2024年04月23日

2023年の視聴アニメの感想

去年の。4ヶ月遅れながら,書かないと2023年が終わらないので書いておく。感想コメントをつけられるものはつけ,何も思い浮かばなかったものは作品タイトルだけ。全般的にネタバレは回避していない。フリーレンと薬屋は2024年扱いとすると,2023年は2022年に比べて原作付もオリジナルも不作だった。

<冬>
『もういっぽん!』
 2023年面白かったアニメ1位。というよりも,続き物を除くと,2023年で推せるアニメ(2022年の4位までと遜色がないアニメ)がこれしかない。女子柔道のスポ根。原作者が柔道物の漫画を描こうとするも,柔道物という時点で連載会議の俎上に上がりにくく苦心惨憺,いっそのこと女子柔道にするかと描いたらこれが当たったというような経緯がpixivに投稿されていた。それでも女の子が上手く描けないと悩んでいるようだが,原作の絵柄もアニメの絵柄も十分に可愛いと思う。
 スポ根アニメが好きな人は絶対好きなタイプのアニメではあるが,高校授業等の影響か柔道だから見ないという意見が私の周囲では散見され,アニメのクオリティの割に話題にならなかったように思われた。かく言う私も高校授業の柔道は辛かった記憶しかないので,割り切る気持ちが起きなかった人たちの気持ちもわかってしまう。また,しいて言えば1話,部活で失神はちょっと……と引いている人が多かった印象で,正直私もここで切った人の気持ちがわかる側の人間なので,原作通りとはいえ導入としてはもったいなかった。この世間の反応では,出版社も柔道漫画という時点で突っぱねるわなと納得してしまった。とは言うものの,柔道のそういうイメージを何とか現代調のスポーツ作品と調和させているのは,けっこうすごいバランス感覚で,実際に見てみると思わず感心すると思う。私が年度代表作にしているのは信用してほしい。




『ヴィンランド・サガ Season2』
 デンマーク奴隷編にしてトルフィン改悛編。原作で一番面白い章なだけあってよく出来ていた。Season1から3年半かかったが,Season3が作れるのかどうかだけが心配。

『虚構推理 Season2』
 漫画版は途中で推理パートについていけなくなって脱落したのだが,このSeason2は原作でも微妙だったうなぎ回とピノキオ回以外はよくアニメ化できていて割と面白かった。雪女編が最高。雪女がかわいいのは当然として(悠木碧はこういう妖艶な役もこなせるのだな),虚構推理の世界観で人妖の共存のあり方を示したという点でも深みがあったし,虚構推理の”虚構”部分がちゃんとあって,なおかつしっくり来るミステリになっていた。遺産相続編もけっこう楽しめた。1期が終わった時に2期を見ようかかなり迷ったが,3期をやるなら迷わず見ると思う。



『吸血鬼すぐ死ぬ2』
 毎週爆笑しながら見ていた。

『転生王女と天才令嬢の魔法革命』
 評価に困るアニメ。キャラは非常に良く,百合としては見る価値があったが,メインストーリーがちょっと寒い。かっこよくバトルや政治劇をやろうとして上滑りしている感じがややいたたまれなかった。邪気眼をネタではなくそのままお出しされているような……それをそのまま受け取れる層が対象で(私も自分が高校生だったら期にしてなかったと思う),お前はもう顧客じゃないと言われたら肯定するしかないので,あまり文句は言えない。ここまで書いて気付いたが『リコリコ』の読後感に近い。




<春>
『アイドルマスターU149』
 原作未読。小学生アイドルという題材で,背伸びしがちな子供と,大人になりきれない大人を描いたという点で成功していたと思う。11話が白眉で,ちゃんと橘さんに感情を爆発させてあげることができた良い回である。その代わり,作品全体として大人社会を露悪的かつやや無能寄りの集団に描きすぎている感じはあって,個人的には鼻についた。米内Pを困らせるなら,直接の上司ではなくてもっとどうしようもない物理的・経済的な理由でよかったと思うし,それに抗ったり妥協したりするラインを探るのが大人という姿勢の見せ方で良かったのではないかと。




『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
 2期の途中まではかなり面白く高評価をくだしていたが,締め方を失敗したのは否めない。シナリオが破綻しているということはないが,ないからこそ手ひどく批判することもできず,中途半端な評価しかできない。最後に巨大な建造物を出して壊して終わりというのは,ガンダムの伝統というには唐突感が強く受け入れがたい。フェンシングも唐突ならジェターク家の兄弟喧嘩も唐突で,終盤になって突然の雑の連続は残念であった。唐突感なく巨大建造物を出すにせよ,巨大建造物を出さない終わりを迎えるにせよ,3クール目が必要だったのだろう。これだけ商業的に成功するとは読めなかっただろうから仕方がないが,もったいない。
 とはいえ,女性主人公で同性婚という決着を主として,多種多様な毒親の登場,細かいところでは太っているが気立ての良さでモテるリリッケ等々,いろいろと現代的なフックがあり,このチャレンジはほぼ全面的に成功していたように思う。シェイクスピアの『テンペスト』を悲劇調にアレンジしたのは,随所に散りばめられたネーミングや小ネタも含めて楽しめた。親子の世代間対決というお題自体がシェイクスピア作品によくあるテーマ設定で,喜劇調なら和解,悲劇調なら全滅(に近い)エンドになるのがシェイクスピア作品だが,悲劇調に進めて和解で終わらせたのが『水星の魔女』であった。成功していたかどうかは別にすれば,このチャレンジ自体は評価したいところ。だからこそ小ネタを差し挟むのも無理がなく,またシェイクスピア作品から先の展開を予想して楽しんでいた人は私の周囲ではそれなりにいて,やっぱりこういうのは(本筋じゃないところでいいので)やってもらえると少し嬉しい。その他,細かいところはtoppoiさんが書いてくれているので,丸投げしておこう。

