2020年08月10日
無料観覧日,ソーシャル・ディスタンスを保つのが難しそう
・アメリカの二大政党は「保守対リベラル」の構図だけで分析することはできない / 西山隆行 / アメリカ政治(SYNODOS)
→ 相対的な社会的弱者の利益集団の連合体+いわゆるリベラル志向の人々という民主党と,それに対抗する勢力が大同団結した共和党という構図なので,いずれも党内が全く一枚岩ではない,という指摘。たとえば民主党は白人労働者と黒人・ヒスパニックはどちらも社会的弱者であるが,利益は相反するし,国会議員のレイヤーでも各法案に対して1割程度の造反が生じるという。
→ 現代社会はとにかく政治に求められる視点が多様で,にもかかわらず多様な集団を無理やり何かで線引して二つの勢力に割らざるをえないのが現代の二大政党制の持つ脆弱性とは言えよう。結果として,二大勢力それぞれの内部抗争が激化し,こぼれ落ちてきた人々の心を捉えるところからサンダースだったりトランプだったりが台頭したわけで,制度の疲弊は覆い隠せない段階来ていると思う。それでも二大政党制自体は壊れないのが面白い。この記事の前半部分で指摘されているように,すでに歴史が長く,地方の政治組織が確固たる地盤を築いていて,今更党が割れたり第三党が勢力を伸ばしたりというのができない環境なのだろう。自由の国も随分と硬直化している。これが250年の重みなのだろう。
→ 翻って本朝はというと,記事末尾で指摘されている通り,自民党はまさにアメリカ共和党的な大同団結状態で,内部にいろいろありつつも1党ではあるのに対し,野党は多党乱立である(さらに言えばここは”野党”であってリベラルではない)。この記事でアメリカでも民主党は割れやすいが,共和党は文句があっても結局トランプに投票した人が多かったとされているのと同じ現象が起きているが,社会的弱者は分断されやすいという傾向は一般にあると思われる。では本朝の野党もアメリカ民主党のように無理くり結束すればよいかというと,それは2009〜2012年の民主党政権で完璧に失敗したのでかなり難しくなった。返す返すも,あの政権の失敗は日本の政治風土に致命的な損傷を与えたと思われ,残念でならない。記事の最後の最後で,
>政治家の実際の政策的立場に大きな違いがないにもかかわらず、政策の違いに基づく政権交代の必要性を強調したのだった。このような無理のある枠組みで政治を展開させることに限界があったことが、今日に至るまで有権者が政治家、とりわけ野党に対し不信を抱いている一因ではないだろうか。
と指摘されている点は大変に重く,これはネット上の自民党支持者が「野党は反対ばかりで提案が生産的ではない」という(事実に反した)批判を展開しているのと表裏一体である。
・世界のミュージアム入館料事情を探る(スペイン・アメリカ編)(美術手帖)
→ 確かに日本の大手美術館は「高校生(大学生)以下無料」は充実しているが,全員が無料になる日や無料になる時間帯を実施しているところはほとんど見ない。財源が無くて苦しいので,記事末尾にあるようなメンバーズ制を強化する等して,無料日を設定するのが日本的なやり方だろうか。また,最後に
>イギリス、ロシア等に目を向ければ、また別の解法も浮上するのではあるが(イギリス・ロシア編へ続く)。
とあるので,後編を期待して待っていたのだが,半年経過しつつある。まだかな。
・廃れる鳥葬 伝統と変化のはざまで揺らぐ社会 ディアスポラ@南アジア(パールシー編) | 神と喧噪の南アジアから | 松井聡(毎日新聞)
→ パールシーといえば鳥葬であったが,都市化の影響がこんなところに。そもそもパールシーに残っているゾロアスター教の儀式に込められた意味は歴史の中で全く失われていて,コミュニティの伝統として残っているだけという話も(青木健の本で読んで)聞いたことがあるし,寂しくはあるが,こうした現代社会への適応から伝統は消えていくのだろう。タタ財閥が健在だからコミュニティが完全に消滅することはなさそうな気はするが。
