2020年11月09日

最近読んだもの・買ったもの(『球詠』7・8巻)

7巻は熊谷実業戦と,柳大川越戦前半。8巻はその決着から夏の合宿編が始まるまで。

熊谷実業戦は短く終わったが見どころが多い試合で,「1年生中心でチーム全体が疲れている」という描写,特にしれっと全く打てていない稜と,初心者なのに神がかった活躍をしていた息吹の不調に,それでも交代を出せない層の薄さ。一方で疲れを見せない2年生2人,特にパワーヒッターとして覚醒した理沙先輩の成長と,先の展開を知っていると伏線だらけで,単行本でまとめて読むと大変に密度の濃い試合になっていた。その理沙先輩が久保田投手との対戦時に,急造・未知数のチームがベスト16まで来てしまったことについて感慨深げにしているところはまさに「地位が人を作る」好例で,夏大会終了後の8巻で息吹が「今大会で一番成長したのは多分理沙先輩」と言っているのはこういうことだろう。1年と2・3年の違い,特に1年は身体・精神ができていないという描写が明確なのは本作の美点であると思う。しかし,1年の中で主人公コンビだけは別格で疲れを見せず,1点差無死満塁で4番からの3人を無失点でパーフェクトリリーフする詠深ちゃんのダイアモンドメンタルよ。久保田との対決以外があっさりすぎて,気づいていない読者も多そう。

柳大川越戦は熊谷実業戦で張った伏線の全回収。ミート力に比してパワー不足で討ち取られる面々,結局は芳乃の作戦と詠深頼りの投手戦に持ち込むしかなく,それをフォローするための守備は体力不足やメンタル不調で崩れていく。実際に守備陣のエラーがなければ7回終了時点で1−1,延長戦に入っていた。対して柳大川越は強豪校らしく投手は朝倉・大野の二枚看板で1年も打てる子がそろっている。朝倉さんと大野さんという対比・関係性も最高だった。大柄でカリスマ性があり,でも天然ボケで抜けている朝倉さんが後輩で,小柄で意地っ張りで見栄も張っている大野さんが先輩というギャップに加え,しっぽがあったらブンブン振ってそうなくらい朝倉さんが慕っているのに,大野さんが気づかない振りをしているのは紛れもなく相互に巨大感情である。ちなみに,大野さんの好きな動物は犬という重要情報もここに投げ込んでおこう。

チームの雰囲気がよく,ここまで出てきた梁幽館や熊谷実業,影森などに比べると,柳大川越のチームの雰囲気は新越谷に近く,より上位互換というように見えた。層が厚いだけなら梁幽館も同じだったはずだが,まだ三回戦だったので勢いと作戦で乗り切れてしまった。柳大川越は練習試合をやっていて2回目ということもあって,1年中心の急造チームの弱点を見事に突かれての敗戦となった。逆に言えばその修正に今後の展開が当てられるわけだから,新キャラも登場したことだし,長期連載コースに入ったと見ていいだろう。

その新キャラ,光先輩は完全に私のストライクでしたね(「知ってた」というブログ読者の声が聞こえる)。おとなしそうに見える顔や性格に似合わぬ豪快なプレースタイル,これは今後の活躍に期待ですわ。


この記事へのコメント
すいません。私はこの漫画は見てないのですが
>朝倉さんと大野さんという対比・関係性も最高だった。
で、ついこらえきれず、こんな記事をご紹介します。
https://www.nikkansports.com/baseball/news/1779206.html

作者はぜったい、ねらってやってる。
Posted by もしどら at 2020年11月11日 07:36
作者は重度のホークスファンで,同じチームに「大島」もいますから,明らかにねらってますね。
ちなみに,別の高校だと「中田」「陽」「吉川」なのでどう見ても日ハムですしね。
Posted by DG-Law at 2020年11月13日 00:17