2016年07月17日

次はフェルメールの新作を

・機械学習したAIがレンブラントの"新作"を出力。絵具の隆起も3D再現した「The Next Rembrandt」公開(Engadget Japanese)
→ 恐ろしく本物のレンブラントっぽい。ただ,人間でも出来る技ではあり,おもしろい試みながら,人間の贋作作家と何が違うのかと言われると何とも言えない。技術的にはすごいのだろうけど,将棋や囲碁でAIが人間を打ち破った時のような斬新さは無いかも。
→ ちなみに野暮なことを言うと,鑑定士に見せた場合は,そもそも絵の具が新しすぎるから贋作という判断を下すように思われます。


・Cephas Bansah is a full time German mechanic and part-time African king(Daily Mail Online)
→ 日曜大工ならぬ日曜国王。アフリカには公的な政治的権力は無いが一族の伝統的な指導者のような人物はまだ残っていて,そういう意味での国王はいるという話は時々見るが,ヨーロッパに移住していて指導はネット,というパターンは珍しそうな気がする。
→ しかもこの人の場合,200万人に権威が及ぶようなので,それなりに“大国”である。これ自体が珍しい話であって,19世紀末の欧州諸国はこうした“国王”をだまくらかして自らの宗主権を押し付ける形で植民地化を進め,既存の権威を通じて支配を固めていったので,大きい王国ほど1960年頃の独立ラッシュ時に王族が殺されていたり権威が失墜してたりする。変に小さいほうが支配体制に組み込まれていなくて,権力は無いけど地元住民への伝統的権威はあるという王が居残ってたりするはずだ。もちろんアフリカは広いので地域差や旧宗主国による差はある。この類で有名なのはボツワナのセレツェ・カーマで,彼の出身の王族はボツワナ独立後,旧宗主国イギリスがボツワナ経営に興味が無かったこともあって関係が薄く,臣民の印象も良く,独立の混乱も無かったので存続している。
→ 記事中に今ひとつ書かれていないけど,現在当人が57歳ということはちょうどガーナやトーゴが独立する頃の生まれで,父と兄が左利きで不適格とされたことから祖父から(FAXで)譲位されたそうなので,そうした独立の荒波を乗り越えたのは祖父の代ということになる。200万人の臣民を抱えてどうそれを乗り越えたのか,そもそもこの王国のイギリス統治下の情勢は,等気になる点は多い。200万人も臣民がいればそれで食っていけそうなものだが,ドイツに移民して労働者をやっているところを見ると,食えないのかもしれない。とすると,やはり独立前か,独立時に実体的な権力は相当に失われいたようにも思われる。
・ドイツで整備工として働くこのおじさん、実はアフリカの部族の王様だった→「ズルいだろこの設定!」「何マーフィーだよ」(Togetter)
→ そう,確かに『星の王子ニューヨークへ行く』はちょっと連想した。まあ,あっちはアフリカの権威だけ残ってる王国というよりも,だいぶアラブの産油国的なイメージが混ざってるけど。今(1988年当時も含めて)あんなにガチで絶対的な権力握っててかつ富裕な王国(主権国家に限る?)って現実には無いような(しいて言えばスワジランドとか……)。



→ 佐賀県,最近広報すごい頑張ってるな。Romancing佐賀とかSplatoonとのコラボとか。これもその一環か。このアニメの早見沙織の声すばらしすぎないですか。
→ 有田焼は大好きですが,一度も行ったことがない。一度くらいは行ってみたくはある。


・歴史のある大学ほど優秀なのか? 世界の伝統校別ランキング(まぐまぐニュース! )
→ 載っている情報が胡散臭かったので「世界ランキング150位以内に入っている設立50年未満の大学リスト」の内実を調べてみると(各大学のHP掲載情報を見た),まず1位のスイス連邦工科大学ローザンヌ校は1853年に私立大学としてスタート,1869年に公立化,変遷あって現在の名称になったのが1968年のことだ。最新の改名だけ見れば50年以内だが,これを設立とは言わない。ここは設立150年以上経過していると見るべきだろう。コンスタンツ大学は確かに1966年設立なので新しいが,2016年調査の大学ランキングが基準なので,ジャスト50年なのでは。カールスルーエ工科大学に至っては,はっきりと創立1825年である。著名な出身者(所属者)にハーバー・ボッシュ法のフリッツ・ハーバーがいるのだから,50年未満なわけがない。カールスルーエ工科大学という名前になったのが2006年というだけである。
→ パリ大学は少々特殊で,パリ市内にある13の大学の総称がパリ大学であるが,これは学部別に別の大学とカウントしているに過ぎない。たとえば第1大学の通称が有名なソルボンヌ大学であり,分野は法学・経済学・哲学・歴史・地理等なので,ソルボンヌ単体では総合大学ではない。パリ大学を13の大学に区分することになったのが1968年,実際に区分してそれぞれが設立されたのが1971年であるから,これをもって設立とみなせば13全て設立50年未満だが,それはさすがにガバガバすぎないか。言うまでもなく,パリ大学自体の創設は中世(13世紀)である。最後にSSSUP,Sant'Anna School of Advanced Studies(伊語でScuola Superiore Sant'Anna di Studi Universitari e di Perfezionamento)は調べるのにかなり苦労したが,前身の設立は18世紀末まで遡ることができるようだ
→ と減らしていくと,マーストリヒト大学だけが例外であり,残りは新しくて当然の韓国・香港・シンガポールの大学になる。つまり結論は「優秀な大学はやはりほぼほぼ古く,例外的傾向は新興国で見られやすい」ということになりはしないか。実に杜撰な記事だが,大雑把に元記事を読んでみると似たようなことが書いてあるので,多分元記事がガバガバなのでは。

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