2017年08月28日

岩手旅行記(前編)

コミケ後に岩手旅行に行ってきたので,その報告を。メンバーはいつもの頬付・隙間坊主。


13日:仙台
コミケ終了後,即座に首都高へ。21時仙台を目標にそこから運転手たちがなるべくがんばっていたけど,残念ながら着いた時点で21時は過ぎていた。一応事前にはてな村的美味しい店探し手段「zaikabou 仙台」で検索する等してリサーチはしていったが,全体的に店は閉まり気味であった。結局「Google mapのレビューはまだ汚染されていない理論」を用いて適当なお店に入ったが,十分に美味かった。牛タンの味噌焼きなるものがあり,「(元)愛知県民相手にいい度胸だな」からの「あ,これ味噌の味が牛タンの食感によくあってめちゃくちゃ美味しい」という即落ち2コマシリーズのようなことをした。コミケの疲れもあり,ホテルに戻って即爆睡。


14日:松島〜平泉〜花巻温泉郷
仙台は「青葉城くらい見ていくか」という案もあったのだが,「どうやら松島は早朝に行かないと死ぬほど混むらしい」という情報をつかんだので,仙台観光は前日夜の牛タンだけで終わりになった。青葉城はまた今度の機会ということで。仙台はどうもめぐり合わせが悪いのか,仕事の出張を含めて3度は行っているのだけれど,一度もきちんと観光していない。ただし,今回の判断は完全に正解で,松島は午前10時を過ぎたあたりから異様な混み方をし始めた。観光名所間の歩道を歩く人が目に見えて急増していたし,仙台から松島に向かう道からして駐車場待ちの渋滞を起こしていて一歩も動かない状態だったのが帰り道に見えた。さすがは日本三景。天橋立はアクセスが悪く,宮島は広いからこういうことにはなっていないのだろうと思う。松島は仙台からすぐそこである上に,湾が狭く名所が密集している。

その松島であるが,良くも悪くも整備された観光名所である。周りやすく施設が充実している分,いたるところで金をとられる印象。行ったところで一番良かったのは,景色ではなく瑞巌寺。庭も建物も所蔵する美術品も見事で,ここはむしろ入館料700円は安いくらいの価値がある。特に本堂は長谷川等伯の高弟,長谷川等胤の筆による障壁画で飾られており,美術史上の一級品ではないにせよ,桃山文化の地方伝播を象徴する遺産としては完璧と評する他ない。庭は震災の被害が抜けきっておらず復旧中で,今年9月に全面公開予定となっていたが,見た感じ間に合いそうにない。というよりも樹齢何百年かの松並木の三分の一が塩害で枯れたため,それらを伐採して若木を植えている状態であるから,完全な復旧は何十年後になるだろう。気の遠くなる話であるが,残っている松並木だけでも十分に見応えがあった。松島は沖合の島々に守られたおかげで立地の割には震災被害が少なかったとのことだが,こうしたところで残っている。松島脱出前にずんだ餅を食し,今旅のミッションをまた一つクリアした。


そこから平泉に移動。わんこそばを食すというミッションをこなす。

平泉わんこそば


しかし,後から知ったのだが,わんこそばは平泉と盛岡・花巻で流派が違う上に,盛岡・花巻が本家らしい。なんだか中途半端にミッションをこなしてしまった感がある。それはそれとするなら,わんこそばは予想していたよりも美味かった。ただ,「美味かったのはわんこそばではなく,その店」説があり,わんこそば自体に味の特徴があるイメージは無い。この辺の真相を解くためにも,やはり盛岡か花巻で再度わんこそばを食す必要があるだろう。

平泉ではそのまま中尊寺と毛越寺を拝観。金色堂を見たのは初めてだったので,さすがに感動した。毛越寺は,後世の枯山水や回遊式庭園ではない,平安末〜鎌倉時代の浄土庭園がよく残っており,かつ曲水の宴の跡も見つかっている貴重な寺院である。当然だが,発掘された曲水の宴跡としては日本で最北端とのこと。

毛越寺・曲水の宴


同行者に曲水の宴とはなんぞやと聞かれたので一通り説明したところ,隙間坊主が「夏草や兵どもが夢の跡」を本歌取りして「平泉 滅びすぎてて 草生える」という見事な現代語訳を詠んでくれた(詩情から言えば「草も生えない」にしたいところだが字余りである)。彼は酒を飲まされずに済むだろう(なお彼は下戸であり実際に一滴も飲めない)。一方で本堂以外の建物はだいたい全部焼け落ちているのだが,これは実は奥州藤原氏が滅んだ時ではなく1573年の戦乱だそうで,なんだかもったいない。なお,ここの宝物館はキャプションがやたらとポエティックで鎌倉幕府を敵視しており,我々は他人事なので静かに大爆笑しながら見ていたのだが,あれ,鎌倉市民の観光客で怒る人が出てきそう。

こうして1日で瑞巌寺・中尊寺・毛越寺と周り,さりげなく『奥の細道』巡礼になっていたのだが,ここで我々は山形県立石寺には行かず,そのまま北上。花巻温泉郷へ行き,やってきました。




『ラブひな』の聖地巡礼地,藤三旅館。同行の頬付に「五体投地あくしろよ」と煽られたが,普通に旅館に迷惑なのでお断りした。藤三旅館側も『ラブひな』を知っていて売りにしているのが少し驚きだが,この旅館はそれ以外にも宮沢賢治ゆかりの旅館でもあり,温泉も後述するようにユニークで,付加価値がすごい。なお,ひなた荘はここ藤三旅館と,山形県銀山温泉の小関館を組み合わせて作られたものなので,聖地巡礼的にはまだ半分といったところ。ただし,小関館はすでに旅館業をやめていて日帰りのみになっているので,「ひなた荘に泊まった」と言えるのはすでに藤三旅館だけである。

さて,藤三旅館の温泉は合計4つあり,その中に露天風呂があるのだが,同行頬付がアブにたかられまくるという珍事が発生した。以後頬付は温泉に入るたびに「ここはアブがいないから良い」というようになってしまったのだが,実際とんでもない量のアブが飛んでいた。夏場の山奥の露天だから温泉側にそれほど否は無いというか,私や隙間坊主はあまりたかられずそれほど不快でもなかったので,頬付くんは多分アブに好かれる異種族間系ラブコメ体質なんだと思う。それ以外の温泉で,藤三旅館の最大の特色となっているのが白猿温泉(こっちは屋内)。これは深さが約1.25mある立って入れる珍しい温泉で,いい経験になった。

お夕飯を食べて就寝。後編に続く。