2025年12月16日

2025年11月茨城・いわき旅行記

 11月21-24日に茨城といわきを旅行してきたのでその記録。とはいえ,ほぼ全てTwitterに書いているので,概ね転記であり,一部追記した。
 初日は水戸,梅を見るにはあまりにも季節外れだった偕楽園に行ってから,次に弘道館。幕末の水戸藩主徳川斉昭が創設した藩校で,一部の建物が現存している。重要文化財に指定され,現在は弘道館を紹介する博物館となっている。斉昭の息子,最後の将軍徳川慶喜もここで学んだ。建物自体は質実剛健ながら野暮ったさがなく,すっきりしていてセンスが良い。偕楽園と並び,江戸時代が育んだ武家の美を感じるものである。一方,創設者を賛美するのはこの種の博物館の常であるとはいえ,入口に巨大な「尊攘」の書の展示があって先制攻撃を食らう。その後もまあ大体そういう展示である。水戸学はまだ水戸で生きていると言えば言葉は綺麗かもしれない。ついでに,この偕楽園と弘道館の間で昼食をとったのがジャマイカ料理のレストラン「アイリーアーヤ IRIE IYA」で,独特の風味がするスパイスのよく効いた(それでいて辛すぎない)ジャークポークが非常に美味しかった。水戸に行くなら再訪したい店。


 初日の夜は袋田の滝のライトアップを見に行き,そのまま袋田温泉に宿泊。袋田の滝に行ったのは二回目だが,豪雨の直後に行った初回と比べると今回の水量は四分の一以下(極端に言えば十分の一)で,全く迫力が無かった。しかし,紅葉が綺麗だったのでそれで満足としたい。翌日の午前中は袋田の滝の横にある月居山に登山。その記録は別記事に書いたので省略する。
 二日目の午後はいわきに移動して高校日本史で習う白水阿弥陀堂。数少ない院政期の建築物・浄土式庭園で,国宝指定されている。ここもが紅葉していて美しく,良い季節に参拝することができた。残念ながら堂内部は撮影禁止なので,読者諸氏も自力で参拝してほしい。なお,旅程の都合上で私は昼間に訪問したが,夜はアミダナイトという楽しげなイベントが開催され,堂内はプロジェクションマッピングで当時の装飾になるらしく,見てみたかった。事前に知っていたら強引に旅程を変更して夜に訪問していたので惜しい。ところで,白水阿弥陀堂の本体を願成寺といい,こちらは訪問する人は極めて少ないようで,行ってはみたが本堂は閉まっていて中からは読経が聞こえてきた。こちらは地元密着の寺院になっているようである。それはそれとして,扁額が板垣征四郎であったので驚いた。

 二日目の夜は五浦海岸に移動して宿泊。宿泊地は旧横山大観邸が含まれる五浦観光ホテル大観荘。久しぶりに食べたあんこう鍋が美味であった。旧横山大観邸は宿泊者がいないかチェックアウト後であれば見学できるのだが,今回はどちらの条件も合わず見学できず,少し残念。三日目は五浦海岸の観光から始めた。五浦海岸は岡倉天心と日本美術院の愉快な仲間たちが隠遁していた地である。このうち六角堂は岡倉天心が瞑想に使った建物で,岬の先端にあったため東日本大震災で跡形もなく流され,翌年に再建された。むしろよく東日本大震災まで残ってたなというべき立地であるが,あそこに瞑想する建物を建てたくなった岡倉天心の気持ちもわかる。荒々しい雰囲気のリアス海岸が生んだ見事な景勝地である。
 なお,岡倉天心は一応,東京美術学校から排斥されて日本美術院を創設し,画家たちの修行の場として五浦に移ったはずなのだが,瞑想のためだけに六角堂を建てた辺りからも察せられる通り,けっこう余裕があった。暇があれば五浦海岸に船を出して釣りをし,自宅に露天風呂を併設して……という生活ぶりなのだから,田舎暮らしをエンジョイしていたとしか言いようがなく,行ってみると都落ちという雰囲気はほとんどなく,印象が変わった。やはり現地を訪れてみるものである。なお,岡倉天心の別荘跡にも八紘一宇の石碑が立っており(昭和17年建立なので言い訳の余地がない),水戸といい,いわきといい,この辺一帯の思想はどうなってるんだと思ってしまった。大丈夫? 時が戦前で止まってない?



