2017年08月29日
岩手旅行記(後編)
15日:遠野〜焼走り熔岩流〜八幡平
この日も早めに起きて朝食後,早めに出発して遠野へ。遠野行きに関しては同行者二人に「あそこ行って何するの?」と言われていて,私自身「様々(『咲-Saki-』『東方』etc.)な作品の元ネタ巡礼的なチェックポイントやから(震え声)」と返事していたわけだけれども,着いてみるとなかなかコンテンツ力が高かった。まず単なる妖怪押しというよりは「妖怪が出てもおかしくないような昭和前期頃の日本の田舎」押しに切り替えているのが正解。そしてそのイメージの塗り重ねは成功している。たとえば以下のような。
どこを回ったらいいのか今ひとつわかりづらいという欠点も自覚していて,とりあえず遠野ふるさと村(上の画像の民家はここ)か,伝承園に行けば観光スタートの拠点になる仕様。私としては,遠野ふるさと村は他の観光施設からやや遠いので,伝承園スタートを勧めたい。伝承園からは必然,昔は河童が住んでいたというカッパ淵に行くことになるが,その道中が見事な
ホップ畑だった。昭和前期頃の日本の田舎雰囲気押しをしていていきなりこれが出てくるのはインパクトがあり,かつ意外にも雰囲気は崩れていない。もちろん地ビールもある。遠野でホップ畑・地ビールなんて東方的にはなんて奇遇な。着いたカッパ淵は見事なまでに何の変哲もないただの沢で(しいて言えば水はかなり綺麗),しかしそこにカッパという文脈ときゅうりを餌にしてカッパ釣りができるというお遊びを加えることでここは強い観光名所に変貌した。
このシュールな光景,バカバカしさが一周まわっておもしろいのである。到着した観光客,特にご家族一行はきゅうりを釣り竿にかけていた。子供たちは決して何も釣れない釣りなのに楽しそうである。なるほど,無から有を生み出す観光の工夫とはこういうことかと変な感心をしてしまった。なお,きゅうり専用釣り竿の貸出は1本200円で,伝承園でカッパ釣り許可証を兼ねて貸し出されている。きっちりと金をとっていて,かつぼったくり料金でもないのもポイント高い。カッパ淵観光で謎の感動を得た3人は伝承園で昼飯を食う。岩手県名物「ひっつみ」はぶっちゃけて言えば「ほうとう」であって,まあどこにでもあるものではあるのだが,美味いことには違いなかった。結果的に,最初は2時間も滞在するかどうかと言っていた遠野観光は4時間以上滞在し,強い満足感を得たのであった。
次に向かったのが岩手山の麓,焼走り熔岩流。ここは岩手山から流れ出た溶岩が冷えて固まった跡地であり,一面黒々とした岩石が転がる荒野が見られる。これがすばらしく壮観で,たとえばこんな感じ。
実はこの日は天気が悪く霧が出ていたのだが,そのおかげで視界が狭まり,かえってより強く一面の荒野を感じることができた。霧に浮かぶ島状の樹木も幻想的で良い。焼走り熔岩流が特殊なのは噴火からすでに約300年が経過しているのにほとんど植生が変化していないという点だ。普通200年もたてば,新たに噴火でもない限りすでに森林に戻っているはずである。しかし,地衣類が繁殖し始めたところで遷移が止まってしまっていて,わずかに島状に点在する孤立した樹木が存在するのみである。これだけ遷移が遅い・止まっている,しかも風雨が強くきっちりと風化するはずの環境であるにもかかわらず遷移が遅いというのは世界的に見ても珍しい地形だそうだ。現地には一般人が通行可能な散策路が用意されていて,歩くと片道1時間ほど。これはお勧め観光スポットである。
この日はここでタイムアップで,ここから八幡平へ。この日の宿は八幡平の山奥,標高1400m地点にある藤七旅館。事前の調査・噂の段階で「温泉はすばらしいがその他は……」「山小屋だと思って泊まった方がいい」ということを聞きつつ,温泉目当てで予約した。またそんなエクストリームな宿を……。なお噂の真相はだいたいあってた。建物全体が大きく歪んでいて明らかに傾斜があるし,普通に歩いているだけで床がデコボコしている。夕飯の味も微妙で,素材は悪くなさそうなのでこれは調理の問題ではないか。一番美味かったのがごまどうふってあたりで察していただきたい。確かにこれは「旅館っぽい飯が出てくるだけ,山小屋よりはいい」と考えた方がいい。立地が立地なので,この辺は不満を言うだけ無駄である。
