2017年03月12日
受験世界史悪問・難問・奇問集 ver.2017 その２（早大残り・国公立）
その１から。こちらは早大の残りと，国公立。国公立は，解いたものは全て載せているが，実は某所の更新がないことで千葉大の問題が未入手なので，荒れていた場合は書籍版に収録します。
国公立はいつもとは違う顔ぶれになっていて，意外性が高い。
国公立はいつもとは違う顔ぶれになっていて，意外性が高い。
１７．早稲田大 商学部
＜種別＞悪問・難問
＜問題＞１ 問B 下線部Bについて（編註：（中国の戸籍人口は）２世紀に入るとほぼ回復した。），その理由として妥当なものはどれか。
１．長安遷都によって渭水盆地の開発が進んだ。
２．鮮卑の服属によって西北地域の政治状況が安定した。
３．治水工事技術の発達によって黄河の氾濫がなくなった。
４．山東地域や長江以南の開発が進展した。
＜解答解説＞
商学部は２年連続で中国史からの難問・悪問の嵐であった。その中で収録対象としたのは２問であるが，全体的に難しかった。前年と担当者が変わらなかった上に反省もしなかった，ということか。さて本題，１は後漢の首都が洛陽なので誤り。２はむしろ２世紀になってからの方が鮮卑が暴れているので誤り。なお，高校世界史範囲外の話をするなら，２世紀頃の後漢にとって鮮卑と並ぶ脅威はチベット系の羌であった。その観点から言っても西北地域の政治状況が安定していたとはとても言えない。残った３と４がどちらも確定するには微妙である。３について。確かに後漢は黄河の大規模な治水工事を行っており，紀元後70年頃に完成を見た。これにより黄河の大規模な流路の移動は北宋代（あるいは唐末）まで起こらなくなり，河道は安定したと言える。ただし，これが人口の回復に直接寄与したかどうかはわからない。
一方，４は，そのような事実があったかどうか自体が不明瞭である。とりあえず山東地域を横に置いておく。長江流域の開発については，少なくとも高校世界史では後漢末以降と学習する。これを厳密にとるなら４は誤りということになるが，実際には後漢の中頃から長江流域の開発は進んでおり，ある程度人口増加に寄与していたと考えられる。たとえば山川の『世界各国史 中国史』（尾形勇・岸本美緒編，山川出版社，1998年）では「北方辺境からの後退は，南方への移民の呼び水となり，淮河以南の長江の中下流域の人口が飛躍的に増大し，各地の豪族の指導による水田の開発にともなって，いわゆる「江南の開発」が本格化した。」とある（p.96）。では山東地域の開発が進んでいたなら４は正文となるが，これは何を調べても情報がなかった。ただ，山東地域というと戦国時代の斉であり，早くから開発が進んでいたイメージがある。漢代になって，人口増加に寄与するほど開発が進展していたとはあまり思えない。
予備校の解答速報は河合塾・代ゼミ・東進・早稲田予備校・増田塾が３，駿台が４にしていた。本来であれば私もすぱっと解答を出すべきなのだろうが，こればっかりは本当に３か４かわからない。４が駿台だけなのが非常に意外である。せめて４が山東地域に言及していなければこちらを推せたのだが。根本的な話をすると，後漢代は前漢代並に人口「回復した」のであって，人口が上回って増加したわけではない。「回復」に何か特殊な事情が必要だろうか。版図の大きさがほぼ同じなのだから，安定した統治が数十年続けば人口が元に戻るのは不思議ではない。その上で，鮮卑や羌に荒らされた西北地域から，長江流域に人口が「移動した」等の現象は起きうると思うが，それは人口の総数の議論とは別のレイヤーの出来事になるはずである。その中で後漢の社会・経済の特徴を一言で言うなら豪族の台頭に他ならず，上記の『世界各国史』の引用にも現れている通り，治水や農地の開発の主体が国家から地方豪族に変わった点が挙げられるはずである。この点は高校世界史でも扱うので，「豪族主体の治水や農地開発が進んだ」といった選択肢にしておいてくれれば，これが迷わず正文であった。後漢の社会・経済の最大の特徴である「豪族」というキーワードを外して，このような問題を作ったのは大変に不可解である。
（追記）再検証の記事をアップ。
なお，問Eも予備校間で解答が割れていたので一応言及しておくが，これは割れる方がおかしく，正解は１である。１の内容は確かに難しく受験世界史範囲内とは言いがたいが，２・３・４がどう見ても誤文なので，消去法で正解が出せる。また，１も少し調べればすぐに正文とわかるはずである。問Gは収録対象としたので，書籍版で解説する。私の出した正解は３。
１９．早稲田大 商学部（３つめ）
＜種別＞奇問中の奇問
＜問題＞３ 問L 下線部Lに関連して，カリフォルニア州に本拠を置いていない企業はどれか。
１．アップル ２．フェイスブック ３．マイクロソフト ４．グーグル
＜解答解説＞
私的な今年のKOTY（クソ問オブザイヤー）はこれ。もう全くもって世界史の問題ではないし，じゃあ地理や政経なら出るかというと，そちらの科目でも普通には出ない「範囲外」にあたる。つまり，知識問題であるのに，高校の「社会科」の問題ですらないのである。作題者は愉快犯だと思うが，愉快犯でなくこのような問題を出していたのなら，これを一般常識だと考えているか，あるいはやる気がないか頭がおかしいか。１７番も踏まえると，2017年の早慶上智のワースト入試問題は早稲田大の商学部であった。
正解は３のマイクロソフト。ここだけワシントン州のシアトル郊外に本拠地がある。残りは全てカリフォルニア州のシリコンバレーに本拠地を置いている。
２１．早稲田大 社会科学部（２つめ）
＜種別＞出題ミス（複数正解）
＜問題＞１ 問８ 下線部（H）について（イベリア半島），イベリア半島のムスリムに関する次の記述のうち適切でないものを１つ選べ。
a．アンダルスで生産された繊維製品や陶器が北アフリカやシリアに輸出された。
b．コルドバに建設された大モスクはレコンキスタによって完全に破壊された。
c．バスク地方に建国されたレオン王国が後ウマイヤ朝と激しい攻防を繰り返した。
d．コルドバで生まれたイブン＝ルシュドは，中世ヨーロッパのスコラ哲学に影響を与えた。
＜解答解説＞
a・c・dの内容が細かく，特にcは範囲外の知識になる。しかしbがとんでもない誤文なので，正解を導くのは容易……という問題だったはずのところ，大きな欠陥がある。cのレオン王国はその前身をアストゥリアス王国というが，アストゥリアス・レオン両王国はスペイン北西部のアストゥリアス地方・ガリシア地方を主な版図としており，スペイン北東部からフランス南西部にまたがるバスク地方を領有したことはない。よって，cも誤文ととれる。aとdは正文であるが，bとcの複数正解にはなってしまうだろう。範囲外からわざわざ出しておいて出題ミスになるという失態の伝統芸能は今年も健在であった。駿台からも同様の指摘あり。その後，早稲田大学当局から謝罪とbとcの両方を正解とする旨の発表があった。
２２．早稲田大 社会科学部（３つめ）
＜種別＞難問
＜問題＞４ 問３ 下線部（C）について（編註：キューバ），キューバの歴史に関する記述のうち最も適切なものを１つ選べ。
a．ホセ＝マルティによって指導された1868年からの独立戦争，1895年からの十年戦争を経て，スペインの植民地支配を脱した。
b．独立に際してアメリカから要求されたプラット修正は，セオドア＝ローズヴェルトの善隣外交の一環として1934年に削除された。
c．カストロやゲバラが展開したゲリラ闘争によって，1959年にヴァルガス政権を打倒し，ラテンアメリカ初の社会主義国となった。
d．アメリカ合衆国はアイゼンハワー大統領の下でキューバとの国交を断絶したが，2015年に国交を回復した。
＜解答解説＞
bはセオドアがフランクリンの誤り，cはヴァルガスがバティスタの誤りで，aとdまでは絞れる。aは完全に範囲外の内容だが，「独立戦争」と「十年戦争」が逆。まあ，成功した方が独立戦争で，そうでない方は別の名前がついているだろうと予想が働くと誤文と見抜けるかもしれないが，無茶振りであろう。つまり，残ったdが正文ということになる。前段はまたお前かという。そんなにアイゼンハワーかケネディかの違いが重要なのか，高校世界史レベルで必要な知識なのか。後段は時事問題。３年後くらいの教科書には頻出事項として載っていそうな気がするが，2017年現在では時期尚早であろう。一般常識の範囲とみなすこともできるので過度に非難する気はないが，もう３年ほど待てなかったのかなと。
【ここから国立】
〔番外編〕一橋大（前期）
＜問題＞３ 次の文章を読んで，問いに答えなさい。
われわれが海を渡り，最初に到着した町はザイトゥーンの町であった。そこは壮大にして，規模の大きな町であり，カムハー織り（錦紗）やビロード織りの布地（緞子）がそこでは製造されており，それらはその町に由来する名前で知られている。その布地は，ハンサー織りやハンバーリク織りよりも上等である。
そこの停泊港は，世界の数ある港のなかでも最大規模の港の一つ，否，間違いなく最大のものであり，私は実際にその港で，約100艘の大型ジャンクを見た。さらに小型船に至っては，多くて数え切れないほどであった。そこの港は陸地に入り込んだ海からの大きな入江で，やがてその海は大河と混じり合う。この町は，他のすべてのシナ地方と同じく，住民のための果樹園，田畑と屋敷が町の真ん中にあって，ちょうど，我が国のスィジルマーサの町とよく似ており，他ならぬこのために，彼らの町は規模が大きくなっている。
（イブン・バットゥータ著，家島彦一訳注『大旅行記７』より引用。但し，一部改変）
問い ザイトンとも称されたザイトゥーンの都市名を漢字で答えた上で，当該都市を取り巻く11〜13世紀の国際関係を論じなさい。（400字以内）
＜解答解説＞
一橋大が珍しく良問を出したのに，出題傾向が大きく変わったせいで受験生から非難囂々で，「いつもの」と思われている模様。不憫なので，解説することにした。もっとも，日頃の行いが悪すぎるせいなので，自業自得でしかないのかもしれないが。
