2018年12月04日
早稲田大の2021年一般入試改革について
・早稲田政経学部が数学必修化に踏み切る真意(東洋経済)
ようやくこれに言及できる。早稲田大の政経学部と国際教養学部は事実上国立と同じ受験形態になる。センター試験の後継の共通テストが必須となり,二次試験として小論文(英語の内容有)が課される。この共通テストの必須科目に数学があるということから「文系に数学必須」という報じられ方をするのは,いかにも本邦らしい。確かに私立文系というと数学不要というイメージがあるが,実際のところ,国立組が早稲田大を受ける場合は少なからず数学を選択する。ゆえに,確かに私大専願には大ニュースだが,早稲田大としてはそこは改革の主眼ではないだろう。記事中で「そもそも数学受験者が4割で最も多い」と当局が述べている通りで,この4割の多くは国立組と思われる。
もっとも,共通テストの必須科目に数学を入れた目的だけで言えば,この記事で書かれている通り,「そもそも高校の数学1Aレベルで数学を忌避するようでは,入ってからの学びでどうせ苦労する」という意図があるのは間違いない。実際の学習と数学1Aの内容に乖離があるのは織り込み済みで,それでもこういう意図で1Aを入れたのは英断である。こういう意図であるから自前の入試である必要もなく,共通テストに”押し付けた”のも賢い。
その上で,むしろ本ブログで取り上げるべきこのニュースの主眼は国際教養学部と政経学部の一般入試から社会科が消滅するということである。比較的歴史が浅い国際教養学部はともかく,政経学部の入試改革としては何十年単位の,ひょっとしたら戦後最大の入試改革になるかもしれない。早稲田大の政経学部の世界史・日本史と言えば悪名高く,難問・悪問の出る入試として古くから知られてきた。本ブログの企画でも社会科学部・商学部と並んでその年のワースト入試の座を長く争ってきた。それが2021年から無くなるのであるから,私としても感慨深い。おそらく難問・悪問だらけなのは自覚があって,伝統になってしまっていたから惰性で続けていたところがあり,終わってよかったと思っている中の人もいそうだ。私としても寂しさはあるし,できれば入試問題を改良する方向で解決してほしかったと思っているが,ああいう質で続行するならこういう結末になるのも仕方がないと納得している気持ちの方が強い。せめて2019年・2020年の入試は収録対象問題を出さずに有終の美を飾って欲しい。
今後,この流れはおそらく他の学部に波及するだろう。最終的には文学部と文化構想学部以外は全てこの形になっても不思議ではない。2021年度の政経学部と国際教養学部の受験者がごっそり減ったら撤回されるかもしれないが。
なお,慶應大は先日「共通テストは入試に一切利用しない」とする発表を出した。これは別に驚くべきニュースではなく,元々早稲田大は定員の一部でセンター利用型入試(センター試験の結果をもって合否が判定され,一般入試の受験が不要になる)を行っていたが,慶應大は行っていない。この流れを引き継いだだけである。また,慶應大は世界史に限った話としても出題ミスが少なく,意図的な難問や奇問の類が多い一方で,早稲田大は作りが杜撰だったり調べが足りなかったりする系統の出題ミスや難問・悪問が多い。この傾向を鑑みても,慶應大は学部の数が少なく,したがって入試日程も少ないことから一般入試にそれなりのリソースを費やせるのに対し,早稲田大は学部数が多すぎて入試日程も過密になり,一般入試の実施が億劫になっていると思われる。とはいえ優秀な学部生は欲しいし,受験料が大学収入の柱になっている以上やらないというわけにはいかない。そこで,自大学のブランド力に頼んで,入試のハードルを上げても受験生はさして減らないだろうと推測し,可能な範囲で共通テストに入試をアウトソーシングするスタイルに変えられないか,という実験を試みる判断を下したのだろう。小論文だけなら,英語・国語・数学・世界史・日本史と5科目分の入試問題を作るよりも負担は小さい(採点は大変だが)。この辺りに大学別の経営戦略が読み取れて面白い。
