2019年02月25日
Nothing Escaped His Brush
サントリー美術館の河鍋暁斎展に行ってきた。河鍋暁斎は作品が多数残っていることもあって比較的頻繁都内で企画展が開催される画家であるが,不思議と単独の企画展には行っていなかったので今回が初めてになる。
幕末から明治にかけての日本画家で狩野派の系譜を引き継ぎ……というところまでは狩野芳崖や橋本雅邦と同じ,生まれた年代もほぼ同じなのだが,この二人が日本画壇の表舞台で政治に深くかかわり,美術史の華々しいところで活躍した(ので高校日本史の教科書にも載りやすい)のに対し,河鍋暁斎は純粋に画家として活躍したので出自の割には別枠扱いになっている。そこに不思議さは全く無く,知名度がワンランク下がるのも当然だと思うのだが,そのことでかえって出自の共通性が覆い隠されているとは思う,作風が奇抜で,ぱっと見では狩野派よりも奇想の系譜に見える(しそれはそれで間違っていない)のが原因だろうか。筆禍事件があって弾圧も受けているので余計にそういうイメージが強い。
今回改めて作品を多数見た感想としては,ぱっと見の印象は間違いではなくやはり奇想の系譜に並べた方が良さそうというのが素直なところ。色鮮やかでゴテゴテとしていて,描写が細かくて動的である。無論のことながら狩野芳崖や橋本雅邦だってカラフルで描写が細かいのだが,狩野派らしい落ち着きを感じるのに対して河鍋暁斎は感じない。画題も九相図だったり鳥獣戯画だったり地獄絵だったりで,普通のチョイスではない。明らかにわざと奇をてらっている。こういう人が,自らのアイデンティティは狩野派の末裔で,狩野派の作品保護や継承の活動もしていて,社会的地位が高かったのは面白い現象で,明治という世の一面であるかなと思う。一方で,本展覧会では「狩野派にだって探幽以降に戯画が多くあって,河鍋暁斎はそれを引き継いだに過ぎない」という主張がされていて,これは説得力があったし,面白かった。本展の主眼はここにある。
河鍋暁斎の面白い一面と言えば外国人に対して友好的で,弟子の一人にジョサイア・コンドルがいる。河鍋暁斎のことが現在よく知られているのはコンドルの画帳や日記が残っていて,そこに河鍋暁斎のことが詳述されているからである。コンドルは河鍋暁斎の作品をかなり多数所有していて,それらの多くは現在イスラエル・ゴールドマン・コレクションが所蔵している。今回の展覧会も多数がイスラエル・ゴールドマン・コレクションからの出品になる。なお,気になって調べてみたところ,イスラエル・ゴールドマン氏はロンドンの画商で,別にイスラエル在住ではなかった。コンドル旧蔵品は直接引き継いだわけではなく,買い集めたもののようだ。ジョサイア・コンドルは河鍋暁斎と鎌倉に写生旅行に出かけていて,同行者某は「おっさん二人の写生旅行とか絶対楽しいやつやん」と感銘を受けていた。多分二人だったわけではないが,言いたいことは非常によくわかる。最後を看取ったのもコンドルで,この人種を超えた師弟愛,なかなかに尊い。なお,今回の記事タイトルは本展のサブタイトルで,印象深かったので使わせてもらったが,コンドルの言葉かどうかは確認が取れず(多分違う)。
幕末から明治にかけての日本画家で狩野派の系譜を引き継ぎ……というところまでは狩野芳崖や橋本雅邦と同じ,生まれた年代もほぼ同じなのだが,この二人が日本画壇の表舞台で政治に深くかかわり,美術史の華々しいところで活躍した(ので高校日本史の教科書にも載りやすい)のに対し,河鍋暁斎は純粋に画家として活躍したので出自の割には別枠扱いになっている。そこに不思議さは全く無く,知名度がワンランク下がるのも当然だと思うのだが,そのことでかえって出自の共通性が覆い隠されているとは思う,作風が奇抜で,ぱっと見では狩野派よりも奇想の系譜に見える(しそれはそれで間違っていない)のが原因だろうか。筆禍事件があって弾圧も受けているので余計にそういうイメージが強い。
今回改めて作品を多数見た感想としては,ぱっと見の印象は間違いではなくやはり奇想の系譜に並べた方が良さそうというのが素直なところ。色鮮やかでゴテゴテとしていて,描写が細かくて動的である。無論のことながら狩野芳崖や橋本雅邦だってカラフルで描写が細かいのだが,狩野派らしい落ち着きを感じるのに対して河鍋暁斎は感じない。画題も九相図だったり鳥獣戯画だったり地獄絵だったりで,普通のチョイスではない。明らかにわざと奇をてらっている。こういう人が,自らのアイデンティティは狩野派の末裔で,狩野派の作品保護や継承の活動もしていて,社会的地位が高かったのは面白い現象で,明治という世の一面であるかなと思う。一方で,本展覧会では「狩野派にだって探幽以降に戯画が多くあって,河鍋暁斎はそれを引き継いだに過ぎない」という主張がされていて,これは説得力があったし,面白かった。本展の主眼はここにある。
河鍋暁斎の面白い一面と言えば外国人に対して友好的で,弟子の一人にジョサイア・コンドルがいる。河鍋暁斎のことが現在よく知られているのはコンドルの画帳や日記が残っていて,そこに河鍋暁斎のことが詳述されているからである。コンドルは河鍋暁斎の作品をかなり多数所有していて,それらの多くは現在イスラエル・ゴールドマン・コレクションが所蔵している。今回の展覧会も多数がイスラエル・ゴールドマン・コレクションからの出品になる。なお,気になって調べてみたところ,イスラエル・ゴールドマン氏はロンドンの画商で,別にイスラエル在住ではなかった。コンドル旧蔵品は直接引き継いだわけではなく,買い集めたもののようだ。ジョサイア・コンドルは河鍋暁斎と鎌倉に写生旅行に出かけていて,同行者某は「おっさん二人の写生旅行とか絶対楽しいやつやん」と感銘を受けていた。多分二人だったわけではないが,言いたいことは非常によくわかる。最後を看取ったのもコンドルで,この人種を超えた師弟愛,なかなかに尊い。なお,今回の記事タイトルは本展のサブタイトルで,印象深かったので使わせてもらったが,コンドルの言葉かどうかは確認が取れず(多分違う)。
Posted by dg_law at 07:30│Comments(0)