2017年03月11日
受験世界史悪問・難問・奇問集 ver.2017 その１（上智大・慶應大・早大途中まで）
はじめに
今年は諸事情あって「そもそもやらない」すら視野に入れていたのだけれど，期待もあることだろうし全くやらないというのもダメだろうと思い直して，縮小版で更新することにした。問題の選定だけは済んでいるので，番号が飛んでいるのはまだ作業が終わってないんだなと察してもらえればと思う。ただ，最初から諦めていたおかげでかえって時間ができて，この２月は何年かぶりにのんびりしていた。Twitter等を見たら普通にゲームしてたのがわかるが，あれはこういう事情で気を抜いていたのが理由だったりする。完全版は２巻に収録する（2017年中に出るのは確定しました）。
・収録の基準と分類
基準は例年とほぼ同じである。
出題ミス：どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能，もしくは複数正解が認められるもの。
悪問：厳格に言えば出題ミスとみなしうる，国語的にしか解答が出せない問題。
→ 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず，作題者の心情を読み取らせるものは，世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。
奇問：出題の意図が見えない，ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に，歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問：一応歴史の問題ではあるが，受験世界史の範囲を大きく逸脱し，一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。本記事で言及する「受験世界史の範囲」は，「山川の『用語集』に頻度�，任發いい�らとりあえず記載があるもの」とした。
総評
まずもって，悪問・奇問が激減したのが2017年最大の特徴と言える。数年前まで上智大と早稲田大は日本語がひどいせいで答えが絞れない問題が頻出していたが，上智大は２・３年前から改善の傾向が見られ，早稲田大は2017年になってごっそりと減った。明らかに上から怒られてこうなったのだと思うし，その一助となっているのならば，この企画をずっとやってきてよかったなと思う。結果的に収録対象になる問題自体が大きく減っている。例年であれば早慶上智で合わせて45〜50問ほど本企画に収録していたところ，2017年は30問しかないので，30〜40％の減少と言える。これが2017年だけの現象なら「世界史受験生には幸運な年だった」と言えるし，継続するなら転機の年だったと言えよう。
一方で，難問の類は相変わらずである。しかも「用語集の片隅に載っているからセーフ」「マイナーな教科書にちらっと書いてあるからセーフ」という巧妙な“かわし方”があからさまに増えていて，こちらとしては収録すべきかどうかの判断に随分と悩まされた。そうしたかわし方は以前から慶應大にはよく見られたが，今年は上智大や早稲田大でも多く見られ，これまた明らかに“学習”している。まあ日本語が崩壊している悪問だとか，同じ難問でもどこの教科書・用語集にも載っていないレベルのものだとかいうよりはマシなのだけれど，最終目標としてあるべき適正な入試問題からは程遠い姿であり，これを改善というのははばかられるところ。
最後に難易度や質以外の点で言えば，ヨーロッパ統合史と冷戦末期の歴史が大流行していて，それぞれ2016年のBrexitとソ連崩壊25周年の影響であろう。時事ネタという意味では，思っていたよりもアメリカ大統領選挙にかかわる出題は多くなかった。まああれは４年に１回あるしな。
今年は諸事情あって「そもそもやらない」すら視野に入れていたのだけれど，期待もあることだろうし全くやらないというのもダメだろうと思い直して，縮小版で更新することにした。問題の選定だけは済んでいるので，番号が飛んでいるのはまだ作業が終わってないんだなと察してもらえればと思う。ただ，最初から諦めていたおかげでかえって時間ができて，この２月は何年かぶりにのんびりしていた。Twitter等を見たら普通にゲームしてたのがわかるが，あれはこういう事情で気を抜いていたのが理由だったりする。完全版は２巻に収録する（2017年中に出るのは確定しました）。
・収録の基準と分類
基準は例年とほぼ同じである。
出題ミス：どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能，もしくは複数正解が認められるもの。
悪問：厳格に言えば出題ミスとみなしうる，国語的にしか解答が出せない問題。
→ 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず，作題者の心情を読み取らせるものは，世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。
奇問：出題の意図が見えない，ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に，歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問：一応歴史の問題ではあるが，受験世界史の範囲を大きく逸脱し，一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。本記事で言及する「受験世界史の範囲」は，「山川の『用語集』に頻度�，任發いい�らとりあえず記載があるもの」とした。
総評
まずもって，悪問・奇問が激減したのが2017年最大の特徴と言える。数年前まで上智大と早稲田大は日本語がひどいせいで答えが絞れない問題が頻出していたが，上智大は２・３年前から改善の傾向が見られ，早稲田大は2017年になってごっそりと減った。明らかに上から怒られてこうなったのだと思うし，その一助となっているのならば，この企画をずっとやってきてよかったなと思う。結果的に収録対象になる問題自体が大きく減っている。例年であれば早慶上智で合わせて45〜50問ほど本企画に収録していたところ，2017年は30問しかないので，30〜40％の減少と言える。これが2017年だけの現象なら「世界史受験生には幸運な年だった」と言えるし，継続するなら転機の年だったと言えよう。
一方で，難問の類は相変わらずである。しかも「用語集の片隅に載っているからセーフ」「マイナーな教科書にちらっと書いてあるからセーフ」という巧妙な“かわし方”があからさまに増えていて，こちらとしては収録すべきかどうかの判断に随分と悩まされた。そうしたかわし方は以前から慶應大にはよく見られたが，今年は上智大や早稲田大でも多く見られ，これまた明らかに“学習”している。まあ日本語が崩壊している悪問だとか，同じ難問でもどこの教科書・用語集にも載っていないレベルのものだとかいうよりはマシなのだけれど，最終目標としてあるべき適正な入試問題からは程遠い姿であり，これを改善というのははばかられるところ。
最後に難易度や質以外の点で言えば，ヨーロッパ統合史と冷戦末期の歴史が大流行していて，それぞれ2016年のBrexitとソ連崩壊25周年の影響であろう。時事ネタという意味では，思っていたよりもアメリカ大統領選挙にかかわる出題は多くなかった。まああれは４年に１回あるしな。
２．上智大 2/5実施
＜種別＞問題文が悪い
＜問題＞１ B 日本の中国史学界では，戦後大きな論争が起こった。中国史をどう時代区分するかという課題をめぐる論争である。そこではおもに二つの学説が提起され，学界を二分する論争となった。これを便宜上α学説とβ学説とよび，時代区分をおおまかに図示すれば次のようになる。
