辺りの生産力は全職業で最低と思われる。
・採集家(採集):こちらは一定距離の円の中にある木の本数に依存するので,森林のど真ん中に採集小屋を建てることになる。もっとも,前述の事情から結果的に狩猟小屋と隣接することが多い。円がちゃんと森林のど真ん中にあれば一人あたりのGDPは安定して600〜700。ただし,狩猟と同様,膨大な土地を,しかも森林として要求されるので,単位面積あたりの生産力は低い。
・農家(畑作):普通のこういうゲームだと農業は狩猟・採集に比べて食料生産が安定するのだが,本作は全くの逆である。一人あたりのGDPは最大で最大で400しか出ない。しかも,収穫期に早めの冬が来ると凶作となり,簡単に200くらいまで下がる。じゃあ農業の利点は無いのかというと2つ。まず,畑はかなり狭い土地でも可能であり,単位面積あたりの生産力はかなり高いこと。次に,毎年作付の変更が可能であり,多種多様な食糧が一つの土地から生産できること。本作の村人はグルメなので,多種類の食材が手に入ると健康度・幸福度が上昇する。
・農家(果樹園):生産効率・メリット・デメリットはおおよそ畑作農家と同じ。ただし,こちらは最初に植樹してから3年ほどは全く収穫できないので,短期的な収穫量はかなり低い。
・畜産家(鶏):鶏肉と卵が手に入る。必要な土地は農業と同程度だが,牧畜は農業よりも労働集約性が低いので,農家なら3人必要になるような土地でも一人で管理できる。一人あたりのGDPは卵が400,鶏肉が150ほどで合計550くらいだが,肉類は交易に出すと他の食糧の3倍の値段で売れるので,市場価格換算なら850くらいになる。かなり効率の良い食料生産施設で,しかも家畜は気候に左右されないので,Harshでは重宝する。
・畜産家(羊):本作のバランスブレイカー。一人が管理する牧場で,年間に羊肉を800前後,40〜50ほどの羊毛を生産する。食糧として見れば一人あたりのGDPは800となり,これでも十分高いのだが,前述の通り肉は市場価格だと3倍となり,羊毛は1単位あたり食糧5個分で売れる。つまり畜産家(羊)の市場価格換算での一人あたりのGDPは2500を超える。また,羊毛はそのまま輸出すると食糧5個分でしかないが,衣服に加工して売ると15個分になる。仕立屋は年間100着ほどの衣服を加工できるので,牧場3つに仕立屋を1つ建てると効率が良い。仕立屋の一人あたりのGDPもまた(15−5)×100で1000前後となり,かなり高い。
・畜産家(牛):本作で育てられる最大の家畜。一人が管理する牧場で,年間に牛肉を600前後,皮革を20前後生産する。市場価格換算で2000には届かない程度。十分高いものの,羊に比べると地味。


【Banished人の味覚】
Banished人は基本的にベジタリアンかつグルメであり,生産に余裕が出てくると,かなり選り好みして食材を選ぶようになる。Wikiの情報に私の実感を重ねた結果,

穀物・芋(小麦・ジャガイモ等)>野菜(パンプキン等)>果樹(リンゴ等)・ナッツ類>採集物(きのこ・玉ねぎなど)>>>>(越えられない壁)>>>魚肉>>>肉類

という印象。結果的に不人気な食糧として肉類・魚類は大量余る。値段を鑑みても,肉類は輸出アイテムとして誘導されているとしか思えない。