2016年11月08日

鈴木其一の大回顧展

鈴木其一「朝顔図屏風」サントリー美術館の鈴木其一展に行ってきた。江戸時代の琳派の掉尾を飾る人物である。今回の展示品は,大体は過去に一度は見たことあるものがほとんどだったが,やはり日本美術史上でも飛び抜けて好きな画家であるので,自分のその評を再確認しに行ったという意味合いが強い。加えて言えば,まとめて見れる機会というのはやはり貴重である。それゆえに鈴木其一については過去に語り尽くしていて今更付け足すことは特にないのだが,あえて改めて一言で言うならやはり「奇抜かつ洒脱」という評価になるだろうか。通常,やりすぎなくらい派手にやると洒脱ではなくなるのだが,そのラインをわかっていてはみ出ようとすると不思議と両立する。鈴木其一の画風はそこにあると思う。

鈴木其一は酒井抱一の弟子である。基本私淑でつながる琳派にあっては珍しく,ここは明確な師弟関係がある。鈴木其一の画風が酒井抱一と同じく都会的で垢抜けたものになったのはこの師弟関係の影響は大きかろう。酒井抱一が亡くなると独り立ちして,次第にもう一つの特徴である奇抜さが大々的に飛び出してくる。6年前に「夏秋渓流図屛風」は初めて見たときに大きな衝撃を受けたが,改めて見ても波濤の表現が見事である。一方,「朝顔図屏風」は今回初めて見た(今回の画像)。明らかに燕子花図屏風を模していながら,あちらが静的な配置の妙を出しているのに対し,こちらは蔓の配置が動的である。この作品なんかは巨大な作品であることもあって本当に仰々しいのだが,やりすぎない範囲で収まっていて,かえって統一感さえ感じる。この朝顔図屏風はメトロポリタン美術館にあるので,国内で見るのは今回のような機会でないと難しい(今回の“帰国”は12年ぶりとのこと)。

あとは鈴木其一といえばやはりだまし絵であろう。いわゆる描表装で,掛け軸の天地にまではみ出して描いた作品である。その意味での鈴木其一の無二の傑作というと「業平東下り図」で,天地に描かれた四季の草花が本当に見事であった。「業平東下り図」も琳派に好まれた題材であり,尾形光琳も俵屋宗達も描いている。先人を超えるにはどうしたらよいか,というところで採用したのが描表装だったのではないか。実に見事なウィットである。

ところで本展,諸事情により会期末に行ったのだが,かなり混雑していた。また必ず買おうと思っていた図録が店頭分は完売していて,以降は後日に発送という形になっていた。東京展は10/30に終わったが,これから姫路市美術館,細見美術館と巡回する。鈴木其一の知名度を鑑みると思った以上に人気であるので,行こうと考えている人はなるべく早めに行っておいたほうがよいかもしれない。



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