2024年12月09日
登山記録36(焼岳,那須岳)
No.91 焼岳
〔標高〕2444m
〔標高差〕約850m(新中の湯から)/約300m(ロープウェー西穂高口駅から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕2B(新中の湯から)/3C(西穂高口駅から)
〔私的な難易度と感想〕2B/3C
北アルプスの最南端。道を挟んで反対側が乗鞍岳になる。主な登山道は南側斜面の新中の湯から登る直登ルートが最も利用者が多い。次に東側の上高地から登るルート,これは途中にはしごが数本あって険しい。よりマイナーなのが西側斜面から登るルートと,北側の新穂高ロープウェー山頂駅から登るルートである。我々は新穂高ロープウェーに乗って西穂山荘の様子を見に行くという目的もあったので,北側から登って新中の湯に向かって下山した。
この北側からのルートはロープウェーで標高が稼げるから楽かというと,全くそうではない。新穂高ロープウェイ山頂駅から西穂山荘までの道は木材が敷いてあり整備が行き届いていた。しかし,西穂山荘から少し焼岳に向かうと途端に道が悪くなり,笹が繁茂しだして藪漕ぎになる。加えて道の谷側が切れ落ちていて,足下が笹で見えないのは非常に危ない。もっとも,転倒したところでその笹に助けられて滑落はしないのだが。稜線歩きとは言い難いが完全な樹林歩きでもない,なんとも言えない道を小刻みなアップダウンを繰り返しながら歩いていく。たまに樹林が切れて上高地や霞沢岳が見えるのが救いだが,総合的に言ってこの道はあまりお勧めしない。
焼岳山荘と中尾峠を過ぎてからは焼岳への本格登山が始まる。焼岳の真の姿は中尾峠をわずかに過ぎた小ピークから見る姿であって,中の湯温泉から登るとこの風景が見えないのはもったいない。道は少しザレているが,四つ足になるような急登ではない。むしろいたるところから火山ガスが噴出していて,常に温泉街のような硫黄臭がするので,人によっては気分が悪くなってしまうかもしれない。岩を触ると地熱で温かくて驚く。完全に生きている火山である。噴火のリスクがあるのでヘルメットは持っていった方がいいだろう。それにしても,この山を登るのは許されていて草津白根山の登山が禁止されているのは不思議でしかない。
帰りに使った新中の湯温泉ルートは道が平凡で,眺望も優れているわけではなく,魅力に乏しいように思われた。紅葉が綺麗とのことなので秋にはいいかもしれない。とはいえ新穂高ロープウェイから行くのも前述の理由からお勧めしづらく,はしごを苦にしないのなら上高地から登るのが正解だったりするのではないだろうか。また,中の湯温泉登山口から中の湯バス停はかなり離れていて,1時間以上の車道歩きを要求されるので注意が必要。タクシーを呼んだ方がいいが,繁忙期はタクシーも来ない。
焼岳を登るのではなく眺めるのであれば上高地に行くべきで,自らが噴火で作り出した大正池からは非常に綺麗に見える。
深田久弥は『日本百名山』で焼岳を北アルプス唯一の活火山としていたが,これは当時と今で活火山の定義が違うためだろう。現在の定義では弥陀ヶ原を数えるので唯一ではない(ついでに言うとアカンダナ山も活火山だが北アルプスに含めるかが微妙か)。彼の紀行文を読んでも火山ガスは噴出していて,100年近く変わらない姿のままのようだ。
No.92 那須岳(茶臼岳・朝日岳・三本槍岳)
〔標高〕1915m(茶臼岳),1896m(朝日岳),1917m(三本槍岳)
〔標高差〕約230m(ロープウェー山頂駅から茶臼岳まで)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕21巻
〔県のグレーディング〕3B(三本槍岳)
〔私的な難易度と感想〕1A(茶臼岳まで),2B+(朝日岳まで),3A+(三本槍岳まで)
山域が非常に広い那須岳は主峰が五座あり,そのうち三座を周った。それぞれ個性が全く異なって面白い。ロープウェーで上がってまず向かうのが茶臼岳。混雑していたが渋滞が発生するほどではなく,道も広かったため,そこで苦戦することはなかった。茶臼岳は溶岩ドーム型で丸っこく,道はややザレているが岩は小さめで奇岩が転がっているというわけでもない。総合的には歩きやすい。登山客ではない観光客ならここだけ登っても十分に満足感があるだろう。続いて朝日岳に行くと途端に風景が変わり,赤色や黄色の巨岩・奇岩がひしめく。眺望も良く,三座の中では最も面白かった。
