2016年09月25日
映画評まとめて(『レゴムービー』他)
エロゲの感想同様に,ここ数年分のまとまった記事にならなかったものをまとめて。
扱っている作品は『ミネハハ』『レッドクリフ』『レゴムービー』『ステキな金縛り』。
扱っている作品は『ミネハハ』『レッドクリフ』『レゴムービー』『ステキな金縛り』。
・『ミネハハ 秘密の森の少女たち』
原作は『エコール』と同じ。というよりも原作の小説もタイトルが『ミネハハ』で,原作に忠実なのは『ミネハハ』の方と言われる。『エコール』はちょっと芸術方面に振りすぎた,という。見た感想としてはその世評の通りで,『エコール』の方が尖ってて面白かった。女性しか住んでいない謎の寄宿舎に集められ,育てられた少女が,やがて「商品」として外の世界に「出荷」されるというのが大筋のストーリーだが,『エコール』はここに「聖」と「俗」を見い出した。寄宿舎の少女たちがあまりにも神秘的に描かれており,だからこそ「出荷」の落差が非常に激しい。一方,映画『ミネハハ』を見る限り,原作にはそこまでのテーマ性は無かったようだ。登場する少女たちの年齢層も『エコール』より『ミネハハ』の方が若干高く,そこも『ミネハハ』が若干俗っぽくなっている原因であろうと思う。要するに,平たく言うと映画『ミネハハ』の方が直接的にエロティックで,『エコール』の方がよりペドいせいでかえってエロくない。片方だけ見るなら『エコール』を勧めたい。
・『レッドクリフ』
言わずと知れた,三国志の長坂・赤壁の戦いを扱った超大作。基盤は『三国志演義』で,曹操は悪役だし,魯粛はちょっと抜けている。「演義」のエピソードは大体押さえられており,矢を集める話とかまで含めて再現していたと思う。面白かったと言われると,5時間使って見るだけの価値は無いというのが率直なところで,そんなにアクション良くなかった気がするし,金かかってるのだけは伝わってきてなんだかなと。それはそれとして,世評は「三国志としてはどうなの?」という意見が多いが,これは小喬絡みの恋愛劇を強く出しすぎたのが最大の原因で,「これはこれでまあ三国志の一種かな」と思っている私から見ても本作の小喬はうざかったと言わざるをえない。二番目の原因は孫尚香のスパイとかかな……と考えていくと,近年の評判の悪いいくつかの大河ドラマと同様の何かが見えてきて,これ以上文章を連ねるのが辛くなってきたので,この辺で。
・『レゴムービー』
傑作。私はフランス旅行の帰りの飛行機で視聴した。事前に『レゴシティ:アンダーカバー』の実況動画を見ていたこともあって,興味があったので,渡りに船であった。美しくもマニュアルに沿った造形のレゴを組み立ててレゴの世界を支配しようとする「お仕事社長」と,自由なレゴ世界を維持しようとする「マスタービルダー」たちの戦いに,一般人の主人公エメットが巻き込まれていくという話の筋……なのだが,単純な勧善懲悪物,善悪二元論の世界観ではないところがミソ。マスタービルダーたちは想像力のない一般人エメットをあからさまに軽蔑していて選民思想がにじみ出ていたのは,多くの視聴者が驚いたところではなかろうか。もっとも,エメットはある事情から伝説の救世主と勘違いされて「お仕事社長」との戦いに連れ出された立場なので,マスタービルダーたちの失望も大きかったのも確かだろう。ちなみに,マスタービルダーたちはバットマンやスーパーマン,といった他作品のヒーローたちである。そしてエメットのマニュアル主義も,結果的に「お仕事社長」を倒すのに役立っていく。
さらに,「そもそもレゴはおもちゃであって,動かすのは人間」というメタ構造になっていて,その“人間”たちも登場して物語に絡んでくる。メタ世界での“人間の”大人と子供の戦い,レゴ世界でのマニュアルと創造の戦いが重なって,物語は終わりを迎える。思わぬ伏線があり,かなり凝った脚本になっていて,高度なテーマ性と合わせて楽しめること請け合い。
ちなみに,見終わった後,主題歌の「全ては最高!」が耳にこびりついて離れなくなり,一時期口ずさんでいた。視聴中にずっと英語だと何だろうと悩んでいたのだが,後から「Everything is Awesome」だったことがわかって疑問が氷解した。
それにしても『レゴムービー』といい『レゴシティ:アンダーカバー』といい,昨今のレゴのはっちゃけっぷりはすごい。
・『ステキな金縛り』
三谷幸喜の監督・脚本。法廷ものの作品で,刑事裁判の被告が「金縛りにあった」というアリバイを主張し,主人公の女性弁護士(深津絵里)がそれを調べたら,本当に幽霊に遭遇してしまう。弁護士は仕方なく幽霊を証人として裁判の場に出すも,当然そんなオカルトはなかなか信じてもらえず……という展開。作品の雰囲気は完全にいつもの三谷幸喜で,コッテコテのギャグを交えたコメディの雰囲気で物語が進み,終盤で急激にしんみりする話が出てきて大団円という展開である。三谷幸喜のコメディが好きなら必ず見るべし。
ところで,この幽霊の証人である更科六兵衛(西田敏行)は戦国時代の武将であり,その後『清州会議』の方にも登場する。大河ドラマ常連の西田敏行であることだし,私は『真田丸』にも更科六兵衛が登場することを期待していたのだが,さすがに出てこなかった。大変に残念である。また,主人公の上司の弁護士(阿部寛)が,作中で甘いものを食べすぎて謎の奇病にかかって死ぬという描写があり,私的に洒落になっていなかったのが非常に印象深かった。(今年の健康診断では「糖分摂取過多で怒られませんでした。)
