2021年12月11日

登山記録3(瑞牆山・金峰山),あと『ヤマノススメサードシーズン』について

初回はこちら。各項目の説明は初回を参照のこと。長くなったので今回は2座だけ。YAMAPのヤマノススメ巡礼マップ(瑞牆山・金峰山)も参照のこと。

No.10 瑞牆山
〔標高〕2230m
〔標高差〕750m(瑞牆山荘から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕7巻・アニメ3期
〔県のグレーディング〕2C
〔私的な難易度と感想〕2C ※ 下記を参照のこと
自分が初めて本格的に挑んだ難易度Cの山。ただし,岩が頑丈でしっかりしているし,切り立った痩せ尾根があるわけでもない。コースタイムは瑞牆山荘からで4時間50分。富士見平でテント泊するなら3時間20分になるから,旅程も短くてあっという間に山頂に着いてしまうから,体力もそれほど必要としない。と削っていくと残ったものから推測がつく通り,この山の難易度は純粋にアスレチック的・ロッククライミング的テクニックに偏っている。コースタイムのうち最後の1時間は岩場と鎖場とハシゴしかない。要するにこういう感じの道が延々と続く。ボルダリング完全未経験で,当時はまだ三点支持? なにそれおいしいの? というレベルだった私は2・3箇所足をかける場所がわからなくて途中で帰ろうかと思った。今ならもう少し楽に登れるかもしれない。ともあれ,テクニック理由で登頂未達になりかけたのは登山を始めて5年ほどの現在でも瑞牆山が最初で最後である。逆に言えば,その辺の経験やセンスがある人にとっては軽い山で,難易度Bの山よりも簡単に感じるかもしれない。同様の理由で,ロッククライミングのつもりで行くと逆に物足りないだろう。

瑞牆山道中


麓から見上げた山容も威容なら山頂からの眺望も威容で,切り立った奇岩による山水画の世界を楽しむことができる。次の写真は麓からのものだが,この光景だけでも瑞牆山は価値が高い。

瑞牆山の山容


その他の注意点としては,人気の山で登山者が多い割に山頂が狭い。山頂で昼食休憩を考えているなら早めの時間帯に行った方がいいだろう。あと岩壁をよじ登っていく関係で道が非常に狭いので,難易度が高い箇所で詰まると自分が原因で渋滞が発生するのも注意が必要。発生させた張本人が言うのだから間違いない。なお,YAMAPにはヤマノススメ聖地巡礼用MAPが用意されていて,我々もこれを利用して登った。それにしても,これを「きつい登りだけど何とか平気」と言いつつあっさり登ったあおいはアスレチック能力はかなり高い。少なくとも私より高い。そうそう,原作通りに富士見平でキャンプするのも悪くないだろうが,瑞牆山荘は山小屋とは思えないほど設備が良い。なにせ風呂までついている。夕飯もローストビーフが出てきて驚いた。お勧め。


No.11 金峰山
〔標高〕2599m
〔標高差〕1120m(瑞牆山荘から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕7巻・アニメ3期
〔県のグレーディング〕4C(瑞牆山荘から)・2B(大弛峠から)
〔私的な難易度と感想〕4C ※ 下記を参照のこと
瑞牆山のお隣の山にして,奥秩父の盟主,第二の高峰。山梨県民は「きんぷさん」,長野県民は「きんぽうさん」と読むらしい。自分が2021年までに登った山の中では最高難易度。コースタイム7時間30分(行きが4時間)で標高差1120m,1時間に300m上がらないということからわかる通り,急登は多くない。特に行きの前半2時間ほど,「大日岩」という名所の少し手前まではただの樹林帯が続く。ところが後半が難易度のCたる所以で,鎖場からの鎖場,特に「砂払いの頭」「千代の吹上」という名所以降は基本的に痩せ尾根と崖が続く。ちょうどこの辺りで森林限界を超えるので,視界に岩と空しかない世界になることもあって異世界感が強い。ただし,岩場・鎖場は瑞牆山ほどには厳しくなくて私でも詰まった場所はなかったし,また合間に普通の山道が入る。どちらかというと痩せ尾根の方が危険度が高い。『ヤマノススメ』作中で楓さんが「森林限界を超えたら気持ちのいい稜線歩きが続くから,そこまでがんばりましょう!」と言うのだが,それ自体は正しいのだけども,むしろ稜線歩きの方が緊張するので気持ちは休まらない。