→ 相対的な社会的弱者の利益集団の連合体+いわゆるリベラル志向の人々という民主党と,それに対抗する勢力が大同団結した共和党という構図なので,いずれも党内が全く一枚岩ではない,という指摘。たとえば民主党は白人労働者と黒人・ヒスパニックはどちらも社会的弱者であるが,利益は相反するし,国会議員のレイヤーでも各法案に対して1割程度の造反が生じるという。
→ 現代社会はとにかく政治に求められる視点が多様で,にもかかわらず多様な集団を無理やり何かで線引して二つの勢力に割らざるをえないのが現代の二大政党制の持つ脆弱性とは言えよう。結果として,二大勢力それぞれの内部抗争が激化し,こぼれ落ちてきた人々の心を捉えるところからサンダースだったりトランプだったりが台頭したわけで,制度の疲弊は覆い隠せない段階来ていると思う。それでも二大政党制自体は壊れないのが面白い。この記事の前半部分で指摘されているように,すでに歴史が長く,地方の政治組織が確固たる地盤を築いていて,今更党が割れたり第三党が勢力を伸ばしたりというのができない環境なのだろう。自由の国も随分と硬直化している。これが250年の重みなのだろう。
→ 翻って本朝はというと,記事末尾で指摘されている通り,自民党はまさにアメリカ共和党的な大同団結状態で,内部にいろいろありつつも1党ではあるのに対し,野党は多党乱立である(さらに言えばここは”野党”であってリベラルではない)。この記事でアメリカでも民主党は割れやすいが,共和党は文句があっても結局トランプに投票した人が多かったとされているのと同じ現象が起きているが,社会的弱者は分断されやすいという傾向は一般にあると思われる。では本朝の野党もアメリカ民主党のように無理くり結束すればよいかというと,それは2009〜2012年の民主党政権で完璧に失敗したのでかなり難しくなった。返す返すも,あの政権の失敗は日本の政治風土に致命的な損傷を与えたと思われ,残念でならない。記事の最後の最後で,
>政治家の実際の政策的立場に大きな違いがないにもかかわらず、政策の違いに基づく政権交代の必要性を強調したのだった。このような無理のある枠組みで政治を展開させることに限界があったことが、今日に至るまで有権者が政治家、とりわけ野党に対し不信を抱いている一因ではないだろうか。
と指摘されている点は大変に重く,これはネット上の自民党支持者が「野党は反対ばかりで提案が生産的ではない」という(事実に反した)批判を展開しているのと表裏一体である。
・世界のミュージアム入館料事情を探る(スペイン・アメリカ編)(美術手帖)
→ 確かに日本の大手美術館は「高校生(大学生)以下無料」は充実しているが,全員が無料になる日や無料になる時間帯を実施しているところはほとんど見ない。財源が無くて苦しいので,記事末尾にあるようなメンバーズ制を強化する等して,無料日を設定するのが日本的なやり方だろうか。また,最後に
>イギリス、ロシア等に目を向ければ、また別の解法も浮上するのではあるが(イギリス・ロシア編へ続く)。
とあるので,後編を期待して待っていたのだが,半年経過しつつある。まだかな。
・廃れる鳥葬 伝統と変化のはざまで揺らぐ社会 ディアスポラ@南アジア(パールシー編) | 神と喧噪の南アジアから | 松井聡(毎日新聞)
→ パールシーといえば鳥葬であったが,都市化の影響がこんなところに。そもそもパールシーに残っているゾロアスター教の儀式に込められた意味は歴史の中で全く失われていて,コミュニティの伝統として残っているだけという話も(青木健の本で読んで)聞いたことがあるし,寂しくはあるが,こうした現代社会への適応から伝統は消えていくのだろう。タタ財閥が健在だからコミュニティが完全に消滅することはなさそうな気はするが。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(4)
この記事へのコメント
>社会的弱者は分断されやすいという傾向は一般にあると思われる。
これは、逆で、分断されやすい人が弱者になりやすいという傾向があるんじゃないでしょうか。
言葉は悪くても「長いものに巻かれる」才覚と覚悟とメンタリティがあれば、弱者になりづらいのでは。
・・・と、立民vs国民の合流協議を眺めていて思った次第です。
