2024年07月09日

登山記録30(北岳,宝永山)

No.78 北岳
〔標高〕3193m
〔標高差〕約1670m(広河原山荘から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕5B
〔私的な難易度と感想〕5B+
 天気がやや不安な中,やや突発的に山行の計画が立ち上がって決行となった。結果的に一泊二日の間は非常によく晴れ,全くの杞憂に終わった。広河原山荘を出発して2時間半ほどは樹林帯が続き,ここはあまり面白くない。白根御池小屋を過ぎると今度は草原の急登になる。この急登には「草すべり」という名前がついているが,実際に登山道を踏み外すと草原の草で滑っていきそうであった。この急登が本当につらく,北岳が健脚者でなければ登れない要因になっているように思われた。整備されていて歩きやすいのが救いである。この草すべりが2時間ほど続いてやっと稜線に出るが,この稜線に出た瞬間,眼の前に飛び込んでくる仙丈ヶ岳の偉容を見て,苦労が全て報われた気がした。仙丈ヶ岳はこの後,肩の小屋までずっと付き添ってくれる眺望の強い味方になった。
 楽しい稜線歩きが続いて30分ほど,北岳肩の小屋に到着。私はここで宿泊した。北岳肩の小屋は部屋もトイレも非常に綺麗で,ご飯も美味しい。さすがにシャワーや風呂が無かったが,濡れタオルで身体を拭くための個室があり,標高を考えるといたせりつくせりである。翌朝,北岳肩の小屋から周囲の山々を見渡した。今までの登山で最も美しかった光景を挙げるなら,この北岳肩の小屋からのモルゲンロートと富士山を挙げる。

 眺望からパワーを得て意気揚々と山頂へ。ここまでの道のりと違い,山頂付近へは岩場が続く。山頂からの眺望は絶景で,引き続き雲海に浮かぶ富士山は美しく,その他に近傍の仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳,八ヶ岳もよく見えた。北岳からさらに南に続く南アルプスの稜線も良く,南アルプスの美しさとはこれであると言われたら,納得するほかない。そこからさらに間ノ岳に向かうかどうかはかなり悩んだものの,自らの体力と相談して断念し,一路下山した。非常につらかったが,間違いなく登ってよかったと言える山であった。
 『日本百名山』では,「日本で一番高い山は富士山であることは誰でも知っているが,第二の高峰はと訊くと,知らない人が多い」という書き出しで始まる。深田もこのネタが現在まで擦られ続け,むしろ北岳が有名になってしまったとは思うまい。なお,『日本百名山』では北岳が3192mとなっているが,現在では3193mである。北岳は現在でも隆起が続いていて,年間約4mmずつ標高が高くなっている。100年で40cmとするとなかなかのペースであり,西暦4000年頃には3200mの大台に乗っているかもしれない。
 深田は北岳も白峰三山として意外と歴史があることに触れた上で,にもかかわらず「あまり人に知られていないのは,一つにはこの山が謙虚だからである」と擬人化して説明している。確かに「奇矯な形態で,その存在を誇ろうとするところもない」。高潔な気品があるとして,「富士山の大通俗に対して,こちらは哲人的である」と褒めちぎっている。深田は本音では富士山よりも北岳の方が好きなのだろう。
 それだけに,夜叉神峠から広河原までの車道が完成し,難易度が大きく下がって簡単に登れるようになったことについて,「喜ぶべきか,悲しむべきか,私は後者である」と率直に述べている。その広河原から登った身として言えば,いや広河原からでも十分に険しかったし,北岳まで来てしまうような人はもう深田の言うところの大衆とは言えまい。富士山や天城山などに比べれば,まだまだ全然神秘性が剥ぎ取られていないのが北岳だと思うのだが,どうだろうか。



北岳 / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ




No.79 宝永山
〔標高〕2693m
〔標高差〕約310m(富士山富士宮五合目から)
〔百名山認定〕ー(富士山としては百名山)
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕ー
〔私的な難易度と感想〕1A+
 富士山の静岡県側中腹にぽこっと膨らんでいるコブのような山。富士山の富士宮五合目が最寄りの登山口である。御殿場ルートからでも行けるが,御殿場五合目からはかなり遠い。標高差は300m強しかないが,砂利の急登が厳しく,短い割にはふくらはぎの筋肉が疲弊した。眺望は山頂こそ霧が出てほとんど無かったが,富士宮五合目の時点で十分に見応えがあり,広々とした駿河湾が見えた。下山は砂利を駆け下りていく感じで,確かにこれがずっと続く砂走りは楽しいだろうなと思った。




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