そこから三本槍岳に向かって北上するとまたしても風貌ががらりと変わり,湿地帯を挟んで植物が生い茂り,紅葉が美しい山々となる。最初に見える1900m峰は実質的に名もなきピークであるが,なかなか立派な風格で,名前がついていないのはもったいない。1900mちょうどということで切りがよく,かえって誰も名付けていないのであろうか。最後に到達するのが三本槍岳である。名前に反して全く尖っていない,平らな山頂を持つ山で,那須岳の北端だけあって眺望が全く違う。郡山市,安達太良山,猪苗代湖が一望でき,なるほど栃木県と福島県の県境である。朝日岳と同じ稜線上にあるとは思えない。三本槍岳の命名の由来は江戸時代初期に周辺の三藩がここに集まって槍を立て,境界を定めたという故事に由来するとのことで,エピソードが格好いい。難易度は易しく,栃木県のグレーディングでは3Bになっているが,これは朝日岳を含んでいるからだと思われる。朝日岳を迂回するならA+程度の難易度しかない。逆に朝日岳はけっこう危ない。Bでも難しい方ではないか。
今回はその後に朝日岳の脇から下山したが,逆に朝日岳から奥に進むと三斗小屋温泉がある。名湯らしいので,次に行くときはこちらに泊まってみたい。また茶臼岳も裏側の方は噴煙が上がっているとのことなので,それも見に行きたい。
深田久弥は『日本百名山』で,那須岳は歴史や伝説について紙幅を費やしており,那須国造碑,那須与一,殺生石と一通り言及している。殺生石は2022年3月に割れてしまったことで話題になった。登山紀行としてはやはり茶臼・朝日・三本槍で風情が全く違うことに感動している。もちろん温泉街にも言及しているが,現在の那須高原は深田が嫌いそうな完全なオーバーツーリズムであり,行く人は気をつけた方がいい。
『ヤマノススメ』では倉上家の3人で登っており,両親は茶臼岳で帰って,ひなただけが朝日岳まで縦走していた。そのように体力に応じて登る山を分けられるという点でも那須岳は良い山である。
〔標高〕2444m
〔標高差〕約850m(新中の湯から)/約300m(ロープウェー西穂高口駅から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕2B(新中の湯から)/3C(西穂高口駅から)
〔私的な難易度と感想〕2B/3C
北アルプスの最南端。道を挟んで反対側が乗鞍岳になる。主な登山道は南側斜面の新中の湯から登る直登ルートが最も利用者が多い。次に東側の上高地から登るルート,これは途中にはしごが数本あって険しい。よりマイナーなのが西側斜面から登るルートと,北側の新穂高ロープウェー山頂駅から登るルートである。我々は新穂高ロープウェーに乗って西穂山荘の様子を見に行くという目的もあったので,北側から登って新中の湯に向かって下山した。
この北側からのルートはロープウェーで標高が稼げるから楽かというと,全くそうではない。新穂高ロープウェイ山頂駅から西穂山荘までの道は木材が敷いてあり整備が行き届いていた。しかし,西穂山荘から少し焼岳に向かうと途端に道が悪くなり,笹が繁茂しだして藪漕ぎになる。加えて道の谷側が切れ落ちていて,足下が笹で見えないのは非常に危ない。もっとも,転倒したところでその笹に助けられて滑落はしないのだが。稜線歩きとは言い難いが完全な樹林歩きでもない,なんとも言えない道を小刻みなアップダウンを繰り返しながら歩いていく。たまに樹林が切れて上高地や霞沢岳が見えるのが救いだが,総合的に言ってこの道はあまりお勧めしない。
焼岳山荘と中尾峠を過ぎてからは焼岳への本格登山が始まる。焼岳の真の姿は中尾峠をわずかに過ぎた小ピークから見る姿であって,中の湯温泉から登るとこの風景が見えないのはもったいない。道は少しザレているが,四つ足になるような急登ではない。むしろいたるところから火山ガスが噴出していて,常に温泉街のような硫黄臭がするので,人によっては気分が悪くなってしまうかもしれない。岩を触ると地熱で温かくて驚く。完全に生きている火山である。噴火のリスクがあるのでヘルメットは持っていった方がいいだろう。それにしても,この山を登るのは許されていて草津白根山の登山が禁止されているのは不思議でしかない。