金峰山道中


確かこれが千代の吹上付近だったと思うが……改めて見ても画面の右側おかしいやろ。技術的に登れない箇所は出てこないけど滑落して死ぬ可能性があるのはこちらという点で瑞牆山とは好対照であると思う。私的には体力は割りと余裕があったが,この気の抜けない難所が断続的に続くために精神が削られた。山頂は,本来なら富士山も見える絶景なのだが我々が登った時は完全に霧の中であった。それで痩せ尾根が余計に怖かったところもあるかもしれない。後でこの時の同行者に後に「トラウマになっていて過大に怖がっているのでは」と言われたことがあり,それはなくもないと自分でも思う。ただ,それはそれとして,『ヤマノススメ』聖地巡礼勢のサイトや同人誌を読むに割りと皆苦戦しており,あおいとひなた同様に山頂未達の人も見かける。少なくとも現状のアニメ版『ヤマノススメ』聖地巡礼では最難関なのは間違いないと言える(原作だと石鎚山に負けるが,あそこはあおいとひなたが登っていないので例外とすると,原作でも最難関か)。

そんな金峰山であるので,原作7巻でひなたが膝が痛むと言いだして,あおいが付き添って途中で下山に切り替えたのは判断として正しい。描写を見るに,上述の通りに難易度が上がり始める頃の大日岩付近で引き返したのだろう。ところが,アニメ版ではひなたが膝が痛いことを打ち明けるのがもうかなり山頂に近い「砂払いの頭」に変わっているので,実はかなり不自然なことになっている。上述の通りの難易度であるので,あおいがひなたの分のザックも背負いながらここから下山できてしまうのは,それまでのあおいの登山能力との乖離が激しくなってしまうのだ。しかしながら,これが愛のなせる技なんだなと脳内補完しながら,あのカップルはこんな危険箇所で仲直りしていちゃついてたんだなという思いを馳せながら登ると,聖地巡礼としては極めて楽しめるのではないかと思う。我々も「12話のあのシーン,この岩の上だったのかよwwwww」と爆笑しながら下山していたので,疲労の割には非常に楽しかった良い印象の方が強い。これは登って現地で見ないと実感として理解できないと思われるので,正しく聖地巡礼の意味があり,最も巡礼の価値がある山でもある。この意味で原作信者は3期アニメの改変に対して切れていい。『ヤマノススメ』に存在しているのかは知らないが。あと,息を切らしていないどころか楓さんよりも体力残ってそうな感じで完走したここなちゃんは一体。

『ヤマノススメ』ではあおいとひなたが登頂していないためか描写されていなかったが,金峰山の山頂から少しだけ下りたところにある金峰山小屋の名物が鍋焼きうどんである。これが恐ろしい登山道で疲弊した体力と精神を回復させるから,ぜひとも昼飯はここで。あとこの山小屋の犬がかわいい。

金峰山小屋の鍋焼きうどん金峰山小屋の犬


ところでこの金峰山は登山道が大きく分けて2ルートあり,1つは『ヤマノススメ』と同様に1泊2日で瑞牆山と縦走する,瑞牆山荘を拠点として西側から登るもの。もう1つは正反対の東側,大弛峠から登るものである。前者は既述の通り4Cと高難度だが,後者は地方自治体グレーディングで2Bとなっているから,おそらくさして苦労せず登れてしまうのだと思われる。個人的にはトラウマの払拭と眺望のリベンジを兼ねて,今度は大弛峠から登ってみたい。