2024年07月12日

登山記録33(雲仙岳,六甲山)

No.87 雲仙岳(普賢岳)
〔標高〕1359m ※ 平成新山は1483m
〔標高差〕約70m(一番低いところからは約160m)
〔百名山認定〕二百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕ー
〔私的な難易度と感想〕2A+
 突発的に卓袱料理が食べたくなって長崎旅行の計画が立ち上がり,ついでに雲仙普賢岳に登ろうということになった。旅行全体としては登山以外の観光の方が多かったので,近日中に別に旅行記を書く予定である。ここでは雲仙岳に絞って感想と記録を書いておきたい。
 雲仙岳は,読者諸氏には記憶にある方もおられると思うが,1991年6月に大噴火を起こして43名の犠牲者を出した。その際に誕生した溶岩ドームを平成新山と呼ぶ。平成新山は1990年11月に噴火を始めてから,前述の大噴火を挟んで1995年まで成長を続け,1年に約30mずつ隆起していったため,それまで最高峰であった普賢岳を越えて雲仙岳の最高峰となった。しかし,噴火が収まってもまだ火山ガス噴出等の危険があるため,その山頂付近は立入禁止である。このため,一般人が登れる長崎県最高峰はまだ普賢岳のままである。とはいえ,普賢岳は十分に平成新山に近く,山頂はかなり接近する。
 雲仙岳登山はロープウェーを活用して標高1284mまで上がれるが,実はその後一度コルがあって1200m付近まで下がるので,あまり意味がない。ロープウェーはどちらかというと普賢岳登山を目的としない観光客のためのものだろう。とはいえロープウェーからの眺めは良かったので,一度は乗ってもいいかもしれない。登山道は極めてよく整備されていて歩きやすい。したがって難易度はA+とした。それに加えて,雲仙岳には全力で火山のジオパークとしての魅力を説明すべく,看板が豊富に立てられていた。実際に登山道に特に珍しくもなくパン皮状火山弾が転がっており,柱状節理もあり,戦前には養蚕に使われた風穴が二箇所あり,奇岩や海まで眺められる眺望の良いスポットもありと登山者を全く飽きさせない。また,火山らしく普賢岳自身も平成新山も風格があり,これらを眺めながら登るのは良い気分になった。
 深田の重視する山の風格,歴史性,個性いずれもそろっていて,これだけ魅力あふれる山なのに百名山に入れてもらえなかったのはなぜか。深田が登ってないともあまり思えない。深田の百名山は西日本を軽視していると言われるが,雲仙岳を外していてはそう言われても仕方がないと思えた。しかし,外された理由は二つほど思いつく。一つは単純に標高で,深田は1500m以下のものは特例でしか百名山に入れないと宣言している。雲仙岳の最高峰は,深田が生きていた時代では普賢岳であるから,1359mに過ぎない。その1500mとは誤差といえる標高を持つのは平成新山なのだ。もう一つは,雲仙岳の標高のみならず,風格と歴史性(この山の場合は悲劇性と言っていい)を増したのは紛れもなく平成新山の存在である。私は当然にして平成新山の無い時代の雲仙岳を知らないので,無い時代には百名山に入れるだけの魅力が少し不足していたと言われたら,反論する術がない。一応,『岳人』選定の百名山には雲仙岳が入っており,深田選定との不一致が生じた22座の一つである。



普賢岳(雲仙岳) / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ



No.86 六甲山
〔標高〕931m
〔標高差〕約900m(阪急芦屋川駅から)
〔百名山認定〕三百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕ー
〔私的な難易度と感想〕2B-
 六甲タイムトライアルのために登山した。六甲タイムトライアルとは,阪急芦屋川駅→高座の滝→風吹岩→雨ヶ峠→七曲り→一軒茶屋→山頂のコースを,無理のない一定の速度で歩く。結果に沿って体力を判定。
2時間未満:ヒマラヤ遠征可
〜2時間半:冬の日本アルプス挑戦可
〜3時間 :夏の日本アルプス挑戦可
〜3時間半:低山で我慢しよう
3時間半〜:まずは体力を鍛えよう
という基準とのことだが,3時間を割るかどうかで随分判定に壁がある印象。なお,YAMAPのコースタイムは3時間47分で,明らかに緩すぎる。山と渓谷のコースタイムは2時間55分だが,こちらではコースタイム通りで夏の日本アルプス挑戦可になってしまうので厳しい。ともあれ,自分の目標は3時間切りとして挑戦し,2時間52分の結果となった。以下は分析。
・初めて来た山だったの観光に時間を浪費し,休憩以外で10〜15分で止まっていた。特に風吹岩猫の写真を撮影していたのが完全に無駄だった。猫は仕方ない。
・一泊二日で着替え等がザックに入っていたため,レギュレーションよりもハンデがあった。厳密を期すなら大阪の友人宅にデポするという手があったが使わなかった。
・かなり体力が余ってゴールしたので,まだ速度を上げられた。平地や下りも割りとゆっくり歩いていた。
この辺りを改善すれば2時間半を切れそうだが,多分二度とやらないだろう。誰か奥高尾縦走路でも使って関東版を作ってほしい。
 六甲山は2B-くらいの難易度だと感じた。似たような親しみと立地の高尾山と比べると明らかにきつく,タイムトライアルに使われるだけのことはある。序盤のロックガーデンは意外と岩場があって楽しいが,中盤以降はごく普通の樹林帯が多い,土の坂道の山である。眺望は序盤は良く,大阪湾を一望できる展望台が多かったので期待を持たせたが,長い中盤は樹林帯に沈んでやや期待外れだった。山頂は再び眺望が良くなり,大阪湾が再び見えるほか,有馬温泉側も見渡せる。前述した風吹岩に住んでいる地域猫がかわいかった。他の人の写真でも見かけたし,実は有名な地域猫なのでは。下山路はタイムトライアルと関係ないため,折り返さず有馬温泉側に下りた。総じて三百名山は妥当で,広い山域と史跡やレジャー施設の量も考慮するなら二百名山にしても良さそうかなと思った。
 ところで,六甲山の観光案内を見るとピークハントはほとんど推奨されておらず,広い山域の中の史跡やレジャー施設を縫うようにハイキングするなり,登りはロープウェーやケーブルカーでショートカットするのが普通の楽しみ方のようだ。登ってみた感想としても同意で,タイムトライアルの道で言えば風吹岩で引き返すのが一番楽しいように思われる。
 


六甲タイムトライアル / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