2020年06月12日

高校世界史における中世・近世の「琉球王国」問題

久々の高校世界史深堀りシリーズ。先日Twitterでこんなアンケートを取った。回答してくれた方々はありがとうございます。



正解は万国津梁の鐘の制作年が1458年なので,一番上の「1429年〜16世紀前半」が正しい。実際に琉球王国の最盛期はこの時期であるというのが一般的な認識であろう。後述の理由から正解者は少ないだろうと思っていたのでそこはあまり驚きがなかったのだが,こんなに綺麗に解答が割れたのは予想外だった。琉球王国の盛衰については,Call of Histroryさんの次の記事が詳しい。

・琉球王国の興隆と衰退を中心に十六世紀東アジア貿易と島津-琉球外交略史(Call of History)

この記事にもある通り,琉球王国の繁栄の源泉は明朝との朝貢貿易を生かした中継貿易にあった。明朝の海禁政策下(民間貿易の原則禁止)において,海外需要の高かった中国の特産品(絹織物と生糸・陶磁器等)を朝貢貿易の形で大量に獲得し,転売した。代わって日本(硫黄や刀剣類)・朝鮮・東南アジア(香辛料・香木)から特産品を集めて朝貢を通じて中国に献上し,その見返りとしてまた大量の下賜を得る……琉球王国はこの繰り返しで莫大な収益を上げていた。こうした中国産品と諸外国の特産品の交換センターとなっていた琉球の生業を中継貿易と呼び,その繁栄の誇りを記したものが首里城正殿の鐘,その銘文から通称「万国津梁の鐘」と呼ばれているものだ。

しかし,こうした琉球王国の黄金期は16世紀初頭から状況の変化により崩れ去っていくことになる。明朝の国力が衰えたために海禁政策が弛緩し,東シナ海では後期倭寇による密貿易が活発になっていった。朝貢に頼らず,抜け道で中国産品が手に入るのであれば,琉球を頼る必要はなくなる。さらにポルトガルを筆頭にヨーロッパ船が出現し,高い航海能力と軍事力でこの密貿易に参入していった。1565年頃からは明朝自身が厳格な海禁政策を諦めて緩和し,民間貿易を黙認する方針に切り替えていった。こうして琉球は国際貿易の独占的地位から追い落とされ,1570年には東南アジアとの交易が途絶える。そうして琉球は日中間のみの中継地に変わり,その矢先に1609年の島津氏による侵攻と日中両属体制がある。



さて,なぜ突然こんな話を始めたかというと,2020年の東大の世界史の入試問題でこれに関連する事項が問われたからである。ありがたいことに最近は公式が問題を発表してくれている(pdf注意,p.14-15)。

第1問,問題の要旨は「15〜19世紀末までの冊封体制のあり方と近代における変容」で,追加の条件として事例のうちベトナムと朝鮮を中心にすること,6つの指定語句を必ず使うこと,そして史料A〜Cに論拠の形で必ず言及することの3つがある。問題全体の解説は本記事の本旨ではないので省くが,このうち最後の「史料を論拠として使わせる」のは東大入試で初めての試みであった。このうち史料Aは朝鮮王朝の小中華意識の論拠に,史料Bはベトナムの阮朝がフランスの侵略を受けた時期であってもなお冊封体制を遵守しようとしたことの論拠に使える。そして史料Cは万国津梁の鐘の銘文である。この銘文に見覚えがある受験生は少なかろうが,これは知識を試しているものではない。むしろ知らなくても,一読して琉球王国の最盛期の中継貿易を描写したものと気付けるかどうかを試しているのだ。あまりにも理念先行だった明朝前半の冊封体制が生んだ特異点として琉球王国があり,その論拠に用意されたのが史料Cである。琉球王国の衰退は,理念先行だった明朝の冊封体制が現実的な形に落ち着いていく歴史の一端であり,上手く使えば解答上のアクセントになる。


しかし,この入試問題は思わぬ受験世界史の盲点を掘り起こすことになる。受験生も教える側も大して琉球王国の中継貿易に詳しくないということである。東大入試の分析は需要が大きいので大手の予備校からすでに様々なデータが出ているが,それらを参照するに,受験生の多くは1609年の日中両属以降を琉球王国の最盛期と捉え,史料Cをその論拠に用いたということが推測されている(予備校各社の分析が間違いでなければ)。Twitterアンケートでいうと上から三番目である。作題者もここで躓かれるというのは想定外だったのではないか。