一方,温泉は良い意味での噂通りで,旅館から露天風呂までのけっこうな距離を,素っ裸のまま・真っ暗闇の中で歩いて移動してから入浴するというワイルドさあふれる温泉であった。温泉の底も一応木の板が敷いてあるが,湯の花と地面の泥が混ざった白い粘土が堆積していてドロっとしていたりする。このワイルドさはこの旅館の売りであり,旅館のアンケートにまで「ワイルドさはいかがでしたか」という項目があって笑ってしまった。旅館から発せられる電灯と申し訳程度の湯船付属の弱い電灯以外に一切の光がないため,晴れていれば満点の星空の下での入浴であったはずだが,残念ながら前述の通り今日は曇りであった。それでも真っ暗闇の中,無駄に高まったハイテンションの状態で入る温泉は非常に楽しかった。
16日:八幡平〜小岩井農場〜帰宅
最終日。この日も早めに起きて,例によって微妙な味の朝食を食べて出発。まずは八幡平を登る。登ると言っても名前の通り頂上付近が平らなことが特徴の山であり,非常にゆるい勾配の登山道を登って,標高約1600mの頂上に到達。展望台からは,確かに頂上付近がほとんど平らになっていて,森林限界も超えていないことから比較的高めの森林がかなり遠方まで続いているのが見えて絶景であった。そしてドローンとかいう大人のおもちゃを持っている我々はここで飛ばして遊んだ。今回も桜島同様,気になって寄ってくる他の観光客が多数であった。まだまだ普及しておらず,そういう存在よなぁ。今回は隙間坊主Pが編集した動画があるので,紹介はそちらで。彼はいつの間にこんな技術を。八幡平の絶景は,ドローンから見るとこう見える。ぽつぽつ見える池は旧噴火口に水が溜まった物とのこと。
最後に小岩井農場へ。昼飯を食べて,産地直送の牛乳を飲んで,今回の旅最後のミッションをこなす。小岩井農場は日本の最初期の畜産技術を培った建造物として,園内建物のいくつかが重要文化財に指定されており,これらを見学することができる。一応現在でも使用している「生きた重要文化財」ということであったが,さすがに施設が古くて不衛生であった。飼っている頭数から言っても,ここの牛はほとんど純粋に観光用であろう。
小岩井農場観光を終えて午後3時頃,そこからは一直線に東京に戻った。途中で渋滞に捕まったことあり苦難の帰り道となったが,なんとか日付が変わる前に帰宅した。概ね上手くいった旅行で思わぬおもしろさも多数あった旅行と言え,満足度は高い。やり残しとしては,まず仙台の青葉城。次に平泉の厳美渓&猊鼻渓。岩手は今回山沿いを攻めたので,浄土ヶ浜をスルーしている。わんこそばも本家の盛岡or花巻で食べる必要があるだろう。まあこの辺は急いでいないので10年後くらいに。
これで経県値は173点となり,残る空白は山形県と青森県だけになった。山形県はひなた荘の残る聖地の銀山温泉があり,青森県は恐山に行きたいので,この2つはなるべく早めに,遅くとも2・3年中には行くと思う。経県値を気にせずに次の旅行先を考えるなら,『ユーフォニアム』の聖地巡礼で宇治か,『有頂天家族』の聖地巡礼と湯治を兼ねて有馬温泉かな。
この日も早めに起きて朝食後,早めに出発して遠野へ。遠野行きに関しては同行者二人に「あそこ行って何するの?」と言われていて,私自身「様々(『咲-Saki-』『東方』etc.)な作品の元ネタ巡礼的なチェックポイントやから(震え声)」と返事していたわけだけれども,着いてみるとなかなかコンテンツ力が高かった。まず単なる妖怪押しというよりは「妖怪が出てもおかしくないような昭和前期頃の日本の田舎」押しに切り替えているのが正解。そしてそのイメージの塗り重ねは成功している。たとえば以下のような。
古い日本家屋の縁側で蝉の鳴き声を聞くというミッションをこなしたのでこの夏はもう終わっていい。 pic.twitter.com/cURyKXqyDn
— 頬付 (@hoozuki37) 2017年8月15日