本問は泉州をピックアップしているが，基本的には11〜13世紀の南シナ海の海域アジア史について述べていけばよい。そこから泉州にはどうにも無関係な要素だけをそぎ落とせば，おおよそ解答が完成する。高校世界史としてはかなり目新しい部類のテーマで，受験生が“最新の”高校世界史に触れてきたかどうかが問われている……のだけれど，一橋大の東洋史は過去に「明末清初の東アジア」か「近現代アジア史」からの出題しかなかったし，政治に絡んだ問題が多かったので，受験生は「11〜13世紀」の「経済史」という点に度肝を抜かれたことであろう。また，一見すると教科書ベースでは書ける内容が薄く，400字埋まるのか不安になるが，要素をかき集めてみると，なんだかんだでそれなりに埋まる。
予想される加点ポイントは以下。全て教科書か用語集に記載があり，高校世界史をはみ出すものは使っていない。
�‥�時の泉州に来航していた商人・外国船：ダウ船に乗ってきたムスリム商人や，東南アジア諸国の朝貢船と随行商人。東南アジア諸国は，字数埋めのために列挙してもよい。チャンパー・アンコール朝・三仏斉など。代ゼミと駿台は日本と高麗を挙げているが，これらの国々は寧波（明州）や山東半島の登州が中心なので泉州まで行っていない。琉球は登場が14世紀なのでこれも書けない。
�∪�州から出航した商人・船：ジャンク船に乗る中国人。（問題文にあるのでジャンク船は必要ないかも）
�９餾殍念廚砲�ける取扱商品。宋・元代で大差ないのでまとめてしまってよい。
a．輸出品：陶磁器・絹織物・銅銭・書籍・茶・薬品類。特に手前３つは必須。
b．輸入品：香料・香辛料・象牙・犀角・宝石類・銀。
→ 余談。こうしてみると見事なまでに宋・元代の中国の先進国っぷりが見える。工業製品を輸出して，贅沢品を輸入。なお，輸出品は相手国によらず一様だが，輸入品は相手国によって大きく変容するのもおもしろいところ。ムスリム商人や東南アジア諸国人が相手なのでこのようなラインナップになるが，これが対日貿易なら砂金・水銀・硫黄・木材・漆器・刀剣類となり，対高麗貿易なら金・銀・朝鮮人参・紙・筆・墨となる。
�げδ�による管理・課税：宋・元ともに泉州に市舶司を設置。宋は外国人居留地を設定（早慶上智的な知識になるが，「蕃坊」と呼ぶ。旧課程なら用語集に記載があったが，新課程だと無いので無理に入れなくてもいい）。
�ゥ皀鵐乾襦Ω議�の政策。
a．元代にはモンゴル帝国の成立による世界の一体化の萌芽が見られ，ムスリム商人の来航が一層活性化した点を挙げる。
→ 高校世界史範囲からは外れるが，知っているなら蒲寿庚（コトバンク）に言及してもいいだろう。
b．元朝が銀（の地金）を基軸にした経済圏を整えて，国際貿易を後押ししたこと。
c．元朝の13世紀後半の東南アジア侵略。侵略にはほとんど失敗したが，侵略後には東南アジア諸国との交流が密になっていることを書いてもよい。
これ以外に，引用文のイブン＝バットゥータのほか，もう１人泉州を訪れた有名人としてマルコ＝ポーロは必ず習う。マルコ＝ポーロに代表させて「ヴェネツィア商人とも取引があった」という国際関係を強引に認定してしまうのも手ではあるが，採点基準になっているかはかなり疑わしい（河合塾の解答速報は言及）。また，河合塾と駿台の解答速報は南宋の成立による江南の発展を挙げているが，泉州は江南に入っていないと見なすのが普通なので（江南にしては南すぎる），これも強引すぎるだろう。
なお，2017年の一橋大は第１問・第２問ともに少し変わった問題で受験生の混乱が見られたが，これらは第３問以上に「冷静に解いてみると普通の問題」とわかるもので，さすがにあの程度の変化球は一橋大受験生なら対処したい。少なくとも本企画に収録されるような問題ではない。
１．北海道大
＜種別＞出題ミス
＜問題＞３ 第二次世界大戦後，中国東北部・外モンゴルの処理は，英・米・ソ連首脳が集まって開いた［ G ］によって方向づけられた。
問１ 空欄A〜Iに適当な語句を入れなさい。
＜解答解説＞
中国東北部・外モンゴルの処理については高校世界史上触れられないが，集まったのが英・米・ソ連の首脳であるからカイロ会談ではないし，テヘランやカサブランカ等は議題が違いすぎる。とするとヤルタかポツダムしかないが，ポツダムではタイミングが遅すぎるし，何よりもソ連の対日参戦を決めたのがヤルタであるからここはヤルタ会談が正解であろう，と詰めていくのが普通の解き方になると思われる。すると確かに「第二次世界大戦後」はノイズになる。一応，不自然ではあるが「第二次世界大戦後“の”」の“の”が脱落したと解釈して読めば，不自然ではあるが意味は通る。しかし，特に記憶があやふやで悩んでいた生徒からすると重要なヒントのように見えてしまい，「ドイツの降伏でヨーロッパ戦線が終わったことを指しているのかも」と解釈させてポツダム会談と解答させるのを引き出す誤誘導になってしまう。
とはいえしっかりした知識があれば引っかからないから収録すべきかどうかは微妙だなと思っていたところ，大学当局から「正確な題意が伝わらず，問１空欄 G の正解を解答できない恐れがある」として，全員正解する旨の発表があった。代ゼミがこの出題ミスを指摘していたので（河合塾と駿台は指摘なし），無視できなくなったのではないか。スルーせずに対応したのは良いことだと思うが，受験生へのお詫び文がなかったのはちょっといただけない。
２．名古屋大（前期）
＜種別＞惜しくも難問
＜問題＞４ 以下の２点の史料は，ローマ帝国において，303年に起こった事件について述べた著作(A)，及び381年と391年に出された勅法(B)のそれぞれ一節である。これらの史料は，キリスト教徒に対する迫害からキリスト教の国教化に至るローマ帝国の歴史的な政策転換の過程を示すものであるが，そこからは同時に，キリスト教のそれと対比する形で，ギリシアも含めた古代地中海世界における伝統的な宗教（いわゆる「異教」）のあり方についても，その一端を知ることができる。そこで，これらの史料を参考にしながら，キリスト教が普及する以前の古代地中海世界における伝統的な宗教の特徴について，そこで行われていた祭儀の具体例にも言及しながら，350字以内で論じなさい。
(A) 救い主の御受難の祭が近づいた頃，いたる所に勅令が公示された。それは教会の倒壊と諸書の焼却を命じ，また，もしキリスト教の主張に固執するならば，名誉ある地位を持つ者は公権を奪われ，帝室に仕える者は自由を奪われる旨を宣していた。
(B) 唯一最高の神の御名はあまねく称えられるべきであり，……ニカイア信条の永久不滅なる礼典が堅持さるべし。
何人も犠牲獣によって自らを穢してはならぬ，何人も無辜の獣を屠ってはならぬ。何人も神殿に近づいてはならず，神域内をうろつき，死すべき人間の労力で造られた偶像を崇めてはならぬ。
（歴史学研究会編『世界史史料』第１巻所収）
＜解答解説＞
例年，中国史か古代地中海史のどちらかの分野で意味不明な難問を出す名古屋大で，2016年は古代地中海史であったから，2017年は中国史で来るのではないかと思われていたところ，２年連続で古代地中海史であった。これ絶対アレクサンドリアの大灯台と同じ人が作ったでしょ（前著2014その他５番）。問題の作りがまるで同じである。なお，今回の問題は，見る人が見たらすぐに種本の予測がつく。おそらく『多神教と一神教』（本村凌二，岩波新書，2005年）である。自分の論文を使ったら怒られたから他人の著作にしたんですかね。一方で，反省と努力があったのか，今回の問題は何とか高校世界史の範囲内で受験生が解答できるようにしようという設定にはなっていて，「本当は聞きたかったであろうラインの一歩手前」までしか要求していない。しかし，そのせいで今度は冗長な文章にするか，かなり瑣末な具体例まで挙げないと350字埋まらないという現象が発生してしまっている。すなわち，一周してただの知識問題になってしまっているのだ。２つ前の一橋大が何とか400字埋まるのとは対照的だ。指定字数の合わなさを勘案しないなら本問は収録対象外ということになるので，収録するべきかどうか非常に悩んだのだが，ここは「収録しつつも，強くは批判しない」ということにした。ここでは作題者が避けたであろうと思しき「本当は聞きたかったであろうライン」まで含めて，一気に解説する。
まずは史料文の読解から。史料(A)はディオクレティアヌス帝の迫害を示したものだが，あまりヒントにはなっていない。ディオクレティアヌス帝が専制君主政をとったから，皇帝崇拝を行わないキリスト教徒は公職を追われたというのが読み取れるくらいで，やはりそれを読み取ってほしいのだろう。なお，これはエウセビオスの『教会史』が出典。一方，史料(B)は大きなヒントになっていて，問題文にある通り，キリスト教以前の伝統宗教の特徴が読み取れる。基本的にどこも多神教であることと，供犠を伴う祭儀を行っていたこと，そして偶像崇拝が行われていたことがわかる。こちらはテオドシウスの勅法で，前半は381年に出され，ニカイア・コンスタンティノポリス信条（表記は教派により異なる）に付随して出されたもの。後半は391年に出され，翌年の国教化の布石となったものである。
次に教科書内容のうち，標準的な受験生が覚えているものを。教科書でそれなりに情報量のある古代地中海の宗教というと，エジプトとギリシア・ローマ，あとはユダヤ教くらいであるが，ユダヤ教は例外が多すぎるので一旦外す。ゆえにエジプト神話とギリシア・ローマ神話を手がかりに（カルタゴやケルトの神話を趣味で知っていたらかなり有利だったのではないかと思うが），エジプトのファラオやアレクサンドロス大王，ローマ皇帝などの事例から，君主は神や神に準ずるものという扱いであったこと，神々も多くは人間と同じ姿であると考えられていたこと，供犠の他に詩や演劇，スポーツの祭典も存在したことあたりを想起できれば，かなりよくできる受験生であると思う。その上で，例外的な一神教として，キリスト教の先輩としてユダヤ教があったことに触れるのもよい。