どころか,指導者側が発表しているネット上の解答でもこの史料Cは受験生と同じ誤りを犯したものが多く,むしろ三大予備校の解答以外では正しく使えているものの方が少ないと思われる(一つだけ名指ししておくと,東進さんは解答が修正されており,公開直後は上述の間違いをしていた)。これは大変な手抜きである。受験生が間違えるのはしょうがない。しかし,受験会場の外ではどれだけでも調べようがある。あるいは,調べた上で,16世紀半ば以前・以後の差異が本問の解答上必要であると認識しなかった可能性もある。

冒頭のTwitter上のアンケートはこの受験生の解答状況や塾・予備校の解答速報と,普通の大人との差異があるかどうかを調べたかったのでとらせてもらったものだ。結果はさして変わらないということが判明して有意義であった。なお,普通の大人として,このアンケートに誤答するのは誇れないにせよそこまで恥じるべきものでもない。ちょっと奇妙な仮定になるが,仮に高校以降に得た知識を脳内から消去して,義務教育レベルの歴史の知識とイメージだけで回答しろと言われたら,私も一番上はちょっと選べない(上から二番目を選ぶと思う)。一般教養の問題としては割と難しい部類に入るのではないか。


このような状況を前にして,そういえばそもそも高校世界史の教科書・用語集・資料集の表現はどうなっているのだろうかということが気になりだした。義務教育の段階では触れないか,触れても薄いと思われるので,高校世界史でやらないのなら,1609年以前以後の判断は受験生には不可能である。同時に本問も,例の企画で言うところの「範囲外の難問」ということになり,無理な要求だったということになる。

ということでいつもの比較である……のだが,実は面白みの無い結果に終わった。受験用世界史Bの教科書5冊のうち,山川の『新世界史』を除く4冊はほぼ横並びで同じ記述であったからだ。以下に一応書き並べる。(非受験用Bの2冊とAは需要があるなら後で調べて追記します)

【山川出版社『詳説世界史』】
◯「琉球が15世紀に明との朝貢貿易を活用した中継貿易で繁栄した」という記述あり。
◯一方,衰退過程については記述なし。次に登場するのは島津氏の侵攻。

【山川出版社『新世界史』】
◯本文の記述は概ね『詳説』と同じ。
◯ただし,コラムで「琉球とマラッカ」の枠が大きくとられていて,琉球もマラッカもポルトガルの出現や明の朝貢体制の弛緩で衰退したことが詳述されている。このコラム中でポルトガルや後期倭寇の出現は,海上交易に軍事力が必要になる時代の到来だったこと,そして「琉球やマラッカのような小国は,そのなかで自立して生きていくのが困難だった」と指摘しており,これは名文と言っていい。

【東京書籍『世界史B』】
◯概ねは山川の『詳説』と同じ。
◯15世紀の繁栄の記述は詳しく,「那覇港に多くの福建系中国人が移住」「那覇は首里の外港として繁栄」という記述もある。
◯コラムで「江戸幕府は,琉球を通じて明との国交回復を図った」という記述があり,このコラムは面白い。

【実教出版『世界史B』】
◯これも盛衰の記述は概ねは山川の『詳説』と同じ。日本史の記述がかなり厚いことに特徴がある教科書なだけに,やや意外である。
◯一応,教科書上15〜17世紀のユーラシアを「第二次大交易時代」と定義した上で,「その前半の主役は,琉球とマラッカ」という書き方をしているから,後半には主役ではなかったという読みは一応可能である。明示的とは言えないが。

【帝国書院『新詳世界史』】
◯こういう時に新鮮な記述が多い帝国書院ではあるが,今回は山川『詳説』と大差の無い内容。
◯那覇港と福建系中国人に言及がある点は東京書籍に似ている。


この状況を加味して東大の問題に戻ると,史料Cを15世紀の琉球王国の中継貿易の論拠として使うことを要求するのは,範囲内の出題として適正と言えよう。それ自体はいずれの教科書にも記述があるのだから。しかし,教科書が琉球王国の衰退を明示していないために,1609年を過ぎても琉球はまだ15世紀と同じ繁栄をしているという勘違いが受験生に広がっていたというのは,教科書執筆者の皆さんも,東大の作題者の方も,全くの想定外だったのではないだろうか。各教科書会社には,琉球の衰退にも触れるのをお勧めしたい。

