2019年08月03日

富士山登山記2019

去年のリベンジである。


<昨年の反省と準備>
昨年に異常に苦戦した原因は,準備の出遅れにより登山が9月上旬になったこと,つまり天候が荒れやすい時期になったこと。また,土日の富士吉田ルートを選んだために異様な渋滞にはまったことである。そこで今年はまず登山日程を7/20-8/7の間に限定して日程を選定した。加えて登山日程を平日二日間か,日・月曜日のいずれかのみとし,参加メンバーの予定で日程を絞った結果,7/28-29の日・月に確定することができた。登山ルートも,登山に不慣れなメンバーがいたので富士吉田ルートにすべきだったかもしれないと思いつつ,須走ルートとしつつ,富士吉田ルートで登ってもそれほど手間なく泊まれる山小屋として下江戸屋で予約を取った。7/26になって突然台風が出現したのには驚いたが,結果的にかえって台風一過となって快晴に恵まれたのは僥倖であった。装備は昨年とほぼ同じ。

メンバーは昨年は頬付と2人であったが,本年は頬付(@hoozuki37),しいかあ(@c_shiika),本ブログでは新キャラとなる涼風(Twitter無し)の4人となった。頬付は剱岳登山経験ありで突出した経験を持っている,しいかあさんは体幹が異様に強い,涼風さんは最近になって『ヤマノススメ』にはまってこの登山前日にモンベルで装備を揃えた初心者であるので,概ね頬付:かえでさん,しいかあ:ここなちゃん,涼風:あおい,不肖ながら私:ひなたというほぼ原作通りの構図になった。涼風さんが高山病で倒れるという原作再現にならないことを祈るばかりであった。


<初日:7/28>
ということで日曜日にスタート。頬付は「去年のせいで富士山の八合目付近の山小屋がトラウマなので,富士吉田ルートのスバルライン五合目の休憩所で寝て,早めに起きて深夜に合流する」と言い出したので,彼だけ別行動になった。残りの3人は新宿に集合して御殿場行きのバスに乗車。この時点で富士吉田五合目直通のバスは満席だった。土曜日や祝日ではなく日曜日なのにこれである。吉田ルートは今日も渋滞しそうという予感がした。日・月なら吉田ルートでも渋滞しないだろうと思っていたが甘かった。慎重に慎重を期して須走ルートという選択をして正解であった。

御殿場駅に着き,須走五合目行きのバスに乗り換え。この乗り換え,非常にわかりづらく案内が不親切なので,乗り過ごさないように気をつけよう。我々は迷いに迷って御殿場駅をさまよい,軽くエクストリーム乗り換えになりかけた。バス自体は快適な運転で,須走五合目着。この時点で11時半。そこからゆっくり昼ご飯を食べて(きのこパスタorきのこクリームパスタお勧め),12時半頃に五合目を出発した。登山客が少ない分,富士吉田よりも圧倒的に山小屋の方々がフレンドリーで,サービスが良かった。もっとも,登山客一人一人に「今日はどこ泊まるの?」と聞いていたのは弾丸登山防止の安全確認の意味合いもあろう。

須走ルートは,率直に言って普通の登山道である。富士山感がない。吉田ルートは六合目からすぐに樹林帯が消滅し,見渡す限り草原か土塊の斜面という様相を呈したが,須走ルートは七合目すぎまで樹林帯が続く。道も吉田ルートに比べると広くて整備も行き届いていて,登山客もまばらなこともあって極めて登りやすい。斜度も緩すぎずきつすぎず,ちょっと岩場が少なすぎて平凡,面白みに欠けるところがあるかなという程度で(同行のしいかあは「岩場がないと登山って感じしなくないですか?」と不満げであった),初心者が富士山に登るなら吉田ルートより圧倒的に須走ルートではと思う。しいて言えば五合目までの交通の便が悪いのと,山小屋が一合に一つというところで,吉田ルートに比べると休憩場所の確保やエスケープが難しいくらいか。眺望は樹林帯が長いからダメかと思いきや意外と開けていて,特にこの日は概ね快晴であったので,ほぼずっと振り向けば山中湖が見えたので大変良かった。