しかし困ったことに，前述の通り，ここまでがんばっても全然350字埋まらないのである。これに対する各予備校の解答速報の努力がおもしろい。名古屋がお膝元の河合塾はこれでもかというほど事例を列挙していて，エジプトからはホルス神を挙げてみたり死者の書を挙げてみたり，パルテノン神殿のアテネ神像やゼウスに対する「百頭以上の牛を犠牲として焼いた」オリンピアの祭典など。これだけ挙げてあってオリンピアの祭典がスポーツを伴ったことには言及していないのが意外である。ところで問題文には「そこで行われていた祭儀の具体例にも言及しながら」とはあるが，神名や神殿名を列挙しろとは書いていないので，ホルス神やら死者の書は厳密に言えば無駄では。駿台もオシリス神に死者の書，ミイラを挙げているが，おもしろいのはローマ時代には多神教が多様化していることと，習合されてローマにパンテオンが建てられたことに言及している点である。代ゼミも駿台に近い解答で，「多神教の習合・融合」をうたった上でより明白に「普遍的な一神教が広まる下地を形成した」としている。駿台と代ゼミの解答例がなぜおもしろいかは後述する。
さて，以降は「多分，本当はここまで書かせたかったのだろう」というラインの話。ローマ帝国はこうした地方の伝統宗教の祭儀を，共同体の結束力を強めるものとして保護していた。しかし，ローマ帝国が「パックス＝ロマーナ」を達成して古代地中海世界を統一したことで，広域的な商業が発展し，都市化も進んだので，かえって社会は流動的になる。結果的にそうした地方の共同体から外れた人々も現れた。すると，帝政初期にはこうした疎外された人々を中心に，新興宗教が広まった。東方に由来し，地域を基盤とせず，いわば「個人」の救済をうたう，新しいタイプの宗教であった。その例としてミトラ教やマニ教，イシス教が挙げられ，これらは非公開の儀礼を共通の特徴としたため，神秘宗教（密儀宗教）と言われる。初期のキリスト教もまた同じく，洗礼や聖餐を非公開の儀礼として行い，個人救済を掲げた宗教であった。実は，簡潔ではあるがこの辺りまで書いている教科書がある。東京書籍の『世界史B』である。著者の一人に本村凌二氏がいるあたりでお察しください。また，マニ教は当然として，ミトラ教（頻度�ぁ砲肇ぅ轡攻機壁囘扠 砲詫儻貊犬傍�載があり，どちらの説明文にも「密儀宗教」と書かれている。旧課程の用語集では「密儀宗教」で項目立てされていたりもする。ゆえに，あまり考えたくない話ではあるが，ひょっとすると作題者は「ここまでは高校世界史の範囲！」と考えていて，この辺りまで要求しているという可能性もある。その場合，問題の要求は「キリスト教と対比した時に見える伝統宗教の特徴」であるから，新興宗教の「個人」や「密儀」に対する「共同（体）での祭儀」，はキーワードになるだろう。ただし，仮にここまでが要求ラインだったとすると，現実的に言えば，東京書籍の教科書くらいにしか記述がないので，この点まで指摘できていた受験生は皆無に近かったのではないか。
一方で，流動的な社会では多神教同士の同一視・融合が進んだ。ゼウスとユピテルなどはいい例で，ローマにあるパンテオンも「万神殿」の名の通り，ローマ神話を中心としたあらゆる宗教の神々を祀る目的で建設された。こうして，多神教は融合を繰り返した結果，かえって１柱の神格があらゆる信仰を集め，人間らしい性格・感情を失って抽象化したり，拝一神教化したりするという現象が生じる。前出のイシス教はエジプト神話の代表的な女神が，各地の女神を吸収して成立したもので，その典型例にあたり，キリスト教のマリア信仰の下地になったとされる。このような「共同」から「個人」へという流れと，多神教の習合・融合という大きな流れが，キリスト教前夜の地中海世界の宗教状況だった……というようなことを含めていろいろ書いているのが前出の種本である。前述の通り，駿台と代ゼミが「多神教の習合・融合」に言及しているのは，おそらく「種本は割れているぞアピール」であろう。
ともあれ，受験生がちゃんと解けるように工夫するアピールは受け取ったので，方向性はこのまま，次はもうさらに易しく，かつ知識だけでなく思考力も要するような問題が出てくるのを期待したい。
３．京都大（前期）
＜種別＞難問
＜問題＞４ ［ d ］を中心都市とするドイツ騎士団領でも，騎士団総長がルター派に改宗し，1525年にプロイセン公としてカトリックのポーランド国王に臣従した。（中略）
また，1701年にプロイセン公国は王国に昇格したが，国王フリードリヒ１世は［ d ］で戴冠式を挙行している。（中略）また，(13)プロイセン領［ d ］大学からは重要な思想家や作家が輩出した（編註：問(13)では『純粋理性批判』を著した哲学者の名前が問われた）。（中略）
［ d ］とその周辺は，大戦末期の凄惨な包囲戦と戦後のドイツ系住民追放を経てソ連領となり，市名もカリーニングラードと変えられた。
＜解答解説＞
たまに早慶上智並の短答記述問題を出す京大で，2017年はすごいものが出たから収録しておく。一応教科書等掲載の地図を見ると都市名自体は載ってなくはないが，それで覚えている受験生は極めて少ないだろう。どこのヒントで正解がわかるかな連想ゲーム状態だが，都市名自体が普通覚えないものであるからどうヒントを出されても解答しようがない。カントの出身地である大学町で現カリーニングラードというと，ケーニヒスベルクである。ドイツ語で「王の山」の意味を持つ。カント以外ではヘルダーとE.T.A.ホフマンがケーニヒスベルク大学の出身者。おそらく受験生よりも歴史好きの社会人の方が正答率が高い。
４．大阪大（前期，文学部）
＜種別＞何かもうよくわからない
＜問題＞３ 次に示す図１は，紀元後２世紀頃のガンダーラ地域で制作されたと考えられる仏像である。また図１の矢印で指示した囲み部分を拡大したものが図２であり，ギリシア神話に登場する英雄ヘラクレスを表したものと考えられている。このような像がつくられた歴史的背景を，文化交流と仏教の発展という二つの側面に注目しながら，説明しなさい（200字程度）。
＜解答解説＞
この問題は，単純にガンダーラ美術の成立過程を聞いている問題と解釈するなら，ヘレニズム文化の東方への伝播（文化交流）と大乗仏教の成立（仏教の発展），それらの融合を述べればよく，「ヘレニズム文化と大乗仏教が融合して，ガンダーラ美術が成立した」とでも書いておけばよい。阪大受験生のレベルなら易しめの問題になる。しかし，このように簡単に答えていいのであればこの問題，仏像の脇にいるヘラクレスが問題文で出されている意味が全くないのである。図１だけを掲載して，２行目を削除すれば，そのままそういう問題として成立するし，難易度は低いが良問である。図２と２行目が丸々必要ない。
ではなぜ図２と２行目を付したのかというと，私が考えた可能性は２つである。
・「ガンダーラ」の地域名と仏像の画像だけだと「ヘレニズム」を連想できないと考えて，ヒントのつもりで「ヘラクレス」の語を付け足した。解答自体は，単純なガンダーラ美術の成立過程以外求めていない。
・本当に「ヘラクレスが仏像の脇にいること」に対する背景を答えてほしかった。
これは本当にどっちを志向して作ったのか，全くわからない。前者だとすると，これは阪大文学部受験生をなめた話になる。そのレベルの受験生なら，ガンダーラの地域名と仏像の画像だけで，阪大の求めていた解答はさらっと書けてしまう。しかも第３問はわざわざ学部別に問題が分けてあって，本問を解くのは文学部の受験生である。それで外国語学部の受験生が解く問題よりも文学部の方が易しいということもあるまいが（英語は逆であろう），この前者だとするといいとこ同レベルか，外国語学部の問題の方が難しい。そして，このレベルの受験生にとっては，このようなヒントはかえって深読みさせる妨害，余計なおせっかいにしかならない。
一方で後者だとすると，おそらく彫刻技術と神話を区別させたいのだと思われる。通常の高校世界史ではガンダーラ美術は「ヘレニズム文化の彫刻技術と大乗仏教が融合して，ガンダーラ美術で仏像が盛んに制作された」と習う。つまり，ギリシア神話はガンダーラ地域まで伝わったとは明言されない。ここを問題意識として取り上げて，受験生に「実は神話も伝わっていたのだよ」ということを読み取らせる目的でヘラクレスをクローズアップし，「ヘレニズム文化の“写実的な彫刻技術”と“ギリシア神話”が仏教に融合してガンダーラ美術が成立した」という解答を引き出したかった，という可能性はある。
しかし，こうだとすると問題意識の共有に失敗しているというか，あまりにも意図が迂遠すぎてほとんど伝わっていないと思われる。実際に河合塾も駿台も代ゼミも東進も解答速報は前者の可能性に沿ったものであって，後者に沿って解答を作った予備校は（今のところ）無い。本当に「受験生に『実は神話も伝わっていたのだよ』ということを読み取らせる目的でヘラクレスをクローズアップし」た問題だったとしたら，問題文が舌足らずであった。もうちょっとこう，「仏像とヘラクレス像が併存している理由」とか直接的なフレーズが欲しかったところである。それでも十分思考力を要する良問になっていただろう。
大阪大学というと「阪大史学」を掲げ，歴史教育研究に強く力を入れている大学であり，入試問題も毎年練った良問を出す。「受験生が思考を必死に巡らせれば，着想できるライン」の調整は実に上手いと思う。実際，今年も他の問題はおもしろく，とりわけ第１問の問２はすばらしかった。それだけに，本問だけライン調整をミスして簡単になりすぎたor意図と違った出題になってしまったとは，どちらもあまり考えられない。だから，余計にどちらの可能性が正しいのか，ちょっとわからない。
以下は，ほぼ完全に余談である。興味がわいた人だけお読みください。
