2022年05月24日

2022年大相撲五月場所の感想

非常に感想が書きにくい場所である。大関陣が総崩れになりかけたのは,個人的にはこういう場所もたまにはあろう,休場者が出なかっただけマシではないかくらいの感覚である。照ノ富士が大関陣を擁護するコメントを場所後に出していたのがちょっと面白かった。どちらかというとそのせいで三役・前頭上位陣に好成績者が多くなりすぎて番付が渋滞したという弊害が起きている方が心配である。内容も面白い日としょっぱい日が入り混じっていて何ともコメントしがたい。最終的に照ノ富士が優勝したのは大関陣の不振との裏返しであって,皮肉な予定調和である。番付・本割というものはよくできている。割を崩せば平幕優勝になった可能性もあるが,秩序を優先するか優勝争いの面白さを優先するかの完全な二者択一になってしまって,やはり難しい。場所中に能町みね子氏が言っていたが,場所の中盤頃に早々に平幕の好成績者を上位陣や同士で当ててしまえば,大関陣がふがいなくても終盤に本割を崩すかどうかで悩まなくて済むという解決策はある。協会にはちょっと検討してほしい。


早々に個別評。照ノ富士は前述の通りで,体調は良くない場所であったが,前半は単純な実力差で5−3にまとめ,後半は相手の不調に乗じて7連勝で乗り切った。何度か以前にも書いているが照ノ富士の膝の状態のために,照ノ富士が単独横綱である限り優勝ラインは2敗か3敗まで下がってくる可能性が,他の単独横綱の時代よりも高い。その意味での名優勝争い製造機であるのだが,今場所のような展開はさすがに二度,三度は見なくていいかな……

大関陣。貴景勝は日毎の出来が違いすぎて別人のようであった。もとより押し切ってしまう押し相撲ではなく,細かく引いて間合いを測っていなしを入れて最終的に押し出す相撲であるのだが,押す力が弱すぎていなしが効かない相撲が何番かあり,もろくも負けている。馬力が戻ってこないことには,大関陥落は無いにせよ優勝もない。正代は,先場所のようになんだかんだで調子が戻ってきて勝ち越すのではないかと思っていたのだが,予想が外れてしまった。かける言葉がない。御嶽海は前半の二日目の豊昇龍戦で右肩を痛めて全てが狂ってしまった。ケガに弱いというかケガの痛みに弱い。いっそ途中休場でも良かったのかもしれない。

三役。若隆景の大関取りは来場所の焦点だろう。12ー9と来ているので12勝なら昇進,計32勝で許されるような甘い裁定は無いだろう。大関陣の不調が来場所も続くようなら可能性はあるが,カド番の二人がさすがに奮起するような気はする。相撲ぶりは特に変わっていないのだが,にもかかわらず6敗もしたのはやはり大関取りのプレッシャーか。来場所も己の精神との戦いになるのかも。豊昇龍は正代戦が明らかな誤審で本来なら9勝だろう。朝青龍には「ぎりぎりの勝負になるのが悪い」と言われていたようだが,悔しいものは悔しかろう。大栄翔は照ノ富士キラーの地位を確立した。こっそり11勝で,当然大関取りの起点になろう。阿炎は7勝の負け越しで,実力通りか。

前頭上位。逸ノ城は新型コロナウイルス感染で全休だが,出場していたらさらに混沌としていそうな場所だったから残念である。番付は据え置きになるだろうか。高安は不可解な負け越し。霧馬山は2場所連続で膝の調子が良く,普段以上に投げ技がよく決まっていた様子。相撲巧者にありがちだが,動きすぎて負けることがあるのが難点。琴ノ若は上位定着が固まってきた様子で,成長だけで言えばこの上半期で最も著しい成果が出ている。巨体を生かした相撲が型になってきた感じがする。この人が初日から三日連続で大関を撃破したことで,今場所の空気が決まった。玉鷲は本当に衰えない。驚異である。最後まで優勝争いに残っていた隆の勝は相撲ぶりが大きく変わったわけではないが,元関脇であるし11勝でもあまり驚くところではないだろう。よく押す圧力が出ていて,右四つなら四つ相撲でも相撲になるところは意外と御嶽海に近いように思う。

前頭中盤。阿武咲は肋骨が折れているそうで結構心配。翔猿は7勝の負け越しだが,印象は良い。動き回ってさばいて中に入るうざったい相撲を貫徹してほしい。押す力が強くなれば嘉風に近い取り口になるか。宇良も面白い相撲が多かった。途中休場でなければ技能賞が固かっただろう。しかし,無理にこらえてケガを誘発するのは本人のためにならないので本当にやめてほしい。見ていて怖い。若元春も9勝の割に印象がよく,二桁勝っていないことに驚いた。差し勝って左四つにさえなれれば上位でも通用する。あとは差し勝てるかどうか。琴恵光も6勝で負け越しているが,筋骨隆々の肉体が躍動する力強い相撲が多く,面白かった。しかし,小兵の相撲なのかまっとうな右四つの四つ相撲なのかがちょっと中途半端になっているかもしれない。

