2016年03月06日
美少女と大理石
文化村のラファエル前派展。何かラファエル前派展は頻繁にある印象だったが,自分のブログをさかのぼると,前にあったのは森ビルで2014年春のことだったので,実はちょうど2年ぶりになる。だとすると,そう頻繁というわけでもないか。今回の展覧会はリヴァプール国立美術館から借りてきたものになる。リヴァプール国立美術館は7つの美術館の総称で,単体のそういう美術館があるわけではない。そのうち3つの美術館から今回の展示物が運ばれてきた。この3つの美術館は民間の富豪がそろえたコレクションを国が買い取って建てられたものだが,他の美術館の中には奴隷博物館もあり,7つともそれぞれがリヴァプールの歴史をよく表している。今回はかなり豪華なラファエル前派の展覧会で,ミレイの《いにしえの夢ー浅瀬を渡るイサンブラス卿》(今回の画像),《ブラック・ブランズウィッカーズの兵士》,《春(林檎の花咲く頃)》,ジョゼフ・ムーア の《夏の夜》,ウォーターハウス の《デカメロン》等,ラファエル前派の図録に掲載があるような大作がかなり多めに来ていた。今回の個人的な最大の収穫は,アルマ=タデマをまとめて5作品見ることができたことである。アルマ=タデマは大理石の描写に命をかけていた人で,美女と大理石の組合せを得意とした。今回来ていたものも全てそれであるが,やはり見事な大理石の描写である。
しかし,こう並べてラファエル前派をずらっと見てみると,個人個人では「物語重視」だとか「唯美主義」だとかいろいろあるものの,ラファエル前派自体にまとまりは無くて,アンチアカデミー以上の意味は無のだなと改めて思った。印象派もそういうところはあるものの,それでも筆触分割だとか原色主義だとかでまとめられることが多いのは,なんだかんだで中心としてのモネが機能していたのだと思う。ラファエル前派の場合,中心はミレイとロセッティということになると思うが,モネほど第二波の規範になったかというと,どうだろう。
ところで,鑑賞客の大半は女性であった。ラファエル前派は確かに表面上ロマンチックだが,実のところイギリス近代主義の美術における最大の表象ではあり(活躍時期が大英帝国の最盛期と完全に重なる点は大いに関係している),進歩主義とオリエンタリズムと女性蔑視にあふれているところはあるように思うが,気にならないのだろうか。たとえば,ラファエル前派の後期の巨匠ジョン・ポインターの《テラスにて》は,その辺の悪趣味さも含めて個人的には好きな絵だけども,大理石の階段にギリシア風のボーイッシュな少女に透けた服で「無垢」の体現なんていろいろと極北ですわ……本展覧会のタイトルは「英国の夢」であるが,確かにこののぼせっぷりは「夢」と表現するにふさわしいかもしれない。
Posted by dg_law at 23:00│Comments(4)│
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この記事へのコメント
女性陣はむしろ、「ここまで衣服や草花を精細に描けるなんて凄い」という評価なのではないかと。《ブラック・ブランズウィッカーズの兵士》等ですね。
なお、とても良い絵が多かったのに絵葉書の品揃えがかなり貧弱でした。Bunkamuraならではか、それともコストがかかり過ぎたか・・・
なお、とても良い絵が多かったのに絵葉書の品揃えがかなり貧弱でした。Bunkamuraならではか、それともコストがかかり過ぎたか・・・
Posted by aruzya at 2016年03月06日 23:17
歴史的背景とか気にせず見たらそういう評価になるだろうとは思います。
ただ,そういうところまで読み取る・気にする人は出てくるだろうと思いますし,読み取りやすい絵は多かったかなと。
絵葉書全然買わない人なので気にならなかったんですが,少なかったですか。
鑑賞客は多かったので(私が行ったのは会期の最後の方だったからかもしれません),何種類か完売してた可能性もありますね。
ただ,そういうところまで読み取る・気にする人は出てくるだろうと思いますし,読み取りやすい絵は多かったかなと。
絵葉書全然買わない人なので気にならなかったんですが,少なかったですか。
鑑賞客は多かったので(私が行ったのは会期の最後の方だったからかもしれません),何種類か完売してた可能性もありますね。
Posted by DG-Law at 2016年03月08日 22:39
評価については、大陸側の裸婦像やジャポニスムとどう違うか、と聞かれた時難しい気がします。ヨーロッパ絵画はこうだ、で一括りになってしまうような。知り合い曰く、「精緻かつ物語性があるので見ていて楽しい」とのことでした。
絵葉書は枚数的には西洋美術館のスペースの2/3くらいでしょうか。完売の札は張ってませんでしたね・・・もっとも、売り切れたので撤去した可能性もありますね。私も終盤に行きましたので。買えるだけ買いたくなったのは久しぶりです。いや惜しかった。
絵葉書は枚数的には西洋美術館のスペースの2/3くらいでしょうか。完売の札は張ってませんでしたね・・・もっとも、売り切れたので撤去した可能性もありますね。私も終盤に行きましたので。買えるだけ買いたくなったのは久しぶりです。いや惜しかった。
Posted by aruzya at 2016年03月09日 23:04
>大陸側の裸婦像やジャポニスムとどう違うか、と聞かれた時難しい気がします。ヨーロッパ絵画はこうだ、で一括りになってしまうような。
それはそうなんですよね。
ラファエル前派や,同時期のフランス・アカデミーが何か突き抜けちゃっているだけで。
>絵葉書は枚数的には西洋美術館のスペースの2/3くらいでしょうか。
そう言われると,販売スペースの問題もあるのかもしれないなと思いました。
常設展があるような美術館だと,企画展の物販も大きくスペース取ってありますが,文化村のような環境だと厳しいですね。
それはそうなんですよね。
ラファエル前派や,同時期のフランス・アカデミーが何か突き抜けちゃっているだけで。
>絵葉書は枚数的には西洋美術館のスペースの2/3くらいでしょうか。
そう言われると,販売スペースの問題もあるのかもしれないなと思いました。
常設展があるような美術館だと,企画展の物販も大きくスペース取ってありますが,文化村のような環境だと厳しいですね。
Posted by DG-Law at 2016年03月11日 20:04