これは、逆で、分断されやすい人が弱者になりやすいという傾向があるんじゃないでしょうか。
言葉は悪くても「長いものに巻かれる」才覚と覚悟とメンタリティがあれば、弱者になりづらいのでは。
・・・と、立民vs国民の合流協議を眺めていて思った次第です。
Posted by くるりん at 2020年08月12日 13:41
才覚と覚悟とメンタリティは個人としては持てますが,属性のある社会的な集団となると話が全く別ですね。これは後者の話です。
「分割して統治せよ」というのは歴史上頻繁に目にすることができる格言であり現象ですが,やはり被支配者層を手懐けるなら,適当な属性で被支配者層同士で争わせ,支配者層に団結して歯向かわないようにしてしまうのが一番手っ取り早いのですね。
「貧すれば鈍す」「金持ちけんかせず」という言葉もありますが,社会的弱者は弱者であることが先立って,弱者同士で喧嘩させられやすいのだと思います。
>・・・と、立民vs国民の合流協議を眺めていて思った次第です。
これもどちらかというと,自民党も自民党で党内部に様々な意見の相違や派閥争いは存在するわけですが,権力にいる旨味ゆえに,よほど譲れない争点(2004年郵政民営化のような)でも出てこない限り割れることはない。
一方で,野党同士だと,与党に成り上がる見込みが無い限りはひとかたまりでいるメリットが薄いので,ご覧のような離合集散が繰り返されてしまうわけですね。
記事本文にも書きましたけど,与党に成り上がった期間があってその旨味を味わえる期間があったのに,そのままひとかたまりで居続けるだけの求心力が生まれないまま野党に再転落してしまった……というのは民主党の不幸というよりも日本の不幸ですね。
「分割して統治せよ」というのは歴史上頻繁に目にすることができる格言であり現象ですが,やはり被支配者層を手懐けるなら,適当な属性で被支配者層同士で争わせ,支配者層に団結して歯向かわないようにしてしまうのが一番手っ取り早いのですね。
「貧すれば鈍す」「金持ちけんかせず」という言葉もありますが,社会的弱者は弱者であることが先立って,弱者同士で喧嘩させられやすいのだと思います。
>・・・と、立民vs国民の合流協議を眺めていて思った次第です。
これもどちらかというと,自民党も自民党で党内部に様々な意見の相違や派閥争いは存在するわけですが,権力にいる旨味ゆえに,よほど譲れない争点(2004年郵政民営化のような)でも出てこない限り割れることはない。
一方で,野党同士だと,与党に成り上がる見込みが無い限りはひとかたまりでいるメリットが薄いので,ご覧のような離合集散が繰り返されてしまうわけですね。
記事本文にも書きましたけど,与党に成り上がった期間があってその旨味を味わえる期間があったのに,そのままひとかたまりで居続けるだけの求心力が生まれないまま野党に再転落してしまった……というのは民主党の不幸というよりも日本の不幸ですね。
Posted by DG-Law at 2020年08月12日 21:57
> ネット上の自民党支持者が「野党は反対ばかりで提案が生産的ではない」という(事実に反した)批判を展開している(本文)
自分のTLでは専ら、「広報活動が安倍降ろしに終止している(それも誹謗中傷や事実誤認を含むかなり無茶かつ低俗な内容で)」、「妨害・遅延を目的とした委員会レベルのサポタージュが多く、政策決定に非協力的」という点を問題視している声が大きいですが、随分見てる世界が違うようですね。
>権力にいる旨味ゆえに,よほど譲れない争点(2004年郵政民営化のような)でも出てこない限り割れることはない。(上コメ)
野党が政局争いに終始しているので、やりたいことがある人は自民党でやるしかない、という話は聞いたことがあります(山田太郎議員の自民党合流に関するインタビューだったか)。権力にいる旨味、というのは聞いたことないですし、もしそうだとしたら民主党が大勝した2009年選挙で自民党は内部崩壊を起こしていたと思います。