実はこの問いのより深い背景として，仏像の脇侍となったヘラクレスは最終的に執金剛神（金剛力士）像に変わっていったという説がある。仏教は多神教の宗教として成長する過程で，様々な他の宗教を吸収している。その最大の“被害者”はインド古来の宗教で，インドラが帝釈天に，ブラフマーが梵天になったのが有名な事例であろう。ガンダーラ地方においてヘラクレスが取り込まれたのはその一例で，ギリシア神話の英雄は仏教の守護者に転じ，ライオンとの闘いで用いた棍棒は金剛杵となった。これに近い例として，ギリシア神話の北風の神ボレアスは，ゾロアスター教の風神ヴァドーを吸収しつつ東進し，最終的に俵屋宗達のあの「風神」に行き着くとされている。この過程で，ボレアスの時点ではマントを羽織っていたのが段々縮んでいって，あの両手で持つ白い布に変わった。前述のように，図像の指すものが消滅して形質が残り，別の文脈に吸収されていくパターンは美術史学上多様に例がある。図像の意味を理解する人間が滅んでも，図像自体は滅びないのである。ギリシア神話の長老クロノスが，中世西欧でギリシア神話の文脈を失ったことで「老人と鎌」という図像だけを残し，別の文脈と混交した結果，元とはほとんど関係のない「時間の寓意（時の翁）」となっていった事例などは，ヘラクレス→金剛力士にかなり近いと思う。その際に時間に関するイメージそのものが変容する現象を伴っている，ということが美術史学上の古典パノフスキーの『イコノロジー研究』（邦訳の文庫版はちくま書房，2002年）に書かれているので興味ある人は。ということで，この図像と図像の意味内容のズレは美術史学上かなり普遍的なテーマで，この発想を上手いこと大学入試の問題に取り入れようと考える人が出てきても不思議ではない。
ちなみに，これらのことは2016年（4/12〜6/19）に東京国立博物館で開催されていた「黄金のアフガニスタン」展（拙文による展覧会評）でも見た気が。まさかここから着想を得たわけではなかろうな。
＜種別＞悪問・難問
＜問題＞１ 問B 下線部Bについて（編註：（中国の戸籍人口は）２世紀に入るとほぼ回復した。），その理由として妥当なものはどれか。
１．長安遷都によって渭水盆地の開発が進んだ。
２．鮮卑の服属によって西北地域の政治状況が安定した。
３．治水工事技術の発達によって黄河の氾濫がなくなった。
４．山東地域や長江以南の開発が進展した。
＜解答解説＞
商学部は２年連続で中国史からの難問・悪問の嵐であった。その中で収録対象としたのは２問であるが，全体的に難しかった。前年と担当者が変わらなかった上に反省もしなかった，ということか。さて本題，１は後漢の首都が洛陽なので誤り。２はむしろ２世紀になってからの方が鮮卑が暴れているので誤り。なお，高校世界史範囲外の話をするなら，２世紀頃の後漢にとって鮮卑と並ぶ脅威はチベット系の羌であった。その観点から言っても西北地域の政治状況が安定していたとはとても言えない。残った３と４がどちらも確定するには微妙である。３について。確かに後漢は黄河の大規模な治水工事を行っており，紀元後70年頃に完成を見た。これにより黄河の大規模な流路の移動は北宋代（あるいは唐末）まで起こらなくなり，河道は安定したと言える。ただし，これが人口の回復に直接寄与したかどうかはわからない。
一方，４は，そのような事実があったかどうか自体が不明瞭である。とりあえず山東地域を横に置いておく。長江流域の開発については，少なくとも高校世界史では後漢末以降と学習する。これを厳密にとるなら４は誤りということになるが，実際には後漢の中頃から長江流域の開発は進んでおり，ある程度人口増加に寄与していたと考えられる。たとえば山川の『世界各国史 中国史』（尾形勇・岸本美緒編，山川出版社，1998年）では「北方辺境からの後退は，南方への移民の呼び水となり，淮河以南の長江の中下流域の人口が飛躍的に増大し，各地の豪族の指導による水田の開発にともなって，いわゆる「江南の開発」が本格化した。」とある（p.96）。では山東地域の開発が進んでいたなら４は正文となるが，これは何を調べても情報がなかった。ただ，山東地域というと戦国時代の斉であり，早くから開発が進んでいたイメージがある。漢代になって，人口増加に寄与するほど開発が進展していたとはあまり思えない。
予備校の解答速報は河合塾・代ゼミ・東進・早稲田予備校・増田塾が３，駿台が４にしていた。本来であれば私もすぱっと解答を出すべきなのだろうが，こればっかりは本当に３か４かわからない。４が駿台だけなのが非常に意外である。せめて４が山東地域に言及していなければこちらを推せたのだが。根本的な話をすると，後漢代は前漢代並に人口「回復した」のであって，人口が上回って増加したわけではない。「回復」に何か特殊な事情が必要だろうか。版図の大きさがほぼ同じなのだから，安定した統治が数十年続けば人口が元に戻るのは不思議ではない。その上で，鮮卑や羌に荒らされた西北地域から，長江流域に人口が「移動した」等の現象は起きうると思うが，それは人口の総数の議論とは別のレイヤーの出来事になるはずである。その中で後漢の社会・経済の特徴を一言で言うなら豪族の台頭に他ならず，上記の『世界各国史』の引用にも現れている通り，治水や農地の開発の主体が国家から地方豪族に変わった点が挙げられるはずである。この点は高校世界史でも扱うので，「豪族主体の治水や農地開発が進んだ」といった選択肢にしておいてくれれば，これが迷わず正文であった。後漢の社会・経済の最大の特徴である「豪族」というキーワードを外して，このような問題を作ったのは大変に不可解である。
（追記）再検証の記事をアップ。
なお，問Eも予備校間で解答が割れていたので一応言及しておくが，これは割れる方がおかしく，正解は１である。１の内容は確かに難しく受験世界史範囲内とは言いがたいが，２・３・４がどう見ても誤文なので，消去法で正解が出せる。また，１も少し調べればすぐに正文とわかるはずである。問Gは収録対象としたので，書籍版で解説する。私の出した正解は３。
１９．早稲田大 商学部（３つめ）
＜種別＞奇問中の奇問
＜問題＞３ 問L 下線部Lに関連して，カリフォルニア州に本拠を置いていない企業はどれか。
１．アップル ２．フェイスブック ３．マイクロソフト ４．グーグル
＜解答解説＞
私的な今年のKOTY（クソ問オブザイヤー）はこれ。もう全くもって世界史の問題ではないし，じゃあ地理や政経なら出るかというと，そちらの科目でも普通には出ない「範囲外」にあたる。つまり，知識問題であるのに，高校の「社会科」の問題ですらないのである。作題者は愉快犯だと思うが，愉快犯でなくこのような問題を出していたのなら，これを一般常識だと考えているか，あるいはやる気がないか頭がおかしいか。１７番も踏まえると，2017年の早慶上智のワースト入試問題は早稲田大の商学部であった。
正解は３のマイクロソフト。ここだけワシントン州のシアトル郊外に本拠地がある。残りは全てカリフォルニア州のシリコンバレーに本拠地を置いている。
２１．早稲田大 社会科学部（２つめ）
＜種別＞出題ミス（複数正解）
＜問題＞１ 問８ 下線部（H）について（イベリア半島），イベリア半島のムスリムに関する次の記述のうち適切でないものを１つ選べ。
a．アンダルスで生産された繊維製品や陶器が北アフリカやシリアに輸出された。
b．コルドバに建設された大モスクはレコンキスタによって完全に破壊された。
c．バスク地方に建国されたレオン王国が後ウマイヤ朝と激しい攻防を繰り返した。
d．コルドバで生まれたイブン＝ルシュドは，中世ヨーロッパのスコラ哲学に影響を与えた。
＜解答解説＞
a・c・dの内容が細かく，特にcは範囲外の知識になる。しかしbがとんでもない誤文なので，正解を導くのは容易……という問題だったはずのところ，大きな欠陥がある。cのレオン王国はその前身をアストゥリアス王国というが，アストゥリアス・レオン両王国はスペイン北西部のアストゥリアス地方・ガリシア地方を主な版図としており，スペイン北東部からフランス南西部にまたがるバスク地方を領有したことはない。よって，cも誤文ととれる。aとdは正文であるが，bとcの複数正解にはなってしまうだろう。範囲外からわざわざ出しておいて出題ミスになるという失態の伝統芸能は今年も健在であった。駿台からも同様の指摘あり。その後，早稲田大学当局から謝罪とbとcの両方を正解とする旨の発表があった。
２２．早稲田大 社会科学部（３つめ）
＜種別＞難問
＜問題＞４ 問３ 下線部（C）について（編註：キューバ），キューバの歴史に関する記述のうち最も適切なものを１つ選べ。
a．ホセ＝マルティによって指導された1868年からの独立戦争，1895年からの十年戦争を経て，スペインの植民地支配を脱した。
b．独立に際してアメリカから要求されたプラット修正は，セオドア＝ローズヴェルトの善隣外交の一環として1934年に削除された。
c．カストロやゲバラが展開したゲリラ闘争によって，1959年にヴァルガス政権を打倒し，ラテンアメリカ初の社会主義国となった。
d．アメリカ合衆国はアイゼンハワー大統領の下でキューバとの国交を断絶したが，2015年に国交を回復した。
＜解答解説＞
bはセオドアがフランクリンの誤り，cはヴァルガスがバティスタの誤りで，aとdまでは絞れる。aは完全に範囲外の内容だが，「独立戦争」と「十年戦争」が逆。まあ，成功した方が独立戦争で，そうでない方は別の名前がついているだろうと予想が働くと誤文と見抜けるかもしれないが，無茶振りであろう。つまり，残ったdが正文ということになる。前段はまたお前かという。そんなにアイゼンハワーかケネディかの違いが重要なのか，高校世界史レベルで必要な知識なのか。後段は時事問題。３年後くらいの教科書には頻出事項として載っていそうな気がするが，2017年現在では時期尚早であろう。一般常識の範囲とみなすこともできるので過度に非難する気はないが，もう３年ほど待てなかったのかなと。
