2022年10月22日

外交的「パイプ」にも種類はあるだろう

・番号間違い以外に「問題自体も不適切」名古屋大学の入試でミスあった設問 専門家が指摘した“2つの不備”(東海テレビ)
→ 弊ブログでも取り上げていた名古屋大の世界史の出題ミスについて,元慶應大経済学部教授の延近充氏がインタビューに答えていた。本ブログ上でも何度か取り上げているが,慶應大・経済学部は慶應大では例外的に良問が多く,受験世界史悪問集への収録が非常に少ない。氏はこの慶應大・経済学部の良問路線を主導した人物であり,それに関連する出版物もあり,地歴の出題ミスについての見識と権威という観点で最適な人選である。とはいえ,受験地歴の事情に造詣が深くなければその辺の事情を知らないであろうから,東海テレビはよく調べてくれた。
→ このページを見る限り番組も要点がよくまとまっているのではないかと思う。私としてもここに書かれていることに異論が無い。このインタビューについては延近充氏本人が自分のホームページで反応しているので,そちらもあわせて読みたい。確かにメインキャスターがそうコメントしていたのであれば,問題の本質が伝わっておらず,残念である。


・防衛省がミャンマー軍幹部らの教育訓練受け入れ 人権団体から批判(朝日新聞)
・ミャンマー軍の留学生受け入れ 批判受け、来年度から中止に 防衛省(朝日新聞)
→ 上は3月に流れてきて驚いたニュース。相手が軍事政権であれ悪辣な独裁政権であれ,将来的に民主化する期待を込めつつパイプを維持しておくこと自体は必ずしも批判されることではない。とりわけミャンマーの軍事政権とのつながりは,まさにそういうものであったと思われる。しかし,2021年の軍部クーデタを経た2022年にもなって,軍幹部の教育訓練を受け入れるのはパイプとして直接的に過ぎ,外形的に民主化・少数民族への弾圧に手を貸す行為にしか見えない。真相は不明だが,防衛省の「文民統制下の自衛隊を理解してもらい、本国で生かしてもらうため」という説明はいかにも白々しい。本当にそういう趣旨で教育訓練が行われたのか疑わない人は少ないだろう。
→ そうして9月になって来年度は継続しないことが決められた。当初の説明通りの趣旨であるなら継続すべきだったところ,あっさりと日和った。停止の理由を民主派市民の処刑に求めているが,これもまた今更感が強すぎて白々しい。


・日本の労働生産性はなぜ低いのか(メモ)(hidekatsu-izuno 日々の記録)
→ 扱いの難しい「労働生産性」という概念について,様々な指標を用いて考察し,あれこれの俗説を排除して,冷静に検討している面白い記事。日本社会全体の労働生産性向上のためには「高度な人材の育成(IT分野がより望ましい)と女性の社会進出の促進」という結論は妥当だろう。N=1ではあるが,私の働いている実感とも合う。