『鬼滅・刀鍛冶の里編』
『夜は猫といっしょSeason2』

『BIRDIE WING』:積み。1期を見終わったら見ます。
『女神のカフェテラス』:原作は嫌いじゃないので毎週『マガジン』で読んでいるが,アニメまでは追う気力が起きなかった。
『推しの子』:多分趣味に合わないと判断して回避。


<夏>
『好きな子がめがねを忘れた』
 1話を見た時の衝撃。酔うかと思ったが,意外と慣れて2話以降は問題なかった。原作がベタベタに男性向けのラブコメだが,アニメでがらっと絵柄を変えて,視点がやや三重さん寄りになった結果,一気に少女漫画っぽくなった。結果として物語の筋は全く変わってないのに雰囲気が違うという,やや特殊なアダプテーションであり,原作読者にも飽きさせない工夫で面白かった。ただ,雰囲気でチャレンジするならカメラでチャレンジする必要は無かったんじゃないかなというのと,あれで離れた視聴者は多かったのではないだろうかという心配が残った。



<他>
『オッドタクシー』
 傑作。2021年の春アニメ。評判が良いのに見そびれており,夏アニメが『好きメガ』以外見るものがなく余裕があったのでこの機会にと。評判通りで非常に面白かった。群像劇としての完成度が高く,登場人物たちの思惑と人間関係が重なり合っていく。こういう作品は伏線を張りすぎてどうやって回収するのかと不安になることも多いが,『オッドタクシー』は登場人物の数の割に複雑すぎず,無理なく回収される見込が立って安心感があった。夜の街の不穏さがよく描写されていて,ヤクザたちの行動や私怨で動く田中を原動力として不穏さに不穏さを重ねていき,緊張感が高まっていく中終盤の雰囲気が非常に良い。小戸川と一緒に視聴者も不安になってしまう。1話ではこんなに不穏さを楽しむアニメになるとは思っていなかったので,良い意味で裏切られた。これは皆に見てほしい。


<秋>
『アイドルマスター ミリオンライブ!』
 やっぱり39人もいると紹介だけで終わるよね感。私は前からこのブログで,総花的なデレマスと違い,ミリオンライブはプロデューサーにアイドル全員に対して愛着を持ってもらう構造なのに39人は多すぎると何度か書いているが,アニメでもその欠陥を感じてしまった。
 一応,紹介はそれなりで諦めて信号機トリオを主人公に立ててメインストーリーを流していこうという意識は見られたものの,それも中途半端に終わっていて,もうちょっとどちらかに振り切ってもよかったのではないかと思われた(どうでもいいけど他のアイマスブランドと異なって信号機トリオのユニット名が全く定着していないのは不思議かもしれない)。デレマスは約190人もいたため,全員紹介するのを最初から全く考えておらず,メインを14人選抜して1期を作り,2期では少しずつアイドルを足していって最終的に30〜40人くらいには登場機会を与えるという形をとっていて,苦肉の策ではあれ上手く機能していた。それに比べると1期しか作れないというハンデを背負いながらも39人全員何とか登場させようとした努力は買いたいが,それに足る工夫があったかは疑問である。せめて単調だった3・4話を圧縮して1話に収めて5話の手作りの武道館ライブ回を4話に持ってくる,謎のギャグ回7話を消す(単発ギャグとしては面白かったけども)等で,信号機トリオにフォーカスを当てた話をもう2・3話あればストーリーの厚みが違ったような気がする。しずしほを掘り下げてもいいし,信号機の先輩アイドルともっと会話させてもいい。その辺をやった9〜11話は面白かった。反面,機材トラブルで締めた12話は食傷気味の展開で,もうそれはいいでしょうという気分になった。アイドルアニメ,そろそろ機材トラブルと荒天以外でライブのトラブルを作ってほしい。
 とはいえ,世の中のミリマスPは割と喜んでみていた印象がある。最大の顧客にはちゃんとフィットしたものを提供できたアニメだった,ということだろうか。

 
『SPY×FAMILY Season 2』
 感想は1期と同じ。映画はちょっと見に行く気になれなかった。

『私の推しは悪役令嬢。』:『転天』と同じ感想になりそうだったので,途中で切った。
『薬屋のひとりごと』・『葬送のフリーレン』・『シャングリラ・フロンティア』:感想は2024年のまとめで。一言だけ書くなら3つともすばらしい出来で,原作から好きだが,想定を越えて面白く仕上げてもらったと思う。