【ここから国立】
〔番外編〕一橋大（前期）
＜問題＞３ 次の文章を読んで，問いに答えなさい。
われわれが海を渡り，最初に到着した町はザイトゥーンの町であった。そこは壮大にして，規模の大きな町であり，カムハー織り（錦紗）やビロード織りの布地（緞子）がそこでは製造されており，それらはその町に由来する名前で知られている。その布地は，ハンサー織りやハンバーリク織りよりも上等である。
そこの停泊港は，世界の数ある港のなかでも最大規模の港の一つ，否，間違いなく最大のものであり，私は実際にその港で，約100艘の大型ジャンクを見た。さらに小型船に至っては，多くて数え切れないほどであった。そこの港は陸地に入り込んだ海からの大きな入江で，やがてその海は大河と混じり合う。この町は，他のすべてのシナ地方と同じく，住民のための果樹園，田畑と屋敷が町の真ん中にあって，ちょうど，我が国のスィジルマーサの町とよく似ており，他ならぬこのために，彼らの町は規模が大きくなっている。
（イブン・バットゥータ著，家島彦一訳注『大旅行記７』より引用。但し，一部改変）
問い ザイトンとも称されたザイトゥーンの都市名を漢字で答えた上で，当該都市を取り巻く11〜13世紀の国際関係を論じなさい。（400字以内）
＜解答解説＞
一橋大が珍しく良問を出したのに，出題傾向が大きく変わったせいで受験生から非難囂々で，「いつもの」と思われている模様。不憫なので，解説することにした。もっとも，日頃の行いが悪すぎるせいなので，自業自得でしかないのかもしれないが。
本問は泉州をピックアップしているが，基本的には11〜13世紀の南シナ海の海域アジア史について述べていけばよい。そこから泉州にはどうにも無関係な要素だけをそぎ落とせば，おおよそ解答が完成する。高校世界史としてはかなり目新しい部類のテーマで，受験生が“最新の”高校世界史に触れてきたかどうかが問われている……のだけれど，一橋大の東洋史は過去に「明末清初の東アジア」か「近現代アジア史」からの出題しかなかったし，政治に絡んだ問題が多かったので，受験生は「11〜13世紀」の「経済史」という点に度肝を抜かれたことであろう。また，一見すると教科書ベースでは書ける内容が薄く，400字埋まるのか不安になるが，要素をかき集めてみると，なんだかんだでそれなりに埋まる。
予想される加点ポイントは以下。全て教科書か用語集に記載があり，高校世界史をはみ出すものは使っていない。
�‥�時の泉州に来航していた商人・外国船：ダウ船に乗ってきたムスリム商人や，東南アジア諸国の朝貢船と随行商人。東南アジア諸国は，字数埋めのために列挙してもよい。チャンパー・アンコール朝・三仏斉など。代ゼミと駿台は日本と高麗を挙げているが，これらの国々は寧波（明州）や山東半島の登州が中心なので泉州まで行っていない。琉球は登場が14世紀なのでこれも書けない。
�∪�州から出航した商人・船：ジャンク船に乗る中国人。（問題文にあるのでジャンク船は必要ないかも）
�９餾殍念廚砲�ける取扱商品。宋・元代で大差ないのでまとめてしまってよい。
a．輸出品：陶磁器・絹織物・銅銭・書籍・茶・薬品類。特に手前３つは必須。
b．輸入品：香料・香辛料・象牙・犀角・宝石類・銀。
→ 余談。こうしてみると見事なまでに宋・元代の中国の先進国っぷりが見える。工業製品を輸出して，贅沢品を輸入。なお，輸出品は相手国によらず一様だが，輸入品は相手国によって大きく変容するのもおもしろいところ。ムスリム商人や東南アジア諸国人が相手なのでこのようなラインナップになるが，これが対日貿易なら砂金・水銀・硫黄・木材・漆器・刀剣類となり，対高麗貿易なら金・銀・朝鮮人参・紙・筆・墨となる。
�げδ�による管理・課税：宋・元ともに泉州に市舶司を設置。宋は外国人居留地を設定（早慶上智的な知識になるが，「蕃坊」と呼ぶ。旧課程なら用語集に記載があったが，新課程だと無いので無理に入れなくてもいい）。
�ゥ皀鵐乾襦Ω議�の政策。
a．元代にはモンゴル帝国の成立による世界の一体化の萌芽が見られ，ムスリム商人の来航が一層活性化した点を挙げる。
→ 高校世界史範囲からは外れるが，知っているなら蒲寿庚（コトバンク）に言及してもいいだろう。
b．元朝が銀（の地金）を基軸にした経済圏を整えて，国際貿易を後押ししたこと。
c．元朝の13世紀後半の東南アジア侵略。侵略にはほとんど失敗したが，侵略後には東南アジア諸国との交流が密になっていることを書いてもよい。
これ以外に，引用文のイブン＝バットゥータのほか，もう１人泉州を訪れた有名人としてマルコ＝ポーロは必ず習う。マルコ＝ポーロに代表させて「ヴェネツィア商人とも取引があった」という国際関係を強引に認定してしまうのも手ではあるが，採点基準になっているかはかなり疑わしい（河合塾の解答速報は言及）。また，河合塾と駿台の解答速報は南宋の成立による江南の発展を挙げているが，泉州は江南に入っていないと見なすのが普通なので（江南にしては南すぎる），これも強引すぎるだろう。
なお，2017年の一橋大は第１問・第２問ともに少し変わった問題で受験生の混乱が見られたが，これらは第３問以上に「冷静に解いてみると普通の問題」とわかるもので，さすがにあの程度の変化球は一橋大受験生なら対処したい。少なくとも本企画に収録されるような問題ではない。
１．北海道大
＜種別＞出題ミス
＜問題＞３ 第二次世界大戦後，中国東北部・外モンゴルの処理は，英・米・ソ連首脳が集まって開いた［ G ］によって方向づけられた。
問１ 空欄A〜Iに適当な語句を入れなさい。
＜解答解説＞
中国東北部・外モンゴルの処理については高校世界史上触れられないが，集まったのが英・米・ソ連の首脳であるからカイロ会談ではないし，テヘランやカサブランカ等は議題が違いすぎる。とするとヤルタかポツダムしかないが，ポツダムではタイミングが遅すぎるし，何よりもソ連の対日参戦を決めたのがヤルタであるからここはヤルタ会談が正解であろう，と詰めていくのが普通の解き方になると思われる。すると確かに「第二次世界大戦後」はノイズになる。一応，不自然ではあるが「第二次世界大戦後“の”」の“の”が脱落したと解釈して読めば，不自然ではあるが意味は通る。しかし，特に記憶があやふやで悩んでいた生徒からすると重要なヒントのように見えてしまい，「ドイツの降伏でヨーロッパ戦線が終わったことを指しているのかも」と解釈させてポツダム会談と解答させるのを引き出す誤誘導になってしまう。
とはいえしっかりした知識があれば引っかからないから収録すべきかどうかは微妙だなと思っていたところ，大学当局から「正確な題意が伝わらず，問１空欄 G の正解を解答できない恐れがある」として，全員正解する旨の発表があった。代ゼミがこの出題ミスを指摘していたので（河合塾と駿台は指摘なし），無視できなくなったのではないか。スルーせずに対応したのは良いことだと思うが，受験生へのお詫び文がなかったのはちょっといただけない。
２．名古屋大（前期）
＜種別＞惜しくも難問
＜問題＞４ 以下の２点の史料は，ローマ帝国において，303年に起こった事件について述べた著作(A)，及び381年と391年に出された勅法(B)のそれぞれ一節である。これらの史料は，キリスト教徒に対する迫害からキリスト教の国教化に至るローマ帝国の歴史的な政策転換の過程を示すものであるが，そこからは同時に，キリスト教のそれと対比する形で，ギリシアも含めた古代地中海世界における伝統的な宗教（いわゆる「異教」）のあり方についても，その一端を知ることができる。そこで，これらの史料を参考にしながら，キリスト教が普及する以前の古代地中海世界における伝統的な宗教の特徴について，そこで行われていた祭儀の具体例にも言及しながら，350字以内で論じなさい。
(A) 救い主の御受難の祭が近づいた頃，いたる所に勅令が公示された。それは教会の倒壊と諸書の焼却を命じ，また，もしキリスト教の主張に固執するならば，名誉ある地位を持つ者は公権を奪われ，帝室に仕える者は自由を奪われる旨を宣していた。
(B) 唯一最高の神の御名はあまねく称えられるべきであり，……ニカイア信条の永久不滅なる礼典が堅持さるべし。
何人も犠牲獣によって自らを穢してはならぬ，何人も無辜の獣を屠ってはならぬ。何人も神殿に近づいてはならず，神域内をうろつき，死すべき人間の労力で造られた偶像を崇めてはならぬ。
（歴史学研究会編『世界史史料』第１巻所収）
＜解答解説＞
例年，中国史か古代地中海史のどちらかの分野で意味不明な難問を出す名古屋大で，2016年は古代地中海史であったから，2017年は中国史で来るのではないかと思われていたところ，２年連続で古代地中海史であった。これ絶対アレクサンドリアの大灯台と同じ人が作ったでしょ（前著2014その他５番）。問題の作りがまるで同じである。なお，今回の問題は，見る人が見たらすぐに種本の予測がつく。おそらく『多神教と一神教』（本村凌二，岩波新書，2005年）である。自分の論文を使ったら怒られたから他人の著作にしたんですかね。一方で，反省と努力があったのか，今回の問題は何とか高校世界史の範囲内で受験生が解答できるようにしようという設定にはなっていて，「本当は聞きたかったであろうラインの一歩手前」までしか要求していない。しかし，そのせいで今度は冗長な文章にするか，かなり瑣末な具体例まで挙げないと350字埋まらないという現象が発生してしまっている。すなわち，一周してただの知識問題になってしまっているのだ。２つ前の一橋大が何とか400字埋まるのとは対照的だ。指定字数の合わなさを勘案しないなら本問は収録対象外ということになるので，収録するべきかどうか非常に悩んだのだが，ここは「収録しつつも，強くは批判しない」ということにした。ここでは作題者が避けたであろうと思しき「本当は聞きたかったであろうライン」まで含めて，一気に解説する。