問10 α学説とβ学説の論争は決着がつかず，現在に至っている。このため高校の教科書において時代区分は明確に示されておらず，中国史の時代像はあいまいなままになっているのが現状である。ただ，両説が共通して時代の画期と認めているのは，唐代から宋代，およびアヘン戦争前後である。これに関して，(ア)唐代から宋代への変化に関する記述のうち誤っているものはどれか。(イ)アヘン戦争に関する記述のうち誤っているものはどれか。
（問題(ア)(イ)自体は適正であるので省略）
＜解答解説＞
非常にツッコミどころが多い問題である。まず，中国史学界は全くの門外漢なのでよく知らないのだけど，「決着がつかず，現在に至っている」のではなくて，その時代区分論がαでもβでも古めかしくなってきたから誰も戦っていないというのが正しい現状なのでは，とはどうしても言いたくなる。まだこの論争をしている人，いるんです？
古代・中世・近世・近代・現代という区分はヨーロッパ史，ないし近代以降の世界史を語るために作られた区分であり，偶然日本史でもしっくり来るから便利に用いられているが，これを全世界に敷衍してきっちり区分可能であるとするのは前時代の歴史学の考え方であろう。ここで挙げられているα学説とは，政治機構による区分（古代は邑制国家から領域国家への展開，中世は貴族制，近世は皇帝独裁制の完成）であり，β学説とはマルクス主義（生産関係の変化を基準とする）による区分である。なお，β学説内でも，宋代の佃戸制を農奴制と見なすか小作制と見なすかによって時代区分論が割れていたはずだが，そのことはここでは取り上げられていない。
無論のことながら，それでも便宜的に時代を区分する必要が生じることはあり，まさにその必要が要請されるのが高校世界史である。この問題文のまずいところはまさにそこ，というのが２つめ。確かに高校世界史Bの教科書７冊は個々独自性のある配置をしているが，大まかな区分として
・古代：先秦〜唐
・中世：五代十国〜元
・近世：明・清（白蓮教徒の乱まで）
・近現代：清末以後
とする点ではほぼ完全に一致しており，ここに意見のズレはほとんど見られない。しいて言えば20世紀の前半を近代にするか現代にするかは意見の相違が見られるのと，帝国書院の教科書はそもそも古代と中世を区分していないという点は確かに教科書間で違う。さて，このような微細な差異しかないにもかかわらず，「このため高校の教科書において時代区分は明確に示されておらず，中国史の時代像はあいまいなままになっているのが現状である」とはどこの時空の高校世界史を指しているのか，大変に興味深い。なお，高校世界史がこうした区分論をとっている理由については山川の『新世界史』が最も雄弁に語っているので，できればそちらをお読みいただきたい。端的に書くなら，諸文明の成立と交流，そして世界の一体化に向かう歴史叙述において区切りを設定している。現在の高校世界史教科書はそもそも諸地域の政治体制や生産体制を区分論にほとんど用いていないし，当然中国史もこれに従っている。
７．上智大 2/7実施
＜種別＞難問・奇問
＜問題＞１ 問９ 文章�い侶从冏�展が起こった時期（編註：1914〜18年）の中国に関する説明として，最も適切なものはどれか。
a 「人が人を食べる」という妄想にとりつかれた男を主人公にした有名な小説は，この時期に執筆され，儒教道徳に対する批判として受け止められた。
b 現在でも人気を集めている『水滸伝』，『三国志演義』，『西遊記』，『金瓶梅』という四大奇書は，この時期に成立した。
c 後に権威ある国際的な文学賞を受賞することになる莫言が，この時期に作家として活躍し，伝統文学のあり方を大きく刷新した。
d この時期に多様な西洋思想が中国に一挙に流入し，その一つとして共産主義思想も紹介されたが，その内容は孫文によって中国流に解釈されていた。
e この時期の民族産業の成長は，数年後の日中全面戦争の勃発によってストップし，これ以降民族産業が復活することはなかった。
＜解答解説＞
b は四大奇書の成立が明代なので誤文。dは，共産主義の最初期の受容者が李大�，篦墜判┐覆里埜輅検�eは，1918年の「数年後」に日中全面戦争が勃発していないので誤文。残ったaとcが，受験生から言って見知らぬ内容なので厳しかろう。cはいかにも新文化運動の現れっぽいので正文に見えるが，莫言は現代の作家であり，彼の権威ある国際的な文学賞，すなわちノーベル賞受賞は2012年であるから誤文である。不可解なのは「権威ある国際的な文学賞」とぼかしてあることで，ここがせめてノーベル賞と明示されていれば，第二次世界大戦前のアジア人のノーベル文学賞受賞者はインド人のタゴールしかいないということから，これが誤文と導ける。とすると，難問には違いないが，これは一応用語集などに記載がある事項であった。変にぼかされたせいで，ノーヒントのつまらないただの難問に成り下がっている。莫言は，さすがにまだ「歴史的事項」ではないだろう。
というわけで正解は残ったaで，いかにも気の狂った内容だが，実際にこれは魯迅の『狂人日記』の内容である。もしかすると，そのことを推測させたかった問題だったのかもしれないし，あるいは『狂人日記』くらい読んでおけ，という意味合いの問題だったのかもしれない。それならそれで意図はわかるが，であれば尚更cの内容はもっと易しくてよかった気も。
８．上智大 2/7実施（２つめ）
＜種別＞悪問
＜問題＞２ (ク) この状況にもっとも適切な事項を以下の選択肢（a〜d）から１つ選びなさい。
（編註：古代的な帝政は６世紀の皇帝ユスティニアヌスをもっておわり，それからは中世東ローマが始まるが，９世紀にはじまるマケドニア王朝のもとでは，疑いえない強勢を誇るにいたる。このような東ヨーロッパあってはじめて，ゲルマン化した西方にも，この世の唯一最高の支配権としてのローマ帝国の観念がのこり，これをシンボルとする(ク)統一ヨーロッパ世界がうまれ，やがて近代をひらくことができたのだ。）
a オットー１世の戴冠 b カルケドン公会議 c カール大帝の戴冠 d ノルマン＝コンクエスト
＜解答解説＞
原文は『中世の光と影』（堀米庸三，文藝春秋，1967年，文庫化は講談社で1978年）で，約50年前に出た本である。しかし，この文章だけでは，正解がaなのかcなのか，今ひとつ判別できない。西ヨーロッパで初めて「統一」の概念を生み出した出来事となるとカールの戴冠になるだろうが，これはマケドニア朝と時代が合わない。一方，マケドニア朝の圧力を感じた西ヨーロッパ世界が作り出した統一のシンボルというと，これはオットー１世の神聖ローマ帝国となる。しかし，オットーの戴冠の理念は「（カールの）帝国の“復活”」であり，カールの戴冠をもって西欧世界が成立したとみなすのが一般的であるから，オットー１世の戴冠によって「統一ヨーロッパ世界が（初めて）うまれた」というのは誤りになる。よって，どちらを正解とみなしてもしっくり来ない部分が生じる。
要するにこの文は「このような東ヨーロッパ」の指すものが「ビザンツ帝国一般」なのか「マケドニア朝のビザンツ帝国」なのかによって解答が変わってくるし，この文はどちらとも解釈しうると思う。おそらく堀米庸三氏はこの統一ヨーロッパ世界（西欧世界）がカール大帝のものなのかオットー１世のものなのか，あまり峻別する気がなくこの文章を書いたのではないかと思われるが，作題者は一義に定まると思っているらしい。めっきり減った上智大のエスパー養成試験の名残のように感じられる。なお，東進の解答はc，増田塾の解答はa。
１．慶應義塾大 商学部
＜種別＞悪問
＜問題＞２ 1848年，中部ヨーロッパ各地で勃発し，「諸国民の春」と呼ばれた (35)(36) 革命への動きの中では，市民層に加えて学生や学者，文学者たちも大きな役割を果たすことになる。
11 二月 12 三月 13 五月
＜解答解説＞
予備校間の解答速報が割れたシリーズ，あるいは答えが無い可能性。五月は絶対に無いとして，二月か三月である。河合塾と代ゼミと城南は「三月」，駿台と増田塾は「二月」，東進は「二月」としつつも「三月の可能性もあり」としている。私自身が解答を出すなら，まあ「三月」かなと。これだけ解答が割れるのは当然のことで，はっきり言ってこれはひどい悪文であり，解答を絞り込めるものではない。