 三日目の午後は再びいわきに移動してアクアマリンふくしま。同行者の一人が水族館好きだったので旅程に組み込んだのだが,十数年ぶりに行った水族館はけっこう面白かった。水族館に行って「美味しそうだね」と話すのは定番のジョークであるが,アクアマリンふくしまは本当に水槽の前に寿司屋があって泳いでいる魚の寿司が食べられる。本当に食えるようにするやつがいるか。終始,この種のユーモアが効いている水族館だったのが非常に楽しかった大きな要因であった。一番の見せ場はV字の巨大水槽で,福島県沖が潮目であることから,片面が親潮,もう片面が黒潮を再現したものになっている。黒潮側は高い水温・貧栄養であるため,魚は多くて動き回っている。かたや親潮側は低い水温・栄養豊富であるため,魚は少なく皆静止している。その違いがくっきりとわかる二面の水槽になっていて,なるほど,これらの魚種が混じり合い,特に黒潮に乗ってきた魚群が栄養豊富な親潮の恩恵を受けるなら巨大な漁場になるのも理解できる。視覚的な理解が博物館の役目であるとすると,この展示はそれを最大限達成していた。



 三日目の夜は那須高原に移動してテンゲルに宿泊。11/23,つまりちょうど日曜日だったので「ゲルの中で大相撲を観戦してモンゴル人力士を応援する」という実績を解除した。残念ながら豊昇龍が敗れて優勝を逃してしまったのだが。夜は馬頭琴の演奏会があり,馬のいななきの再現やホーミーが面白かった。馬頭琴の表現力の高さよ。それにしても森林の中にゲルが建っているのは違和感がある光景ではある。 もっとも,日本であのような草原は無いので,森林の中に建てるのもやむなしか。


 四日目はまず殺生石だけ見て,その後は那須岳のロープウェーに乗って茶臼岳に登るか宇都宮に移動するかという選択肢があったが,登山慣れしていないメンバーがやや疲れていたのと,茶臼岳がすでに積雪していたようだったので,宇都宮に移動することにした。宇都宮では大谷資料館と大谷寺を訪問したのだが,これは別途で報告記事を書きたい。最後に遅めの昼飯に宇都宮餃子を食べて東京に戻るかという話になって宇都宮市街に戻ったものの,どこの店舗の大行列であった。仕方なく,「さわやかは浜松中心部より少し離れた店の方が列が少ない」理論の応用で宇都宮市街から少し離れてみると,空いているみんみんを発見。やっとのことで食べてみた感想は,正直普通の餃子との違いがわからなかった。こういう名産品は概ね現地で食べると「やっぱり東京で食うものとは違うな」という感想になることが多いので,これは少し意外な結果である。近々宇都宮は再訪する用事があるので,今度は香蘭に挑戦して違いを再確認してみたいところ。

 この後は一路東京に戻って解散となった。たまには低山登山しか含まない旅行も疲れなくてよい。また企画したい。

この記事へのコメント
地元茨城です。
来てくれてありがとう!

* これは釈迦に説法だと思うのですが、原始的なナショナリズムとしての水戸学(および国学)、尊王攘夷思想があったからこそ、国民国家樹立事業としての幕末・王政復古・維新があったと考えるべきで、維新を是とするならば水戸学・尊王攘夷思想は積極的に評価せざるを得ないと思うのですが、どうなんでしょうか

(もちろん斉昭や大半の尊王攘夷家は、開国・技術導入・貿易促進・廃藩置県・身分制廃止といった、維新後に重要になる価値観はほとんど持ち合わせていなかったので、怪我の功名的な部分もあるにしても)

* ちなみに11/24、俺はのんほいパークにいってた。
Posted by acsusk at 2025年12月16日 12:50
あら,のんほいパーク。こちらこそありがとうございます。
記事中の通りですが,水戸も袋田の滝も五浦海岸も良いところでした。筑波山と大洗も何度も行っていますが,あそこも良い観光地ですね。(こうして振り返ると私はけっこう茨城に旅行してますね)
偕楽園は梅の時期にもう一度ちゃんと行こうと思いました。混んでるとは思いますが……

>原始的なナショナリズムとしての水戸学(および国学)〜〜
それはおっしゃる通りです。総まとめとして言えば,水戸学もまた明治維新への道を作った重要な思想と言えましょう。
一方で,明治時代に破壊された日本の伝統文化があまりにも多く,もう少し穏当な思想で文化政策をとれなかったものかなと。特に地方独自の神道文化をアマテラス系の神々に置き換えていった影響は意外と凄まじく,旅行先で見かけるたびに残念な気分になります。この辺が,水戸学にではなく明治政府に,私が思うところがある理由ですね。
Posted by DG-Law at 2025年12月16日 18:02
新年おめでとうございます
受験世界史悪問・難問・奇問集今年度も心待ちにしております

当方実はいわき市在住ですがアクアマリンに行った事がありません
寿司屋以外も海の幸をふんだんに使った食事処のようですね
ただ「水槽の目の前」というインパクトには負けますがw

>大丈夫? 時が戦前で止まってない?
一時期東京に出ていたのですが
その頃からなんとなくそんな雰囲気は感じていました←
Posted by 11pm at 2026年01月07日 15:12
>新年おめでとうございます
>受験世界史悪問・難問・奇問集今年度も心待ちにしております
ありがとうございます。今年も作る予定です。

>寿司屋以外も海の幸をふんだんに使った食事処のようですね
そうなんですよ。ただ,来館者数に比して規模が小さく,私が行った時には13時頃の時点で満席&ほとんどが品切れという状況でした。
結局,港の方のショッピングモールで食べました。

>その頃からなんとなくそんな雰囲気は感じていました←
Oh......
Posted by DG-Law at 2026年01月12日 15:34