帰りに使った新中の湯温泉ルートは道が平凡で,眺望も優れているわけではなく,魅力に乏しいように思われた。紅葉が綺麗とのことなので秋にはいいかもしれない。とはいえ新穂高ロープウェイから行くのも前述の理由からお勧めしづらく,はしごを苦にしないのなら上高地から登るのが正解だったりするのではないだろうか。また,中の湯温泉登山口から中の湯バス停はかなり離れていて,1時間以上の車道歩きを要求されるので注意が必要。タクシーを呼んだ方がいいが,繁忙期はタクシーも来ない。
焼岳を登るのではなく眺めるのであれば上高地に行くべきで,自らが噴火で作り出した大正池からは非常に綺麗に見える。
深田久弥は『日本百名山』で焼岳を北アルプス唯一の活火山としていたが,これは当時と今で活火山の定義が違うためだろう。現在の定義では弥陀ヶ原を数えるので唯一ではない(ついでに言うとアカンダナ山も活火山だが北アルプスに含めるかが微妙か)。彼の紀行文を読んでも火山ガスは噴出していて,100年近く変わらない姿のままのようだ。
新穂高ロープウェイから焼岳(北峰)へ / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
No.92 那須岳(茶臼岳・朝日岳・三本槍岳)
〔標高〕1915m(茶臼岳),1896m(朝日岳),1917m(三本槍岳)
〔標高差〕約230m(ロープウェー山頂駅から茶臼岳まで)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕21巻
〔県のグレーディング〕3B(三本槍岳)
〔私的な難易度と感想〕1A(茶臼岳まで),2B+(朝日岳まで),3A+(三本槍岳まで)
山域が非常に広い那須岳は主峰が五座あり,そのうち三座を周った。それぞれ個性が全く異なって面白い。ロープウェーで上がってまず向かうのが茶臼岳。混雑していたが渋滞が発生するほどではなく,道も広かったため,そこで苦戦することはなかった。茶臼岳は溶岩ドーム型で丸っこく,道はややザレているが岩は小さめで奇岩が転がっているというわけでもない。総合的には歩きやすい。登山客ではない観光客ならここだけ登っても十分に満足感があるだろう。続いて朝日岳に行くと途端に風景が変わり,赤色や黄色の巨岩・奇岩がひしめく。眺望も良く,三座の中では最も面白かった。
そこから三本槍岳に向かって北上するとまたしても風貌ががらりと変わり,湿地帯を挟んで植物が生い茂り,紅葉が美しい山々となる。最初に見える1900m峰は実質的に名もなきピークであるが,なかなか立派な風格で,名前がついていないのはもったいない。1900mちょうどということで切りがよく,かえって誰も名付けていないのであろうか。最後に到達するのが三本槍岳である。名前に反して全く尖っていない,平らな山頂を持つ山で,那須岳の北端だけあって眺望が全く違う。郡山市,安達太良山,猪苗代湖が一望でき,なるほど栃木県と福島県の県境である。朝日岳と同じ稜線上にあるとは思えない。三本槍岳の命名の由来は江戸時代初期に周辺の三藩がここに集まって槍を立て,境界を定めたという故事に由来するとのことで,エピソードが格好いい。難易度は易しく,栃木県のグレーディングでは3Bになっているが,これは朝日岳を含んでいるからだと思われる。朝日岳を迂回するならA+程度の難易度しかない。逆に朝日岳はけっこう危ない。Bでも難しい方ではないか。
今回はその後に朝日岳の脇から下山したが,逆に朝日岳から奥に進むと三斗小屋温泉がある。名湯らしいので,次に行くときはこちらに泊まってみたい。また茶臼岳も裏側の方は噴煙が上がっているとのことなので,それも見に行きたい。
深田久弥は『日本百名山』で,那須岳は歴史や伝説について紙幅を費やしており,那須国造碑,那須与一,殺生石と一通り言及している。殺生石は2022年3月に割れてしまったことで話題になった。登山紀行としてはやはり茶臼・朝日・三本槍で風情が全く違うことに感動している。もちろん温泉街にも言及しているが,現在の那須高原は深田が嫌いそうな完全なオーバーツーリズムであり,行く人は気をつけた方がいい。
『ヤマノススメ』では倉上家の3人で登っており,両親は茶臼岳で帰って,ひなただけが朝日岳まで縦走していた。そのように体力に応じて登る山を分けられるという点でも那須岳は良い山である。
茶臼岳(那須岳)・朝日岳・1900m峰・三本槍岳 / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
Posted by dg_law at 01:53│Comments(0)