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そんな須走ルートも本七合目付近からは荒涼とした,粗い石の転がる火山らしい風景に変わった。空気の薄さも如実に感じられるようになり,ああ,昨年苦しめられたものがまたやってきたなと少し感慨深くなった。そうして,初心者の涼風さんのペースに合わせて,彼を励ましながら,休憩多め登っていったので結果的に標準タイムから20分ほど遅いくらいの,17時50分頃に下江戸屋に到着した。本当はもっと遅いペースにしてあげた方がよかったのだが,18時までには山小屋に到着しておきたかったので多少急かしたところがあり,やや申し訳なかった。一方,スローペースだったおかげで私としいかあさんは体力が温存され,翌日にほとんど疲労感が残らなかったので,あのスローペースの恩恵がこの二人にも無かったわけではない。ゆっくり登れば思っていた以上に疲弊しないというのは発見だった。

そして今回泊まる下江戸屋だが,昨年よりも遥かに眠れた。一人あたりのスペースがやや広かったとか,いびきが異様にうるさい人が近接していなかったとかはあるが,何よりも最大の理由として,寝所を一晩中換気してくれていたおかげで暑くならず空気も悪くならなかったというのが挙げられよう。やっぱり去年の山小屋,寝所が密閉されていたのだけはどう考えてもおかしい。山小屋のスタッフも丁寧で,終始好印象だった。そんな感じで19時頃に横になり,さすがに他の客の物音等ですぐには寝られなかったが,21時頃には意識が落ちていた。


<2日目:7/29>
午前1時半頃に起床。睡眠時間4時間半ではあるが,快眠であった。実は先制して寝る直前に頭痛薬を軽く飲んでいて,それが効いているのか,単に快眠だったからなのかの区別はつかないが,高山病の症状は一切なかった。しいかあ・涼風の二人も問題無さそうであった。起きがけに早速朝飯を食っていたら,富士吉田五合目を22時に出発したという頬付が合流した。思ってたよりも早かったが,さすがの吉田ルートも深夜は空いていたらしい。こちら3人も急いで身支度をして午前2時過ぎに出発。

去年はここからソロになってしまったので明かりが自分一人分しかなく,360度の闇の中で大変な恐怖を覚えたが,今年はヘッドライトが4人,しかも頬付が異常に強力なライトを持ってきていたので,全く暗さに恐怖を覚えなかった。仲間がいるって素晴らしい。下江戸屋から少し登ると吉田ルートとの合流地点になるが,ここから先はさすがにやや渋滞していた。それでも昨年ほどではなく,完全に動きが止まったのは数えるほどで,ゆっくりではあれ,進みがあった。九合目辺りからは岩場となり,私は見慣れたルートなので思い出しながら登っていたのだが,しいかあさんは「やっぱり岩場があってこその登山ですよね! 楽しい!」と言いながら岩場を駆け上っていた。あの人,前世は山羊か何かでは。涼風さんはやはりつらそうであったが,頬付が上手くサポートしていた様子。私は必死にしいかあさんに付いていった。

午前4時20分頃,出発から2時間20分ほどで先発二人があっさりと登頂達成。5分ほど遅れて後続二人も無事登頂。午前4時40分頃に日の出ということだったので,かなり余裕をもって到着することができ,上手く見えるポジションに陣取って。



私は手軽にスマホのカメラで撮ったが,残り3人はデジカメ持参,特に頬付は一眼レフでしっかり撮影していた。この後,頬付はドローンも持参していて,



こういう撮影もしていた。tweetにある通り,富士山は禁止されてはいないものの,強風が多いので推奨されない区域だったところ,この日の山頂は無風と言っていいほど風が無かったのは幸運であった。日差しもあってそれほど寒くなく,しいかあさんに「聞いていた過酷さと違う」と言われてしまった。そしてお鉢巡りを続けて,