ここで一種の種明かしになるのだが,この東大世界史の第1問の作題者は川島真氏と推定されており,川島先生は東京書籍『世界史B』の執筆者の一人である。ただし,実際に彼が書いたのは近現代の東アジア史の部分と思われ,前近代は佐川英治氏が書いたと推測される。自分の専門領域以外の部分にどの程度かかわれるかは教科書会社によって異なるらしいのでなんとも言えないが,少なくとも東京書籍の琉球の15世紀の繁栄の詳しい記述を読むに,「史料Cを用意してあげれば,琉球王国の繁栄へのヒントは十分だろう」と判断するのは納得できる。もっとも,上述のような勘違いが蔓延しているなんてことは想定していなかっただろうが。

また,教科書の記述がこうなのであれば,受験生の側にも過失があると言わざるをえないと思う。教科書を”素直に”読むというのは学ぶ者の態度として重要であり,素直な理解があれば,解答作成中に「そういえば16世紀の琉球王国って習った覚えがない」ということに気づき,知らないことは解答に書かないことにすれば,史料Cと島津氏の侵攻を結びつけるという愚行には至らないはずである。

なお,もののついでで日本史も調べてみたが,世界史と記述に大差は無かった。資料集のレベルだと万国津梁の鐘の銘文が記載されていたり,東南アジアとの貿易は1570年を最後に途絶したという説明がされていたりするものもあったので,そこまで見れば世界史よりややマシな状況かもしれない。現代史における沖縄県の立場を考えると,記述が薄いのは日本史の方が問題なのではないか。


この記事へのコメント
>記述が薄いのは日本史の方が問題
ご指摘の通りなのですが、はいそうですとひきさがるわけにはいかないように感じましたので小生の手持ちの(教科書を超える)ハイレベル参考書の記述を確認しました。

くわしい日本史の研究@洛陽社
⇒琉球そのものの記載なし、索引も無し。これは問題。

詳説日本史研究@山川
⇒琉球王国の成立については詳説日本史Bに載せきれなかった項目を補遺する形で記載あるがその後島津氏の侵攻まで出てこないので、稲田氏指摘通り

大学への日本史@研文書院
⇒稲田氏指摘の中継貿易を、仲介貿易と表現していること以外は概ね稲田氏指摘の
>琉球の生業を中継貿易と呼び,…(中略)…

の箇所は、明朝の状況を除いて、ページ半分位を割いて記載あることを確認。
さすがは至高の参考書であるが、おしむらくは絶版でかつ値段も高騰気味なので、手に入りにくい。。。

なお、当然に大学への日本史なんて一般高校生が持っているわけないので、念の為教科書を確認すると、小生手持ちの山川詳説日本史Bには琉球王国はほぼ記載なく(島津氏の侵攻ではじめてでてくる)、山川日本史Aはコラムで琉球王国の記載あり、詳説日本史研究に似た記載であるが、琉球王国の繁栄は16世紀前半に繁栄を迎え、という記述があるため詳説日本史Bよりは記述が深い。(詳説日本史研究側にはなぜか未反映)

日本史側の記載が少ないのは確かに問題でしょうが、全く記載無いわけではなさそうです。
ここまで整理すると山川教科書には(あまり)期待できなさそうなので、三省堂と東京書籍の教科書記載がどうなっている(残念ながら未所持のため確認できない)か次第でしょうか。
Posted by おおおおんづけ at 2020年06月13日 20:33
追記します。
>教科書が琉球王国の衰退を明示していないために,1609年を過ぎても琉球はまだ15世紀と同じ繁栄をしているという勘違いが受験生に広がっていた

日本史側も同意致します。前のコメントで手持ちの詳説日本史Bを確認した時、島津氏に征服されたくらいのニュアンスしか記載ないし、謝恩使、慶賀使、冊封使という語句が中心で、その後は明治時代まで出てこないように感じていますね。
ただ、日本史側はその時代だと謝恩使、慶賀使、冊封使が事柄の中心になるイメージなので、それらと世界史的な観点からの記述の補充、かつそもそもの、謝恩使、慶賀使、冊封使の記述の拡充(下手すると受験生は用語集での丸暗記しかしていないと思われる)をすれば、近々のトレンドでもある北海道/沖縄地域史の出題にも耐えうると思料。(今の教科書はもうちょっと拡充されていると信じたい。。。歴史総合になることですし!)
##なお、当然に小生手持ちの教科書、用語集は、小生高等学校在籍時の、学習指導要領なので、上記全く対応出来ていないのは当たり前ですが。致命的度合いでいうとおもろそうしすら当時の詳説日本史Bに掲載されてない。いまやおもろそうしはセンター試験で数年に一度は普通に出てくるのに。

