2020年12月14日

二次元に融解する都市・東京(MANGA都市TOKYO展)

国立新美術館のMANGA都市TOKYO展に行っていた。国際的な巡回で好評を博した展覧会の凱旋的企画展。漫画・アニメ・ゲーム・特撮で東京という都市がいかに描かれてきたかをテーマ別・時代別に整理し,陳列したもの。

江戸・東京はあまりにも多くの創作物で画像・映像化されてきたために,多層なイメージが乗っかっている。特に大きいテーマとして取り上げられていたのが「破壊と復興」である。ゴジラに壊され『AKIRA』で壊され,『天気の子』で水没し……とまあ,壊され続ける大都市東京の姿は,現実での関東大震災と太平洋戦争による二度の復興があったからこそ現実味を持ちつつ,すでに一つの持ち味を化している。特にこの分野で一日の長があるのはやはりゴジラさんで,初代に始まり『シン・ゴジラ』までゴジラの破壊シーンが並べられるとなかなか壮観だった。その他に,そもそも江戸時代は火事の町だったよね,というつなげ方をしていたが,あれはちょっと強引に感じた。別に時代別の日常のコーナーに入れておけばよかったのでは。

時代別の日常というテーマでは,非常に多くの漫画が取り上げられていて,テーマ的に漫画というジャンルは強い。集英社の漫画が多かったように思われたのは偶然か,そうでなければ,確かに集英社はこういう企画に積極的に乗っかっていく上手いところはあるように思った。東京という都市の日常は結局のところ日本経済の浮沈と連動しているところが大きく,バブルくらいまではけっこう画一的である。真に都市の細部が,たとえば秋葉原や新宿という単位に大きな意味を持つようになったのは,フィクションの上では意外と最近だったのかもしれない。新宿といえば新海誠だよね,ということでこのゾーンのアニメでは新海誠の扱いがやはり大きかった。あとは,ゲームという分野ではあまりにもネタが無さすぎたのか,『がんばれゴエモン2』が強引に取り上げられていてちょっと面白かった。なるほど,これも一種の架空の江戸には違いない。ゲームであと出てきたのは『サクラ大戦』と『Stein's Gate』と『龍が如く』なので納得のラインナップ。

最後のテーマが「キャラVS都市」で,逆にフィクションが現実の東京に食い込んでいるパターンにクローズアップしたもの。『こち亀』の銅像がある亀有町や神田祭に欠かせない存在になってきた『ラブライブ』,お台場に立ったガンダム,コンビニとコラボした初音ミク等々。聖地巡礼の経済的効果も考えられながら,あまりにもフィクションで多く描かれてきたために現実とフィクションの境界が融和してしまった東京という都市を象徴する現象であり,展覧会に占める面積は小さかったものの,テーマ設定としてはこのゾーンが一番面白かった。改めて考えると東京とかいう都市,フィクション性が高くて存在する次元がめちゃくちゃである。小説や映画の舞台としてならニューヨークやロンドン・パリ等も強いが,こと漫画・アニメ・ゲームというフィクション性の強いものに限ればやはり東京が際立つだろう。本展の掉尾を飾ったのが『ラブライブ』というのは,本展を上手くまとめていたと思う。

総じて凱旋帰国にふさわしい展覧会だったのではないかと思う。ただし,凱旋帰国であるために基本的には外国人向けに作ったものをそのまま持ってきたという点と,コンセプトを押さえて見に行かないと(そこそこキャプションは充実していたものの),単なる懐かしの作品の陳列を眺めて終わってしまう可能性は高く,そこは鑑賞者の側に準備が必要。東京での展示は11月に終わっているが,1/17までで大分県立美術館で開催中。見たい方はそちらへ。今回は展示品の画像を貼るといろいろとアウトなので,公式の映像を貼っておこう。