「中部ヨーロッパ各地で勃発し」たのは間違いなく三月革命の方で，二月の時点ですでに革命と呼びうる状態であったのはほぼフランス（パリ）だけであったと言ってよい。しかし，この解釈では三月革命と「諸国民の春」は「と呼ばれた」でつなげられた言い換えということになるが，「諸国民の春」とは二月革命から1848年いっぱいまでに生じた諸革命の総称である1848年革命の別称であり，三月革命だけを指すものではない。三月革命は，通常であればウィーンとベルリンを中心としたドイツで起きたものだけを指すが，「諸国民の春」はそれ以外のハンガリーやチェコ，ポーランド，イタリア等で起きた革命も含む呼称である。ゆえに，(35)(36)に三月を入れると，事実関係に混乱が生じた文になってしまう。
では「二月」ならしっくり来るかというと，当然全く同じ現象が起きるので，混乱が生じる。二月革命とは間違いなくフランスで起きたものだけを指すので，「諸国民の春」の言い換えにはならない。ただし，何を入れても混乱するのであるから，国語的な整合性を超越（あるいは放棄）するなら，「『諸国民の春』が指す諸革命の口火を切った『二月』の方を入れた方が，何となくそれっぽく見える」というのは，態度表明として理解できなくはない。東進はともかく，特に注記の無い駿台の解答はそういう意味合いであろうと推測される。
なお，他の「諸国民の春」の言い換えというと，当然出てくるのが「1848年革命」になるが，これは1848年が問題文に出てしまっているし，選択肢にも存在しない。かなりマニアックな言い方として，1820年のスペイン立憲革命から1830年の七月革命，そして1848年革命までを総称して「自由主義革命（Liberal Revolution）」と呼ぶこともあるが（パラドゲーのVictoriaはこれをとっている），選択肢に自由主義もないので，これも取れない。とするともはや完全にしっくりする選択肢は存在していないとして，出題ミスと見なすことも可能であろう。
２．慶應義塾大 商学部（２つめ）
＜種別＞奇問，というよりも現代文として程度が低い
＜問題＞１（編註：Brexitに関連して移民の問題を取り上げ，黒人奴隷貿易や1924年アメリカ移民法改正，西ドイツのガストアルバイター等に言及するリード文）
問３ 人口減少社会に突入した日本にとって移民とどう向き合うかは喫緊の課題といえる。日本への移民受け入れに関して留意すべき点について，本文の内容を踏まえて，解答用紙Bの所定の欄に50字以内で述べなさい。ただし，本文中に登場する「摩擦」，「労働力不足」，「共生社会」の３語を必ず用いること。
＜解答解説＞
完全に現代文の問題である。慶應大商学部は2010年にも全く同じリード文を要約させる問題を出している（前著，2010早慶６番）。その際にも指摘したが，慶應大は小論文があるが現代文がないので，英語や社会科の入試問題の中に現代文的な問題を挿入したいという欲が潜在的に存在しているのだろう。もはや社会科の入試問題中に現代文の出題をするのが大学の方針なのであれば，それ自体には抗議しないし，以降は本企画にも収録しない。本問について言えば，テーマ的にも世界史にかかわりがないわけではないからセーフというのもある。
それはそれとして，この問題は２つの欠点がある。まず，要約問題であるので本来であればリード文全体を読む必要があるが，実際のところ指定語句の３つを見ればほとんど様相がわかってしまい，全体を読む価値があまりない。大方の予想通り，「労働力不足解消のための移民は，人種差別等の摩擦を引き起こすが，共生社会を築いて受け入れる必要がある。」とか書いておけばよい。
しかもリード文は空欄穴埋めの問題を兼ねている関係で，話題があっちへ行ったりこっちへ行ったりとフラフラした文章になっている。たとえば「クロマニヨン人」を解答させたいがために人類はそもそもアフリカで生まれて世界中に移民したと書いてみたり，「ポエニ戦争」を解答させたいがために古代ローマに言及してみたりとしているが，これが現代の移民問題とは何の関係もなく，文章全体の論旨からすると全く無駄な部分になっている。現代文の要約問題の対象としては失格だろう。やはり，世界史の問題と現代文の問題を同じリード文から出題したいなら，リード文をもっと練るべきであろう。総じて，本問は現代文としての程度が低すぎる。慶應大に現代文の入試問題作成の経験が無いからよくわかっていないのかもしれないが。
４．慶應義塾大 文学部
＜種別＞難問
＜問題＞２ ６世紀からトレドを首都とした西ゴート人の王国では，キリスト教文化が花開き，『語源』を著した（ F ）大司教（ G ）などの教会知識人が現れた。（中略）
1236年にはグアダルキビル川沿いのコルドバが，1248年にはその下流にある（ F ）が陥落した。（ F ）には12世紀にムワッヒド朝により建設された大モスクが存在したが，そのミナレットは現在も大司教聖堂の鐘塔ヒラルダの塔として残存している。
＜解答解説＞
ストレートな難問。実は山川の『新世界史』に記載があるが，用語集の頻度はゼロである。中略以後は地名が入る空欄Fのヒントのつもりなのだろうが，一般の受験生には全くヒントになるまい。もっと大航海時代に繁栄したとか，アンダルシアの中心地とか書いてくれればまだしも。というわけで，Fの正解はセビリア（セビリャ）。
空欄Gの正解はイシドール（イシドルス，イシドールス）。７世紀前半，西ゴート王国時代のセビリアで活躍した。『語源』は百科事典で，タイトルにある語源編は全20巻のうち，実は１巻を占めているに過ぎない。12世紀ルネサンスでアリストテレスの著作が復活するまで，プリニウスの『博物誌』も不完全な状態でしか伝わっていなかったことから，この『語源』は中世初期の西欧では貴重な百科事典であった。なお，イシドールは情報の収集者であったことから，カトリック教会からコンピューターとインターネットの利用者の守護聖人に認定されており，ある意味現代社会で最も重要な守護聖人となっているが，受験世界史のみならず世間の知名度は必ずしも高くない。
７．慶應義塾大 法学部（２つめ）
＜種別＞難問
＜問題＞２ 18世紀末にオーストラリア最初の植民地となったのは， (27)(28) 植民地である。イギリスは多数の流刑囚をこの土地に送り込んだが，次第に自由移民の数も増加していった。
03．ヴィクトリア 17．タスマニア 30．西オーストラリア 31．ニューサウスウェールズ
45．南オーストラリア
（編註：関係のある選択肢のみ抜粋，以下法学部は同じ）
＜解答解説＞
オーストラリアの植民地は「オーストラリア」としか習わないので，地域行政単位を出されると，地理選択者はともかく世界史選択者は死んでしまう。しいて言えば，オーストラリアは東海岸から植民・開拓が始まり，現在でも主要な都市は東南部に集中していることを知っていれば，西オーストラリアと南オーストラリア，そして本島ではないタスマニアは消せる。あとはヴィクトリア州とニューサウスウェールズ州の二択であるが，世界史選択者ならこの二択まで絞れれば優秀であると思う。さて，シドニーがあるのがニューサウスウェールズ，メルボルンがあるのがヴィクトリアで，さあどちらか。
正解は31．ニューサウスウェールズの方で，実はオーストラリアの東側は，当初全域がニューサウスウェールズ植民地に含まれていた。そしてニューサウスウェールズが拡大していく中で，北東部のクイーンズランド州や，南東部のヴィクトリア州が分離・成立することになる。この歴史的経緯から言っても (27)(28) はニューサウスウェールズが入る。一応，東京書籍の教科書には記載あり。
１２．早稲田大 国際教養学部
＜種別＞出題ミス
＜問題＞３ 問４ 下線部４（編註：パキスタン）に関連する記述として，誤りを含むものを一つ選びなさい。
ア ジンナーが，パキスタン初代総督に就任した。