まずは史料文の読解から。史料(A)はディオクレティアヌス帝の迫害を示したものだが，あまりヒントにはなっていない。ディオクレティアヌス帝が専制君主政をとったから，皇帝崇拝を行わないキリスト教徒は公職を追われたというのが読み取れるくらいで，やはりそれを読み取ってほしいのだろう。なお，これはエウセビオスの『教会史』が出典。一方，史料(B)は大きなヒントになっていて，問題文にある通り，キリスト教以前の伝統宗教の特徴が読み取れる。基本的にどこも多神教であることと，供犠を伴う祭儀を行っていたこと，そして偶像崇拝が行われていたことがわかる。こちらはテオドシウスの勅法で，前半は381年に出され，ニカイア・コンスタンティノポリス信条（表記は教派により異なる）に付随して出されたもの。後半は391年に出され，翌年の国教化の布石となったものである。
次に教科書内容のうち，標準的な受験生が覚えているものを。教科書でそれなりに情報量のある古代地中海の宗教というと，エジプトとギリシア・ローマ，あとはユダヤ教くらいであるが，ユダヤ教は例外が多すぎるので一旦外す。ゆえにエジプト神話とギリシア・ローマ神話を手がかりに（カルタゴやケルトの神話を趣味で知っていたらかなり有利だったのではないかと思うが），エジプトのファラオやアレクサンドロス大王，ローマ皇帝などの事例から，君主は神や神に準ずるものという扱いであったこと，神々も多くは人間と同じ姿であると考えられていたこと，供犠の他に詩や演劇，スポーツの祭典も存在したことあたりを想起できれば，かなりよくできる受験生であると思う。その上で，例外的な一神教として，キリスト教の先輩としてユダヤ教があったことに触れるのもよい。
しかし困ったことに，前述の通り，ここまでがんばっても全然350字埋まらないのである。これに対する各予備校の解答速報の努力がおもしろい。名古屋がお膝元の河合塾はこれでもかというほど事例を列挙していて，エジプトからはホルス神を挙げてみたり死者の書を挙げてみたり，パルテノン神殿のアテネ神像やゼウスに対する「百頭以上の牛を犠牲として焼いた」オリンピアの祭典など。これだけ挙げてあってオリンピアの祭典がスポーツを伴ったことには言及していないのが意外である。ところで問題文には「そこで行われていた祭儀の具体例にも言及しながら」とはあるが，神名や神殿名を列挙しろとは書いていないので，ホルス神やら死者の書は厳密に言えば無駄では。駿台もオシリス神に死者の書，ミイラを挙げているが，おもしろいのはローマ時代には多神教が多様化していることと，習合されてローマにパンテオンが建てられたことに言及している点である。代ゼミも駿台に近い解答で，「多神教の習合・融合」をうたった上でより明白に「普遍的な一神教が広まる下地を形成した」としている。駿台と代ゼミの解答例がなぜおもしろいかは後述する。
さて，以降は「多分，本当はここまで書かせたかったのだろう」というラインの話。ローマ帝国はこうした地方の伝統宗教の祭儀を，共同体の結束力を強めるものとして保護していた。しかし，ローマ帝国が「パックス＝ロマーナ」を達成して古代地中海世界を統一したことで，広域的な商業が発展し，都市化も進んだので，かえって社会は流動的になる。結果的にそうした地方の共同体から外れた人々も現れた。すると，帝政初期にはこうした疎外された人々を中心に，新興宗教が広まった。東方に由来し，地域を基盤とせず，いわば「個人」の救済をうたう，新しいタイプの宗教であった。その例としてミトラ教やマニ教，イシス教が挙げられ，これらは非公開の儀礼を共通の特徴としたため，神秘宗教（密儀宗教）と言われる。初期のキリスト教もまた同じく，洗礼や聖餐を非公開の儀礼として行い，個人救済を掲げた宗教であった。実は，簡潔ではあるがこの辺りまで書いている教科書がある。東京書籍の『世界史B』である。著者の一人に本村凌二氏がいるあたりでお察しください。また，マニ教は当然として，ミトラ教（頻度�ぁ砲肇ぅ轡攻機壁囘扠 砲詫儻貊犬傍�載があり，どちらの説明文にも「密儀宗教」と書かれている。旧課程の用語集では「密儀宗教」で項目立てされていたりもする。ゆえに，あまり考えたくない話ではあるが，ひょっとすると作題者は「ここまでは高校世界史の範囲！」と考えていて，この辺りまで要求しているという可能性もある。その場合，問題の要求は「キリスト教と対比した時に見える伝統宗教の特徴」であるから，新興宗教の「個人」や「密儀」に対する「共同（体）での祭儀」，はキーワードになるだろう。ただし，仮にここまでが要求ラインだったとすると，現実的に言えば，東京書籍の教科書くらいにしか記述がないので，この点まで指摘できていた受験生は皆無に近かったのではないか。
一方で，流動的な社会では多神教同士の同一視・融合が進んだ。ゼウスとユピテルなどはいい例で，ローマにあるパンテオンも「万神殿」の名の通り，ローマ神話を中心としたあらゆる宗教の神々を祀る目的で建設された。こうして，多神教は融合を繰り返した結果，かえって１柱の神格があらゆる信仰を集め，人間らしい性格・感情を失って抽象化したり，拝一神教化したりするという現象が生じる。前出のイシス教はエジプト神話の代表的な女神が，各地の女神を吸収して成立したもので，その典型例にあたり，キリスト教のマリア信仰の下地になったとされる。このような「共同」から「個人」へという流れと，多神教の習合・融合という大きな流れが，キリスト教前夜の地中海世界の宗教状況だった……というようなことを含めていろいろ書いているのが前出の種本である。前述の通り，駿台と代ゼミが「多神教の習合・融合」に言及しているのは，おそらく「種本は割れているぞアピール」であろう。
ともあれ，受験生がちゃんと解けるように工夫するアピールは受け取ったので，方向性はこのまま，次はもうさらに易しく，かつ知識だけでなく思考力も要するような問題が出てくるのを期待したい。
３．京都大（前期）
＜種別＞難問
＜問題＞４ ［ d ］を中心都市とするドイツ騎士団領でも，騎士団総長がルター派に改宗し，1525年にプロイセン公としてカトリックのポーランド国王に臣従した。（中略）
また，1701年にプロイセン公国は王国に昇格したが，国王フリードリヒ１世は［ d ］で戴冠式を挙行している。（中略）また，(13)プロイセン領［ d ］大学からは重要な思想家や作家が輩出した（編註：問(13)では『純粋理性批判』を著した哲学者の名前が問われた）。（中略）
［ d ］とその周辺は，大戦末期の凄惨な包囲戦と戦後のドイツ系住民追放を経てソ連領となり，市名もカリーニングラードと変えられた。
＜解答解説＞
たまに早慶上智並の短答記述問題を出す京大で，2017年はすごいものが出たから収録しておく。一応教科書等掲載の地図を見ると都市名自体は載ってなくはないが，それで覚えている受験生は極めて少ないだろう。どこのヒントで正解がわかるかな連想ゲーム状態だが，都市名自体が普通覚えないものであるからどうヒントを出されても解答しようがない。カントの出身地である大学町で現カリーニングラードというと，ケーニヒスベルクである。ドイツ語で「王の山」の意味を持つ。カント以外ではヘルダーとE.T.A.ホフマンがケーニヒスベルク大学の出身者。おそらく受験生よりも歴史好きの社会人の方が正答率が高い。
４．大阪大（前期，文学部）
＜種別＞何かもうよくわからない
＜問題＞３ 次に示す図１は，紀元後２世紀頃のガンダーラ地域で制作されたと考えられる仏像である。また図１の矢印で指示した囲み部分を拡大したものが図２であり，ギリシア神話に登場する英雄ヘラクレスを表したものと考えられている。このような像がつくられた歴史的背景を，文化交流と仏教の発展という二つの側面に注目しながら，説明しなさい（200字程度）。
＜解答解説＞
この問題は，単純にガンダーラ美術の成立過程を聞いている問題と解釈するなら，ヘレニズム文化の東方への伝播（文化交流）と大乗仏教の成立（仏教の発展），それらの融合を述べればよく，「ヘレニズム文化と大乗仏教が融合して，ガンダーラ美術が成立した」とでも書いておけばよい。阪大受験生のレベルなら易しめの問題になる。しかし，このように簡単に答えていいのであればこの問題，仏像の脇にいるヘラクレスが問題文で出されている意味が全くないのである。図１だけを掲載して，２行目を削除すれば，そのままそういう問題として成立するし，難易度は低いが良問である。図２と２行目が丸々必要ない。
ではなぜ図２と２行目を付したのかというと，私が考えた可能性は２つである。
・「ガンダーラ」の地域名と仏像の画像だけだと「ヘレニズム」を連想できないと考えて，ヒントのつもりで「ヘラクレス」の語を付け足した。解答自体は，単純なガンダーラ美術の成立過程以外求めていない。
・本当に「ヘラクレスが仏像の脇にいること」に対する背景を答えてほしかった。
これは本当にどっちを志向して作ったのか，全くわからない。前者だとすると，これは阪大文学部受験生をなめた話になる。そのレベルの受験生なら，ガンダーラの地域名と仏像の画像だけで，阪大の求めていた解答はさらっと書けてしまう。しかも第３問はわざわざ学部別に問題が分けてあって，本問を解くのは文学部の受験生である。それで外国語学部の受験生が解く問題よりも文学部の方が易しいということもあるまいが（英語は逆であろう），この前者だとするといいとこ同レベルか，外国語学部の問題の方が難しい。そして，このレベルの受験生にとっては，このようなヒントはかえって深読みさせる妨害，余計なおせっかいにしかならない。
一方で後者だとすると，おそらく彫刻技術と神話を区別させたいのだと思われる。通常の高校世界史ではガンダーラ美術は「ヘレニズム文化の彫刻技術と大乗仏教が融合して，ガンダーラ美術で仏像が盛んに制作された」と習う。つまり，ギリシア神話はガンダーラ地域まで伝わったとは明言されない。ここを問題意識として取り上げて，受験生に「実は神話も伝わっていたのだよ」ということを読み取らせる目的でヘラクレスをクローズアップし，「ヘレニズム文化の“写実的な彫刻技術”と“ギリシア神話”が仏教に融合してガンダーラ美術が成立した」という解答を引き出したかった，という可能性はある。