どこを回ったらいいのか今ひとつわかりづらいという欠点も自覚していて,とりあえず遠野ふるさと村(上の画像の民家はここ)か,伝承園に行けば観光スタートの拠点になる仕様。私としては,遠野ふるさと村は他の観光施設からやや遠いので,伝承園スタートを勧めたい。伝承園からは必然,昔は河童が住んでいたというカッパ淵に行くことになるが,その道中が見事な
ホップ畑だった。昭和前期頃の日本の田舎雰囲気押しをしていていきなりこれが出てくるのはインパクトがあり,かつ意外にも雰囲気は崩れていない。もちろん地ビールもある。遠野でホップ畑・地ビールなんて東方的にはなんて奇遇な。着いたカッパ淵は見事なまでに何の変哲もないただの沢で(しいて言えば水はかなり綺麗),しかしそこにカッパという文脈ときゅうりを餌にしてカッパ釣りができるというお遊びを加えることでここは強い観光名所に変貌した。
このシュールな光景,バカバカしさが一周まわっておもしろいのである。到着した観光客,特にご家族一行はきゅうりを釣り竿にかけていた。子供たちは決して何も釣れない釣りなのに楽しそうである。なるほど,無から有を生み出す観光の工夫とはこういうことかと変な感心をしてしまった。なお,きゅうり専用釣り竿の貸出は1本200円で,伝承園でカッパ釣り許可証を兼ねて貸し出されている。きっちりと金をとっていて,かつぼったくり料金でもないのもポイント高い。カッパ淵観光で謎の感動を得た3人は伝承園で昼飯を食う。岩手県名物「ひっつみ」はぶっちゃけて言えば「ほうとう」であって,まあどこにでもあるものではあるのだが,美味いことには違いなかった。結果的に,最初は2時間も滞在するかどうかと言っていた遠野観光は4時間以上滞在し,強い満足感を得たのであった。
次に向かったのが岩手山の麓,焼走り熔岩流。ここは岩手山から流れ出た溶岩が冷えて固まった跡地であり,一面黒々とした岩石が転がる荒野が見られる。これがすばらしく壮観で,たとえばこんな感じ。
実はこの日は天気が悪く霧が出ていたのだが,そのおかげで視界が狭まり,かえってより強く一面の荒野を感じることができた。霧に浮かぶ島状の樹木も幻想的で良い。焼走り熔岩流が特殊なのは噴火からすでに約300年が経過しているのにほとんど植生が変化していないという点だ。普通200年もたてば,新たに噴火でもない限りすでに森林に戻っているはずである。しかし,地衣類が繁殖し始めたところで遷移が止まってしまっていて,わずかに島状に点在する孤立した樹木が存在するのみである。これだけ遷移が遅い・止まっている,しかも風雨が強くきっちりと風化するはずの環境であるにもかかわらず遷移が遅いというのは世界的に見ても珍しい地形だそうだ。現地には一般人が通行可能な散策路が用意されていて,歩くと片道1時間ほど。これはお勧め観光スポットである。
この日はここでタイムアップで,ここから八幡平へ。この日の宿は八幡平の山奥,標高1400m地点にある藤七旅館。事前の調査・噂の段階で「温泉はすばらしいがその他は……」「山小屋だと思って泊まった方がいい」ということを聞きつつ,温泉目当てで予約した。またそんなエクストリームな宿を……。なお噂の真相はだいたいあってた。建物全体が大きく歪んでいて明らかに傾斜があるし,普通に歩いているだけで床がデコボコしている。夕飯の味も微妙で,素材は悪くなさそうなのでこれは調理の問題ではないか。一番美味かったのがごまどうふってあたりで察していただきたい。確かにこれは「旅館っぽい飯が出てくるだけ,山小屋よりはいい」と考えた方がいい。立地が立地なので,この辺は不満を言うだけ無駄である。
一方,温泉は良い意味での噂通りで,旅館から露天風呂までのけっこうな距離を,素っ裸のまま・真っ暗闇の中で歩いて移動してから入浴するというワイルドさあふれる温泉であった。温泉の底も一応木の板が敷いてあるが,湯の花と地面の泥が混ざった白い粘土が堆積していてドロっとしていたりする。このワイルドさはこの旅館の売りであり,旅館のアンケートにまで「ワイルドさはいかがでしたか」という項目があって笑ってしまった。旅館から発せられる電灯と申し訳程度の湯船付属の弱い電灯以外に一切の光がないため,晴れていれば満点の星空の下での入浴であったはずだが,残念ながら前述の通り今日は曇りであった。それでも真っ暗闇の中,無駄に高まったハイテンションの状態で入る温泉は非常に楽しかった。