イ 1940年にラホールで開かれた全インド＝ムスリム連盟の大会で，イスラーム教徒による独立国家の樹立が目標として掲げられた。
ウ 独立の際，パキスタンは，首都をカラチに定めた。
エ パキスタンは，バグダード条約機構に加盟した。
＜解答解説＞
アとエは基礎知識で正文。イはやや細かい内容だが，用語集のラホールの項目などから正文とわかる。とすると消去法でウが正解，実際に用語集の「パキスタン共和国独立」の項目にも「首都はイスラマバード」とあるから裏付けもある……とはならず，これは用語集が誤っている珍しいパターンである。確かに現在のパキスタンの首都はイスラマバードだが，これはブラジルのブラジリアと全く同じで，従来の人口や経済がパキスタン南部に偏っていたことを是正すべく計画都市として建設された新首都である。建国当初の首都は現在でも人口・経済上の最大都市であるカラチで，そこから一度イスラマバードに近いラワルピンディーに遷った。イスラマバードは建設開始が1959年で，首都移転が1967年のことであるから，建国当初は首都であったどころか，存在すらしていない。一応，建国当初から新首都の計画はあったようなので，カラチは仮の首都であったから「首都をカラチに定めた」わけではない，という言い訳はありうる。しかし，あまりにも苦しいだろう。同様の指摘はどの予備校の解答速報でもあり，結局，大学当局から全員に得点を与える旨と謝罪の発表があった。２年連続でイギリス人の学部長さんが謝る形に。
１４．早稲田大 人間科学部
＜種別＞出題ミスに近い（複数正解）
＜問題＞２ 設問Y �◆∞‥盪�代の説明として誤りを含むものはどれか。
（ア）隋の煬帝は，黄河流域に位置する現在の開封と北京に近い涿郡を結ぶ永済渠を完成させた。
（イ）隋の文帝は，大興城を首都に置き，選挙（科挙）を創始して貴族勢力を抑え，中央集権化を目指した。
（ウ）唐の玄宗は，開元の治によって唐の全盛期を現出したが，安史の乱によって退位した。
（エ）唐の太宗は，晩年になって体調がすぐれなくなると，皇后の則天武后に政務を代行させた。
（オ）唐の高宗は，新羅と結んで高句麗と百済を滅ぼし，さらに新羅を助けて日本の遠征軍を白村江で撃破した。
＜解答解説＞
（ア）（イ）（ウ）は正文。（エ）は太宗ではなく高宗なので明確に誤文であり，作題者の想定する正解もこれであろう。審議の対象は（オ）で，さらっと読むと正しく見えるのだが，よくよく考えると唐が高句麗を滅ぼしたのは白村江の戦いの後であり，「さらに」は時系列を示すと解釈すれば，（オ）もまた誤文になる。正確な時系列は百済の滅亡（660年）・白村江の戦い（663年）・高句麗の滅亡（668年）の順番になる。「高句麗と」の文言をなくすか，「さらに」に代えて「また」等を用いていれば問題のない正文であった。それにしても読み飛ばしそうな箇所の正誤であり，実際にこの点を指摘した解答速報は河合塾だけである。
１５．早稲田大 教育学部
＜種別＞出題ミス（複数正解）
＜問題＞１ （８） 大西洋貿易について述べた次の文�，鉢△寮妓蹐料塙腓擦箸靴董だ気靴い發里呂匹譴�。
� ．▲侫螢�とアメリカ大陸の間で行われた黒人奴隷貿易は，18世紀までに終息した。
�◆‖臉祥遼念廚砲茲蠖靴燭砲發燭蕕気譴織魁璽辧爾筌織丱海覆匹両ι覆蓮だ床そ�国で生活革命を引き起こした。
a � 歙機 ´◆歙機 �b � 歙機 ´◆欷�
c � 欷蹇 ´◆歙機 �d � 欷蹇 ´◆欷�
＜解答解説＞
予備校間の解答が割れたシリーズ。�，麓�明に誤文だが，�△亙犬硫鮗瓩砲茲辰得妓蹐�分かれる。東進と早稲田塾は正文と見なしてc，駿台と河合塾と増田塾は誤文と見なしてd，代ゼミはcとしつつdの可能性もあることをコメントしている。私が解答を出すならdにする。
どういうことかと言えば，�△里Δ船織丱海砲弔い討鰐簑蠅覆い�，コーヒーがネックになり，厳密に考えれば確かに誤文になる。コーヒーは原産地がエチオピアであり，西アジア・バルカン半島を通してヨーロッパに入った。また，ヨーロッパで流行した初期（17世紀）には，コーヒー豆はイスラーム圏から輸入していた。大西洋貿易でコーヒー豆が本格的に入ってくるようになるのは18世紀前半であり，同時期にはジャワ島での栽培もスタートした。これらを勘案すると，大西洋貿易によってコーヒーが「新たにもたらされた」わけではない，と考えるのは妥当である。
一方，これらはかなり細かい話で，一般の高校世界史では，イスラーム圏からコーヒー豆が伝わったらすぐに大規模なカリブ海地域のプランテーションと大西洋貿易が展開したかのように学習する。しかも，本問のような問題にぶつからない限り，その理解で大過があるわけでもない。加えて，作った側はそこまで深く考えて作っていないという予測も成り立ちうる。2017年の早稲田大・教育学部は，他の問題が平易であり，本問だけ殊更難しく作ったとは考えづらいのである。以上２つの理由の合わせ技で，教科書ベースの単純な理解では，誤ったことは言っていないので正文，という考えも取れる。いずれにせよ，cかdか絞れない悪文・悪問と言わざるをえない。しかしこれは出題ミスと認められずに流されそう……と静観していたら，意外にも大学当局からお詫びとc・dの複数正解を認める旨の発表があった。この種の悪問で出題ミスが認められるのは珍しい。
１６．早稲田大 政経学部
＜種別＞悪問
＜問題＞２ B ３ 下線部gについて（編註：日本），日本が戦後処理の一環として東南アジア諸国に対して二国間協定にもとづいて行い，結果として東南アジア諸国との経済的関係回復につながった措置は何か。漢字で記せ。
＜解答解説＞
微妙に予備校間の解答が割れたシリーズ。たいしたことを聞いているわけではないのに，問題文が回りくどすぎる上に，一般常識の範囲ではあれども受験世界史の用語ではないので（日本史か政経であろう），答えが絞りづらい。河合塾・早稲田予備校・城南予備校は「賠償（協定）」，駿台・代ゼミ・東進・増田塾は「政府開発援助」である（漢字指定なのでODAは×）。ただし，駿台は概評を読むと「賠償」でも正解になりそうなことを書いている。私自身が解答を出すなら「賠償協定」にする。
サンフランシスコ平和条約の締結に至る複雑な経緯から，日本の戦争賠償に対する各国の態度・条項は多様な形態になったが，東南アジア諸国に対しては基本的に二国間の協定により日本が賠償を支払う形となった。二国間協定により正式に賠償を受け取った国々はビルマ・フィリピン・南ベトナム・インドネシアである。また，公的には賠償を放棄したが，政府開発援助の形態を取って事実上の賠償（「準賠償」と呼ぶ）を受け取った国としてタイ・ラオス・カンボジア・マレーシア・シンガポールが挙げられ，一応はほとんどの東南アジア諸国に二国間協定による賠償を行ったことになる。こうした賠償が概ね60年代半ばまでに終わると，日本が高度経済成長期に入ったこともあり，賠償の要素が薄れた通常の政府開発援助に移行していった。ゆえに，日本の戦争賠償は準賠償というクッションを通じて政府開発援助にスライドしたということができ，本問のような問われ方をすると，どちらを解答させたいのかが今ひとつ不明瞭なのである。ただまあ，「二国間協定」という点がわざわざ問題文で示されていることと，漢字指定であるということを考慮すると，賠償協定の方を聞いているのではないか，と予測したが，自信は全く無い。
この他に政経学部では「全国三部会」（全国がついているのがポイント），「治安判事」等を問う問題が出ていた。両者ともに収録すべきかどうか迷ったが，どちらも用語集の項目にはなっていないものの，それぞれ三部会とジェントリの項目中の説明には出てくることと，難関私大対策ではよく見る用語であることを考慮して収録としなかった。「治安判事」は旧課程の用語集では頻度�，嚢猝椶�立っていて，新課程では項目としては消滅した用語である。こうした出題は受験生に対して「まだまだ旧課程の方で学習してほしい」という誤ったメッセージを発信しかねない。せっかく教科書メーカーの側が「用語削減による，受験生の過剰な負担軽減」の方向に舵を切ったのに，大学入試の側がそれでは水の泡であるから，注意喚起をしておく。