前頭下位。隠岐の海・碧山・佐田の海あたりが順当に勝ち越しているのは上りエレベーター。佐田の海はもう35歳だが速攻が光っていて衰えず,この人も衰え知らずの領域に入ってきた。敢闘賞は妥当だろう。王鵬は花田虎上氏に「突き押しをやろうとしているが,四つ相撲のほうがいいのでは」と指摘されていたが,そうだろうと思う。あるいは現在は修行期間と割り切って,わざと押し相撲をとっているのかもしれないが。一山本は序盤好調で勝ち越したが,終盤に5連敗があって8勝止まりであった。以前は左上手をうかがいながら押す相撲だったが,今場所は低い立ち合いから突き押す相撲が目立ち,この方がよくとれている気がする。課題は終盤のためのスタミナか。割りと息切れしている場所が多い印象。翠富士は肩透かしがよく決まっていて楽しかった。


今場所は前頭上位が渋滞した分,中盤・下位は予想が立てやすかった。特に中盤は誰が予想を立ててもこうなりそう。十両に下がるのは東龍・輝・石浦・荒篤山で4つ空く。幕尻は千代丸・英乃海・竜電の誰を推すかで意見が分かれそうだが,千代丸が幕内でみたいという希望も込みで幕尻に入れてみた。十両と幕下の入れ替えは大翔丸・松鳳山・千代嵐・貴健斗の4名が陥落,上がってくるのは欧勝馬・北青鵬・千代栄までは確定として,最後の枠は西の筆頭で4勝の西川か,4枚目で5勝の金峰山か。

2022年五月場所

この記事へのコメント
横綱が適度に負けて、大関陣が振るわず、平幕からも優勝争い。照ノ富士が引退するまではこういう展開が続くだろうなと思わせる場所でした。千秋楽は、隆の勝が敗れた時点で決まったも同然という脱力感が何とも言えません。隆の勝は出来すぎの成績でしたが、3日目までの危なっかしさと、4日目に玉鷲を技で下してからの勢いが、別人のようでした。

先場所に優勝争いをしていた若隆景と高安の強さはどこへ行ってしまったのか。阿炎も、準優勝を続けていましたが、腕か肩でも痛めてるのかもしれません。大栄翔と豊昇龍は安定しているので、大関昇進が待たれます。

十両では、松鳳山が大きく負け越して陥落。あるいは引退? 来場所からは朝乃山が戻り、実力を維持しているならば、すぐに幕内まで戻ってくるでしょう。三段目で優勝争いが起こると良いのですが。北青鵬と金峰山はあと一息で十両に上がれず。友風も来場所好調なら、もしかしたら。

次の名古屋場所からは、客席の入場制限も無くなり、巡業も再開されるそうで、いろいろと無事に済むことを願います。
Posted by EN at 2022年05月24日 19:31
更新おつかれさまです。

グダグダが予想された展開ながら、最後は横綱が優勝。まとまるところにまとまった場所だったのかなと。
大関不振の場所。3大関は総崩れ。それに救われたのは、照ノ富士と若隆景だったのかなと感じます。
照ノ富士は不調ながら、後半戦で不安だった阿炎戦で今場所屈指の相撲が取れたことで波に乗った感じがします。
大栄翔、隆の勝と決定戦なら危うかったような気もします。しかし、今後押し相撲系への対策はどうなるか、来場所以降も不安です。
若隆景は今場所は惜しい9勝6敗。来場所12勝すれば昇進は見えてくるのかなと思います。後半は照ノ富士以外には負けずに、千秋楽の阿炎戦も今場所屈指の名取組でした。
来場所決められなくても、十分今後の昇進への展望は開けてくるのかなと思っています。

地味に大栄翔が11勝しており、大関昇進へいけるのかと期待が持てます。
錣山親方が「あがると思います」と明言していましたが、好不調の差の激しさが課題ですが、今場所はかつてよく見た土俵際の逆転負けがなかったのはいい傾向なんじゃないかなと。

大関が総崩れした影響で、彼らが回収すべき白星は散らばりまくって、前頭上位が大渋滞。
さすがに霧馬山は小結にするんじゃないかなと思ってはいますが、はたして。
Posted by gallery at 2022年05月25日 13:37
>ENさん
>照ノ富士が引退するまではこういう展開が続くだろうな
そうなんですよね。照ノ富士が安定しているとは言いがたいので,こういう展開が続くだろうと思います。大関陣が復調してもうちょっと優勝争いに絡むかなとは思いますが。
隆の勝は出来すぎでしたね。数年前の徳勝龍のような。

若隆景は大関取りの緊張がありましたかね。ただ,体調自体は悪くなさそうでしたし,9勝は悪くないかなと。高安はどうしたんですかね。ケガですかね。

松鳳山の進退は気になります。話が面白いので引退しても活躍の場がありそうですが,気の済むところまで現役をやってほしいですね。
北青鵬は再十両になりそうですよ。金峰山は惜しかったですね。獅司や狼雅もそうですが,新たな外国出身力士が上がってくると面白くなりそうです。


>galleryさん
>それに救われたのは、照ノ富士と若隆景だったのかなと感じます。
そうなんですよね。照ノ富士は大関陣が好調だったら優勝できていたかあやしいですし,若隆景も負け越していたかもしれません。
>今後押し相撲系への対策はどうなるか、来場所以降も不安です。
照ノ富士自身が対策をあれこれ考えての現状でしょうから,解決しようがないのでしょうね。

大栄翔はあまり指摘されていませんが,やっぱりそうですよね。
錣山親方がそんなことを言っていましたか。ちょっと驚きました。
来場所見てみないことには何とも言えないですね……確かに以前よりは安定していると思いますが。

>さすがに霧馬山は小結にするんじゃないかなと思ってはいますが、はたして。
それくらいはしてほしいですね。本当に前頭上位はどう置くのでしょう?
Posted by DG-Law at 2022年05月27日 11:47