2018年06月11日

最近読んだもの・買ったもの(『ハードボイルド彼女』他)

・『ハードボイルド彼女』1巻。
→ 艦これの同人で有名なdeco氏の商業デビュー作。3話までは無料で読める。設定・物語はリンク先の通りだが,ハードボイルド路線でやってきた漫画家のヒロインがラブコメ転向を目指し,幼馴染の男子に協力してもらって七転八倒する話。この主人公カップルの織りなす物語自体が王道ラブコメというメタ要素が作品の中核になっている。艦これの同人誌とは雰囲気がかなり違って,設定はありふれているものながら,シリアス成分ゼロのラブコメを書いてもこの人は上手いなと思う。ので続刊を待ってるんですが,待てど暮らせど9話が来ないし2巻が来ない。売れてないのかネタが詰まっているのか。とりあえず微力ながら宣伝はしておく。




・『へうげもの』25巻(完結)。大阪夏の陣の後始末。本阿弥光悦,古田重嗣,岩佐又兵衛,加藤景延,俵屋宗達,豊臣秀頼,それぞれの戦後。古田織部の切腹。さらにその後。
→ 史実では古田重嗣も切腹しているので,彼と豊臣秀頼のみフィクションであるが,残りは概ねこの通り。ひょうげものの精神は琳派等の狩野派に属さない文化潮流として生き残った。あるいは,秀忠を通じて幕府の文化政策自体にも生き残った,というのが本作の解釈かもしれない。
→ 岩佐又兵衛が黒田家で描いた屏風は「大阪夏の陣屏風」で,確かに岩佐又兵衛作者説がある。古田重嗣の隠居先として福島正則が指定した「日本橋の本誓寺」は,1615年時点では確かに日本橋にあったが,明暦の大火で焼失して現在の深川(清澄庭園のすぐそこ)に移った。したがって,聖地巡礼の際は日本橋に行ってもなにもないので要注意である。
→ 最後は1650年まで話が飛び,まだ生きている上田宗箇と岩佐又兵衛が古田織部の切腹の謎を追う旅に出て,琉球にまでたどり着く。その過程で登場する堺の南宗寺は,確かに元和3〜5年頃(1617〜20年頃)に沢庵宗彭によって再建されたものだが,庭園が特に織部好みであったという記録はないようだ。沢庵宗彭と古田織部に交友関係があったのは確かだが……あとは現地に行って確認するしかないが,ちょっと堺に行く用事が他に無いのよなぁ。最後,琉球で陶磁器の絵付け指導をしていたのは,落ち延びた豊臣秀頼で間違いなかろう。薩摩・琉球に落ち延びた説はよくある。
→ とりあえず25巻自体の感想はこんなものにしておくとして,『へうげもの』全体の感想は別記事にして(いつ書けるんだろう……なるべく早いうちに)。一言だけ書いておくと,主要人物の美学と政治哲学が重なっているというのが本作の世界観で,政権交代と文化潮流の変化が綺麗に消化されていったのが歴史物の漫画としてとても美しかった。また,歴史漫画として言えば,エピソードの拾い方と無理のない範囲での改変が上手かったと思う。


・『球詠』3巻。公式戦スタート。初戦:影森戦。
→ 影森高校は試合よりも練習が好き,さっさと帰りたいから試合はクイックモーションや初球打ちを活用して超ハイテンポで進めるという高校であった。意外と見ない設定である。個人的には気持ちがわかるというか,スポーツ自体の面白さと試合の面白さはまた別物で,前者に偏るチームがあってもいいのだろう。とはいえわざと負けるのも前者の面白さを毀損してしまうので,自然とハイテンポ戦術になる。しかし,対戦する方はたまったもんじゃないのは本作で描かれている通りで,違和感がすごそう。であれば相手のテンポに合わせてこちらもハイペースにするなり,相手の心理を動揺させる手段を取るなりという戦術がとられることになり,新越谷はその両方になる完全コピー投手を送り出す戦術をとった……というところで4巻に続く。
→ 白菊さん打撃開眼。道場の応援団が来てたのが『ガルパン』の華さんにだぶって笑ってしまった。そう言えばこの子,こんな設定がある割にご家族と現在進行系で揉めているわけではないのよなぁ。作者が野球を描きたくてやっている漫画なので,そういう外野の話は極力しないのかも。