＜種別＞問題文が悪い
＜問題＞１ B 日本の中国史学界では，戦後大きな論争が起こった。中国史をどう時代区分するかという課題をめぐる論争である。そこではおもに二つの学説が提起され，学界を二分する論争となった。これを便宜上α学説とβ学説とよび，時代区分をおおまかに図示すれば次のようになる。
問10 α学説とβ学説の論争は決着がつかず，現在に至っている。このため高校の教科書において時代区分は明確に示されておらず，中国史の時代像はあいまいなままになっているのが現状である。ただ，両説が共通して時代の画期と認めているのは，唐代から宋代，およびアヘン戦争前後である。これに関して，(ア)唐代から宋代への変化に関する記述のうち誤っているものはどれか。(イ)アヘン戦争に関する記述のうち誤っているものはどれか。
（問題(ア)(イ)自体は適正であるので省略）
＜解答解説＞
非常にツッコミどころが多い問題である。まず，中国史学界は全くの門外漢なのでよく知らないのだけど，「決着がつかず，現在に至っている」のではなくて，その時代区分論がαでもβでも古めかしくなってきたから誰も戦っていないというのが正しい現状なのでは，とはどうしても言いたくなる。まだこの論争をしている人，いるんです？
古代・中世・近世・近代・現代という区分はヨーロッパ史，ないし近代以降の世界史を語るために作られた区分であり，偶然日本史でもしっくり来るから便利に用いられているが，これを全世界に敷衍してきっちり区分可能であるとするのは前時代の歴史学の考え方であろう。ここで挙げられているα学説とは，政治機構による区分（古代は邑制国家から領域国家への展開，中世は貴族制，近世は皇帝独裁制の完成）であり，β学説とはマルクス主義（生産関係の変化を基準とする）による区分である。なお，β学説内でも，宋代の佃戸制を農奴制と見なすか小作制と見なすかによって時代区分論が割れていたはずだが，そのことはここでは取り上げられていない。
無論のことながら，それでも便宜的に時代を区分する必要が生じることはあり，まさにその必要が要請されるのが高校世界史である。この問題文のまずいところはまさにそこ，というのが２つめ。確かに高校世界史Bの教科書７冊は個々独自性のある配置をしているが，大まかな区分として
・古代：先秦〜唐
・中世：五代十国〜元
・近世：明・清（白蓮教徒の乱まで）
・近現代：清末以後
とする点ではほぼ完全に一致しており，ここに意見のズレはほとんど見られない。しいて言えば20世紀の前半を近代にするか現代にするかは意見の相違が見られるのと，帝国書院の教科書はそもそも古代と中世を区分していないという点は確かに教科書間で違う。さて，このような微細な差異しかないにもかかわらず，「このため高校の教科書において時代区分は明確に示されておらず，中国史の時代像はあいまいなままになっているのが現状である」とはどこの時空の高校世界史を指しているのか，大変に興味深い。なお，高校世界史がこうした区分論をとっている理由については山川の『新世界史』が最も雄弁に語っているので，できればそちらをお読みいただきたい。端的に書くなら，諸文明の成立と交流，そして世界の一体化に向かう歴史叙述において区切りを設定している。現在の高校世界史教科書はそもそも諸地域の政治体制や生産体制を区分論にほとんど用いていないし，当然中国史もこれに従っている。
７．上智大 2/7実施
＜種別＞難問・奇問
＜問題＞１ 問９ 文章�い侶从冏�展が起こった時期（編註：1914〜18年）の中国に関する説明として，最も適切なものはどれか。
a 「人が人を食べる」という妄想にとりつかれた男を主人公にした有名な小説は，この時期に執筆され，儒教道徳に対する批判として受け止められた。
b 現在でも人気を集めている『水滸伝』，『三国志演義』，『西遊記』，『金瓶梅』という四大奇書は，この時期に成立した。
c 後に権威ある国際的な文学賞を受賞することになる莫言が，この時期に作家として活躍し，伝統文学のあり方を大きく刷新した。
d この時期に多様な西洋思想が中国に一挙に流入し，その一つとして共産主義思想も紹介されたが，その内容は孫文によって中国流に解釈されていた。
e この時期の民族産業の成長は，数年後の日中全面戦争の勃発によってストップし，これ以降民族産業が復活することはなかった。
＜解答解説＞
b は四大奇書の成立が明代なので誤文。dは，共産主義の最初期の受容者が李大�，篦墜判┐覆里埜輅検�eは，1918年の「数年後」に日中全面戦争が勃発していないので誤文。残ったaとcが，受験生から言って見知らぬ内容なので厳しかろう。cはいかにも新文化運動の現れっぽいので正文に見えるが，莫言は現代の作家であり，彼の権威ある国際的な文学賞，すなわちノーベル賞受賞は2012年であるから誤文である。不可解なのは「権威ある国際的な文学賞」とぼかしてあることで，ここがせめてノーベル賞と明示されていれば，第二次世界大戦前のアジア人のノーベル文学賞受賞者はインド人のタゴールしかいないということから，これが誤文と導ける。とすると，難問には違いないが，これは一応用語集などに記載がある事項であった。変にぼかされたせいで，ノーヒントのつまらないただの難問に成り下がっている。莫言は，さすがにまだ「歴史的事項」ではないだろう。
というわけで正解は残ったaで，いかにも気の狂った内容だが，実際にこれは魯迅の『狂人日記』の内容である。もしかすると，そのことを推測させたかった問題だったのかもしれないし，あるいは『狂人日記』くらい読んでおけ，という意味合いの問題だったのかもしれない。それならそれで意図はわかるが，であれば尚更cの内容はもっと易しくてよかった気も。
８．上智大 2/7実施（２つめ）
＜種別＞悪問
＜問題＞２ (ク) この状況にもっとも適切な事項を以下の選択肢（a〜d）から１つ選びなさい。
（編註：古代的な帝政は６世紀の皇帝ユスティニアヌスをもっておわり，それからは中世東ローマが始まるが，９世紀にはじまるマケドニア王朝のもとでは，疑いえない強勢を誇るにいたる。このような東ヨーロッパあってはじめて，ゲルマン化した西方にも，この世の唯一最高の支配権としてのローマ帝国の観念がのこり，これをシンボルとする(ク)統一ヨーロッパ世界がうまれ，やがて近代をひらくことができたのだ。）
a オットー１世の戴冠 b カルケドン公会議 c カール大帝の戴冠 d ノルマン＝コンクエスト
＜解答解説＞
原文は『中世の光と影』（堀米庸三，文藝春秋，1967年，文庫化は講談社で1978年）で，約50年前に出た本である。しかし，この文章だけでは，正解がaなのかcなのか，今ひとつ判別できない。西ヨーロッパで初めて「統一」の概念を生み出した出来事となるとカールの戴冠になるだろうが，これはマケドニア朝と時代が合わない。一方，マケドニア朝の圧力を感じた西ヨーロッパ世界が作り出した統一のシンボルというと，これはオットー１世の神聖ローマ帝国となる。しかし，オットーの戴冠の理念は「（カールの）帝国の“復活”」であり，カールの戴冠をもって西欧世界が成立したとみなすのが一般的であるから，オットー１世の戴冠によって「統一ヨーロッパ世界が（初めて）うまれた」というのは誤りになる。よって，どちらを正解とみなしてもしっくり来ない部分が生じる。
要するにこの文は「このような東ヨーロッパ」の指すものが「ビザンツ帝国一般」なのか「マケドニア朝のビザンツ帝国」なのかによって解答が変わってくるし，この文はどちらとも解釈しうると思う。おそらく堀米庸三氏はこの統一ヨーロッパ世界（西欧世界）がカール大帝のものなのかオットー１世のものなのか，あまり峻別する気がなくこの文章を書いたのではないかと思われるが，作題者は一義に定まると思っているらしい。めっきり減った上智大のエスパー養成試験の名残のように感じられる。なお，東進の解答はc，増田塾の解答はa。