しかし，こうだとすると問題意識の共有に失敗しているというか，あまりにも意図が迂遠すぎてほとんど伝わっていないと思われる。実際に河合塾も駿台も代ゼミも東進も解答速報は前者の可能性に沿ったものであって，後者に沿って解答を作った予備校は（今のところ）無い。本当に「受験生に『実は神話も伝わっていたのだよ』ということを読み取らせる目的でヘラクレスをクローズアップし」た問題だったとしたら，問題文が舌足らずであった。もうちょっとこう，「仏像とヘラクレス像が併存している理由」とか直接的なフレーズが欲しかったところである。それでも十分思考力を要する良問になっていただろう。
大阪大学というと「阪大史学」を掲げ，歴史教育研究に強く力を入れている大学であり，入試問題も毎年練った良問を出す。「受験生が思考を必死に巡らせれば，着想できるライン」の調整は実に上手いと思う。実際，今年も他の問題はおもしろく，とりわけ第１問の問２はすばらしかった。それだけに，本問だけライン調整をミスして簡単になりすぎたor意図と違った出題になってしまったとは，どちらもあまり考えられない。だから，余計にどちらの可能性が正しいのか，ちょっとわからない。
以下は，ほぼ完全に余談である。興味がわいた人だけお読みください。
実はこの問いのより深い背景として，仏像の脇侍となったヘラクレスは最終的に執金剛神（金剛力士）像に変わっていったという説がある。仏教は多神教の宗教として成長する過程で，様々な他の宗教を吸収している。その最大の“被害者”はインド古来の宗教で，インドラが帝釈天に，ブラフマーが梵天になったのが有名な事例であろう。ガンダーラ地方においてヘラクレスが取り込まれたのはその一例で，ギリシア神話の英雄は仏教の守護者に転じ，ライオンとの闘いで用いた棍棒は金剛杵となった。これに近い例として，ギリシア神話の北風の神ボレアスは，ゾロアスター教の風神ヴァドーを吸収しつつ東進し，最終的に俵屋宗達のあの「風神」に行き着くとされている。この過程で，ボレアスの時点ではマントを羽織っていたのが段々縮んでいって，あの両手で持つ白い布に変わった。前述のように，図像の指すものが消滅して形質が残り，別の文脈に吸収されていくパターンは美術史学上多様に例がある。図像の意味を理解する人間が滅んでも，図像自体は滅びないのである。ギリシア神話の長老クロノスが，中世西欧でギリシア神話の文脈を失ったことで「老人と鎌」という図像だけを残し，別の文脈と混交した結果，元とはほとんど関係のない「時間の寓意（時の翁）」となっていった事例などは，ヘラクレス→金剛力士にかなり近いと思う。その際に時間に関するイメージそのものが変容する現象を伴っている，ということが美術史学上の古典パノフスキーの『イコノロジー研究』（邦訳の文庫版はちくま書房，2002年）に書かれているので興味ある人は。ということで，この図像と図像の意味内容のズレは美術史学上かなり普遍的なテーマで，この発想を上手いこと大学入試の問題に取り入れようと考える人が出てきても不思議ではない。
ちなみに，これらのことは2016年（4/12〜6/19）に東京国立博物館で開催されていた「黄金のアフガニスタン」展（拙文による展覧会評）でも見た気が。まさかここから着想を得たわけではなかろうな。
Posted by dg_law at 16:00│Comments(16)
この記事へのコメント
＞京都大
グラフ理論をかじった経済学部志望も少し正解率高かったりして。
国立大学の短答問題で私大並の難問が出るのは、1問ぐらいならいいと思います。
大半は正解できない前提で、度を越して世界史を学習した受験生へのささやかなご褒美と見れば微笑ましいものです。
(受験生側にしてみればそうも言ってられないのでしょうが)
自分が受験生だったころは、過去問の「チョイバルサン」とか「法幣」とか見て「そんなの知らねえよ」と思ったものです。
グラフ理論をかじった経済学部志望も少し正解率高かったりして。
国立大学の短答問題で私大並の難問が出るのは、1問ぐらいならいいと思います。
大半は正解できない前提で、度を越して世界史を学習した受験生へのささやかなご褒美と見れば微笑ましいものです。
(受験生側にしてみればそうも言ってられないのでしょうが)
自分が受験生だったころは、過去問の「チョイバルサン」とか「法幣」とか見て「そんなの知らねえよ」と思ったものです。
Posted by 二次は地理に時間をかけすぎた at 2017年03月13日 02:45
ケーニヒスベルクの橋，一筆書き問題ですね。
グラフ理論は知らないですが，そっちは知ってました。
＞国立大学の短答問題で私大並の難問が出るのは、1問ぐらいならいいと思います。
早慶上智並でも用語集頻度が�，箸��△箸�でとどまってくれればいいんですが，今回のようにほぼ載っていないレベルだと，やっぱりまずいというのがこの企画の立場ですね。
＞過去問の「チョイバルサン」とか「法幣」とか
どっちも細かいですねー。法幣（幣制改革）は現在の課程だと多少重要度が上がったかな。
グラフ理論は知らないですが，そっちは知ってました。
＞国立大学の短答問題で私大並の難問が出るのは、1問ぐらいならいいと思います。
早慶上智並でも用語集頻度が�，箸��△箸�でとどまってくれればいいんですが，今回のようにほぼ載っていないレベルだと，やっぱりまずいというのがこの企画の立場ですね。
＞過去問の「チョイバルサン」とか「法幣」とか
どっちも細かいですねー。法幣（幣制改革）は現在の課程だと多少重要度が上がったかな。
Posted by DG-Law at 2017年03月13日 12:32
なんというかお疲れ様です
毎年楽しみにしておりますので、これに懲りず来年もよろしくお願いします
毎年楽しみにしておりますので、これに懲りず来年もよろしくお願いします
Posted by 通りすがり at 2017年03月14日 21:27
お気遣い痛み入ります。
＞毎年楽しみにしておりますので、これに懲りず来年もよろしくお願いします
ありがとうございます。続けられる範囲で続けていこうと思います。
＞毎年楽しみにしておりますので、これに懲りず来年もよろしくお願いします
ありがとうございます。続けられる範囲で続けていこうと思います。
Posted by DG-Law at 2017年03月14日 22:27
入試問題に関わらずいろいろな意見があってしかるべきだとは思いますが、やはり私も早稲田の19番は入試問題としては評価できません。理由は管理人様と同様で学問の領域には達していない知識であることですが。高校生クイズで聞いておけって感じの問題です(クイズ問題としても面白味がないですが)。
また、自分が在学中の大学をまさかこの記事で見るとは思いませんでした。しかも何かもうよくわからない、という形でｗ
本記事とは全く関係ないのですが、ブログタイトルの下の説明文からエロゲの文字が消えたのに気付いて、管理人さんがエロゲをほぼ引退されたのだなと少し切なくなりました。
お忙しかったようですが今年も更新ありがとうございました。来年以降も無理のない範囲で書いていただけることを期待しております。
また、自分が在学中の大学をまさかこの記事で見るとは思いませんでした。しかも何かもうよくわからない、という形でｗ
本記事とは全く関係ないのですが、ブログタイトルの下の説明文からエロゲの文字が消えたのに気付いて、管理人さんがエロゲをほぼ引退されたのだなと少し切なくなりました。
お忙しかったようですが今年も更新ありがとうございました。来年以降も無理のない範囲で書いていただけることを期待しております。
Posted by みかか at 2017年03月14日 23:24
これまた，ありがとうございます。
＞また、自分が在学中の大学をまさかこの記事で見るとは思いませんでした。しかも何かもうよくわからない、という形でｗ
私自身，この大学を入れる日が来るとは思ってなかったです。まあ出題意図がわからないという形なので，普通の悪問や難問よりかは良いと思うのですが，実際解いてた感想をストレートに言えば「何かもうよくわからない」でした。
＞本記事とは全く関係ないのですが〜〜
一線級は退いてしまったというのを自覚してしまったので。寂しいところですが。
一応まだ年間10本に行くか行かないかくらいはやりたいなと思ってはいます。
＞また、自分が在学中の大学をまさかこの記事で見るとは思いませんでした。しかも何かもうよくわからない、という形でｗ
私自身，この大学を入れる日が来るとは思ってなかったです。まあ出題意図がわからないという形なので，普通の悪問や難問よりかは良いと思うのですが，実際解いてた感想をストレートに言えば「何かもうよくわからない」でした。
＞本記事とは全く関係ないのですが〜〜
一線級は退いてしまったというのを自覚してしまったので。寂しいところですが。
一応まだ年間10本に行くか行かないかくらいはやりたいなと思ってはいます。
Posted by DG-Law at 2017年03月15日 00:46
今年早大を受験した者です。
社学のキューバ独立の選択肢について、「1895年からの10年戦争で独立」だと1905年に独立したことになり、おかしいのではないかと判断したのですが、この考えに問題はあるのでしょうか？
社学のキューバ独立の選択肢について、「1895年からの10年戦争で独立」だと1905年に独立したことになり、おかしいのではないかと判断したのですが、この考えに問題はあるのでしょうか？
Posted by xx at 2017年03月15日 22:09
なるほど。その発想は完全にありです。
これは多分その解法が正解です。なぜか思いつきませんでした。
