2019年04月13日

最近読んだもの・買ったもの(『うたえ! エーリンナ』他)

・『うたえ! エーリンナ』(1巻完結)。
→ 古代ギリシア,女詩人サッポーの学校を舞台にした物語。奔放な主人公エーリンナと,その友人バウキスの二人を主軸に物語が進み,クライマックスの競技会に向けて練習に励んでいく。ちょうどバウキスが教師役,エーリンナが生徒役という形で古代ギリシアの女性や社会が紹介される一方,それに従わずに生きていこうとするエーリンナの女性自立の物語,また常識に囚われながらもそれに惹かれるバウキスとの百合物としても読める。多面的に言って短編の傑作と言っていいだろう。
→ エーリンナは実在の人物であるが,本書のあとがきにあるように実際にはヘレニズム期の人だそうで,サッポーと同時代人としたのは創作である。中世ヨーロッパの事典にサッポーと同時代人と誤って書かれていたところから着想を得たとのこと。
→ 言うまでもなく本作の舞台レスボス島はレズビアンの語源,サッポーはサフィズムの語源である。実際のサッポーは同性愛者ではなかったようだが,それを逆手にとって,あえてその生徒たちの軽い百合物に仕上げた点は面白い試み。
→ すでにKousyouさんが詳細で良い書評を書いているが,
・古代ギリシア×百合の爽やかな傑作『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉作)(Call of History)
→ ここで紹介されている史実があまりにもエモいので,本作を読み終わったら一読を強く勧める。
→ なお,作者の佐藤二葉さんは本職は「俳優・演出家・ドラマトゥルク・リュラー奏者」だそうで,漫画家ではないことで驚いた。絵は十分に綺麗である。藤村シシンさんといい,古代ギリシア界隈キャラが濃い。





・『ゴールデンカムイ』14巻。網走監獄潜入編(後編),樺太編。
→ のっぺらぼうの正体はアシㇼパの父親・ウイルクであった。しかし,「アイヌを殺したのは私じゃない」と言ったところで尾形に射殺される。そして白石・尾形・キロランケはアシㇼパを連れて樺太に逃亡。土方・牛山・永倉は脱出して別行動。残りの面々(杉元・谷垣・家永・インカラマッ)は第七師団に捕縛されて,命を救われて図らずも共闘関係に。そして杉元・谷垣・月島・鯉登の4人はアシㇼパを奪還すべく樺太へ。新章,樺太編のスタートである。
→ 結果的にキロランケはウイルクとともにロシアから来てアイヌに溶け込んだ反政府組織が出自,インカラマッはウイルクが北海道に来てからの旧知の仲ということが発覚。ついでに言うと鶴見がインカラマッに吹き込んだ「のっぺらぼうはウイルクではない」という嘘がばれたわけだが,インカラマッが重体なので流されている。逆に,ウイルクが殺したのでなければ誰がアイヌを殺したのか,殺した張本人でなければウイルクはなぜ金塊を持ち出せたのかという謎が,暗号自体の謎に加わった。しかし当分は謎が晴れず,樺太編が続く形になるだろう。さすがにそろそろ真相を少しは知りたくなってきた。


・『だがしかし』11巻(完結)。
→ ココノツくんが漫画で奨励賞をとって漫画家の道へ。ほたるさんは実家に帰ったが,それはそれとして遊びに来るという感じでエンド。謎のゴスロリ美少女が異様に駄菓子が好きで駄菓子をハイテンションで紹介するというギャップが本作の面白さで,アニメ化してほたるさんに竹達彩奈の声がついてギャップが加速したのは見事な相乗効果だった。それだけに紹介する駄菓子が尽きれば物語をたたまざるをえず,これくらいがちょうどいい長さだったのだろう。いろいろ身近な駄菓子が出てきて,やはりそういう回の方が印象深い。