１．慶應義塾大 商学部
＜種別＞悪問
＜問題＞２ 1848年，中部ヨーロッパ各地で勃発し，「諸国民の春」と呼ばれた (35)(36) 革命への動きの中では，市民層に加えて学生や学者，文学者たちも大きな役割を果たすことになる。
11 二月 12 三月 13 五月
＜解答解説＞
予備校間の解答速報が割れたシリーズ，あるいは答えが無い可能性。五月は絶対に無いとして，二月か三月である。河合塾と代ゼミと城南は「三月」，駿台と増田塾は「二月」，東進は「二月」としつつも「三月の可能性もあり」としている。私自身が解答を出すなら，まあ「三月」かなと。これだけ解答が割れるのは当然のことで，はっきり言ってこれはひどい悪文であり，解答を絞り込めるものではない。
「中部ヨーロッパ各地で勃発し」たのは間違いなく三月革命の方で，二月の時点ですでに革命と呼びうる状態であったのはほぼフランス（パリ）だけであったと言ってよい。しかし，この解釈では三月革命と「諸国民の春」は「と呼ばれた」でつなげられた言い換えということになるが，「諸国民の春」とは二月革命から1848年いっぱいまでに生じた諸革命の総称である1848年革命の別称であり，三月革命だけを指すものではない。三月革命は，通常であればウィーンとベルリンを中心としたドイツで起きたものだけを指すが，「諸国民の春」はそれ以外のハンガリーやチェコ，ポーランド，イタリア等で起きた革命も含む呼称である。ゆえに，(35)(36)に三月を入れると，事実関係に混乱が生じた文になってしまう。
では「二月」ならしっくり来るかというと，当然全く同じ現象が起きるので，混乱が生じる。二月革命とは間違いなくフランスで起きたものだけを指すので，「諸国民の春」の言い換えにはならない。ただし，何を入れても混乱するのであるから，国語的な整合性を超越（あるいは放棄）するなら，「『諸国民の春』が指す諸革命の口火を切った『二月』の方を入れた方が，何となくそれっぽく見える」というのは，態度表明として理解できなくはない。東進はともかく，特に注記の無い駿台の解答はそういう意味合いであろうと推測される。
なお，他の「諸国民の春」の言い換えというと，当然出てくるのが「1848年革命」になるが，これは1848年が問題文に出てしまっているし，選択肢にも存在しない。かなりマニアックな言い方として，1820年のスペイン立憲革命から1830年の七月革命，そして1848年革命までを総称して「自由主義革命（Liberal Revolution）」と呼ぶこともあるが（パラドゲーのVictoriaはこれをとっている），選択肢に自由主義もないので，これも取れない。とするともはや完全にしっくりする選択肢は存在していないとして，出題ミスと見なすことも可能であろう。
２．慶應義塾大 商学部（２つめ）
＜種別＞奇問，というよりも現代文として程度が低い
＜問題＞１（編註：Brexitに関連して移民の問題を取り上げ，黒人奴隷貿易や1924年アメリカ移民法改正，西ドイツのガストアルバイター等に言及するリード文）
問３ 人口減少社会に突入した日本にとって移民とどう向き合うかは喫緊の課題といえる。日本への移民受け入れに関して留意すべき点について，本文の内容を踏まえて，解答用紙Bの所定の欄に50字以内で述べなさい。ただし，本文中に登場する「摩擦」，「労働力不足」，「共生社会」の３語を必ず用いること。
＜解答解説＞
完全に現代文の問題である。慶應大商学部は2010年にも全く同じリード文を要約させる問題を出している（前著，2010早慶６番）。その際にも指摘したが，慶應大は小論文があるが現代文がないので，英語や社会科の入試問題の中に現代文的な問題を挿入したいという欲が潜在的に存在しているのだろう。もはや社会科の入試問題中に現代文の出題をするのが大学の方針なのであれば，それ自体には抗議しないし，以降は本企画にも収録しない。本問について言えば，テーマ的にも世界史にかかわりがないわけではないからセーフというのもある。
それはそれとして，この問題は２つの欠点がある。まず，要約問題であるので本来であればリード文全体を読む必要があるが，実際のところ指定語句の３つを見ればほとんど様相がわかってしまい，全体を読む価値があまりない。大方の予想通り，「労働力不足解消のための移民は，人種差別等の摩擦を引き起こすが，共生社会を築いて受け入れる必要がある。」とか書いておけばよい。
しかもリード文は空欄穴埋めの問題を兼ねている関係で，話題があっちへ行ったりこっちへ行ったりとフラフラした文章になっている。たとえば「クロマニヨン人」を解答させたいがために人類はそもそもアフリカで生まれて世界中に移民したと書いてみたり，「ポエニ戦争」を解答させたいがために古代ローマに言及してみたりとしているが，これが現代の移民問題とは何の関係もなく，文章全体の論旨からすると全く無駄な部分になっている。現代文の要約問題の対象としては失格だろう。やはり，世界史の問題と現代文の問題を同じリード文から出題したいなら，リード文をもっと練るべきであろう。総じて，本問は現代文としての程度が低すぎる。慶應大に現代文の入試問題作成の経験が無いからよくわかっていないのかもしれないが。
４．慶應義塾大 文学部
＜種別＞難問
＜問題＞２ ６世紀からトレドを首都とした西ゴート人の王国では，キリスト教文化が花開き，『語源』を著した（ F ）大司教（ G ）などの教会知識人が現れた。（中略）
1236年にはグアダルキビル川沿いのコルドバが，1248年にはその下流にある（ F ）が陥落した。（ F ）には12世紀にムワッヒド朝により建設された大モスクが存在したが，そのミナレットは現在も大司教聖堂の鐘塔ヒラルダの塔として残存している。
＜解答解説＞
ストレートな難問。実は山川の『新世界史』に記載があるが，用語集の頻度はゼロである。中略以後は地名が入る空欄Fのヒントのつもりなのだろうが，一般の受験生には全くヒントになるまい。もっと大航海時代に繁栄したとか，アンダルシアの中心地とか書いてくれればまだしも。というわけで，Fの正解はセビリア（セビリャ）。
空欄Gの正解はイシドール（イシドルス，イシドールス）。７世紀前半，西ゴート王国時代のセビリアで活躍した。『語源』は百科事典で，タイトルにある語源編は全20巻のうち，実は１巻を占めているに過ぎない。12世紀ルネサンスでアリストテレスの著作が復活するまで，プリニウスの『博物誌』も不完全な状態でしか伝わっていなかったことから，この『語源』は中世初期の西欧では貴重な百科事典であった。なお，イシドールは情報の収集者であったことから，カトリック教会からコンピューターとインターネットの利用者の守護聖人に認定されており，ある意味現代社会で最も重要な守護聖人となっているが，受験世界史のみならず世間の知名度は必ずしも高くない。
７．慶應義塾大 法学部（２つめ）
＜種別＞難問
＜問題＞２ 18世紀末にオーストラリア最初の植民地となったのは， (27)(28) 植民地である。イギリスは多数の流刑囚をこの土地に送り込んだが，次第に自由移民の数も増加していった。
03．ヴィクトリア 17．タスマニア 30．西オーストラリア 31．ニューサウスウェールズ
45．南オーストラリア
（編註：関係のある選択肢のみ抜粋，以下法学部は同じ）
＜解答解説＞
オーストラリアの植民地は「オーストラリア」としか習わないので，地域行政単位を出されると，地理選択者はともかく世界史選択者は死んでしまう。しいて言えば，オーストラリアは東海岸から植民・開拓が始まり，現在でも主要な都市は東南部に集中していることを知っていれば，西オーストラリアと南オーストラリア，そして本島ではないタスマニアは消せる。あとはヴィクトリア州とニューサウスウェールズ州の二択であるが，世界史選択者ならこの二択まで絞れれば優秀であると思う。さて，シドニーがあるのがニューサウスウェールズ，メルボルンがあるのがヴィクトリアで，さあどちらか。
