2017年01月29日
アルタミラと混同されるやつ
昨年末に,国立科学博物館のラスコー展に行ってきた。当然ラスコーの壁画本体を持ってくることはできないので,レプリカである。というよりも,現在ラスコーの洞窟は保護のため完全な立入禁止となっているおり,レプリカも数あるわけではないので,意外と貴重な機会だったりする。本展はラスコーの壁画を含めてかなりの展示物が写真撮影OKで,記念なので私もラスコー壁画のレプリカを写真に撮ってきた。ラスコー壁画はすでにその後の絵画とさして変わらない技法で描かれており,ナイフによる線刻での模様付けまでされている。色も複数あって意外とカラフルである。描かれた目的は判明していない。おそらく呪術的なものだとは思うが,案外と絵画作成自体が楽しかったから,というだけかもしれない。
また,これもまた当然のことではあるが,ラスコーの壁画だけでは展覧会として成り立たないため,先史時代の人類についてまとめた展覧会となっていた。本展覧会はラスコーの壁画観賞の機会というよりも,原人・旧人・新人へと変遷していく人類の歴史と,それに関連する考古学的資料を観賞する機会として,かなり優れた展覧会となっていたと思う。考古学的発見というものは基本的に「◯◯を初めてやったのは◯万年前だと考えられていたが,それより以前から行われていたことが判明した」式にどんどんさかのぼっていくものだが,実際に自分が考えているよりも道具の使用時期が随分さかのぼっていて,いろいろと驚いた。とりわけ,旧人の段階で人類はかなりなんでもできるようになっていて,そのうち新石器時代の区分自体がそこら辺までさかのぼりそうな。その中で,ネアンデルタール人やハイデルベルク人が芸術品を作成したという証拠は現在のところ見つかっておらず,「芸術」はクロマニヨン人など新人の特徴と(少なくとも現在のところは)言えそうというのはおもしろいところだ。その新人が生き残って現生人類になったというのも。
なお,日本人もかなり古くから骨角器を作っていたようだが,日本の気候上残りにくく,美術作品に限定すると,旧石器時代と断定できるものは発見されていないそうだ。道具類の骨角器であれば何点かは見つかっており,沖縄で世界最古と見られる釣り針が2016年9月に発見され,今回展示されていた。展覧会のスタートが11月だから,かなり緊急に展示を決めた形になる。また,氷河期でも北海道・青森間がつながっていなかったし,大陸と列島もつながっていなかったということがわかっており,どうやら旧石器時代の日本人は「船で渡った」らしい,という説が近年では有力である。そこで,国立科学博物館主体で,旧石器時代の技術で与那国島から西表島まで航海する」プロジェクトが進行中だそうで,その紹介と寄付金の募集が行われていた。夢とロマンの塊すぎるので,募金してきた。
そうそう,ラスコーの壁画というとバタイユの著書にもあり,彼が「芸術の誕生」として定義付けたことでも名高い。バタイユファンの私だが,そう言えば未読である。なんでだろうと思って調べてみると,最後に出た邦訳が1975年でしかもハードカバー……他のバタイユの主要な著作はほとんどちくま学芸文庫で出ているのに,なぜこれだけ取り残されているのか。今度図書館で探してみよう。
実はあと西美のクラナハ展とサントリー美術館の小田野直武展も行っているのだけど……近日中に感想を書きます。
また,これもまた当然のことではあるが,ラスコーの壁画だけでは展覧会として成り立たないため,先史時代の人類についてまとめた展覧会となっていた。本展覧会はラスコーの壁画観賞の機会というよりも,原人・旧人・新人へと変遷していく人類の歴史と,それに関連する考古学的資料を観賞する機会として,かなり優れた展覧会となっていたと思う。考古学的発見というものは基本的に「◯◯を初めてやったのは◯万年前だと考えられていたが,それより以前から行われていたことが判明した」式にどんどんさかのぼっていくものだが,実際に自分が考えているよりも道具の使用時期が随分さかのぼっていて,いろいろと驚いた。とりわけ,旧人の段階で人類はかなりなんでもできるようになっていて,そのうち新石器時代の区分自体がそこら辺までさかのぼりそうな。その中で,ネアンデルタール人やハイデルベルク人が芸術品を作成したという証拠は現在のところ見つかっておらず,「芸術」はクロマニヨン人など新人の特徴と(少なくとも現在のところは)言えそうというのはおもしろいところだ。その新人が生き残って現生人類になったというのも。
なお,日本人もかなり古くから骨角器を作っていたようだが,日本の気候上残りにくく,美術作品に限定すると,旧石器時代と断定できるものは発見されていないそうだ。道具類の骨角器であれば何点かは見つかっており,沖縄で世界最古と見られる釣り針が2016年9月に発見され,今回展示されていた。展覧会のスタートが11月だから,かなり緊急に展示を決めた形になる。また,氷河期でも北海道・青森間がつながっていなかったし,大陸と列島もつながっていなかったということがわかっており,どうやら旧石器時代の日本人は「船で渡った」らしい,という説が近年では有力である。そこで,国立科学博物館主体で,旧石器時代の技術で与那国島から西表島まで航海する」プロジェクトが進行中だそうで,その紹介と寄付金の募集が行われていた。夢とロマンの塊すぎるので,募金してきた。
そうそう,ラスコーの壁画というとバタイユの著書にもあり,彼が「芸術の誕生」として定義付けたことでも名高い。バタイユファンの私だが,そう言えば未読である。なんでだろうと思って調べてみると,最後に出た邦訳が1975年でしかもハードカバー……他のバタイユの主要な著作はほとんどちくま学芸文庫で出ているのに,なぜこれだけ取り残されているのか。今度図書館で探してみよう。
実はあと西美のクラナハ展とサントリー美術館の小田野直武展も行っているのだけど……近日中に感想を書きます。
Posted by dg_law at 07:00│Comments(0)│