ありがとうございます。これは本当に助かります。
ただし，たとえば日本史の「前九年の役」（戦役の期間は12年間）のような詐欺パターンもあるので，100％使える推測というわけではありません。
これは多分その解法が正解です。なぜか思いつきませんでした。
ありがとうございます。これは本当に助かります。
ただし，たとえば日本史の「前九年の役」（戦役の期間は12年間）のような詐欺パターンもあるので，100％使える推測というわけではありません。
Posted by DG-Law at 2017年03月15日 23:34
更新おつかれさまです。毎年この企画を楽しみにしています。書籍版も期待しています。
>アメリカ合衆国はアイゼンハワー大統領の下でキューバとの国交を断絶したが，2015年に国交を回復した。
これだけど、細かいことを言うと何をもって「国交を回復」というかどうか。確かに2015年7月をもって一般に回復したという報道はなされているのだけれど、たとえば以下のCNNの記事では
http://www.cnn.co.jp/usa/35092850.html
>次期米大統領のドナルド・トランプ氏は２８日、オバマ政権が進めてきたキューバとの国交正常化に向けた取り組みを打ち切る可能性に言及した。
となっていて、国交正常化はまだまだ道半ばで、細かい協定の見直しなどについてはいまだに交渉が続いていることがわかる。これらの手続きの完了をもって「国交の回復」と見なすのであれば、2015年に国交を回復したという記述は誤りとなる。誰が見ても間違いのない文章にするのであれば、「〜国交の回復で合意した」とでも書くのが一番適切だと思う。
>アメリカ合衆国はアイゼンハワー大統領の下でキューバとの国交を断絶したが，2015年に国交を回復した。
これだけど、細かいことを言うと何をもって「国交を回復」というかどうか。確かに2015年7月をもって一般に回復したという報道はなされているのだけれど、たとえば以下のCNNの記事では
http://www.cnn.co.jp/usa/35092850.html
>次期米大統領のドナルド・トランプ氏は２８日、オバマ政権が進めてきたキューバとの国交正常化に向けた取り組みを打ち切る可能性に言及した。
となっていて、国交正常化はまだまだ道半ばで、細かい協定の見直しなどについてはいまだに交渉が続いていることがわかる。これらの手続きの完了をもって「国交の回復」と見なすのであれば、2015年に国交を回復したという記述は誤りとなる。誰が見ても間違いのない文章にするのであれば、「〜国交の回復で合意した」とでも書くのが一番適切だと思う。
Posted by ジョセフ・ヒコ太郎 at 2017年03月16日 01:14
ありがとうございます。書籍版もがんばって出します。
＞細かいことを言うと何をもって「国交を回復」というかどうか。
それは自分でも少し気になり，仮にオバマ政権と国交を回復したというのを疑わないとしても「2015年」と決めてしまっていいものかどうか，というのも含めて，調べたり考えたりしてみました。
国交正常化プロセスのうち，ここという一点をもって決定打とするならば，歴史的経緯も鑑みればおそらく外交官の交換，大使館（公使館）の設置ということになるだろうかと思います。そうして見ると，アメリカとキューバは2015年７月20日に相互に大使館を設置しているので，本問の作題者もこれをとっているのだろうと思います。
＞「〜国交の回復で合意した」とでも書くのが一番適切だと思う。
というのはおっしゃる通りですね。
これらの点を書籍版では書き足した方がいいかもしれませんね。
と言いつつ，前出のxxさんの指摘を受けて，収録自体を見直しているところだったりもしますが。
＞http://www.cnn.co.jp/usa/35092850.html
＞>次期米大統領のドナルド・トランプ氏は２８日、オバマ政権が進めてきたキューバとの国交正常化に向けた取り組みを打ち切る可能性に言及した。
これ，トランプさんが本気で言っているなら非常に悲しいところですね……
＞細かいことを言うと何をもって「国交を回復」というかどうか。
それは自分でも少し気になり，仮にオバマ政権と国交を回復したというのを疑わないとしても「2015年」と決めてしまっていいものかどうか，というのも含めて，調べたり考えたりしてみました。
国交正常化プロセスのうち，ここという一点をもって決定打とするならば，歴史的経緯も鑑みればおそらく外交官の交換，大使館（公使館）の設置ということになるだろうかと思います。そうして見ると，アメリカとキューバは2015年７月20日に相互に大使館を設置しているので，本問の作題者もこれをとっているのだろうと思います。
＞「〜国交の回復で合意した」とでも書くのが一番適切だと思う。
というのはおっしゃる通りですね。
これらの点を書籍版では書き足した方がいいかもしれませんね。
と言いつつ，前出のxxさんの指摘を受けて，収録自体を見直しているところだったりもしますが。
＞http://www.cnn.co.jp/usa/35092850.html
＞>次期米大統領のドナルド・トランプ氏は２８日、オバマ政権が進めてきたキューバとの国交正常化に向けた取り組みを打ち切る可能性に言及した。
これ，トランプさんが本気で言っているなら非常に悲しいところですね……
Posted by DG-Law at 2017年03月16日 01:46
はじめまして
数年前に拝見してから、毎年楽しみにしております。
ご無理のない範囲でお続けいただけますと幸いです。
歴史ものの本を時々読んでおりますので、国立の2と4への突っ込みは大変面白く読ませていただきました。
素人知識でも100字程度は考え付いたのですが、それをいかに論説にしていくのかが少しだけですが見えた気がいたします。
ありがとうございました。
数年前に拝見してから、毎年楽しみにしております。
ご無理のない範囲でお続けいただけますと幸いです。
歴史ものの本を時々読んでおりますので、国立の2と4への突っ込みは大変面白く読ませていただきました。
素人知識でも100字程度は考え付いたのですが、それをいかに論説にしていくのかが少しだけですが見えた気がいたします。
ありがとうございました。
Posted by 納茄子 at 2017年03月18日 17:42
ありがとうございます。
国公立の論述問題の解説はどうしても複雑になりますね。
適正に成立している問題でも，阪大や一橋大，東大の問題なんかは，よく受験生はこれを制限時間内に解くよなぁと感心することしばしで，気楽に解く側としては純粋におもしろいですね。
とりわけ，一般向けの歴史の本に書いてあることを高校世界史に接合させている問題（今回の名古屋大はその惜しい例）は，上手く作ってるなぁと。
国公立の論述問題の解説はどうしても複雑になりますね。
適正に成立している問題でも，阪大や一橋大，東大の問題なんかは，よく受験生はこれを制限時間内に解くよなぁと感心することしばしで，気楽に解く側としては純粋におもしろいですね。
とりわけ，一般向けの歴史の本に書いてあることを高校世界史に接合させている問題（今回の名古屋大はその惜しい例）は，上手く作ってるなぁと。
Posted by DG-Law at 2017年03月19日 02:12
初めまして。
毎年、受験世界史悪問シリーズを楽しんで読ませていただいております。
もうご存知でしたら恐縮なのですが、
http://shingakunet.com/journal/exam/39561/
こんなところで御著書をお見かけしました。
もはや、『絶対解けない受験世界史』は数学の『青チャート』や英語の『フォレスト』と並ぶ参考書だということですね！
毎年、受験世界史悪問シリーズを楽しんで読ませていただいております。
もうご存知でしたら恐縮なのですが、
http://shingakunet.com/journal/exam/39561/
こんなところで御著書をお見かけしました。
もはや、『絶対解けない受験世界史』は数学の『青チャート』や英語の『フォレスト』と並ぶ参考書だということですね！
Posted by レーズンパン at 2017年03月24日 14:52
知りませんでした。ご紹介ありがとうございます。
さすがに『青チャート』や『フォレスト』と並ぶのは恐れ多い……ｗ
というよりも，割りと一般書のつもりで出したのですが，世間の反応が「参考書」という捉え方だったこと自体に，発売してからずっと驚いていますね。
さすがに『青チャート』や『フォレスト』と並ぶのは恐れ多い……ｗ
というよりも，割りと一般書のつもりで出したのですが，世間の反応が「参考書」という捉え方だったこと自体に，発売してからずっと驚いていますね。
Posted by DG-Law at 2017年03月25日 15:14
今年の東京外国語大学の世界史も中々えげつなかった記憶があります
毎年と言われれば毎年かもしれませんが...
毎年と言われれば毎年かもしれませんが...
Posted by あいうえお at 2017年07月14日 13:58
今年の東京外大も，確かにすごい問題が出てましたね。
ブログ版では3/5頃までに問題を入手できているものまでしか掲載できない関係上，ここには入っていませんが，書籍版（近日中に発売日公開予定）には，東京外大も２問ほど入っています。
いろいろ考えてみたんですが，やっぱり「世界最初のジーンズのブランド」を問うのはダメだと思いました。
ブログ版では3/5頃までに問題を入手できているものまでしか掲載できない関係上，ここには入っていませんが，書籍版（近日中に発売日公開予定）には，東京外大も２問ほど入っています。
いろいろ考えてみたんですが，やっぱり「世界最初のジーンズのブランド」を問うのはダメだと思いました。
Posted by DG-Law at 2017年07月15日 21:39