正解は31．ニューサウスウェールズの方で，実はオーストラリアの東側は，当初全域がニューサウスウェールズ植民地に含まれていた。そしてニューサウスウェールズが拡大していく中で，北東部のクイーンズランド州や，南東部のヴィクトリア州が分離・成立することになる。この歴史的経緯から言っても (27)(28) はニューサウスウェールズが入る。一応，東京書籍の教科書には記載あり。
１２．早稲田大 国際教養学部
＜種別＞出題ミス
＜問題＞３ 問４ 下線部４（編註：パキスタン）に関連する記述として，誤りを含むものを一つ選びなさい。
ア ジンナーが，パキスタン初代総督に就任した。
イ 1940年にラホールで開かれた全インド＝ムスリム連盟の大会で，イスラーム教徒による独立国家の樹立が目標として掲げられた。
ウ 独立の際，パキスタンは，首都をカラチに定めた。
エ パキスタンは，バグダード条約機構に加盟した。
＜解答解説＞
アとエは基礎知識で正文。イはやや細かい内容だが，用語集のラホールの項目などから正文とわかる。とすると消去法でウが正解，実際に用語集の「パキスタン共和国独立」の項目にも「首都はイスラマバード」とあるから裏付けもある……とはならず，これは用語集が誤っている珍しいパターンである。確かに現在のパキスタンの首都はイスラマバードだが，これはブラジルのブラジリアと全く同じで，従来の人口や経済がパキスタン南部に偏っていたことを是正すべく計画都市として建設された新首都である。建国当初の首都は現在でも人口・経済上の最大都市であるカラチで，そこから一度イスラマバードに近いラワルピンディーに遷った。イスラマバードは建設開始が1959年で，首都移転が1967年のことであるから，建国当初は首都であったどころか，存在すらしていない。一応，建国当初から新首都の計画はあったようなので，カラチは仮の首都であったから「首都をカラチに定めた」わけではない，という言い訳はありうる。しかし，あまりにも苦しいだろう。同様の指摘はどの予備校の解答速報でもあり，結局，大学当局から全員に得点を与える旨と謝罪の発表があった。２年連続でイギリス人の学部長さんが謝る形に。
１４．早稲田大 人間科学部
＜種別＞出題ミスに近い（複数正解）
＜問題＞２ 設問Y �◆∞‥盪�代の説明として誤りを含むものはどれか。
（ア）隋の煬帝は，黄河流域に位置する現在の開封と北京に近い涿郡を結ぶ永済渠を完成させた。
（イ）隋の文帝は，大興城を首都に置き，選挙（科挙）を創始して貴族勢力を抑え，中央集権化を目指した。
（ウ）唐の玄宗は，開元の治によって唐の全盛期を現出したが，安史の乱によって退位した。
（エ）唐の太宗は，晩年になって体調がすぐれなくなると，皇后の則天武后に政務を代行させた。
（オ）唐の高宗は，新羅と結んで高句麗と百済を滅ぼし，さらに新羅を助けて日本の遠征軍を白村江で撃破した。
＜解答解説＞
（ア）（イ）（ウ）は正文。（エ）は太宗ではなく高宗なので明確に誤文であり，作題者の想定する正解もこれであろう。審議の対象は（オ）で，さらっと読むと正しく見えるのだが，よくよく考えると唐が高句麗を滅ぼしたのは白村江の戦いの後であり，「さらに」は時系列を示すと解釈すれば，（オ）もまた誤文になる。正確な時系列は百済の滅亡（660年）・白村江の戦い（663年）・高句麗の滅亡（668年）の順番になる。「高句麗と」の文言をなくすか，「さらに」に代えて「また」等を用いていれば問題のない正文であった。それにしても読み飛ばしそうな箇所の正誤であり，実際にこの点を指摘した解答速報は河合塾だけである。
１５．早稲田大 教育学部
＜種別＞出題ミス（複数正解）
＜問題＞１ （８） 大西洋貿易について述べた次の文�，鉢△寮妓蹐料塙腓擦箸靴董だ気靴い發里呂匹譴�。
� ．▲侫螢�とアメリカ大陸の間で行われた黒人奴隷貿易は，18世紀までに終息した。
�◆‖臉祥遼念廚砲茲蠖靴燭砲發燭蕕気譴織魁璽辧爾筌織丱海覆匹両ι覆蓮だ床そ�国で生活革命を引き起こした。
a � 歙機 ´◆歙機 �b � 歙機 ´◆欷�
c � 欷蹇 ´◆歙機 �d � 欷蹇 ´◆欷�
＜解答解説＞
予備校間の解答が割れたシリーズ。�，麓�明に誤文だが，�△亙犬硫鮗瓩砲茲辰得妓蹐�分かれる。東進と早稲田塾は正文と見なしてc，駿台と河合塾と増田塾は誤文と見なしてd，代ゼミはcとしつつdの可能性もあることをコメントしている。私が解答を出すならdにする。
どういうことかと言えば，�△里Δ船織丱海砲弔い討鰐簑蠅覆い�，コーヒーがネックになり，厳密に考えれば確かに誤文になる。コーヒーは原産地がエチオピアであり，西アジア・バルカン半島を通してヨーロッパに入った。また，ヨーロッパで流行した初期（17世紀）には，コーヒー豆はイスラーム圏から輸入していた。大西洋貿易でコーヒー豆が本格的に入ってくるようになるのは18世紀前半であり，同時期にはジャワ島での栽培もスタートした。これらを勘案すると，大西洋貿易によってコーヒーが「新たにもたらされた」わけではない，と考えるのは妥当である。
一方，これらはかなり細かい話で，一般の高校世界史では，イスラーム圏からコーヒー豆が伝わったらすぐに大規模なカリブ海地域のプランテーションと大西洋貿易が展開したかのように学習する。しかも，本問のような問題にぶつからない限り，その理解で大過があるわけでもない。加えて，作った側はそこまで深く考えて作っていないという予測も成り立ちうる。2017年の早稲田大・教育学部は，他の問題が平易であり，本問だけ殊更難しく作ったとは考えづらいのである。以上２つの理由の合わせ技で，教科書ベースの単純な理解では，誤ったことは言っていないので正文，という考えも取れる。いずれにせよ，cかdか絞れない悪文・悪問と言わざるをえない。しかしこれは出題ミスと認められずに流されそう……と静観していたら，意外にも大学当局からお詫びとc・dの複数正解を認める旨の発表があった。この種の悪問で出題ミスが認められるのは珍しい。
１６．早稲田大 政経学部
＜種別＞悪問
＜問題＞２ B ３ 下線部gについて（編註：日本），日本が戦後処理の一環として東南アジア諸国に対して二国間協定にもとづいて行い，結果として東南アジア諸国との経済的関係回復につながった措置は何か。漢字で記せ。
＜解答解説＞
微妙に予備校間の解答が割れたシリーズ。たいしたことを聞いているわけではないのに，問題文が回りくどすぎる上に，一般常識の範囲ではあれども受験世界史の用語ではないので（日本史か政経であろう），答えが絞りづらい。河合塾・早稲田予備校・城南予備校は「賠償（協定）」，駿台・代ゼミ・東進・増田塾は「政府開発援助」である（漢字指定なのでODAは×）。ただし，駿台は概評を読むと「賠償」でも正解になりそうなことを書いている。私自身が解答を出すなら「賠償協定」にする。
サンフランシスコ平和条約の締結に至る複雑な経緯から，日本の戦争賠償に対する各国の態度・条項は多様な形態になったが，東南アジア諸国に対しては基本的に二国間の協定により日本が賠償を支払う形となった。二国間協定により正式に賠償を受け取った国々はビルマ・フィリピン・南ベトナム・インドネシアである。また，公的には賠償を放棄したが，政府開発援助の形態を取って事実上の賠償（「準賠償」と呼ぶ）を受け取った国としてタイ・ラオス・カンボジア・マレーシア・シンガポールが挙げられ，一応はほとんどの東南アジア諸国に二国間協定による賠償を行ったことになる。こうした賠償が概ね60年代半ばまでに終わると，日本が高度経済成長期に入ったこともあり，賠償の要素が薄れた通常の政府開発援助に移行していった。ゆえに，日本の戦争賠償は準賠償というクッションを通じて政府開発援助にスライドしたということができ，本問のような問われ方をすると，どちらを解答させたいのかが今ひとつ不明瞭なのである。ただまあ，「二国間協定」という点がわざわざ問題文で示されていることと，漢字指定であるということを考慮すると，賠償協定の方を聞いているのではないか，と予測したが，自信は全く無い。
