2022年06月07日

2022年4〜5月に行った美術館・博物館

空也上人像東博の空也上人像展。京都には数え切れないくらい行っているが,そういえば六波羅蜜寺に行く機会が無かったなと思って鑑賞。空也上人像といえば恍惚とした表情の口から出てくる6体のミニマムサイズの阿弥陀如来がシュールで,日本史の資料集で見ると思わず笑ってしまう印象しかないが,実物はけっこう厳かだった。実物だと空也の表情や衣服の衣紋が写実的で,それゆえに場面のシュールさが中和されているところがあったと思う……まあ,空也が真剣味あふれているからこそ,余計に阿弥陀如来のシュールさが際立ってしまって笑っちゃう人もいそうだけど。

空也は平安中期の僧侶であるが,空也上人像は鎌倉時代の制作で,運慶の四男の康勝の作である。六波羅蜜寺は慶派の菩提寺でかかわりが深いとのことで,これは知らなかった。本展覧会でも運慶作の地蔵菩薩坐像や,伝運慶坐像等が展示されていた。伝付きとはいえ運慶自身の彫像があるとは。あとは有名な伝平清盛坐像が見られたのも,教科書によく載っているやつを予期せず見られて良かった。教科書上は政治史でこの坐像が出てくるので六波羅蜜寺にあるという印象が無かったが,六波羅は平氏の邸宅があった所縁の土地だからだろう。

その後は常設展・東洋館にも寄った。東洋館では石碑の拓本が特集されていて,三国志関連の石碑が並んでいたので一人でテンションが上がっていた。写真撮影OKだったので何枚か写真を撮ってきていたのだが,その後にスマホが故障したため取り出せなくなってしまった。せめてツイートしておけば……あるいは早めにブログを書いていれば。さらにこの日は桜が散る間際の時期で,庭園が開放されていたので散歩してから帰宅。一方,上野公園はもう花見シーズンは終わりという感じで,人出は多いがシートを敷いて座っている人は少なかった。



セゾン現代美術館。今年のGWに浅間山登山の際に軽井沢に宿泊したので,ついでに軽井沢観光として訪問。これも写真をそこそこ撮影していたのだがスマホが壊れて失われてしまったので,同行者のブログが詳しいのでそちらにぶん投げたい。本当に館内の展示は現代美術が門外漢の集団でもわかりやすいものが多く,なかなか見応えがあった。もっとも館内は企画展のみの展示で,期間ごとに大半を入れ替えてしまうようなので行ったタイミングが良かっただけかもしれないが。対照的に庭園に展示している大型の彫刻やインスタレーション作品は理解不能なものが多く,キャプションも無いので不親切である。

併設のカフェは軽井沢価格でいいお値段がするが,納得できる程度には美味しい。名物は麻婆豆腐だが辛いものが苦手な私はパスしてビーフピラフを注文,こちらも牛の味がピラフによく染みていた。異常なまでに混んでいる星野リゾートが近隣にあるが,よほどこだわりがない限りはこちらでの昼食を勧める。なお,美術館の入り口が微妙にわかりづらく,Googlemapに頼っていくと入り口にたどり着かないので注意したい。

同行者のブログの通り,この後は富岡製糸場にも行っている。この前々日に荒船風穴にも行っているので一応世界遺産構成物4ヶ所のうち2ヶ所を訪問したことになるが,残り2ヶ所は別に行かなくていいかな……富岡製糸場は残念世界遺産と言われることもあるが,いやいや十分に広くて見ごたえがあった。たしかに広い割には同じような展示内容が多く説明が重複気味であるが,そこは鑑賞者の判断で飛ばして見ていけばよいのである。説明では暗部を隠さず赤裸々に歴史が語られている。最初期の官営時代は女工の待遇が良すぎて膨大な赤字,民営化後に急激に待遇を切り下げて黒字化したが,切り下げすぎて長続きせず。経営母体が点々とした後,日中戦争期に片倉製糸紡績(現片倉工業)が獲得,ここが再び女工の待遇を改善してやっと経営が安定した。この変遷もまた日本の産業史を象徴しているのかもしれないと,読みながら思った。

1987年にとうとう片倉工業が工場の操業を停止したが,意外と最近という印象。その後も世界遺産登録を目指して富岡市が寄贈を受けるまでの間も片倉工業がちゃんとメンテナンスをしていたというから偉い。そういうこともあって繰糸所には廃業当時の製糸の機械が置きっぱなしになっているのだが,同行者の一人が「これ,東南アジアならまだ現役で行ける機械やな」と言っていて,30〜40年のスパンならまあそうだよなと。