2022年03月06日

登山記録7(美ヶ原,武甲山)

No.20 美ヶ原
〔標高〕2034m
〔標高差〕620m(三城いこいの広場から),100m(道の駅から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕11巻(のおまけ)
〔県のグレーディング〕2B
〔私的な難易度と感想〕3A+(道の駅からなら1A)
「美ヶ原」とは大仰なネーミングだと思いきや,全く名前負けしていない。山域がだだっ広く,東半分は名前の通りの美しい草原が広がっている。見よ,この圧倒的な光景。

この草原の最東端が道の駅になっているので,まじめに登山するのが億劫なら高低差100mのここまで自家用車で行くことができる。また,そこからは山頂すぐそこまでバスも出ているので,極端に言えばほとんど歩かずに山頂の「王ヶ頭」まで行ける(したがって難易度は1A)。もちろん,草原の真ん中を割るように通してあるトレッキングコースを歩くのはとても気持ちいい。コースの分岐に「塩くれ場」,すなわち牛が塩をなめに来る岩場があるように,草原には時期が良ければ牧場の牛が闊歩している。私が行ったのが晩秋なのですでに寒く,牛は牛舎から出てきてくれなかった。山頂の王ヶ頭には電波塔が並び立っていて,人によっては自然破壊に見えるだろうが,私を含めた多数派の感想は偉容を誇っていて面白いというものだろう。



王ヶ頭から西に進むと,美ヶ原の最西端「王ヶ鼻」にたどり着く。ここは王ヶ頭よりも草原から突き出ているために270度の大パノラマで眺望はこちらの方が良いが,王ヶ頭でも十分な眺望ではあるので,体力と相談してここまで行くか決めるとよい。また王ヶ鼻は謎の石像群が並んでいて,ここも昔は修験道の場だったことを忍ばせる。

登山道はいずれも王ヶ頭・王ヶ鼻に向かって西南方向から伸びている。難易度は長野県の公式グレーディングだと2Bになっていたが,実際に登った感覚としてはBにするほどの難易度が無い。多摩の低山にありそうな感じの,よく整備された登りやすい登山道で,登り慣れている人ならさして苦労せずに登頂できるだろう。ただし,登山道はそこそこ長く,美ヶ原高原が広大であるので,ちゃんと登って高原もそこそこ回ると6時間前後のコースタイムになる。今度は逆に公式グレーディングが"2"になっていたのだが,これは"3"相当だろう。公式グレーディングがこれだけ当てにならない山は珍しい。魅力的で離れがたい光景が続くからこそ時間の余裕を持って回りたい山である。なお,あまり宣伝されていないが,美ヶ原の南面麓,登山道付近の森林が「長野県民の森」に指定されていて,森林の多い長野県の中でもそう指定されているだけのことはあり,見事な森だった。美ヶ原を登ったなら,ぜひここも訪れてほしい(下のツイートの4枚目が県民の森)。



ところで,『ヤマノススメ』で美ヶ原って出てきたっけ? と思った方がいたら鋭い。11巻の単行本のおまけで,黒崎家が訪れていて,王ヶ頭ホテルに泊まったという描写が出てくるだけである。この際に,ほのかが夜にホテルを抜け出して夜景を眺めているのだが,行ったのが真冬で-20度とのこと。これは作者の実体験らしく,その時の写真がたまにTwitterに上がっている。





美ヶ原(王ヶ頭)・王ヶ鼻 / 稲田義智さんの王ヶ頭(美ヶ原)の活動データ | YAMAP / ヤマップ




No.21 武甲山
〔標高〕1304m
〔標高差〕1000m(横瀬駅から),780m(登山口から)
〔百名山認定〕二百名山
〔ヤマノススメ〕12巻
〔県のグレーディング〕無し
〔私的な難易度と感想〕3A+(登山口からなら2A+)
埼玉県の誇るピラミッド。登山道は西武秩父線の横瀬駅から登る道と秩父鉄道の浦山口駅から登る道があるが,2021年11月時点で崩落していて通行止めとなっていた。復旧するまでは横瀬駅側から登るしかないが,横瀬駅から登山口までがかなり遠く,1時間半はかかる。登山口の駐車場はそれなりに広いので,自家用車で行けるならそれに越したことはない。私が行った時は横瀬駅から歩いたが,これはこれで面白かったので一度なら歩いてもいいだろう。武甲山がピラミッド,人工物らしい形状になっているのは古くからの石灰の石切場となっているためで,横瀬駅から登山道までの道の両側はびっしりとセメント工場が立ち並んでいる。『ヤマノススメ』でもこの工場群が推されていて,「眺めながら登山道に向かうのも一興」と評されていた。大人の社会科見学だなーと思っていたら,登山口にあるカフェで地元の人に話しを聞いたところ,実際に工場見学はよく開かれているらしい。道に石灰が厚く積もっていて真っ白だったのにも笑ったが,石灰等を吸った処理水が火山や温泉でよく見る色に染まっていたのが一番笑った。



しかしまあ,歩かないに越したことはないので,浦山口駅からのルートが早々に復旧されないならバスを引くのを西武鉄道さんにお願いしたい。登山口にあるカフェのLOGMOGは良い店で,そこそこ長い登山道のため,ここで最後の腹ごしらえをしておきたい。看板ヤギがかわいい。さて,登山道はさして面白みがなく極普通で,道に迷うこともない。埼玉県にしてはよく整備されているのは,登る人が多いためか,県外でも知られているためか。他の山とのあまりの整備具合のギャップに少し驚いた(その気合を少し関八州見晴台なり棒ノ嶺なりに分けてほしい)。道中の眺望は奥多摩・秩父にありがちな杉林が続き,ほぼ死んでいる。同じ石灰の山でも伊吹山は森林が死んでいたのに,こちらはよく育つものだ。この違いは伊吹山と違い,武甲山は北側斜面のみが石灰岩質で,南側斜面は普通の玄武岩だからとのこと。登山道は南側から伸びている。北側斜面は見ればわかる通り,ダイナマイトで発破しまくっているので普通に危険だから登山道がない。コースタイムは自家用車使用の登山口から4時間,横瀬駅から全部歩いて7時間弱。浦山口駅からのルートも7時間ほどかかるようなので,労力はさほど変わらなそう。

山頂からの眺望は絶景の一言で,このために登る価値あり。山容一発ネタの山じゃなかった。眼下に採石場・麓のセメント工場群がよく見え,中景には秩父市街,奥の方に本庄市,前橋市が見える。



下山後の温泉は武甲温泉がある。総合してコンテンツ力がそこそこ高く,『あの花』聖地巡礼,秩父市観光等と合わせて一度は登る価値がある山だろう(なお当方『あの花』未視聴)。



武甲山 / 稲田義智さんの武甲山の活動データ | YAMAP / ヤマップ