ところで、私は世界史の研究家ではないので、世界史側の教科書、参考書事情はよくわかりませんが、日本史とおなじく世界史でのハイレベル参考書ではどのように記述されているかはちと気になりますね。(日本史側観点からも)
大学への世界史要点とかくわしい世界史の研究とか私大への世界史とか。。。
※※世界史は日本史と異なり洛陽社2冊だしておりますし。
Posted by おおおおんづけ at 2020年06月14日 10:17
もう一つ、かき忘れましたが、大学への日本史は琉球王国衰退経緯も書かれておりますので、悪しからず。
Posted by おおおおんづけ at 2020年06月14日 10:22
いろいろ調べてもらってありがとうございます。
参考書は切りが無くなりそうで調べてなかったのですが,こちらも(今度本屋に行ったら)ある程度探してみようと思います。
世界史にせよ日本史にせよ,近年はそういう分厚い参考書自体が敬遠されていて出版されていないイメージはありますね。

さしあたって山川の『詳説世界史研究』は山川の『詳説』と大差なく,16世紀だけ記述が無い感じですね。

日本史だと江戸幕府との関係性が重要になってくるので(おっしゃる通り謝恩使や慶賀使は必ず触れるわけですから),余計に1609年以前のことの印象は薄くなるかも。
Posted by DG-Law at 2020年06月15日 07:25
コメントありがとうございます。
>参考書は切りが無くなりそうで調べてなかった
現行の書店の実棚を常日頃から見る限り教科書を超えるハイレベル参考書はやはりそんなに多くない気がします。。。(山川の詳説研究を除外すると、駿台系がどんな出来か、次第でしょうか?余談ですが歴史系の棚にいくと、教養書のレベルと表現されていても軽くレベルを超えていたり、逆にすかすかすぎてまったくつかえなかったり、あるいは特定のテーマだけやたらと詳しいかわりに例えば文化史がごろっと抜けていたりというわけで受験には使い難い、というのが日本史側の事情です。)
>世界史にせよ日本史にせよ,近年はそういう分厚い参考書自体が敬遠されていて出版されていない
とのご指摘通りですから。。。(涙
ちなみに、当たり前ですが、
くわしい日本史の研究@洛陽社と大学への日本史@研文書院は私が大学入学後しばらくしたら絶版になりました。
大学への世界史要点@研文書院とかくわしい世界史の研究@洛陽社とか私大への世界史@洛陽社も無論今の大型書店ではまず手に入りません。

余談ですが、ここまでこだわっているが故に、日本史のチャートとか日本史のΣ式をハイレベルと宣っている人達を見かけると豆腐の角で頭ぶつけたら?などと私はときたま感じますね!(あえて書くならば、日本史のチャートとか日本史のΣ式はセンターレベル、ないし中堅二次レベルを超えることは無いと感じているため、難関私大の二次には耐えられるとは思えません。)
Posted by おおおおんづけ at 2020年06月15日 23:37
世界史の場合,このブログでも割とよくネタにしていますが,少なくとも20年遡ると完全に常識がずれていて参考書としての有効性が大きく下がり,10年でも分野によっては危ないくらいなので(そう,意外とネタの新陳代謝が激しいのです),絶版の参考書はどれだけハイレベルであってもその時点でかなりいぶかしんで読む必要が出てきてしまうんですよね。有名どころで言えば,出版年が2010年くらいの参考書だとまだオゴタイ=ハン国が載ってしまっていますね。
そういった「変わってしまったところ」を知悉している読者なら,古い分厚い参考書を手に取る意味もあるのですが,それを知悉している読者はほぼ必然的に世界史に十二分に詳しい読者であるので,文章を楽しむ等の目的ならともかく,大学合格のための読書としては無意味という,矛盾を抱えてしまいます。
たとえば『くわしい 世界史の新研究』が2003年を最後に版を重ねていないようなので,参考書としてはちょっと厳しいでしょう。
そういうわけなので,本屋で調べるとしてもこの辺は最初から候補から除外していますね。
Posted by DG-Law at 2020年06月22日 22:37
毛色を変えて
各種保存用教科書が私の手元に届きましたので参考までに
世界史A
山川315 … ほぼ日本史で習う感じの記載。特段深みは感じなかった。
実教311 … 万国津梁の鐘が15世紀半ばとの記載。しかし最盛期であることは私には文中からは読み取れず。
東書310 … 中継貿易が2回出てくるから山川に似ているのかなあ。ただ、末尾の国際交易は縮小、からとてもじゃないが琉球王国の衰退は読み取れない。