ようやくこれに言及できる。早稲田大の政経学部と国際教養学部は事実上国立と同じ受験形態になる。センター試験の後継の共通テストが必須となり,二次試験として小論文(英語の内容有)が課される。この共通テストの必須科目に数学があるということから「文系に数学必須」という報じられ方をするのは,いかにも本邦らしい。確かに私立文系というと数学不要というイメージがあるが,実際のところ,国立組が早稲田大を受ける場合は少なからず数学を選択する。ゆえに,確かに私大専願には大ニュースだが,早稲田大としてはそこは改革の主眼ではないだろう。記事中で「そもそも数学受験者が4割で最も多い」と当局が述べている通りで,この4割の多くは国立組と思われる。
もっとも,共通テストの必須科目に数学を入れた目的だけで言えば,この記事で書かれている通り,「そもそも高校の数学1Aレベルで数学を忌避するようでは,入ってからの学びでどうせ苦労する」という意図があるのは間違いない。実際の学習と数学1Aの内容に乖離があるのは織り込み済みで,それでもこういう意図で1Aを入れたのは英断である。こういう意図であるから自前の入試である必要もなく,共通テストに”押し付けた”のも賢い。
その上で,むしろ本ブログで取り上げるべきこのニュースの主眼は国際教養学部と政経学部の一般入試から社会科が消滅するということである。比較的歴史が浅い国際教養学部はともかく,政経学部の入試改革としては何十年単位の,ひょっとしたら戦後最大の入試改革になるかもしれない。早稲田大の政経学部の世界史・日本史と言えば悪名高く,難問・悪問の出る入試として古くから知られてきた。本ブログの企画でも社会科学部・商学部と並んでその年のワースト入試の座を長く争ってきた。それが2021年から無くなるのであるから,私としても感慨深い。おそらく難問・悪問だらけなのは自覚があって,伝統になってしまっていたから惰性で続けていたところがあり,終わってよかったと思っている中の人もいそうだ。私としても寂しさはあるし,できれば入試問題を改良する方向で解決してほしかったと思っているが,ああいう質で続行するならこういう結末になるのも仕方がないと納得している気持ちの方が強い。せめて2019年・2020年の入試は収録対象問題を出さずに有終の美を飾って欲しい。
今後,この流れはおそらく他の学部に波及するだろう。最終的には文学部と文化構想学部以外は全てこの形になっても不思議ではない。2021年度の政経学部と国際教養学部の受験者がごっそり減ったら撤回されるかもしれないが。
なお,慶應大は先日「共通テストは入試に一切利用しない」とする発表を出した。これは別に驚くべきニュースではなく,元々早稲田大は定員の一部でセンター利用型入試(センター試験の結果をもって合否が判定され,一般入試の受験が不要になる)を行っていたが,慶應大は行っていない。この流れを引き継いだだけである。また,慶應大は世界史に限った話としても出題ミスが少なく,意図的な難問や奇問の類が多い一方で,早稲田大は作りが杜撰だったり調べが足りなかったりする系統の出題ミスや難問・悪問が多い。この傾向を鑑みても,慶應大は学部の数が少なく,したがって入試日程も少ないことから一般入試にそれなりのリソースを費やせるのに対し,早稲田大は学部数が多すぎて入試日程も過密になり,一般入試の実施が億劫になっていると思われる。とはいえ優秀な学部生は欲しいし,受験料が大学収入の柱になっている以上やらないというわけにはいかない。そこで,自大学のブランド力に頼んで,入試のハードルを上げても受験生はさして減らないだろうと推測し,可能な範囲で共通テストに入試をアウトソーシングするスタイルに変えられないか,という実験を試みる判断を下したのだろう。小論文だけなら,英語・国語・数学・世界史・日本史と5科目分の入試問題を作るよりも負担は小さい(採点は大変だが)。この辺りに大学別の経営戦略が読み取れて面白い。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)