2017年11月09日
超絶技巧対決:明治VS現代
三井記念美術館の超絶技巧作品展に行ってきた。超絶技巧の伝統工芸というと明治期の日本のお家芸であるが,今回の展覧会ではそれらを現代においてリヴァイヴァルさせようとしている作品と続けて展示させることで,明治日本VS現代日本という夢の対決という形をとっていた。作品ジャンルは「二人のナミカワ」ということで近年注目を浴びている七宝の他に,柴田是真らの漆工,木彫,金工,牙彫,自在,初代宮川香山らの陶磁,染織などという様相。当然ながら,このうち牙彫は現在の作品がなかった。代わりに鹿の角を使ったものはあったが。鹿の角なら日本で無限に湧いてくるし,あれはあれで枝分かれした形が造形に活かせるので,良い素材らしい。明治の超絶技巧工芸品は,ここ数年でクローズアップされていることもあってかなり見慣れたものになりつつあったが,現代の工芸品と並べられることでまた少しおもしろかった。江戸時代までに積み上げられてきた伝統と,新しく入ってきた近代科学を融合させて生まれた明治の超絶技巧だが(七宝は例外的に江戸以前の日本で盛んでなくその限りではないようだが),さらにもう何段か科学がステップアップした現代の作品と見比べると,やはりまだ「伝統工芸」の域なのであるという,新しい顔を見せる。江戸時代以前の工芸品と見比べると随分新しく見える明治の品々も,現代の“アート作品”に比べると,まだまだ工芸品に見えるのだ。「芸術」という概念に対する考え方の違いが見えると言ったほうがよいか。
現代の作品はそれはそれで,新たな魅力が見えたように思う。明治の超絶技巧を見ると我々は十分すごいと感じるし,それこそ「超絶技巧」としか表現しえない感覚に襲われる。しかし,現代の作品はさらに隔絶していて,それは「現代科学の本気」であり,明治の作品と見比べると「あざとい」「大人げない」とすら感じる。現代の作品単体で見たら,明治の作品と同一線上の「超絶技巧」としか感じ取れず,いい意味での「あざとさ」という新たな魅力は見えてこなかっただろう。七宝で再現した「蛇革のバッグ」なんて実にすばらしい。質感の再現度が恐ろしく高く,金属やガラスには見えない。タイトルは「反逆」で,蛇革から蛇の頭が浮き出てきている。陶磁は異様に細い針状のものを使っての花の表現(今回の画像)。自在も,明治のものが蛇そのものなら,現代のものは「蛇の骨格」である。この本歌取りよ。金工に至っては,明治の作品が金・銀・銅・鉄であるところ,現代の作品はそれらに加えてアルミやらチタンやら。なるほど,現代アートもこの文脈に乗せれば正統な伝統芸術として評価できる。というよりも,これらはコンセプチュアルな現代アートとは一線を画した作品群・作家たちであり,この文脈に乗せるのが正しいのであろう。
そういうわけで,この展覧会はコンセプト勝ちで,明治の超絶技巧に見飽きている人にも,現代アートはあまり,という人にもおすすめできる。さすがは山下裕二監修。
Posted by dg_law at 18:00│Comments(0)