ここは稲田様のほうが詳しいのでこれくらいで。

日本史A、日本史B
実教309日本史A … 琉球処分から始まるので察しで。
東書308日本史A …実教よりは少しは詳しいもののやはり琉球処分から始まる。
山川314日本史B…詳説の簡易版の位置づけ。コラムで1ページを取っているも。最盛期が16世紀前半としっかり明記されている。なお、衰退についてはポルトガルやスペインが東アジアに進出したせいとなっている。
実教311日本史B…実教312の簡易版の位置づけ。簡易版のため中継貿易と琉球処分しか出てこない。
山川315新日本史B…先進性を期待したが以外にも中継貿易や島津氏侵攻、琉球処分と詳説とほぼ変わりない印象。ただし、詳説と異なる視点とすれば明との国交回復を琉球(と朝鮮)に依頼した点であろうか。拒絶されて中国産生糸を輸入する道が途絶えたとの記載は面白い。(これは糸割符にも関連する。そのつながりは詳説では味わえないであろう。)

あとは、往時の三省堂、桐原の教科書を所持している方が記載すれば日本史はほぼほぼ出揃うと思われる・・・
Posted by おおおおんづけ at 2021年09月05日 19:40
ごめんなさい。清水書院が抜けてました。
清水313日本史B…コラムを何個も使い、詳説の3倍以上の記載量。中継貿易の記載あり。明の海禁政策やポルトガル人や(後期)倭寇の(中継貿易への)介入も記載されている。(ただし教科書文中では倭寇に際して後期の記載はない。別のところで出てくるのでそこは清水の方針なのであろう。)おもしろいのはスペインとポルトガルの航海領域なる取り決めや日本が1600年まではポルトガルの後悔領域とされていたことや明の海禁政策の弛緩の記載はあるものの、琉球王国の衰退の文言・記載はない点である。島津氏制服以後の琉球についても記載あるのも珍しい。多くの受験生は琉球処分まで使いを出していただけでしょう、くらいの認識のため、直接受験に関わるところではないものの、受験日本史に精通している方なら一読の価値はあるか。
Posted by おおおおんづけ at 2021年09月05日 19:56
こちらは前近代の話なので,Aでほぼ扱われなかったのは仕方がないところかなと思います。特に日本史Aが琉球処分から始まるのは致し方なし。
山川の『新〇〇』は気合の入った部分と『詳説』と全く変わらない部分があるのは世界史も日本史も同じつくりですね。
世界史Bだと東京書籍にのみある明との国交回復の仲介を琉球に依頼したという話が,日本史Bだと『新日本史』にのみ載っているというのは面白いですね。
清水書院の日本史Bはやけに詳しいですね。ただ,「肝心の琉球王国の衰退の文言・記載はない」のは片手落ちですかね。
Posted by DG-Law at 2021年09月12日 00:59
追加で保存用を入手できたのでコメントいたします。
清水書院の313世界史Aではコラムで琉球王国から1705年にサツマイモが日本に伝来した記載があります。(日本史で出されたらきつい・・・)なお記載は確かに面白いものの、こと本文自体は特筆すべきところはないです。(むしろ同じページの互市をもしも日本史で出されるときつい・・・これ日本史ではオランダ船・中国船に対する海舶互市新例と大多数はただ丸暗記しているだけなので。私もこの教科書をみるまで考えもしませんでしたし。)
第一学習の317世界史Aでは中継貿易による繁栄は明記あるもその後琉球処分まで出てこないので、一番簡素。
Posted by おおおおんづけ at 2021年10月01日 23:03
>清水書院の313世界史Aではコラムで琉球王国から1705年にサツマイモが日本に伝来した記載があります。
あら,珍しい記述ですね。世界史だとサツマイモ・ジャガイモあたりはヨーロッパ・中国への伝来は割とよく出るところですが,日本への伝来は当然珍しいです。
「互市」は世界史では最近それなりに見る用語になってきましたが,日本史では海舶互市新例に含まれているだけですね。むしろ,そういえばそこに含まれているなと今思ったくらいです。
Posted by DG-Law at 2021年10月09日 23:45