やっと悲願達成。御来光にそれほど興味が無かったので,私はこちらの方が達成感があった。このときに思わず「去年の天気なんだっただよ……去年の半分くらいしか体力が減ってない……」とつぶやいてしまったが,いやほんと去年との疲労感が全く違う。この1年で多少なりとも体力が増進されたというのもあろうが,それ以上に天候と山小屋の違いが圧倒的に効いていた。ただ,薬が切れてきたのか,お鉢巡りの後半くらいから,軽い頭痛が始まった。残りの3人も多かれ少なかれ何かしらの症状を訴えていたので,誰しも高山病にはなるのだなというのもこの日の発見だった。また,特に症状が重そうだったのが頬付で,ドローンを飛ばしていたくらいから体調が悪くなりだした。五合目で寝て身体を慣らしていたから完全な弾丸登山ではないものの,八合目で寝ていた残り3人よりは急激な気圧の変化であったのは間違いなく,やはり弾丸登山は高山病リスクが強いのだなというのも今回わかったところ。ちゃんと七〜八合目くらいで泊まった方がよさそうだ。

そういうわけで,高山病の最大の薬は下山であるから,頭痛の重い頬付と,連絡係の私の二人が先発隊,高山病は軽そうながら「すでに足が重い」と言っていた涼風さんと,そのサポート役のしいかあさんを後発隊と分かれて下山した。下山開始で午前7時40分頃だったから,お鉢巡りはちょうど3時間かけたことになる。標準タイムでは100分となっていたが,九合目以降と同様に渋滞があるのと,観光・写真撮影スポットが多いので,実際には100分で回るのは無理だろう。我々の場合,ドローンを飛ばしていた時間が20分程度あったというのもある。

下山路は頬付の都合で吉田ルートとなった。下山していくと七合目頃には私の方は高山病の症状がストンと消えた。一方,頬付はなかなか完全回復せず。五合目到着時刻は10時ちょうどで,下山タイムは約2時間半。結局五合目まで下りて昼飯を食べてもまだ若干不調そうだったので,後発隊には悪いが,先にバスで麓まで下りさせてもらった。麓についた途端に頬付が元気になったので,近隣の喫茶店で時間をつぶして,後発隊を待った。

合流後,ひとっ風呂浴びたいという満場一致の意見により葭之池温泉へ。富士急の駅名に使われているということはそれなりにメジャーなのだろうと思っていってみると,駅前にはあれど非常にひっそりとした佇まいで,外観も中身も古びた和風建築,客は当然我々4人だけ,ロビーに入っても受付不在で,大声で呼ぶと奥からご老人が出てくる……というある種のテンプレを一通り体験した。お風呂も脱衣所と洗い場が一続きで壁がないという衝撃の設計。泉質は正直良いとは言いがたかったが,休憩室の畳の間の居心地は良く,めちゃくちゃ気を抜いてくつろいでいると,近隣住民らしき人々が続々と入ってきた。ここの温泉は観光客向けなのではなく,地域密着なのだ。近隣住民の方々に話しかけられ,富士山下山直後であることを告げると非常に喜ばれた。総合的に言ってこのホスピタリティは良い。隠れた秘湯を楽しんだ後は,目の前の富士急の駅から電車に乗って帰宅,解散。参加者の方々はお疲れさまでした。


<感想>
さて完走した感想ですが(お約束),今年は事前に計画を練りに練っただけあって,台風一過という点で天候にも完全に恵まれ,完璧な富士登山を達成した。達成してしまったので達成感が非常に強く,かえってもう三度目はいいかな,という気分はある。しばらく空いて気力が湧いたら御殿場ルートなり富士宮ルートなり,ルート3776なりをやってみてもよいかなとは思うけど。それよりは普通に,他の山に登りたいという気持ちの方が強い。富士山はその渋滞・高山病・山小屋ガチャも含めて非常に特殊なコンテンツであり,苦労も含めて十分に楽しんだのではあるが,やはり登山としては特殊性が高すぎる。何より社会人が4人も,それも全員で平日を空けて集まるのはなかなか厳しく,それなら普通に土日に他の百名山を登った方が楽しいのでは,と思ってしまうのである。

これで『ヤマノススメ』の聖地巡礼もまた一歩進んだ。次は谷川岳か,筑波山かな。