2020年01月17日

もっと宗主にフォーカスを当てた展示でも良かったのかも

昨年11月に西美のハプスブルク展に行っていた。近年の西美は研究寄りでこういう企画展は少なかったので,久しぶりという感がある。まあでも2018年にもルーベンス展はやっていたか。展示品は大半がウィーン美術史美術館所蔵のもので,少しブダペスト国立西洋美術館のものと西美の所蔵品が入っている。

ハプスブルク家600年の歴史を追いながら関連する事物を展示するという形の展覧会であるが,さすがに本当の最初期の展示は無く,最初に登場する宗主はマクシミリアン1世である。よって600年というのは誇張で,20世紀も無いことを考えると400年の歴史が正しい。個人的にはルドルフ1世なりルドルフ4世建設公なりのものでもあれば持ってきてもらいたかったところ。ともあれ,「中世最後の騎士」マクシミリアン1世がスタートというのは時代の切れ目としては綺麗で,第1章が豪華なプレートメールの数々というのは人目を引き,展覧会としては成功である。これは隙間を狙って刺すか殴り倒すしかないよな,とか考えながら見るとよいだろう。

第2章はやや跳んでルドルフ2世。カール5世をすっ飛ばしたのはなかなかいい度胸であるが,文化史という観点で見て欠くべからざるかと言われると,確かにちょっと弱い。しかし,ルドルフ2世もその宮廷はプラハであるからこれはこれで本道から離れていないか,という疑問を抱いたのだが,そもそも第2章の章題が「ルドルフ2世とプラハの宮廷」だった。第3章でもスペイン=ハプスブルク家が出てくるし,あまり細かいことを気にしたら負けであるようだ。ルドルフ2世は美術収集家であったので,ここでは彼の時代の画家というよりも彼の集めたものという枠で作品が展示されていた。ゆえに,デューラーやジョルジョーネなど,実際にはカール5世の時代の作品も含まれている。なるほど,そういう解決。ただし,そういう枠組みであっただけにやや散漫な印象があり,豪華さの割には面白くなかった。

第3章はレオポルト1世その他17世紀の収集家たち。ここも低地地方の総督やスペインのフェリペ4世まで出てきて,展示の中核もベラスケスだったりでオーストリアの影は薄い。また,ここも収集家単位でまとめられていたので,画家の時代や様式,作品のテーマ設定等はばらばらでちょっとピンとこない感じ。収集家ごとにまとめるとこういう弊害があるという気づきが得られたという意味では新鮮だった。収集家ごとに大きく趣味が違っていればまた話は別だったのかもしれないが,皆目利きではあれ方向性は同じなので。なお,本展は展示数が約100点だが,うち40点近くがこの第3章である。その意味でもバランスが悪い。もうちょっと第4・5章の品々が見たかった。

第4章は18世紀に入ってカール6世,マリア=テレジアとマリア=アントニア等その家族たち。マリア=テレジアの多産と家族愛が説明され,肖像画がずらっと並んでいたが,展示数が少ないせいでそれで終わってしまったという印象。第3章までの流れであればマリア=テレジアやヨーゼフ2世の収集品が並べられていてもよかったように思う。ヴィジェ=ルブランによるフランス王妃の肖像画もあったので,ここまで来るともはや「ウィーン美術史美術館所蔵の,ウィーンにいなかったハプスブルク家由来の作品」が今回の隠れテーマだったのではないかと思えてくる。実際,ヴィジェ=ルブランのこの作品がウィーン美術史美術館所蔵だったというのはちょっと驚いた。

第5章はフランツ=ヨーゼフ1世とシシィを中心とした19世紀。ただしここも展示が6点しかなく,ハプスブルク家の歴史を終わらせるべくとってつけた印象がある。もっとも19世紀のウィーンについては同年の別の企画展で深く触れられていたので,ネタかぶりを避けたのかもしれない。一点,最後の方にあった展示が装飾されたフリントロック式ピストルだったのは,本展覧会が中世末期のプレートメールから始まったことを想起すると,上手い締め方だった。プレートメールで開幕したハプスブルク家栄光の歴史は,銃声によって幕を閉じたのである。19世紀末なのに,装飾用とはいえフリントロック式というのもまたノスタルジックで良い。


書いてみると文句ばっかりだったが,ハプスブルク家の歴史をざっと追う学習的な展覧会としてはまずまずよくできていたと思う。展覧会期間が長く,1/26まで開催中。いい感じの画像が見つからなかったので,公式Twitterの画像でも貼ってごまかしておこう。