原作は『エコール』と同じ。というよりも原作の小説もタイトルが『ミネハハ』で,原作に忠実なのは『ミネハハ』の方と言われる。『エコール』はちょっと芸術方面に振りすぎた,という。見た感想としてはその世評の通りで,『エコール』の方が尖ってて面白かった。女性しか住んでいない謎の寄宿舎に集められ,育てられた少女が,やがて「商品」として外の世界に「出荷」されるというのが大筋のストーリーだが,『エコール』はここに「聖」と「俗」を見い出した。寄宿舎の少女たちがあまりにも神秘的に描かれており,だからこそ「出荷」の落差が非常に激しい。一方,映画『ミネハハ』を見る限り,原作にはそこまでのテーマ性は無かったようだ。登場する少女たちの年齢層も『エコール』より『ミネハハ』の方が若干高く,そこも『ミネハハ』が若干俗っぽくなっている原因であろうと思う。要するに,平たく言うと映画『ミネハハ』の方が直接的にエロティックで,『エコール』の方がよりペドいせいでかえってエロくない。片方だけ見るなら『エコール』を勧めたい。
・『レッドクリフ』
言わずと知れた,三国志の長坂・赤壁の戦いを扱った超大作。基盤は『三国志演義』で,曹操は悪役だし,魯粛はちょっと抜けている。「演義」のエピソードは大体押さえられており,矢を集める話とかまで含めて再現していたと思う。面白かったと言われると,5時間使って見るだけの価値は無いというのが率直なところで,そんなにアクション良くなかった気がするし,金かかってるのだけは伝わってきてなんだかなと。それはそれとして,世評は「三国志としてはどうなの?」という意見が多いが,これは小喬絡みの恋愛劇を強く出しすぎたのが最大の原因で,「これはこれでまあ三国志の一種かな」と思っている私から見ても本作の小喬はうざかったと言わざるをえない。二番目の原因は孫尚香のスパイとかかな……と考えていくと,近年の評判の悪いいくつかの大河ドラマと同様の何かが見えてきて,これ以上文章を連ねるのが辛くなってきたので,この辺で。
・『レゴムービー』
傑作。私はフランス旅行の帰りの飛行機で視聴した。事前に『レゴシティ:アンダーカバー』の実況動画を見ていたこともあって,興味があったので,渡りに船であった。美しくもマニュアルに沿った造形のレゴを組み立ててレゴの世界を支配しようとする「お仕事社長」と,自由なレゴ世界を維持しようとする「マスタービルダー」たちの戦いに,一般人の主人公エメットが巻き込まれていくという話の筋……なのだが,単純な勧善懲悪物,善悪二元論の世界観ではないところがミソ。マスタービルダーたちは想像力のない一般人エメットをあからさまに軽蔑していて選民思想がにじみ出ていたのは,多くの視聴者が驚いたところではなかろうか。もっとも,エメットはある事情から伝説の救世主と勘違いされて「お仕事社長」との戦いに連れ出された立場なので,マスタービルダーたちの失望も大きかったのも確かだろう。ちなみに,マスタービルダーたちはバットマンやスーパーマン,といった他作品のヒーローたちである。そしてエメットのマニュアル主義も,結果的に「お仕事社長」を倒すのに役立っていく。
さらに,「そもそもレゴはおもちゃであって,動かすのは人間」というメタ構造になっていて,その“人間”たちも登場して物語に絡んでくる。メタ世界での“人間の”大人と子供の戦い,レゴ世界でのマニュアルと創造の戦いが重なって,物語は終わりを迎える。思わぬ伏線があり,かなり凝った脚本になっていて,高度なテーマ性と合わせて楽しめること請け合い。
ちなみに,見終わった後,主題歌の「全ては最高!」が耳にこびりついて離れなくなり,一時期口ずさんでいた。視聴中にずっと英語だと何だろうと悩んでいたのだが,後から「Everything is Awesome」だったことがわかって疑問が氷解した。
それにしても『レゴムービー』といい『レゴシティ:アンダーカバー』といい,昨今のレゴのはっちゃけっぷりはすごい。
・『ステキな金縛り』
三谷幸喜の監督・脚本。法廷ものの作品で,刑事裁判の被告が「金縛りにあった」というアリバイを主張し,主人公の女性弁護士(深津絵里)がそれを調べたら,本当に幽霊に遭遇してしまう。弁護士は仕方なく幽霊を証人として裁判の場に出すも,当然そんなオカルトはなかなか信じてもらえず……という展開。作品の雰囲気は完全にいつもの三谷幸喜で,コッテコテのギャグを交えたコメディの雰囲気で物語が進み,終盤で急激にしんみりする話が出てきて大団円という展開である。三谷幸喜のコメディが好きなら必ず見るべし。
ところで,この幽霊の証人である更科六兵衛(西田敏行)は戦国時代の武将であり,その後『清州会議』の方にも登場する。大河ドラマ常連の西田敏行であることだし,私は『真田丸』にも更科六兵衛が登場することを期待していたのだが,さすがに出てこなかった。大変に残念である。また,主人公の上司の弁護士(阿部寛)が,作中で甘いものを食べすぎて謎の奇病にかかって死ぬという描写があり,私的に洒落になっていなかったのが非常に印象深かった。(今年の健康診断では「糖分摂取過多で怒られませんでした。)
Posted by dg_law at 08:00│Comments(0)│