2018年03月12日

最近読んだもの・買ったもの

・『プリニウス』6巻。宮廷に出入りするユダヤ人宝石商,ドムス・アウレアの建築フラグ,プリニウス一行のアフリカ到着,ウェスパシアヌス登場,一行エジプトへ,そしてローマ大火。
→ プリニウス一行の旅と,ローマでの史劇が並行して進む。一行についてきた不思議な少年はフェニキア人,出身はテュロス(ティルス)であった。最終的に一行はシリアを目指すらしい。ウェスパシアヌスのキャラは予想通りで,確かにこんなイメージ。
→ 「どこに海路でなく陸路でカルタゴからアレクサンドリアを目指すバカがいるってんですか」というフェリクスさん,ごもっともである。しかし,本作のプリニウスはバカなので……
→ 巻末でローマ大火。いよいよ来るべきものが来たという感じ。しかし,本作の史劇パート,完全にネロの宮廷を追っているが,ラストはネロの死ではなく,ウェスパシアヌスの死ですらなく,その先のティトゥスの治世である。ネロの時代がやけに長いのはちょっと気になってきた。


・『火ノ丸相撲』17巻。団体決勝,副将・部長VSダニエル,大将・火ノ丸VS久世。
→ 副将戦は短く終わったが面白かった。圧倒的なカリスマに惹かれてこの地位までやってきた者同士,後ろにいる人のためには負けられないという意地のぶつかり合い。それにしても部長の表情が連載当初と全く違うw
→ そして1巻丸々ほとんどが大将戦,第一部の大一番である。才能に相撲を取らされていた人間と,楽しくて相撲をとってきた才能のぶつかり合いという意味では,『咲-Saki-』の長野県決勝大将戦を彷彿とさせる展開であった。天才は孤独だ。しかし,別の天才と相まみえることによってその生は目覚める。衝突する才能,最後の決着を決めたのはくぐった死線の量であった。経験の差ではない。稽古量なら草薙にも同じようにあったはずであった。だが真剣勝負,それも本当に負けるかもしれないという経験なら,草薙は強すぎたがゆえに持てなかったのである。最後の最後で放たれたのは,体力不足で未完成となった百千夜叉堕からの原点,鬼車であった。第一部の終焉にふさわしい名勝負である。


・『乙女戦争』9巻。ジシュカの昔話とその死。ヴラスタの懐妊とヴィルヘルムとの戦い,そして死。シャールカが川に落ちて離脱。
→ 本作の山場の一つ,ジシュカの死は彼が自らの人生と戦術を振り返ることでまとめられた。中世最大の会戦タンネンベルクの戦い,フスの演説,コンスタンツ公会議とフスの火刑,そしてシャールカとの出会い。巻末の解説にある通り,ジシュカはタンネンベルクの戦いにボヘミア王からの義勇軍という形でポーランド側で参戦し,その後ボヘミア王の軍事顧問になっているから,軍才はこの頃すでに群を抜いていたのだろう。フスへの接触もこの頃と思われる。自らの皮膚で軍太鼓を作るよう遺言したという伝説は実際にあるらしい。これも巻末の解説にある通りだが,大衆の徴兵・野戦構築の活用(ワゴンブルク戦術)・銃火器の運用・厳格な軍規・信仰心による高い士気と一部を入れ替えればまさに国民国家の近代的な軍隊であり,これらを組み合わせてこの時代で最強の軍隊を作り上げたのは天才と言わざるを得ない。フス戦争の終焉とともに失われてしまい後世にあまり続かなかったのが惜しい。フスの宗教改革ともども,登場が100年早すぎた。
→ ヴラスタがここで退場するとは思っていなかった。ヴラスタは最後まで生き残りそうな気がしていたので。ヴラスタの戦法は大西先生が最近はまっている(というかスポンサーをやっている)中世ヨーロッパ武術の研究会の成果か。


・『冴えない彼女の育てかた』13巻(完結)。
→ とはいえ本巻は後日談のようなもので,本作は12巻とGS3で事実上完結しているので,特に感想がない巻。この後にもう1冊短編集が出て本当に終わりになるようなので,まとまった感想はそれが出てから書こうかと思う。
→ 英梨々と詩羽の敗戦処理。彼女たちの心の中,および恵との間では決着がついていたけど,その場に倫也はいなかった。英梨々は選択肢を間違えた幼馴染として。詩羽は憧れが恋愛に昇華しなかった相手として。
→ 一点だけ総まとめじみたことを書いておくと,本作の目標はあとがきにある通り,フラットな性格で目立たないメインヒロインを立てつつ彼女を一番人気にすることであった。このうち後者は成功したが,前者は次第にエゴの強い,とにかく主人公の側にいることに長けたヒロインに成長してしまった。まあやっぱり目立たないことと一番人気になることは相反する概念であって無理があり,むしろ双方を成り立たせようとしたらフラットさが死ぬということがわかったというのがこの実験的ラノベの成果だったりするのではなかろうか。キャラは作者の手から離れて動いたり成長したりするとは言うが,恵の場合は人気の出やすさという点に引っ張られて,作者の手がかなり入ってしまったのではないかと思う。その意味で第一部のラスト付近で,早くも本作はコンセプトを捨てていた感はある。

この記事へのコメント
初コメです。非常に単刀直入で申し訳ないんですが、今年は春の風物詩、「悪問難問奇問出題ミスの晒しあげ大会」はありますか?毎年楽しみにしているので、あるかどうかだけでもお返事をいただけたらなと思いコメントさせていただきました。失礼いたします。(言う必要は無いんですが口癖でw)
Posted by ラーミア at 2018年03月14日 16:12
Twitter上では告知してたんですが,ブログ上では何も言ってませんでしたね。
普通にありますよ。原稿は完成していて,先週公開予定だったんですが,所要があってブログを更新している余裕がなく,一週間遅らせました。この週末に更新の予定です。

https://twitter.com/nix_in_desertis/status/972411248770916353
Posted by DG-Law at 2018年03月14日 22:34
そうでしたか。納得です。週末を楽しみにしております。
Posted by ラーミア at 2018年03月15日 06:53