2020年09月17日

『鬼滅の刃』の話とか

・『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む(Real Sound)
→ この記事の指摘の通り,鬼舞辻無惨の「信念の無いラスボス」っぷりは近年のジャンプの人気バトル漫画としては異例で,同情をかき消す容赦のない小物描写がある。それでいてイケメンでラスボスにふさわしい個としての強さというアンバランスさがあると,それが魅力になる。要素を盛りに盛ることで,かっこいい悪役とは信念や悪の美学を持たねばならないというテーゼを破壊した,斬新で魅力的なラスボスであった。このネット記事が出た後もまだ少しだけ鬼舞辻無惨は出番があったのだが,そこでのセリフが自分をおいて蘇生する炭治郎に対して「待ってくれ頼む」だったのがあまりにも完璧で,有終の美を飾っていた。
→ それにしても『鬼滅の刃』がこれだけの人気作になるとは予想してなかった。あまりにも独特な作風なので広く受容されるのは難しいだろうと思っていたのだが,全然そんなことはなく。ufotableのアニメはめちゃくちゃ出来が良かったが,アニメは絵柄の点でもストーリーの点でも万人受けしやすくなっていて,原作への良い架け橋になっていたように思う。そのアニメも深夜帯だったはずでは,というのはおそらく古い意識で,アニメはネットで見るものという今の常識にとっては大したハードルにはならなかった。結果として独特な作風は強い個性でしかなく,人気は広く行き渡ることになった。そういうことから,『鬼滅の刃』が世間に受けたというのはオタクにとっても良い影響になるのではないかと思う。
→ それはそれとして,アニメが終わった後くらいの頃に仲間内で集まった際に「そういえばワニ先生が『Fate/stay night』のイラストを書いていて驚いた」という話から,そういえば……
・主人公がいわゆる「山育ち」
・主人公の妹が鬼
・主人公が視覚系のバトル異能者
・ラスボスが割と間抜けで傲慢
 という共通点や類似点が見つかり,『鬼滅の刃』はけっこう王道的かつ気づかれにくい型月フォロワーなのではというのはその仲間内でもけっこう驚きの発見であった(無論のことながらこれを少年漫画的かつ全く独自の作風に取り込みきっているのが本作の長所である)。そう考えるとufotableがアニメ化したのは偶然にしては出来すぎているというか,ufotableがねらって『鬼滅』に目をつけたのだろう。全然誰にもつっこまれなかったがこの記事で『まどマギ』『Fate/Zero』『Fate/stay night Heaven's Feel』『天気の子』の並びに『鬼滅の刃』を入れているのはそういうことだったりした。これは真面目に深掘りすると21世紀のオタク文化史としてけっこう重要な論点になると思われるので,プロの学者の人はがんばってみてください。


・何故、あの館は爆破され、爆発し続ける事になったのか? 「紅魔館爆発の元凶を探る」(東方我楽多叢誌)
→ 二次創作で紅魔館が爆発オチの素材になるのはすでに歴史の長い鉄板ネタだが,淵源となると難しい。それをよく調査したと思う。そこで忙しい人のためのシリーズや東方M-1グランプリが出てくるのは想定の範囲内だったが,赤色バニラの同人誌に行き着く可能性があるのは意外だった。ニコ動やふたば発祥のネタではないのかもしれないのだなぁ。東方は他にも発祥が行方不明になった二次創作ネタがありそうなので,二次創作文献学の発達の余地があるかも。


・賞金100万円!秋田の新ブランド米、名称公募始まる(秋田魁新報)
→ 今こそ「米っちゃうな」の出番では……というブコメをつけたが一つもスターがつかなかったでござるの巻。なんでや『こち亀』でも屈指の爆笑回やんけ……手元に『こち亀』が無いのでググったところ82巻だそうで。


・総理の給与はなぜ返納されているのか、怠惰の時は怠惰を知らず(ネットロアをめぐる冒険)
→ 要するに全閣僚の給与一部返納は中曽根政権からずっと続いており,特に3割という額は野田政権以降の踏襲になっているという。菅さんもこのまま踏襲するのだろう。法律に基づかないところでこういう惰性的伝統が生まれてしまうのはよくないことで,もはやその微々たる金額で財政再建に貢献するとかその心構えを見せるとかそういう効果も薄れてしまっているのだから,返納を辞めるか,きっちり給与額を再設定するべきだろう。まあこういう謎のところで伝統が生まれるのは,とても日本の歴史らしい話ではあるが。

この記事へのコメント
我楽多の爆発記事の中で、まさか赤色バニラに触れられるとは…迷作&大ファンなのでまさかといった感じでとても嬉しくなりました。
記者の人は、数多ある同人誌にも広く精通してるんですかね笑
Posted by 〜 at 2020年09月19日 08:22
まさかその同人誌にたどり着くとは……と思いますよね。
おっしゃる通り,東方の同人誌は無数にあるので,調査の苦労が忍ばれます。
Posted by DG-Law at 2020年09月19日 09:38