16日:八幡平〜小岩井農場〜帰宅
最終日。この日も早めに起きて,例によって微妙な味の朝食を食べて出発。まずは八幡平を登る。登ると言っても名前の通り頂上付近が平らなことが特徴の山であり,非常にゆるい勾配の登山道を登って,標高約1600mの頂上に到達。展望台からは,確かに頂上付近がほとんど平らになっていて,森林限界も超えていないことから比較的高めの森林がかなり遠方まで続いているのが見えて絶景であった。そしてドローンとかいう大人のおもちゃを持っている我々はここで飛ばして遊んだ。今回も桜島同様,気になって寄ってくる他の観光客が多数であった。まだまだ普及しておらず,そういう存在よなぁ。今回は隙間坊主Pが編集した動画があるので,紹介はそちらで。
最後に小岩井農場へ。昼飯を食べて,産地直送の牛乳を飲んで,今回の旅最後のミッションをこなす。小岩井農場は日本の最初期の畜産技術を培った建造物として,園内建物のいくつかが重要文化財に指定されており,これらを見学することができる。一応現在でも使用している「生きた重要文化財」ということであったが,さすがに施設が古くて不衛生であった。飼っている頭数から言っても,ここの牛はほとんど純粋に観光用であろう。
小岩井農場観光を終えて午後3時頃,そこからは一直線に東京に戻った。途中で渋滞に捕まったことあり苦難の帰り道となったが,なんとか日付が変わる前に帰宅した。概ね上手くいった旅行で思わぬおもしろさも多数あった旅行と言え,満足度は高い。やり残しとしては,まず仙台の青葉城。次に平泉の厳美渓&猊鼻渓。岩手は今回山沿いを攻めたので,浄土ヶ浜をスルーしている。わんこそばも本家の盛岡or花巻で食べる必要があるだろう。まあこの辺は急いでいないので10年後くらいに。
これで経県値は173点となり,残る空白は山形県と青森県だけになった。山形県はひなた荘の残る聖地の銀山温泉があり,青森県は恐山に行きたいので,この2つはなるべく早めに,遅くとも2・3年中には行くと思う。経県値を気にせずに次の旅行先を考えるなら,『ユーフォニアム』の聖地巡礼で宇治か,『有頂天家族』の聖地巡礼と湯治を兼ねて有馬温泉かな。
Posted by dg_law at 01:00│Comments(2)
この記事へのコメント
>ここの牛はほとんど純粋に観光用であろう。
わたしもそう思っていたのですが、昨日(8/31)NHKでこの牛舎が紹介されまして、
ttps://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/22702/1092110/
一号牛舎にいるおよそ70頭の乳牛は、農場にいる700頭の乳牛のなかでも選りすぐりのエリート、特にいい乳を出すと認められた牛ばかりなのだそうです。
番組では冒頭22分くらい、8時37分から8時38分ごろにこの説明がありました。
わたしもそう思っていたのですが、昨日(8/31)NHKでこの牛舎が紹介されまして、
ttps://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/22702/1092110/
一号牛舎にいるおよそ70頭の乳牛は、農場にいる700頭の乳牛のなかでも選りすぐりのエリート、特にいい乳を出すと認められた牛ばかりなのだそうです。
番組では冒頭22分くらい、8時37分から8時38分ごろにこの説明がありました。
Posted by shidho at 2017年09月01日 16:55
な,なんですと……
エリートさんたちが旧式の牛舎というのはなんとも。
情報ありがとうございました。
エリートさんたちが旧式の牛舎というのはなんとも。
情報ありがとうございました。
Posted by DG-Law at 2017年09月02日 21:21