一方、選挙戦略としては自民党員が多すぎて公認をもらえないから離党、というケースも有るようで、各地の都道府県連が一枚岩じゃないとか内部分裂がどうこうというのは公示の時期になると毎回ちらほら見かけるニュースな気がします(うちの地元だけかな…)。
自分のTLでは専ら、「広報活動が安倍降ろしに終止している(それも誹謗中傷や事実誤認を含むかなり無茶かつ低俗な内容で)」、「妨害・遅延を目的とした委員会レベルのサポタージュが多く、政策決定に非協力的」という点を問題視している声が大きいですが、随分見てる世界が違うようですね。
>権力にいる旨味ゆえに,よほど譲れない争点(2004年郵政民営化のような)でも出てこない限り割れることはない。(上コメ)
野党が政局争いに終始しているので、やりたいことがある人は自民党でやるしかない、という話は聞いたことがあります(山田太郎議員の自民党合流に関するインタビューだったか)。権力にいる旨味、というのは聞いたことないですし、もしそうだとしたら民主党が大勝した2009年選挙で自民党は内部崩壊を起こしていたと思います。
一方、選挙戦略としては自民党員が多すぎて公認をもらえないから離党、というケースも有るようで、各地の都道府県連が一枚岩じゃないとか内部分裂がどうこうというのは公示の時期になると毎回ちらほら見かけるニュースな気がします(うちの地元だけかな…)。
Posted by nanasi at 2020年08月20日 13:22
>「広報活動が安倍降ろしに終止している(それも誹謗中傷や事実誤認を含むかなり無茶かつ低俗な内容で)」、「妨害・遅延を目的とした委員会レベルのサポタージュが多く、政策決定に非協力的」
これを言っている人は同様に「野党は反対ばかりで〜〜」も言っている(または過去に言っていた)印象が強いので,私はむしろ“同じ世界”を見ている印象ですね。
>もしそうだとしたら民主党が大勝した2009年選挙で自民党は内部崩壊を起こしていたと思います。
これについては2つ意見があります。1つは根本的に支持基盤がマイノリティ(社会的弱者)の集合体ではなく,財界など勢力の強い側の集合体であって,アメリカでいう共和党の側の性質を持っているので解体しづらかった。その意味では,野党期間に内部崩壊しなかったのは驚くに値しません。
もう1つは,それでも内部崩壊しなかったのはすごいという感想もあります。「もう一度返り咲くという野心」の訴求力と,55年体制以降数十年分の地盤が,わずか3年半程度の野党暮らしでは崩壊しなかったのは流石ですね。
一方で,「総合するとやや右寄りな程度の大衆政党」だった自民党が,野党期間ではっきり右派に寄り添うアイデンティティを獲得していったのは実感としてあり,その象徴があの自民党の改憲案であると思います。その意味で,内部崩壊したとは全く言えないですが,それに類する現象としての“純化”は存在したという解釈を採っています。
これを言っている人は同様に「野党は反対ばかりで〜〜」も言っている(または過去に言っていた)印象が強いので,私はむしろ“同じ世界”を見ている印象ですね。
>もしそうだとしたら民主党が大勝した2009年選挙で自民党は内部崩壊を起こしていたと思います。
これについては2つ意見があります。1つは根本的に支持基盤がマイノリティ(社会的弱者)の集合体ではなく,財界など勢力の強い側の集合体であって,アメリカでいう共和党の側の性質を持っているので解体しづらかった。その意味では,野党期間に内部崩壊しなかったのは驚くに値しません。
もう1つは,それでも内部崩壊しなかったのはすごいという感想もあります。「もう一度返り咲くという野心」の訴求力と,55年体制以降数十年分の地盤が,わずか3年半程度の野党暮らしでは崩壊しなかったのは流石ですね。
一方で,「総合するとやや右寄りな程度の大衆政党」だった自民党が,野党期間ではっきり右派に寄り添うアイデンティティを獲得していったのは実感としてあり,その象徴があの自民党の改憲案であると思います。その意味で,内部崩壊したとは全く言えないですが,それに類する現象としての“純化”は存在したという解釈を採っています。
Posted by DG-Law at 2020年08月21日 16:23