この他に政経学部では「全国三部会」（全国がついているのがポイント），「治安判事」等を問う問題が出ていた。両者ともに収録すべきかどうか迷ったが，どちらも用語集の項目にはなっていないものの，それぞれ三部会とジェントリの項目中の説明には出てくることと，難関私大対策ではよく見る用語であることを考慮して収録としなかった。「治安判事」は旧課程の用語集では頻度�，嚢猝椶�立っていて，新課程では項目としては消滅した用語である。こうした出題は受験生に対して「まだまだ旧課程の方で学習してほしい」という誤ったメッセージを発信しかねない。せっかく教科書メーカーの側が「用語削減による，受験生の過剰な負担軽減」の方向に舵を切ったのに，大学入試の側がそれでは水の泡であるから，注意喚起をしておく。
Posted by dg_law at 19:10│Comments(8)
この記事へのコメント
今年の分も楽しく読まさせていただきました．2巻が出るのを心待ちにして待ってます．
理系ですが，（もうほとんど覚えてはいませんが）大学受験の際には世界史を選択しており，毎年興味深く読んでおります．
本企画は事実関係の調査なども含めると大変な労力がかかっていることかと思います．無理のない範囲で続けていただければ幸いです．
理系ですが，（もうほとんど覚えてはいませんが）大学受験の際には世界史を選択しており，毎年興味深く読んでおります．
本企画は事実関係の調査なども含めると大変な労力がかかっていることかと思います．無理のない範囲で続けていただければ幸いです．
Posted by hiro at 2017年03月12日 16:01
ありがとうございます。
事実関係が調べるのが大変な問題も多いですが，範囲内か範囲外かの判定のために教科書を隅々まで探したり，日本語的に複数の解釈が成り立つかどうか判定したりする作業もけっこう大変ですね。
可能な範囲で続けていきたいと思います。
事実関係が調べるのが大変な問題も多いですが，範囲内か範囲外かの判定のために教科書を隅々まで探したり，日本語的に複数の解釈が成り立つかどうか判定したりする作業もけっこう大変ですね。
可能な範囲で続けていきたいと思います。
Posted by DG-Law at 2017年03月13日 01:18
今年もこの企画を楽しみにしてました。忙しい中での更新にほんとうに感謝申し上げます。慶應の商学部の２つめの５０字の記述は，中学社会で５０％近いシェアを誇る東京書籍で共生社会という言葉が出てきてはいたので，世界史というより高校入試でもいいくらいの問題に見えてしまいました。判定など忙しいとは思いますが，新作を楽しみにしております
Posted by かっつん at 2017年03月19日 11:42
毎年お読みいただき，ありがとうございます。
なるほど，言われてみると慶應の商学部の小論述は，一周まわって高校入試っぽくありますね。
実は書籍版に入れる慶應の３番，同様に商学部の問題で，かつ同様に少論述の問題なんですが，指定字数35字なのに指定語句が16字分もあって，やっぱり問題としての作りが荒かったりします。
なるほど，言われてみると慶應の商学部の小論述は，一周まわって高校入試っぽくありますね。
実は書籍版に入れる慶應の３番，同様に商学部の問題で，かつ同様に少論述の問題なんですが，指定字数35字なのに指定語句が16字分もあって，やっぱり問題としての作りが荒かったりします。
Posted by DG-Law at 2017年03月20日 02:03
学校の授業としての世界史は苦手科目でしたが、歴史そのものにはそれなりに興味があり、色々楽しく読ませていただいております。ありがとうございます。
さて16番の問題、出題者の意図した正答は「政府開発援助」だと考えます。
ひとつは「賠償」が一般用語過ぎること。言い換えると、出題者としては、賠償の手段(の一つ)として政府開発援助という形が用いられた、という事象の特異性を答えさせたいのだろうと思われること。「政経学部」の問題ですしね。
もうひとつは問題分中にご丁寧に「漢字で記せ」とあること。つまり、出題者の想定している正答には漢字以外の表記がありえる、ということでその観点からも、想定している正答は"ODA"という漢字以外の表記を持つ「政府開発援助」でしょう。
「賠償」だとこの注意書きが活きません。
…と、まさに「出題者の意図を読む」回答を求められる出題だと思います。良い問題だとは全く思いませんが、そういう意味での回答を選ぶためのヒントは提示されているという解釈です。
更に言うと、入試対策の専門家である予備校の皆さまが、その程度の読みを働かせていないとは思えないので、「賠償」を回答提示した予備校は、婉曲に悪問指摘をしているものと解釈しました。
さて16番の問題、出題者の意図した正答は「政府開発援助」だと考えます。
ひとつは「賠償」が一般用語過ぎること。言い換えると、出題者としては、賠償の手段(の一つ)として政府開発援助という形が用いられた、という事象の特異性を答えさせたいのだろうと思われること。「政経学部」の問題ですしね。
もうひとつは問題分中にご丁寧に「漢字で記せ」とあること。つまり、出題者の想定している正答には漢字以外の表記がありえる、ということでその観点からも、想定している正答は"ODA"という漢字以外の表記を持つ「政府開発援助」でしょう。
「賠償」だとこの注意書きが活きません。
…と、まさに「出題者の意図を読む」回答を求められる出題だと思います。良い問題だとは全く思いませんが、そういう意味での回答を選ぶためのヒントは提示されているという解釈です。
更に言うと、入試対策の専門家である予備校の皆さまが、その程度の読みを働かせていないとは思えないので、「賠償」を回答提示した予備校は、婉曲に悪問指摘をしているものと解釈しました。
Posted by 匿名で失礼します at 2017年07月30日 21:28
コメントありがとうございます。
＞賠償の手段(の一つ)として政府開発援助という形が用いられた、という事象の特異性を答えさせたいのだろうと思われること。「政経学部」の問題ですしね。
あー，これはあるかもしれません。
それならそれで，もう少しそういう示唆を欲しかったところではありますが。
＞もうひとつは問題分中にご丁寧に「漢字で記せ」とあること。〜〜
＞「賠償」だとこの注意書きが活きません。
こちらは，私自身そういう推理はしました。
一方で逆に，「ODAと政府開発援助のどちらでも正解にするのが筋であろうから，わざわざ漢字制限にしたということは，漢字でしか出せない解答であろう」という予測も成り立ってしまうので，決定打にはなりえないと考えています。
＞賠償の手段(の一つ)として政府開発援助という形が用いられた、という事象の特異性を答えさせたいのだろうと思われること。「政経学部」の問題ですしね。
あー，これはあるかもしれません。
それならそれで，もう少しそういう示唆を欲しかったところではありますが。
＞もうひとつは問題分中にご丁寧に「漢字で記せ」とあること。〜〜
＞「賠償」だとこの注意書きが活きません。
こちらは，私自身そういう推理はしました。
一方で逆に，「ODAと政府開発援助のどちらでも正解にするのが筋であろうから，わざわざ漢字制限にしたということは，漢字でしか出せない解答であろう」という予測も成り立ってしまうので，決定打にはなりえないと考えています。
Posted by DG-Law at 2017年08月01日 01:10
今年はこのシリーズをやらないのでしょうか？
今年の受験生だったので楽しみに待っております。
忙しいとは思いますがお願いします。
今年の受験生だったので楽しみに待っております。
忙しいとは思いますがお願いします。
Posted by よしお at 2018年03月17日 11:53
別の記事のコメント欄で答えてますが，やりますよ。
今日から更新です。
今日から更新です。
Posted by DG-Law at 2018年03月17日 16:12
